アユニ・Dを突き動かす衝動の正体──PEDRO、最新EP『衝動人間倶楽部』
“楽器を持たないパンクバンド“BiSHのアユニ・Dによるソロ・プロジェクト、PEDROの最新EP『衝動人間倶楽部』のリリースが決定。2020年春には、全国ツアーも決まっており、ますますPEDROとしての活動も本格化してきた。BiSHと並行して活動を行う怒涛の日々の中で、アユニ・D自身はどのような変化していったのか。そして、彼女はいま、どのような「衝動」に突き動かされているのか。じっくり迫りました。
INTERVIEW : PEDRO
最新EP『衝動人間倶楽部』を聴かせてもらって、その変化に驚いた。音像は90年代オルタナティヴの匂いをムンムンさせながらも、より現代的なバンドサウンドとして鳴っていた! このプロデュースワークを様々な協力を得ながらもアユニ・Dがやっていると思うと鳥肌が止まらない。そんなことを考えてたら、取材にやってきたアユニ・Dの存在感が半端なかった。なんだなんだ...w 彼女はどこまでいっちまうんだ!?
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 西田健
写真 : 大橋祐希
いままで絶対発したことなかったような言葉も入れた
──『衝動人間倶楽部』を聴かせていただきましたが、かなりかっこいい! ご自身で手応えはいかがですか。
アユニ・D:元々自分の中にあったけど今まで出してなかった部分を出せたんじゃないかなと。タイトルも歌詞も自分でつけました。
──タイトルの『衝動人間倶楽部』はどういう意味ですか?
アユニ・D:人間は衝動で動かないとやりたいことができないみたいなことを表現したくて。今回は完全に自分が創りたいものを創った感じなんですけど、テーマは4曲全部衝動ですね。
──どんな想いをこめて?
アユニ・D:恋愛ソングだったり前向きな歌詞の歌だったり、世界を憎んでいる曲だったり、それぞれ違った面を見せられる4曲が集まっていればいいなと思いました。あとツアー期間中に配信などされていくので、完成して改めてこの4曲でライブの幅も広がるんじゃないかなと感じてます。
──歌詞はどうやって書いていったんですか?
アユニ・D:ありがたいことではあるんですけど、怒涛の日々の中で歌詞の制作をしていたんです。日常で何も感じられないまま毎日を過ごしていて、脳みそが結構追い詰められている状態の時に、ちょうど宮崎夏次系さんの漫画にはまって。自分の中にある言葉にできないことや感情を全部言葉にしてらっしゃるのがすごく印象的で、かつてないくらい共感して。そこから世界を広げて書きました。
──歌詞も今までと違いますよね。”感傷謳歌”はすごくポップな曲でした。
アユニ・D:〈夢に届くまで泣いて〉とか、いままで絶対発したことなかったような言葉も入れてみました。人間はいつか死ぬし、それまでは頑張ったり楽しんだり、どうせならやってやろうという気持ちで書いた曲ですね。暗いけど明るいというか。
──”生活革命”は、ストレートな恋愛モノ?
アユニ・D:今回の『衝動人間倶楽部』で見せようと思った4つの顔の中で、クソみたいな恋愛ソングを入れるのがおもしろいかなと思って。恋愛に溺れるなんてクソみたいだなと思って書きました。最近気づいたんですけど、私がかっこいいとか好きとか思っているオルタナティヴ・ロックとかガレージ・ロックは、世間的には少数派というか、大衆受けしないというのをすごく学んで。それと全く逆なことをこの曲ではやってみたくて。こういう恋愛がしたいとかそういうことでもないんですけど、理想も入っているのかもしれない(笑)。
──歌詞に対して意識の変化はあったんですか?
アユニ・D:自分の歌詞の中で独特なワードを使うとこが嫌いだったんです。独特すぎて伝えたいことが伝わらない。それを昔はかっこいいと思ってたんですけど、いまはもっと直接的に、声に出して歌ったときに出てきた言葉とか、何も考えずに出てきた言葉でそのまま想いを伝えたいと思えるようになりました。
──やっぱり、テーマは衝動なんですね。歌詞がストレートになることで、より現代的になっているように思いました。”WORLD IS PAIN”も世界を憎んでいるけど、最終的にはポジティヴに消化しているように聞こえます。
アユニ・D:そうですね。それも自然と消化できるようになったから出てきたというか。やっぱ”衝動”という単語は自分のなかでも大きい発見だったと思います。
自分の中の感情も衝動で動いていいんだ
──いまみたいにポジティヴに消化できるようになった大きい出来事は何だったんですか?
アユニ・D:PEDROをはじめたことだと思います。PEDROというプロジェクトがスタートして、関わる人や聴く音楽も増えました。あとは、やりたいことの欲求がすごい増えて。それが大きいかもしれない。BiSHでの活動のとき、いままで自分が悔しくて泣いたことはあったんですけど、この間のBiSHのツアー・ファイナルで、会場の空気や人の顔を見たときに泣いちゃって。「自分の中の感情も衝動で動いていいんだ」ってわかってからは、ライヴの感覚も全然変わりました。
──もっと自由にやってもいいんだという気持ちは、PEDROをやったから気づいたことなんですね。
アユニ・D:私は結構真面目なので、怒られるのがすごく嫌いだったんです。ちっちゃい頃からやりたいと思ったことをやったことがなくて。「これはしちゃいけない。これはしていい」という範囲の中で生きてきたんです。でも、この1年間で考え方とかすごく変わって。「いままでは頑張っても意味ない」とか「どうせ死ぬなら何もやらなくていいや」って思ってたんですけど、「どうせ死ぬんだったらやってやるか」って思考になってきました。別にパーっと明るくなったとかすっごい社交的になったとかそういうわけではないんですけど。
──自分の中での気持ちが少しずつ変化していったんですね。
アユニ・D:BiSHに入りたての頃はライヴというものははじめから終わりまでちゃんと決めて、こうやらなければいけないものだと思ってやってたんです。だけどPEDROをはじめてからは、ライヴの観方も変わってきました。最近、The SALOVERSさんのライヴ映像を観たんですけど、それがめちゃくちゃカッコよかったんです。感情が一線を超えたのか、歌も衝動に駆られて叫んでる感じで。ギターをめちゃくちゃに弾き倒した後、最後はそのまま投げ捨てて、音が鳴ったまま全員いなくちゃって。そういうものを見て、ライヴは衝動的にやっていいものなんだっていうことに気がつけてからは、ライヴへのスタンスも気持ちも全然変わりました。
──なるほど。アユニさんが衝動を表現する上で影響を受けている方はいますか?
アユニ・D:向井秀徳さんです。発言とかライヴの仕方とかにはすごく影響されてると思います。向井さんはとても良い意味でこだわりがあるじゃないですか。だからこそ、自分の欲求だけのものが創れるんだなって思います。私は流されがちなので、向井さんみたいに何者にも流されない人はかっこいいと思います。私は枠に囚われた生き方をしてきたので、自分が持ってないものを持っている人を見るとすごい尊敬するし、そういう人間になりたいって思うんです。
──確かに向井さんはかっこいいですよね。向井さんみたいな表現をしてみたいですか。
アユニ・D:感情を叫んで吐き出すやり方は苦手なので、向井さんみたいにクールでしっかり決めつつも、そこに衝動を入れていきたい。そういうやりかたが自分には合っているやり方だと思うし、これからやってみたい。
最近は嫉妬で自分と同世代のバンドを聴けない
──春にはPEDROの全国ツアー「GO TO BED TOUR」がはじまります。かっこいいタイトルですね。
アユニ・D:ダサすぎでしょ(笑)タイトルは前回と何かをつなげたくて。前作に入ってる”NIGHT NIGHT”の中で「君のグッドナイトはとてもよく効く」という歌詞があって、そこからつなげて「GO TO BED」にしました。
──ライヴのプロデュースはどんなことを考えてるんですか?
アユニ・D:おもしろいことができればと思ってます。やっぱり衝動的なライヴがしたくて。前回のツアーは技術の部分での余裕が全然なくて、緊張もしてたし、歌詞も飛んで頭が真っ白になったりしてたんです。そういうのをなくして、本当に自分がやりたいようにやれたらなと思っています。その衝動の欲求を全部さらけ出しても、興奮してくる人たちがいればすごいありがたいですね。
──ライヴにはどういう感じで衝動をいれる予定ですか?
アユニ・D:衝動なので別に考えてやることじゃないんですけど、たとえば、今日はノイズのパートを長くしたいなって感覚的に思ったら、その場で長くするとか。最後そのままベース投げるとか(笑)。毎回全然違っても、その日にやりたいようなライヴができればいいなと思います。
──ツアーが楽しみですね。PEDROはこれからどう変わっていくと思いますか?
アユニ・D:PEDROでは自分を100パーセント出しているつもりなので、自分自身が成長して変わっていくのと同時に、PEDROも変わっていくと思います。自分の人間としての理想もこれからは表現したい。自分の中で嫌いだった部分を消しつつ、自分の中の好きな個性は貫き通していく感じです。ただ自分でも想像つかなかった感覚に至ることはたくさんあるし、自分でもつかめないですけど。そのとき一番やりたいことを表現できたらいいなって思います。歌詞には衝動をより詰め込んでいって、作曲とかもっとやっていきたい。いまは出したい言葉も創りたい音楽も、他にやってみたいこともたくさんあるので、とにかくなんでもやってみたいです。それで頭がいっぱい。
──どんどんやりたいことが出てきているという状態なんですね。たとえば具体的にどういうことをやってみたいですか?
アユニ・D:とにかく音楽をやりたいんです。いまはパソコンで打ち込んで作曲にも挑戦しているんですけど、それをやっていると、自分がいままで聴いてきた音楽を創った人たちは天才なんだなって感じます。いろんなことをいっぱい習得して、それを形にできたらもっと楽しいと思う。
──打ち込みでやっていたら、バンドで鳴らしてみたくならないですか?
アユニ・D:まあ、1番はバンドがやりたいんです(笑)。今回も松隈(ケンタ)さんが創ってくれたデモから選んでアレンジしていったんですけど、田渕ひさこさんがデモになかったギター・ソロの部分やアウトロを入れてくださったりしてから曲の良さがより引き立つようなことが起きたりもして。やっぱりバンドでセッションして曲を創ったりもしてみたいんです。
──結局、1番はバンドなんですね。
アユニ・D:もし学生の頃に戻れるのであれば、バンドを組めばよかったなと思います。でも、いまひさ子さんと一緒に音楽をやれているのは本当にありがたいので、PEDROでもしっかりやりたい。この間対バンした突然少年とかもそうなんですけど、最近は嫉妬で自分と同世代のバンドマンの音楽を聴けないんですよ。こんなかっこいい曲を自分たちだけで創れるのかと思うと羨ましくて。まあ、ないものねだりなんでしょうけど。
──PEDROはいま、アユニさんの中で核になっていると思うんですけど、これからもどんどん発展させていきたいと思ってるんですか?
アユニ・D:サポート・メンバーから断られなければ、このままずっとやっていきたいです。私がひさ子さんに好き好きアピールしすぎて、断られるかもしれないですけど(笑)。自分が世界一かっこいいと思ってるギターの音が隣で鳴っているというのは、これ以上ないことですよ。
──PEDROとしての夢はありますか?
アユニ・D:行けるならどこまででも行きたいです。武道館にもPEDROで立ってみたい。まあ、ふざけた夢なんですけど、Mステとかも出てみたい。でも本当にやりたいのは真夏の野音なんですよね、この間のNUMBER GIRLみたいに。
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LIVE INFORMATION
PEDRO / GO TO BED TOUR
2020年3月12日(木)@愛知 THE BOTTOM LINE
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
2020年3月15日(日)@広島 LIVE VANQUISH
時間 : OPEN 16:30 / START 17:30
2020年3月19日(木)@北海道 PENNY LANE24
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
2020年4月03日(金)@宮城 仙台CLUB JUNK BOX
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
2020年4月08日(水)@大阪 BIGCAT
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
2020年4月10日(金)@福岡 DRUM Be-1
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
2020年4月12日(日)@高松 オリーブホール
時間 : OPEN 16:30 / START 17:30
2020年4月26日(日)@新潟 NEXS NIIGATA
時間 : OPEN 16:30 / START 17:30
2020年4月28日(火)@東京 STUDIO COAST
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
2020年5月03日(日)@沖縄 output
時間 : OPEN 16:30 / START 17:30
<チケット情報>
全公演SOLD OUT
PROFILE
“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバーであるアユニ・Dによるソロバンド・プロジェクト。
ベース・ボーカルに加え、全楽曲の作詞から一部作曲までを行う。
セルフ・プロデュースで放たれる彼女の持つ独特の世界観や感性が大きな支持を集める。
【INFO】
■PEDROオフィシャルHP:
https://www.pedro.tokyo/
■PEDROオフィシャルファンクラブ:
https://sp.pedro.tokyo/ (スマートフォンのみ)
■PEDROオフィシャルTwitter:
https://twitter.com/pedro_ayunid
■アユニ・D Twitter:
https://twitter.com/ayunid_bish