安斉かれんのミュージシャンとしての挑戦──2枚のアルバムに込められた、確かな情熱に迫る
女優やモデルとしても知られる、安斉かれんが『ANTI HIROINE』、『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』という2枚のアルバムを同時リリースした。この2枚には、チャーリーXCXをはじめとした豪華アーティストが参加しており、また安斉自身もほとんどの楽曲の作詞を担当している。今回OTOTOYでは、今作に込められた想いを探るべく、インタヴューを実施。楽曲の聴きどころだけでなく、彼女の音楽遍歴、そして自然体なアーティスト像に迫った。
安斉かれん、ファースト・アルバムを2枚同時リリース
https://kalenanzai.lnk.to/ANTIHEROINE
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INTERVIEW : 安斉かれん
2019年のデビューから約4年、安斉かれんの初のアルバムが遂に届けられた。しかも2枚同時リリースだ。2020年にドラマ「M 愛すべき人がいて」で主演を務めて大ブレイクした安斉だが、2枚のアルバムにはシンガー、ソングライター、プレイヤーとしての姿が記録されており、彼女がミュージシャン肌であることを如実に物語る。安斉が自身の音楽を追求した『ANTI HIROINE』、初期衝動を記録した『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』の2枚について話を聞いた。彼女が語る「音楽してるな」という感覚とは、どんなものなのだろうか?
インタヴュー&文 : 宗像明将
写真 : 西村満
いろんな音楽を詰め込んで、概念を打ち破りたかった
──もともとはエレクトーンを習っていて、親御さんの影響でローリング・ストーンズを聴くようになって、アルト・サックスも吹くようになったそうですね。音楽の原体験で一番大きかったものは何でしょうか?
安斉 : やっぱり父のロックですね。ハノイ・ロックスとか、ずっと車でかかってたのを聴いてて、ずっと歌っていました。中学に上がる前の春休みに、ローリング・ストーンズのライヴを初めて見て。バンドメンバーが管楽器を吹いているのを見て「かっこいいな」と思いました。中学の吹奏楽部に入ってからサックスを始めて、っていう感じです。
──自発的に音楽を聴くようになってからは、どんなものを聴いていましたか?
安斉 : もともとセレーナ・ゴメスがめっちゃ好きで、CDを買って聴いていたりしてましたね。でも、いろいろ聴いてました。クラシックも聴いてたし、ロックもずっと聴いてたし。今も本当にジャンルレスに聴きますね。自分が歌うようになってからJ-POPもいっぱい聴くようになりましたし、あとR&Bとかヒップホップも。最近聴いてるのはフランク・オーシャンとかですね。
──遂にアルバムが出ますが、2枚同時発売はどういう流れだったんですか?
安斉 : いろいろ曲を作ってるうちに、収録したい曲がいっぱいになっちゃったんで、2枚にしよう!って(笑)
──安斉さんは2019年にデビューしてから、これまでのリリースはすべて配信ですよね。CDはどれぐらい買ったことがありますか?
安斉 : あんまりないですね。セレーナのCDは買いましたけど。
──じゃあ、配信中心のリリースも、安斉さんからしたら自然だったわけですね。
安斉 : そうですね。
──2020年に「M 愛すべき人がいて」で安斉さんが大ブレイクするわけじゃないですか。歌手としてデビューしたら、いきなり演技をすることになって、しかもそれで世間の認知度が一気に上がるというのは、本人的にはどういう感覚でしたか?
安斉 : 嬉しかったし、演じていて楽しかったんですけど、やっぱり名前のほうが先行して出るというか。「安斉かれんは知ってるけど、曲は知らない」みたいな人がいて。ヴィジュアルを見てもらえるのも、もちろん嬉しいんですけど、「曲を知ってもらうためにどうしようか?」みたいなことはずっと考えてました。
──その結論は出ましたか?
安斉 : いや、出ないですね。もうとりあえずやっていくしかないな、って。でも、出口が増えたのは、もちろんありがたいことなんですよね。そこで終わらずにどうやったら「音楽も聴いてみよう」ってなってもらえるかな、っていうのは考えましたね。だからSNSもやらなきゃって。
──今回の『ANTI HIROINE』と『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』のヴィジュアルのテーマについてはスタッフさんと話したんですか?
安斉 : ですね!これまでにはない、アプローチで作れたので、仕上がりをみた時に、「めちゃくちゃ、かっこよー!」って興奮して。
──音楽制作に関しては、自分の意見を出されるほうでしょうか?
安斉 : いろんな方の意見は聞きますね。そのなかで「私もこれがいいと思う!」という意見はもちろん出しますし、一緒に曲を作るとなっても、曲を書いてくれる方をリスペクトしつつ、っていう形で。
──『ANTI HIROINE』で意識したポイントはどんなものでしょうか?
安斉 : 「安斉かれんってこうだからこうですよね」みたいなイメージを持たれてるっていうのも、もちろんわかるんです。でも、「そのイメージだけじゃないよ」っていうのを出したくて『ANTI HIROINE』っていうタイトルにしました。私のイメージの路線ではないような曲もあえてトライしましたね。
──そうしたアーティストエゴを持ちつつ活動する中で、『ANTI HIROINE』でやりたかった音楽とはどんなものでしょうか?
安斉 : いろんな音楽をやりたいとはずっと言っていたので、今回は本当にいろんな音楽を詰め込んで、概念を打ち破りたかった感じです。
──安斉さんがふだん聴いているものも反映されているわけですね。
安斉 : そうですね。「不眠症☆廃天国」とかはそのとき聴いていた、ちょっとゆったりなテンションの曲を作りたいと思ってできた曲ですね。
──「へう゛ん」「Secret Love」「GAL-TRAP」「おーる、べじ♪」など、ダンストラックも多いですし、トラップが鳴る楽曲も多いですが、安斉さんが歌いたいジャンルだったのでしょうか?
安斉 : そうですね。でも、私がダンスできないんで、すっごいゴリゴリのダンスミュージックにはあんまりまだ挑戦してないんです。ノリやすいぐらいのダンスミュージックが好きなのかな。でも、「ダンスミュージックをやりたい!」っていう感じでもないんですよ、
──「ら・ら・らud・ラヴ」はソウル・ミュージックですし、「夜は未完成」もブラック・ミュージック色の濃い楽曲です。こういった音楽も好きなのでしょうか?
安斉 : やってみたかったんです。「夜は未完成」に関しては、ジャズっぽいスウィング系の曲調で。ブラック・ミュージックもめちゃくちゃ好きで、もともと聴いてたんです。