とろとろのスウィート & チルなネオ・ドゥーワップ――JINTANA & EMERALDS、待望の1stアルバム!
2014年必聴のネオ・ドゥーワップ・サウンドが届けられた。男女6人組ユニット、JINTANA & EMERALDSの1stアルバム『DESTINY』だ。参加メンバーは、ハマの音楽集団PPPことPAN PACIFIC PLAYA所属のJINTANAとKashif、"媚薬ヴォイス"で人々を虜にする一十三十一、(((さらうんど)))でも活躍するDJ CRYSTAL、少女時代や三浦大知などの作詞、作曲、プロデュースを手掛けるカミカオル、女優としてもその名を知られるMAMIの6人。さらに、ゲストとしてPPPからLUVRAW & BTBも参戦という充実ぶり。そのサウンドは50'sドゥーワップを基調としながらも、80'sのシティ・ポップやクラブ・カルチャーを経由し、単なるノスタルジーに留まらない刺激に満ちている。アルバムに先立ってリリースされた7インチ・シングルがJETSET総合ランキングで1位を獲得するなど、コア・リスナーを唸らせてきた彼ら。その最高にスウィートなエメラルド色のグルーヴに身を委ねよう。メンバーへのインタヴューとともにどうぞ。
JINTANA & EMERALDS / DESTINY
【配信フォーマット / 価格】
ALAC / FLAC / WAV / mp3 : 1,851円(単曲購入は各257円)
【収録曲】
01. Welcome To Emerald City
02. 18 Karat Days
03. Emerald Lovers
04. I Hear a New World
05. Honey
06. Runaway
07. Destiny feat. LUVRAW & BTB
08. Moon
09. Let It Be Me
10. Days After Happy Ending
INTERVIEW : JINTANA & EMERALDS
インタヴュー : 飯田仁一郎 (Limited Express (has gone?))
50'sを匂わせる超ハッピーで超リア充な音楽を
——JINTANA & EMERALDSは、どのように始まったバンドなのでしょうか?
JINTANA Emeralds(以下、JINTANA) : 夢見心地になれる、すごく心地良い世界に旅に出れるような音楽を作りたいと思って始めました。僕は50年代、60年代にあったエキゾチック・ミュージックって好きなんですが、当時のアメリカって高級なオーディオをリビングに置くのが流行っていたそうで、そういうオーディオ・マニアが何を聴いていたかというと、マーティン・デニーなどが作り出す「南の島への想像上の旅」のレコードだったそうです。すごくハイファイなオーディオで南の島の音楽に包まれることで、擬似的に旅に出ていたということらしいです。それで、そういうチルアウトのための擬似旅行をさせる音楽を作りたいと思い、一番行きたい場所を考えているうちに、どうしても行きたくなったのが、50年代のアメリカ西海岸でした。
——それはなんで?
JINTANA : 50年代は、僕の感覚では第二次世界大戦も終わり、アメリカの人々がとことん幸せを享受しまくった、人類史上もっとも幸福な期間に思えたんです。そして50'sドゥーワップには、そんな、何の不安もない、超ハッピーな感じがありますよね。オールディーズの歌詞って、「教会で泣く」とか「もうちょっとだけそばに居ていい?」みたいなことを3分くらいずっと歌ってたりするんですよ。今の感覚じゃ考えられないほどシンプル。その心が洗われるくらいのシンプルさが自分にすごく響いて。世の中がどんどん複雑化していく中で、ここまで純度が高く愛や幸せや笑いに浸れる感覚はあまりに新鮮で、そして、そういう音楽を自分でも演奏したいと思ったんです。
——なるほど。
TOI Emeralds(以下、TOI) : 一十三十一名義では80年代の音楽に影響を受けた曲を作っているんですけど、80'sってルーツ的には50'sからも繋がっているので、50'sの音楽も共感度が高くて。最初はJINTANAから「こういうバンドをやりたいんだけど、誰かいい女性シンガーいないかな?」って相談を受けていたんですけど、その話を聞くごとに、自分がやりたいと思うようになって。夢の国の住人に自分も加わってみたいなって。
JINTANA : それからChaoちゃんにはTOIちゃんが、MAMIちゃんには僕が声をかけて。
——ChaoさんとMAMIさんは、50年代のアメリカへの憧れがありましたか?
Chao Emeralds(以下、Chao) : それこそ私は、50'sのアメリカの音楽が、自分の一番好きな音楽だったんです。ちょっと古い感じが好きで、ジャズとかドゥーワップとか、60'sだとモータウンとか。それこそシティ・ポップとかも好きですし。私はいつも作家みたいな形で音楽を作っているんですけど、このバンドにはリア充を感じて、一緒にやってみたいと思ったんです。
——MAMIさんは女優としても活動されていますよね。
MAMI Emeralds(以下、MAMI) : 私はバンドをやるのは初めてだったんですけど、歌うのは嫌いじゃないし、どんな感じかわからないけど楽しそうだなって、好奇心から加わりました。50'sの音楽は入ってから聴くようになりましたけど、どんどん好きになりましたね。このメンバーからも刺激を受けるので、やっていて楽しいです!
——Kashifさんは、どんな経緯で参加することになったんですか?
Kashif Emeralds(以下、Kashif) : KES君に誘われてPPP(Pan Pacific Playa)に入ったんですけど、何もせず何年かぼーっと過ごしていたんです。そんな中でJINTANA君がオールディーズ・バンドをやりたいって誘ってくれてね。
JINTANA : PPP自体は今年で10年になりますけど、俺らがちゃんと活動しはじめたのは3年前くらいからなんです。
TOI : もともと私とJINTANAはハイティーンのときから仲が良くて、いろんなパーティーで遊んだりしてたんです。それこそサンタナのライヴに一緒に行ったり。その頃からPPPのことは知っていて、何か一緒にやりたいねって話してたんですけど、一緒に音楽を作るような機会はなくて。
Kashif : あの頃は、KES君がプリンスとかをサンプリングした音をかけて、僕がその上に泣きのギターをとにかく弾きまくるPalm Streetというユニットでよくライヴをしていて。その流れでアルバムを作ろう、ヒトミさんに歌ってもらおうって話してたんですけど、あまりにも無計画すぎて結局実現しなかった。その話を続けていく中でエメラルズの核ができていった感じはあるよね。
JINTANA : そうだねぇ。
——このメンバーの図式を描いたのはJINTANAさん?
JINTANA : そうですね。50's的にハッピーで超リア充なものを、今のサウンドを入れてやったら楽しいんじゃないかなと思って。PPP自体、源流的なところで50'sに影響を受けている部分がけっこうあるんですよね。50'sがあって、大瀧詠一さんの影響があって。そして横山剣(CKB)さんからの影響もあったり。
——PPPは、横山剣さんとも繋がるんですか。意外です。
JINTANA : PPPは、剣さんへの憧れから始まっている部分もあるんですよ。みんなでライヴを観に行ったりもしていますし。ちなみにPPPのリーダーは、Pisley Parksなどで活動する脳君です。
——へえ、脳さんがキー・パーソンなんですか。
JINTANA : 脳君の作り出した世界観の影響は大きいですよ。彼のアシッドでレイドバックな世界観に、僕はかなり感化されてスチール・ギターを弾きはじめたし。エメラルズの、とろとろのエキゾチック・レイドバックみたいな空気感の源流はPPPだし、もっと言えば脳君です。
TOI : エメラルズの名付け親でもあるよね。
JINTANA : バンド名をどうするかって話してるときに脳君に相談して。ドゥーワップのバンド名って、当時の人が憧れるもので作っていたらしくて、車か鳥か宝石の名前でできてるっていうのを知って。脳君に言ったら「JINTANAだったら、エメラルドでしょ」って。魔術的でアシッドでぶっ飛んでる感じがあるからって。
本気で遊んで楽しんで作ったものがどんどん大きくなって…
——音づくりはどんな分担でやっているのでしょうか。
JINTANA : メロディーは僕とkashif君で、アレンジはKashif君とCrystal君で、最終的なドリーミーなミックスはCrystal君が。
Kashif : 最後はパラデータをCrystal君に渡して、そこからはもう自由にやってもらってます。
——このバンドの一番の肝である50'sの感じを出すのは、主に誰がハンドリングしているのでしょう?
JINTANA : 空間的、音像的なところはCrystal君がやってます。50'sの音楽性を今っぽい音でやろうっていうコンセプトがメンバー間の共通認識としてあるので、みんなでメールで話したりしながら。
Kashif : 僕が作ったオケの状態では、それだけだと普通のサウンドなんです。今っぽい音像、いわゆるチルウェイブとかのミックス処理によって、空気感を出して。
JINTANA : フィル・スペクターの「ウォール・オブ・サウンド」のように渾然一体とした、包み込むような音にしたいなと。フィル・スペクターのリヴァイヴァル感とか、今の時代のエクスペリメンタルな空間系の処理をリンクさせることで、オールディーズを継承しアップデートしていく感じです。
——サウンド面以外でのコンセプトはありますか?
JINTANA : エメラルズには、人類が進化していくことに謀反を起こしたまま時が止まっている「エメラルド・シティ」という仮想の街の住人というストーリーがあります。僕らがそこで、50年代のように日々シンプルで楽しい暮らしをしていくことに幸せを感じていくという。
TOI : デトロイト・ベイビーちゃんって子が歌詞を書いてくれているんですけど、歌詞もその街の中での出来事だったりするんです。
——タイトルの「Destiny」もそのコンセプトからきているのでしょうか?
JINTANA : PPPと二見さん、コンピューマさん、LIVE LOVESなどで毎年、夏の終わりに江ノ島のOPPA-LAという海を見下ろすクラブで"A.D.U.L.T."ってパーティーをやってるんですけど。その夏のいろんな思い出を噛みしめながら、その日は集まってとにかく飲んでパーティーをするっていうのが、何かとても感動的だなと思っていて。LIVE LOVESのメンバーの方とか、僕は年に一度しか会わない先輩や友人もいるんですけど、そういう方や友人たちとひと晩過ごしてるのがすごくよくて、その瞬間って運命的だと思ったんですよね。エメラルズも昔からの友達だけど、まさかこの歳になって一緒にバンドをやることになるなんて思っていなかったし(笑)。PPPにしてもバンドにしてもパーティーのお客さんにしても、その瞬間を酔いしれている感じがまさにディスティニー(運命、宿命)だなと思って、アルバムのタイトルにしました。
——なるほど。真面目な理由があるんですね。もろ50'sのジャケットで「Destiny」なんて書いてあるから、本気なのかふざけてるのか量りかねてたんですよ(笑)。
一同 : (笑)。
JINTANA : それも結局運命に導かれて必然的に辿り着いたんですよ(笑)。
TOI : 仲は良いですけど、みんな本気ですよ(笑)。変な感じかもしれないけど、自然な流れなんだよね。
Kashif : 確かに写真は自然ではないけど(笑)、まあ集まった状態はその通りだよね。
——今作はどのくらいの製作期間をかけて作ったんですか?
JINTANA : 3年くらいですね。割とじっくりやってました。
——実際に完成してみていかがですか?
TOI : 「本当に出来るものなんだな!」って感動がありますね。真面目にやってるバンドですけど、本気で遊んでもいたので、完成するヴィジョンがあまりなかったというか。スタジオに集まって無駄にメロディー・ライン大喜利とかやってみたりしてましたし。
——(笑)。
TOI : マイクを1本立てて、フリー・スタイルで歌っていくような曲の作り方をしたり、みんなでPPPのパーティーで遊んだり。そうやって楽しみながら作ってきたものが形になって、そこからまた色んな人が関わって完成していく感じが、導かれるように自然に進んでいったことだったんですよね。本気で遊んで楽しんで作ったものがどんどん大きくなってすごいクオリティになって世に出ることに感動しています。
Chao : 歌っていて気持ちいいメロディーと自分が好きだと思える楽曲を、揉め事もなく仲良く楽しくやれて、こんなに快楽主義でいいのかなっていうくらい満足しかないですね。私達のハッピー感をみんなさんに是非お届けしたいです。
MAMI : 本当に導かれるままにきた感じなんです。嬉しいのももちろんあるんですけど、どこか夢見心地というか。本当にやっていて楽しいってだけでここまできたので。
Kashif : アルバムを作っている自覚はあったけど、スケジュールを合わせるのも難しい上に、ヴォーカル・トラックもたくさんのレイヤーがあってけっこう膨大な量の作業だったので、完成する感覚がなかったんですよね。でも頑張れば辿り着けるんだなって。今回は制作のプロセスが大事だったというか、無駄なことに縛られないでユニークにやることができたと思うので、今までとは違う手応えがあります。
——完成へ向けて、最後にグッとまとめたのは誰なんでしょう?
Kashif : それはJINTANA君だよね。みんなふわふわ楽しんでやってるから、ちょっと油断するとまったく進行しなくなる恐れがある中で、JINTANA君がきっちり連絡をとりながら進行していったので。それがなきゃ絶対に完成してなかったでしょうね。
JINTANA : 僕は班長みたいな感じですね。エメラルズは小学生の仲の良い男女の班みたいな感じがあるので、「何時にどこ集合だよ!」みたいな(笑)。音像的なまとめ役としてはKashif君とCrystal君が大きいです。
——Kashifさんは、サウンドのコンセプトが先に決まっている音楽を作ってみていかがでしたか?
Kashif : Crystal君も僕も山下達郎さんや大瀧詠一さんが好きで、そういう音楽へのリスペクトが昔からあったから、作ることにもすごく興味があったんですよね。だからモチベーションは最初から高かったですし、違和感があるところに入り込んで制作するって感じではなかったですね。
——苦労したことはありますか?
Kashif : JINTANA君やCrystal君ほどオールディーズのデータベースが自分の中になくて、シンプルなテンプレートしかなかったんです。メロディー・ラインとか、普通のシティ・ポップにはないフラットな感じを出すのにトライするのがはじめてだったので、そこが一番自分的には苦労したかもしれないですね。
——JINTANAさんは今作が完成してどのように感じていますか?
JINTANA : 今回の制作を通してシンプルな気持ちになれてよかったです。難しいことなしに、仲間と音楽をただ楽しむことができてよかった。
——それはPPPのスタイルでもありますよね。
JINTANA : そうですね。今回それをあらためて実感できてよかったし、幸せを追求する50's的なフィーリングの音楽を大瀧さんがやって、次の世代に繋がって、形を変えながら色々なバンドが出てきている中で、僕らは今の時代のフィルターを通してやることができてよかったかな。これからもそうやって楽しみながら続けていけたら幸せだなと思ってます。
——これからJINTANA & EMERALDSはどんな動きをしていくのでしょうか。
JINTANA : さらに多くの友人たちと、これからも日々を「運命」と感じながら、瞬間をすべて噛みしめて音楽をやっていきたいですね。近日、東京と京都でレコ発ライヴもするので、そこでみなさんをエメラルドな夢の世界に連れて行けたらと思います。
JINTANA & EMERALDSに参加するミュージシャンの関連作をチェック!!
一十三十一 / CITY DIVE
都会の夜を甘く疾走する“媚薬ヴォイス”に酔いしれろ。キャリア最高傑作と名高い、一十三十一の2012年作。ナヴィゲーターは、稀代のレコード蒐集家とクラブの遊び仲間たち。夏のクールネス、夜の匂い、湾岸のドライヴ…。パーティーのざわめきを封じ込めた、2010年代のシティ・ミュージックがここに。プロデューサーとして、流線形のクニモンド瀧口、トラックメーカーのDORIAN、そして横浜をベースに活動する湾岸音楽クルー「Pan Pacific Playa」のKashif a.k.a STRINGSBURNが参加。一十三十一のルーツでもある70年代〜80年代のシティ・ポップスを背景に、まるでクラブ仲間と遊ぶように作られた1作。
LUVRAW & BTB / HOTEL PACIFICA
全国各地のパーティーにお邪魔してその名の通りブリージンしまくっているトーク・ボックス・デュオ、LUVRAW & BTB。彼らの2ndアルバム『HOTEL PACIFICA』は、夏のスウィートな思い出をドラマチックに彩る、極上のスムース & メロウ・チューンが盛りだくさん。ゲストとして、各所から引っ張りだこのPUNPEE、ソロに加えてSICK TEAMも話題のS.L.A.C.K.などが参加。また、プロデューサーとしてJAZZY SPORTからgrooveman Spotが珠玉のグルーヴを提供。もちろんPPPメンバーも言わずもがなの参戦!!
(((さらうんど))) / New Age
あの山下達郎がCDを購入したと公言し、KREVAや吉井雄一(THE CONTEMPORARY FIX)が自身のブログで取り上げるなど、ミュージシャンのあいだでも高く評価された前作『(((さらうんど)))』から1年。躍動するメロディーとビートに満ちた待望の2ndアルバムが届けられた。アナログ12インチで先行リリースされた「空中分解するアイラビュー」や、砂原良徳が作曲、アレンジ、プロデュースを手掛けた「きみは New Age」をはじめ、前作を超える名曲たちがずらり。(((さらうんど)))の音楽が僕らの街に鳴り響き、いつもの風景を違うものにする。
PROFILE
JINTANA & EMERALDSは、横浜発、スウィート & メロウなサウンドを届けるハマの音楽集団PPPことPAN PACIFIC PLAYAが放つ、ドリーミーかつ新しいサウンド。甘く切ないオールディーズ調のメロディーを現代のチルアウト・ミュージックとして再構築した、懐かしくも斬新なサウンドが話題を呼び、7インチ・シングルがJETSET総合ランキング1位を獲得。メンバーは、PPP所属のJINTANAとKashif、アーバンなニュー・シティ・ポップで話題沸騰中の媚薬系シンガー一十三十一、(((さらうんど)))でも活躍するDJ CRYSTAL、少女時代や三浦大知など幅広くダンス・ミュージックの作詞 / 作曲 / プロデュースを手掛けるカミカオル、女優でもあるMAMI。ゲストにPPP所属のLUVRAW & BTBも参加している。
>>PAN PACIFIC PLAYA OFFICIAL HP