POPS回帰し表記も新たにしたharinekoの新作『Sweet Sorrow.』の世界を、写真とインタヴューでなぞってみた
harinekoの新作『Sweet Sorrow.』には、「mornin.」「ダイヤナイト」「行きた日」「return.」の4つの楽曲が収録されている。harinekoのSaChiが言うには、その4曲は順番に朝、昼、夕方、夜と1日に添って創ったのだそうだ。確かにこの楽曲からは時間と場所が強く想起される。また先行で発売されたCDには、フォトジンがついていた。かわいい女の子がこちらを向くそれはとても美しかったが、そこにはSaChiはうつっていなかった…
だからなのか、このアルバムを聴かせてもらった時に、SaChiと一緒にその曲が生まれたであろう場所に、生まれたであろう時間帯に行ってみたいと思った。そうじゃないと、この作品を理解することは出来ないと思ったからだ。
本作のキーパーソン、カメラマンの齋藤一平とスタッフの岩崎淳、そしてSaChiと一緒に、アルバムのことを聴きながら4つの場所を
mornin.@駒沢の住宅街 → ダイヤナイト@お台場ヴィーナスフォートと芝浦ふ頭 → 行きた日@松陰神社付近 → return.@幡ヶ谷jicca
と巡り、今度はSaChiを入れて、その楽曲が想起される写真を撮ってきた。harinekoの『Sweet Sorrow.』が巡りあわせてくれた、たった4人のはかない小旅行をゆっくり読んでいただければ幸いです。
インタヴュー&文 : 飯田仁一郎
写真 : 齋藤一平
文字起こし : 椿拓真
配信はOTOTOYのみ! 朝~夜まで時系列に沿って1日を4曲で描いた作品
harineko / DANCE TO YOU
【配信形態 / 価格】
ALAC / FLAC / WAV / AAC
価格 まとめ購入 864円(税込)/ 単曲 259円(税込)
【トラック・リスト】
1. mornin.
2. ダイヤナイト
3. 行きた日
4. return.
mornin.@駒沢の住宅街
――「mornin.」が出来た場所のイメージに近い場所で、写真を撮りました。
SaChi : カメラマンの(齋藤)一平くんが働く三軒茶屋のTHREEという洋服屋さんから、小学校の方に行って、駒沢の住宅街で撮影しました。
――住宅街の朝の雰囲気が「mornin.」なんですね。
SaChi : そうですね。ちょうど自分が朝起きて、家から出たところみたいな風景なんです。
――この「mornin.」って曲は、いつごろできたの?
SaChi : 多分1年半くらい前だと思います。『Sweet Sorrow.』の中では、一番最初。2015年ですね。『Sweet Sorrow.』は4曲全部を2015年に作って録音までしていたのですが、その後のフォトジンですごい時間をかけたんです。
――「mornin.」という曲はどんなタイミングでできたの?
SaChi : 今回の作品は聴きやすくライトなものを作ろうという意識を持って取り組みたかったんです。コードも多くて6個とか7個とかでいいし、そういうシンプルな曲を作っていこうと思って。私はメロディと歌詞がほぼ同時に出来るタイプで、歌いながら作るんです。ある時「カーテン越しに小さな声 なんど繰り返したかわからない朝に」っていうメロディと歌詞が自然に出てきたから、これは朝の歌だ、朝の風景だってなりました。
――コードをシンプルは先にコンセプトとしてあったんですね。
SaChi : もう漠然と... そういう作り方をしたいっていうが先にあって。私はどうしても変なことをしたくなっちゃうので、シンプルとは言っても、結局ギターのタイミングとかドラムのリズムとかは変わったものになってしまったんですけど。
――この曲は、harinekoの新機軸だと思いましたよ。シンプルだけどどこか変わっているってなかなか出来ないことだと思います。
SaChi : でも、これでもまだ難解なのかなって。今後はもっと聴きやすくて、ドラマチックなコード進行とかを使ったようなものを作ってみたいと思っています。
――ぜひ、聴いてみたいです!
SaChi : やっぱりそれってすごい難しいことで、私はそこがスポッと抜けているので、そこらへんを勉強してみたいなって。
――アルバムタイトルの『Sweet Sorrow.』について教えてください。
SaChi : このアルバムで描いた1日には、切ない回想が入っているんです。切ない回想って、例えば海外とか、めったに会えない友達と別れる際の「また来るね!」って言う時、なんか切ないじゃないですか。何年後かもわからないけど「また来るね」という時の切なさを表す表現を調べていたらシェイクスピアが切なさを「sweet sorrow」という風に表現して(笑)。(※「sweet sorrow」とシェイクスピアの関係についてはこちらのページ参照)
その言葉は恋人同士が「またね」という時を指すらしいんです。別れるのは切ないが、また明日会うためにその別れがあるという... 別れがあるから甘さがあるという。
――へぇ。
SaChi : 「mornin.」の歌詞に出てくる「知らない街がいつのまにか 心地いい居場所に変わってた」とか「見えない未来は輝かしい 冗談だよね」とかの「知らない街が」とか「輝かしい未来なんかないぜ」みたいなぶっきらぼうな感じって、ちょっとやりきれない感があるけど、でも言いたいことは明日のこと。だから切ないんです。「行きた日」の「さよならを捨てよう」とかもそういう言葉なんです。
ダイヤナイト@お台場ヴィーナスフォートと芝浦ふ頭
――「ダイヤナイト」はどのようにしてできたの?
SaChi : これは、ライヴによく来てくれるカジュアルでおしゃれな女の子がいて、そういう女の子たちがニコニコして聴いているような曲を書きたいなぁと思ったんです。その子たちがキラキラした場所で笑いながら遊んでいるような夜のイメージがあって。そっからオープンカーでシャンパンプシューみたいなイメージが湧いてきて(笑)、そういうことができたらめっちゃ楽しいだろうなぁみたいなことからもう真昼間に妄想しちゃうような、夢の中の話のように進んでいく曲です。
――誰の妄想ですか?
SaChi : 私!
――よくライヴに来てくれるそのおしゃれな女の子たちにSaChiさんが憧れた?
SaChi : ありますね。女に生まれたからには綺麗になりたいし、おしゃれな女の子たちへの憧れはすごいあります。
――そのおしゃれな女の子たちに「もっとこうなったらいいのに」って思った?
SaChi : いや、そんなことはないですね。単純に彼女たちが楽しい雰囲気の中で楽しい笑顔を浮かべてほしいなって。
――何故そんな曲を作ろうと?
SaChi : その来てくれている女の子達がにこにこしながら聴いてくれる曲が欲しかったから。私にそういう曲はなかったと思って。だからもっとストレートで、4つ打ちなら4つ打ち、8ビートなら8ビートで、アクセントは裏にあるとかそういうものをちゃんと作りたかったんです。
――なるほど。PV「mornin.」ではSaChiさんは出演していますが、フォトジンではSaChiさんは出演していないじゃないですか? なかった理由はなぜ?
SaChi : 単純に私が出て作品性が高まるのかなって。撮ってくれるのはカメラマンの齋藤一平くんなので、一平くんが撮りたい人を撮るべきだなと思いました。だから撮りたいものを撮ってくださいとお願いしたら、じゃあ夏目志乃ちゃんでいこうとなりました。
――SaChiさんの音源を手にした時に、ブックレットに写っているのがSaChiさんではないというのは少し違和感があるかもしれないですけど...
SaChi : そもそも音楽を聴きながらイメージして欲しいという趣旨の作品なので、ギャップはあるのかもしれませんが、そこはいいのかなって。
――今回の撮影場所のお台場ヴィーナスフォートと芝浦ふ頭は、「ダイヤナイト」にマッチしている?
SaChi : はい。道路を走ってて見えるようなビルがいっぱいあってキラキラしてる景色って札幌出身の私からしたらありえない世界なんですよ。ラグジュアリーだしお金持ちっぽかったり、私にとってはちょっとぶっ飛んでたりする風景だから、曲のイメージとしてはぴったりなんです。
――SaChiさんは東京に憧れがある?
SaChi : 憧れはないですね。でも東京だけが変だなとは思いますけども。ちょっとぶっ飛んでいるなって。
――と言うと?
SaChi : もう、お金持ちの度合いもビルの高さも違うし、生活してる人の基準にはどこかお金があって、雨降って床上浸水するのに家賃高いとか、いつも山手線とか中央線で事故が起こっているとか。東京という都市だけはぶっ飛んでいると思いますね。
――ミュージシャンとしては、そういうぶっ飛んだ所で活動できるのはいいこと?
SaChi : そうですね。私の場合は、まず札幌を出たいというところから始まったし、ずっとインプロビゼーションをやっていたから、いろんな人がいるところでやる方がいろんな刺激やアイデアが出てくるんじゃないかっていう期待もあったし。また、なんでも物事が早く進むので、やっていく上ではやりやすかったりもするのかなと思います。札幌だと今みたいなやり方はあんまりできなかっただろうし。
――北海道には、将来的には戻りたい?
SaChi : 帰りたい帰りたくないということはでは判断してないんですけど、今のところ自分が北海道で生活しているイメージはないかな。でも、将来何かしらの理由で帰って生活している気もしますね(笑)。
――『Sweet Sorrow.』には、故郷がいいなという思いが込められているわけではない?
SaChi : それよりも帰る場所があるとか、大事なところってどこなんだっけ、あそこだ! ということに気づいてほしいかな。その気づきって安心に変わるんです。人って帰る場所がひとつあると自分に自信が出てきたりするので、そこが大事なんじゃないかなって思うんです。東京にいると課せられるタスクが多いし。
――タスクが多い(笑)。
SaChi : 日々のタスクというよりも、ひとりひとりに与えられているタスクが多いと思うんですよ。だから物事が進むスピードも速くて、やりこなしていくことがミッションみたいになって、それでいっぱいいっぱいになってしまうというか... そんな時に、いつでもあの人たちがいるんだ、あの思い出があるんだっていう安心をきちんと自分でわかったり見返したりするのが大切なことなのかなって。それを気づかせてくれたのが私にとっては東京だったんです。
行きた日@松陰神社付近
――「行きた日」を回想する上で、松濤神社に行ったのは何故?
SaChi : 「行きた日」って自分の回想シーンと今いる現状がクロスオーバーしているんです。だから、夕暮れと子供達とか、生活感とか、世代感がある場所として夕方の公園はイメージにはまっているんです。
――SaChiさんが思う夕暮れって言葉に表すとどういうもの?
SaChi : 東京の夕暮れって、めっちゃオレンジでとても綺麗で驚いてしまう時があるじゃないですか? あの時のイメージです。
――夕暮れがクロスオーバーとは?
SaChi : 夕暮れ時って、みんないろんな事柄を終えて家路につく頃だと思うんです。今の自分は札幌から出てきて東京で生活をして、音楽をやってる。じゃあ帰る場所はどこなんだろうって考えた時に、自分が今住んでいるお家もそうなんだけど、そうじゃなくて本当に帰る場所って、私の場合札幌だったりするんです。ちょっと忘れていたりするんだけど、そこに帰ってもいいんだという。今まで過ごした思い出の詰まっている場所にいる自分と今の自分が、思い出とともにクロスオーバーして、「あっ、これでよかったんだな」って思えるような瞬間を夕暮れ時に感じることができるんです。
――それを描いたのが「行きた日」?
SaChi : そうですね。
――「行きた日」っていう言葉はあるんですか?
SaChi : ないと思います(笑)。過ぎ行く日ではなく、過ぎ行きた日ということです。
――アルバム『Sweet Sorrow.』のコンセプトは、1日の始まりと終わりですよね。その中でこの夕暮れを表す「行きた日」では、どういうことを言いたかったのでしょうか?
SaChi : 「お疲れ」とか「おかえり」とか、ですかね。
――そういう気持ちになってほしい?
SaChi : そうです。帰る場所を思い浮かべてほしいなと思います。小中高とか、大学とか、青春時代を過ごした場所って各々あると思うんですよ。そこの温かさとかせつなさとか愛しさを、この曲を聴いたときに思い出して温かい気持ちになってほしい。「あぁ、帰るところあるじゃん」みたいな。
――「さよならを捨てよう」って歌詞が、一番最後にでてきますが、これはどういう意味?
SaChi : 人生っていっぱい別れがあって、悲しいさよならもたくさんあると思うんですよね。でも、さよならって新しい始まりだったりとか、次へ進む準備だったりもするので、悲しいさよならを全部捨ててもっと前に進んでいく力にしたいというか、帰る場所を回想することで「帰る場所があるから、きっとこれからも大丈夫」っていう意味もあって、「さよならを捨てよう」と表現しました。
――なるほど。
SaChi : 過去は全部今につながっているし、今は未来につながっていて、そういう意味ですべてが無駄じゃないし、前進していく力だと思うんです。友達が死んじゃって、その時に曲を作ったりもしたんですけど、その思い出もちゃんと今の時間を作っていたり、自分自身を作っていたりもするわけだから、過去の悲しいことや悲しいさよならをすべて明るいものにしていきたいと思っているので、曲としての着地点は明るいものにしたいと思ってつくりました。
――なぜ1日を辿るようなアルバムを作ったの?
SaChi : きっかけが朝を描いた「mornin.」だったのと、私が書く曲が人の1日の中のどこかワンシーンだったり、生活に寄り添った感情だったりするものが多いので、そういう曲をきちんとコンセプチュアルにまとめて作品にしてみようと思ったからです。時系列的に1日が始まってから眠るまで、そして次につながっていくような作品を作りたいなと思いました。
――今回の作品の特性として、SaChiさんの楽曲がわかりやすくなりました。
SaChi : もともと私はポップスをやっているつもりなんです。私なりに面白いと思うポップスをやっていたつもりが、そうではなかったということがわかって(笑)。子供の頃からポップスばかりを聴いて育って、中学校くらいからフリージャズを聴き始めるとそこでぐにゃっと曲がってしまい(笑)。コンセプチュアルなものを作る時に、いろんな人に聴いてもらっていろんな風に回想してもらいたいっていう欲があったので、そういう思いを伝えやすくするために、もっとスタイルとしてライトでラフな作曲をしたいと思ったんですよね。
――なるほど。では、今回の4曲に関しては、コンセプチュアルな楽曲群を聴かせるためには、ベストなアレンジってことですね?
SaChi : そうですね。でも、「return.」とかは前っぽいというか、フリーキーな感じが全面に出たアレンジになっている部分もあります。
――「行きた日」は、なかなか長尺で聴き応えのある曲だなとも思いました。
SaChi : キメもリズムもちょっと変だったりするんですが、実はガチガチに決め込んでいます。ここはこの拍で、ドラムのビートやBPMもかなり細かく調整してフィルはここに入れてという風にガチガチですが、実は、コード感とか、尺、拍子とかは今までやっていたプログレほどじゃないけど、変なとこで変なものを結構たっぷり入れこんではあるんですよ。
――でも全然変な曲に聴こえなかったです。
SaChi : そう聴いてもらいたかったので、うれしいです。変拍子じゃないし、ビートも変わらないし、歌もへんちくりんじゃないからですかね。メロディとビートが変わらなければポップスって聴きやすくなるから、今までのカタカナのハリネコの様相があるんだけど、そういう風に聴こえないのなら、嬉しいですね。
return.@幡ヶ谷jicca
――幡ヶ谷のカフェjiccaと「return.」はどのように関係がありますか?
SaChi : 「return.」という曲を眠りながらとか、1日の終わりのシチュエーションで聴いてもらいたいなと思っていて、その時の背景のイメージがこのjiccaにぴったりなんです。
――jiccaというお店はサチさんにとってどんな所なのですか?
SaChi : 鳥居さんという料理人による有機野菜を中心とした家庭料理とナチュラルワインが楽しめるビストロという感じのお店です。もちろん、ちゃんとお肉とかお魚の料理もあります。鳥居さんがいつでも笑顔でやさしくてウェルカムなので、来ると元気をもらえます(笑)。
――いいですよね、名前もjiccaって。
SaChi : ねっ! 来たくなっちゃう。
――「return.」の歌詞に出てくる「夕暮に色づくコンビニエンスストア」っていうのはSaChiさんの家の近くですか?
SaChi : そうです。そういうコンビニのそばに猫が寝ててそれが茶トラだったというような、割とどこにでもある1シーンを切り取っています。
――「はかない今日を終わろう」というのは?
SaChi : その前の「あふれていった途切れとぎれの時間だけを ずっと握り締めたままで ひとり歩き続けてく」っていう歌詞は、過去の過ごしてきた自分を振り返ってまた明日につなげていくようなイメージの部分で。だから“今日”は、“はかない今日”なんです。
――なるほど。「mornin.」「ダイヤナイト」「行きた日」... 1日を、とてもはかないものだと表している。そして「return.」では、その次の日に向かっていると?
SaChi : そうですね。あとは「昨日より近くて怖いくらいのまぶしさに」というのは、明日って現時点では得体が知れないけど必ずやって来るし、時間でいうと“明日”は“昨日”より近いわけじゃないですか? そして何が起こるかもわからないから、まぶしさ=期待感もあって。それを「昨日より近くて怖いくらいのまぶしさに」と未来へのつなぎとして表現しています。
――「return.」は、本当に気持ち良い楽曲でもありました。
SaChi : ベースの右田眞さんは、弾きながら寝そうになったって(笑)。この曲は、私以外みんな好きなことやってるだけですから(笑)。
――好きなことをやっていいよって指示を?
SaChi : そうですね。ここはソロ弾いて欲しいんだけど、あとは眠いシチュエーションを描いてくれればそれでいいです、みたいな(笑)。
――なるほど。レコーディングは、どこでやられたんですか?
SaChi : 阿佐ヶ谷のstudio Zotです。でも結構バラバラにやってて、とがしくんのドラムと私のピアノだけを先に録って、後から(畠山)健嗣くんのギターとアコギを重ねて、ベースは自宅でライン録りをしてみたいな。あとはシンセやオルガンとかプログラミングをしてあるものは、エンジニアの久恒亮君に送ってやりとりをしました。ミックスに関しては、一緒にやったりもしました。
――トータルの音源制作の日数は?
SaChi : 1週間から10日という感じですかね。ラフができるとコーラスとか鍵盤とか色々入れたくなるじゃないですか? これ入れたら面白いという施策を練る期間を除いたら10日間くらいですかね。
――なるほど。SaChiさんの面白みを足す作業がそこに追加されるんですね。それはラフが出来上がってからミックスするまでの時間に?
SaChi : ミックスまでの時間ですね。本番ミックスをかける前に、これ足したら面白いかなとか、このオルガンを歪ませてシンセっぽくしようという風に足したり引いたりしました。あとコーラスとかライヴで全然再現できないものや、自転車の音を入れたくて素材を恒くんに持って行ったりなど色々してます(笑)。
――久恒さんもキーパーソンのように感じました。
SaChi : そうですね。私が全曲仮ミックスして、こんな感じでと渡したり、オンライン上で本当に工程表を作って渡したりもして、こっちの資料作りも割とヘヴィにやったし、恒くんもすごい情報量を受けてやっていると思うし、キーパーソンですね。
――『Sweet Sorrow.』の楽曲を2015年に作ったと言っていましたが、2015年はどんな年でしたか?
SaChi : 『Sweet Sorrow.』を作るのにずっと向き合ってた感じですかね。前のアルバム『roOt.』を出してから、その後のヴィジョンは漠然とあっても全貌が見えているわけじゃなかったから、曲の作り方、捉え方とかいろんな曲を聴くとか、そこからもう一回戻って始めたんです。私の中ではポップスをやっていたのに、お客さんにとってはそうじゃなかったというズレを感じてしまって。だからそのズレを修正するためにもう一回勉強し始めなきゃっていう年だったんです。曲と向き合い、メンバーと向き合い、アレンジについて考えたりということにとても時間をかけた年だったなと。
――2016年は?
SaChi : 2016年は、メンバーも一新したり、フォトジンに着手したり、トータルディレクションに注力しました。楽曲だけポンと出してライヴをしますというよりは、グッズにせよフォトジンにせよミュージックビデオにせよ、トータルでイメージクリエイティングができたらいいなと思うから、音楽じゃない部分にすごい時間を使ったんです。
――録ったらすぐ出したいじゃないですか? それでもこれほど世界観を出そうと思ったのは何故?
SaChi : もちろんミュージシャンとしてはとってすぐ出したかったです(笑)。それもできたんですけど、それだと私は、何もやっていないのと同じだなという感覚になってしまうので、音源があって、フォトジンのアイデアがあって、フォトジンがあるからMVがあってみたいに繋がっていることまで見せたいなと思ったんです。でも、やっていくうちに作品の面白みや見えかたがわかってきたりもするし、単純にもっとたくさんの人に聴いてほしいというのもあるし、気づかされることが多くて、こだわることによってその次の作品への可能性をたくさんもらっている気がするんですよね。
――2017年は、『Sweet Sorrow.』の後は考えていますか?
SaChi : 漠然とですが。今回4曲で1日を描いているんですけど、そういうコンセプチュアルなアルバムを作りたいとはずっと考えています。またポップスを前面に出していく曲作りももっとブラッシュアップしたいので、まずはそっからかなと思いますね。
harineko『Sweet Sorrow.』クレジット
Vocal,chorus,keybord,synthesizer,programming SaChi
Electric guitar,acoustic guitar,Vocal 畠山健嗣(H Mountains)
Bass 右田眞(nenem、ayutthaya)
Drums とがしひろき(サンガツ、ELMER)
Reharmonize[※M3] 森川雄介(sajjanu)
Masterd by Hajime Yamamoto at Hajime-Studio
mixed by 久恒 亮 at studio Zot|タカユキカトー
photo&styling by 齋藤一平
model 夏目志乃
Hair and makeup by DAIKI (OOO YY)
ALl design by 宮崎希沙
Music video directed&Cam&edit by 奥田侑史
Distribution by PCI MUSIC
Promotion by FunLandRyCreation
Special Thanks :::: Yuki Chan,THREE,Yuyon
カメラマンの齋藤一平さんにも『Sweet Sorrow.』について話を訊いてみました...
齋藤一平
2014年に写真集「plastic spoon」を出版。ファッション雑誌を中心に国内外のランウェイ、ストリートを撮影し、アーティスト写真、ライヴ撮影など、その活動は多岐にわたる。
――SaChiさんとはどういう出会いだったんですか?
一平 : SaChiさんのスタッフの方に紹介してもらいました。
――一平さんはフォトジンを作るとなった時に、SaChiさんの作品を聴いてどう思いましたか?
一平 : 歌詞の中に風景が見えるというか、自分以外の誰かがいるという状況を思い浮かべたんで、フォトジンを見た人が日常的に関わりの深い誰かを連想できるような作品にしようと思いました。なので、フォトジンでも被写体とカメラマンという感じではなくて、その子がカメラを持っていて、例えばその子の恋人とか友達とかを撮ろうとしているような瞬間を描きたいと思いました。
――そうなんですね。
一平 : 歌詞に出てくる「黄金色の猫」とか「コンビニエンスストア」という風景から、誰かひとり女の子がいる絵が連想されて。だから歌詞のワードから出てきた風景と、その中で日常を生きる女の子を撮影しようと。
――一平さんから、 SaChiさんの音楽はどういう音楽に聴こえますか?
一平 : いい意味で違和感を感じました。邦楽、洋楽問わずいろいろなジャンルの音楽を聴きますが、最終的に日常に寄り添ってくれるのはいつもJ-POPだったり、andymoriのようなバンドが好きだったので、SaChiさんの音楽からは自分のすぐ近くにありつつも、音の部分で気持ちのよい非日常にトリップできるようないびつさがあると感じました。
THREE
1930年代〜90年代の古着を中心に、国内外の現行ブランドも取り扱う。ジャンルレス、ボーダーレスを掲げ、新しいスタイルの提案を目指している。深夜まで営業しているため、年齢層も幅広く、業界問わず仕事帰りや飲み帰りに立ち寄る人も多い。
ACCESS
東京都世田谷区三軒茶屋1-7-12 フタミビル2F
OPEN 17:00-25:00
TEL 03-5431-3832
RECOMMEND
ハリネコ 『roOt.(24bit/48kHz)』2014年
SaChiのソロ・プロジェクトへと形態が変わった後にリリースされたアルバム。mooolsやソロで活躍を続けるRyo Hamamoto(gt)、WUJA BIN BINの主宰者ケイタイモ(b)らがサポートとして参加し、ポップスとインプロを行き来する変幻自在な音楽世界が楽しめる。
ハリネコ『とうきょう』2012年
POPSを軸に、即興やあらゆるアイディアを織り交ぜながら、「音を楽しむ」ということに純粋に向き合って作り上げられたharinekoの初作。アコースティック演奏とエフェクトが絶妙に混じり合う、ポップで遊び心たっぷりの全6曲を収録。
Neat's『Bedroom Orchestra Ⅱ』2015年
ストーリー性豊かな独特の世界観が魅力のシンガー・ソングライター、Neat'sによる2015年作。3rdアルバム『MOA』収録曲から6曲をBedroomリアレンジ、さらに新曲も含む全10曲を収録。
LIVE INFORMATION
〈『Sweet Sorrow.』release after party〉
2016年8月28日(日)@三軒茶屋jam café Bedroom Orchestra Ⅱ
開場 17:30 開演 18:00
チケット : 2,300円(1drink+お土産コラボスイーツ付)
『Sweet Sorrow.』 photozine&MV Talk session
齋藤一平(photographer)×奥田侑史(Video director)×夏目志乃(Actress/model)
harineko Acoustic Live
harineko
vo.key SaChi、Gt 松坂勇介(QUATTRO/Lowtide)、b フクシマヂロウ(オワリズム弁慶/peno/無敵キャンディ)
・チケット購入
[[https://harineko.com/20160828sweet-sorrow-afterparty/|https://harineko.com/20160828sweet-sorrow-afterparty/ ]]
〈harineko×木箱 presents 『reunion』〉
2016年9月4日(日)@札幌円山夜想
~harineko[Sweet Sorrow.] release tour~ 出演 : harineko[SaChi(vo.pf)×とがしひろき(ds)](東京)、木箱、斎藤洸(SNARE COVER)、ikku(ututu)
・チケット購入
[[https://harineko.com/20160904sapporo_reunion/|https://harineko.com/20160904sapporo_reunion/ ]]
〈『Sweet Sorrow.』release tour Final〉
2016年10月19日(日)@下北沢THREE
to be announced…
PROFILE
2013年からシンガーソングライター SaChi のソロプロジェクトとして始動。 様々な要素を含む「ポップミュージック」を展望し、彼女自身が作詞、作曲、編曲も行う。奇想天外な楽曲構成や純粋なポップスなどその楽曲は幅広く、これまでに数多くのミュージシャンをバックメンバーに集い活動を行ってきた。
2013年に1st mini album「とうきょう」、同年にはテニスコーツの植野隆司を迎え1st ep 「ハローさよなら」を、2014年には豪華メンバー参加のFull Album「roOt.」を発表。
2015年は活動の幅を広げるべく、表記も新たにharinekoとしPOPSに寄り添った作風を追求していく。また、SaChi個人としても各方面で作曲・作詞活動、ヴォーカル・レコーディング、キーボード・プレイヤー、ライヴ活動に注力し、2015年後期から『Sweet Sorrow.』の企画・構成・制作に着手。満をじして2016年にリリースされた。今作は「誰もが過ごす1日の始まりから終わり、その中で映し出される様々な景色や心情」を投影したポップソング4曲を収録し、これをもとにPHOTOZINEが作成された。バンドメンバーには、Gt畠山健嗣(H Mountains)、B 右田眞(nenem、ayutthaya)、ds とがしひろき(サンガツ、ELMER)が参加。PHOTOZINEでは、写真家 齋藤一平、女優・モデル 夏目志乃、ヘアメイク DAIKI (OOO YY)が参加。ミュージックビデオでは Lowland jazz、毛玉 のMVも手掛けた奥田侑史が担当し、PHOTOZINEの空気感を投影した見事な映像世界を作り出している。
日常の情景や気持ちを想い描きながら、harinekoと若きアーティストたちの世界に寄り添える新作『Sweet Sorrow.』では、また新たなharinekoの魅力と作風が存分に表現されている。
>>Sweet Sorrow.