余白を楽しみつつ、ストレートな表現へ──Helsinki Lambda Clubのリアルなモードに迫る
CHAI、PEAVIS、どんぐりず、Frascoを招いた3曲入りシングル『Inception (of)』を9月にリリースし、翌月から3ヶ月連続シングル配信中という、高速前進中のHelsinki Lambda Club。今回のインタビューでは3曲入りシングルから、連続リリースシリーズ第1弾「Be My Words」と第2弾「ベニエ」までをたっぷりとききました。またOTOTOYでは、〈FRIENDSHIP.〉のスタジオ『FS.』にて録音されたHelsinki Lambda Clubのライヴ音源を独占配信中! 前作アルバム『Eleven plus two / Twelve plus one』より、4曲を臨場感とともにパッケージしております。国内外からも注目される彼らのリアルタイムな音を新作とともにぜひ堪能してみてはいかがでしょうか。
Helsinki Lambda Clubの新作音源はこちら
OTOTOY独占配信中のライヴ音源もぜひ
INTERVIEW : Helsinki Lambda Club
ボロフェスタで観たHelsinki Lambda Club。大好きなインディーロック・バンド達が持つ、型にはまらずに自由で、出してくる楽曲のアイデアはとてもクールで、それなのに熱量は最高! そのかっこよさをいま日本でいちばん持っているのが、Helsinki Lambda Clubだと思った。ステンドグラスを背負っても全く遜色なく、20年続くインディペンデントフェス〈ボロフェスタ〉とばっちりマッチしていたのが、とても嬉しかったんだ。ってことで、彼らに近況をききつつ、〈ナノボロフェスタ〉と〈ボロフェスタ〉のHelsinki Lambda Clubの写真を大放出します!
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 梶野有希
写真 : YLC photography(リン)
“メンバー全員で作曲“という形にしよう
──前作アルバム『Eleven plus two / Twelve plus one』リリース “おかわり“ツアーのファイナル公演が〈新木場 USEN STUDIO COAST〉で開催されましたが、いかがでしたか?
橋本薫 (Vo/Gt)(以下 : 橋本) : やっぱり「感慨深い」というひとことに尽きますね。コーストには幾度か立ちましたけど、ワンマン・ライヴというのは不思議というか、いままでに感じたことのない高揚感がありました。やり切った感じはもちろんあるし、僕らのベストを出せたと思っています。でもやっぱり同時にパフォーマンスについての疑問はまだ全然ありますし、だから感慨深さと悔しさ、どっちもありますね。
稲葉航大 (Ba) (以下:稲葉) : 8年間のバンド活動のなかで、小さいライヴハウスに何度も立ったり、お客さんが全然いないときもあったり、これまで地道に活動を続けてきましたけど、やっとここまで来れたって演奏中にふと思ってちょっとウルっとしましたね。
熊谷太起 (Gt)(以下:熊谷) : 達成感は、いままででいちばんありました。この日はステージ上に友達がたくさんきてくれて。薫くんがステージからいなくなったり、僕らのスタッフさんや友達がギターとかベースをやったりして。それがいちばん感動しましたし、よかったんですよね。
──なるほど。ツアーファイナルが終わったあと、どういうモードになりました?
橋本 : このリリース・ツアーがひとつの大きな区切りになりましたけど、でもまだやりたいことがあったのでまず安心しましたね。来年のことや結構先々のビジョンが自分のなかではもう出てきちゃったんで、まずは年内にやりたいことを全部消化しちゃおうという気持ちが強まりました。
──その「年内にやりたいこと」が反映されたのが3曲入りシングル「Inception (of)」と、10月からの3作連続リリースシングルということですね。まずは「Inception (of)」。これは完全に前のアルバムからの派生ですよね?
橋本 : このシングルを作るまではリミックスを作ったことがなかったので、「そろそろリミックス版を作りたい」と話していたんです。だけどその前に、“GNIBN II (feat. PEAVIS, CHAI)“が完成しちゃって。この曲は前作のアルバムに収録されている“Good News Is Bad News”のリフから派生して作ったんですけど、そうなるとただのリミックス版にするよりも、「前作のアルバムから何曲かピック・アップして新しい形に作り替えた作品」という方がおもしろいかなって。“II”とタイトルについているのは、“Good News Is Bad News”の続編的な形でって意味でつけてます。
──前作をどのくらい意識して制作していったの?
橋本 : “Good News Is Bad News”のその後の物語的な立ち位置です。前作は「なにか良いことが起きている裏側では悪いことも起きている」ということを恋愛に落とし込んでいるんですけど、この歌詞に物語性がもともとあったので、“GNIBN II”は「“Good News Is Bad News”で語られた男女のその後の物語」というテーマで制作しました。
熊谷 : サウンドも完全新作というよりかは、コード感は残しつつ、後半部分の進行に展開をつけた感じです。
稲葉 : ベースラインに関してはあんまり“Good News Is Bad News”は意識してないかもしれないですね。別の曲として考えていたかもしれないです。この曲は、前半部分は薫さんからデモが送られてきたんですけど、展開が変わる後半からはセッションみたいな形で作っていきました。
──なんと!
橋本 : 前作のアルバム以降は、メンバー全員のアイディアで最終的に作り上げていくことが多かったですね。“メンバー全員で作曲“という形にしようみたいな意識の変化はあって、メンバー内で分業して作っていくことが増えましたね。そうやってバンドの音楽性を広げていった分、僕の得意ではないジャンルの曲も生まれているので、これからもメンバー各々の強いところを出していきたいと思っています。
──橋本さんから見て、おふたりの得意分野ってどこだと思いますか?
橋本 : 僕はロックな曲を作るにしても、個性を出すとしたら、コード進行やリフのフレーズになりますけど、太起はジャンル問わず曲に寄り添った雰囲気にブラッシュアップしていくんですよね。ベースに関してはデモを入れずに最初から稲葉に任せることもありますし、稲葉は結構ネオ・ソウルが好きなので、そういう曲調のものに関してはリードしてもらったりしてます。ふたりは職人気質な感じはしますね。
──なるほど。フィーチャリングゲストのPEAVISとはどんな関係なんでしょう。
橋本 : PEAVISは、中学のときの同級生なんです。数年前から「いつか一緒にやりたいね」っていう話はしていて。今回“GNIBN II (feat. PEAVIS, CHAI)“のラフができたときに、「ラップ入れたい」というのがまずあったし、曲の内容とPEAVISとの会話がリンクする部分もあったので、すぐお願いしました。ラップの部分はPEAVISが書いてきてくれたんですけど、これまでの会話の内容で雰囲気を掴んでくれて。
──同級生なんだ! では、CHAIは?
橋本 : 女性コーラスも入れたいっていうアイデアがあったので、PEAVISと僕はわりと距離が近いし、CHAIも昔からの付き合いなんで、自分と近い距離の人たちが集まった作品にしたいなと思って、声をかけました。