REVIVE JAPAN WITH MUSIC 第四回
このコーナーでは、『REVIVE JAPAN WITH MUSIC』と題し、音楽やカルチャーに関わるもの達が、原発に対してどのような考えを持ち、どうやって復興を目指しているのかをインタビューで紹介する。
第4回目となる今回は、結成当初から政治的なメッセージを中心に楽曲を創り上げ、BPM220以上でビートを打ち鳴らすデジタル・ハードコアの雄ATARI TEENAGE RIOTのAlec Empireにインタビューを敢行。原子力発電所が爆発し、情報は操作され、誰を信じて良いか分からなくなった時、常に発信し、発言し続ける(デモに参加し拘留された事も)アタリが叫ぶ「行動を起こせ! 」の言葉は、多くの日本人にもエネルギーを与えた。FUJI ROCK FESTIVAL'11で、日曜日のトリだったにも関わらず、レッドマーキーは満員。更には過去最大のモッシュ・ピットを引き起こしたのは、来場者が彼らを切に求めていたからだろう。
2011年11月17日(木)@恵比寿LIQUIDROOM。彼らは、2011年2度目の来日を果たした。このインタビューは、その出番前に行ったもの。真摯に、そして強くはっきりと話すAlec Empireのインタビューを、FUJI ROCK FESTIVAL'11時のインタビューとあわせて読んで欲しい。もちろんBGMは、今回発売されたインタビュー当日のライヴ音源『Riot in Japan 2011』だ。パンパンの会場、振られる旗、幾度となく生まれるモッシュ・ピット、鳴り止まない歓声、飛ぶCX、歌うニック、叫ぶアレック! この音源とインタビューで、闘いは終わっていない事を思い出して欲しい。今こそ、我らは行動を起こすべきだ。
インタビュー&文 : 飯田 仁一郎(Limited Express (has gone?)
ATRの来日ライヴを完全音源化! 熱狂! 混沌! Destroy!!!
Atari Teenage Riot / Riot in Japan 2011
2011年のフジロックを締めくくったレッド・マーキーでの狂乱と発狂のライヴから4カ月、ATARI TEENAGE RIOTが再び日本に降り立った! 11月17日、恵比寿LIQUIDROOMにて行われた彼らのライヴを完全音源化。あの熱気、歓声、興奮、そのまま凝縮したものを今、解き放つ!
ATRの12年ぶり、4作目となるオリジナル・アルバム!
Atari Teenage Riot / Is This Hyperreal?
アレック・エンパイアを中心に結成され、新たな音楽ジャンル“デジタル・ハードコア”で世界中の音楽リスナーを狂乱の渦に巻き込んだ伝説のバンド、アタリ・ティーンエイジ・ライオット(以下ATR)が12年振りとなる4作目のオリジナル・アルバム『Is This Hyperreal?』をリリース。昨年長期に渡る沈黙を破り、突然のバンド活動再開。サマーソニック'11、フジロック'11への出演、11月の再来日と、その勢いは増すばかり! 1999年の名盤『60 Second Wipeout』以来のアルバムとなる本作は、ATRの存在意義を改めて証明すべく、12年かけて制作された渾身のアルバムとなっている。
Alec Empire(ATARI TEENAGE RIOT) インタビュー
――再来日ありがとう。FUJI ROCK FESTIVAL'11のライヴは、どうだった? フロアは、見た事もないような大きなモッシュ・ピットが出来ていたけど。
Alec Empire(以下 Alec) : とにかく最高だったよ。過去のフジも最高だったけど、今回はより強く、自分達の音楽と政治的なメッセージをオーディエンスに届けることが出来たと思う。と共に、より深く、オーディエンスと繋がれたと思うよ。海外のメディアから、「日本人に、君たちのメッセージは果たして伝わっているの? 」って質問をよく受けるけど、今回のフジでは、過去に例を見ない程特別な瞬間を作れたと思うんだ。
――私にとっても特別なものでした。東北地方太平洋沖地震のあった東北はとても寒い地域ですが、みんなとても我慢強いんです。でも実は、やっぱり心に傷をおっている。彼らにとってATARI TEENAGE RIOTが叫ぶエネルギーは、歌詞の内容が分からなくても、必ずメッセージとして伝わっていると思います。日本の原子力発電所が爆発した時に、アレックは何を感じましたか?
Alec : 最初に話を聞いたときは、とてもショックで悲しかった。ニック(エンドウ)(ATARI TEENAGE RIOT/noise control,vocal)の家族が日本人だし、日本に行く機会も多かったから尚更ね。あと、小さい頃にチェルノブイリ原発事故があって被害を受ける可能性もあったから、今回の日本の原発事故も人ごととは思えなかった。と同時に、震災後に冷静な対応をし続ける日本人のメンタリティーにはとても希望をもらったよ。何故かと言うと、その頃ヨーロッパの経済は最悪で、ある政治家が「この原因は、国民の強欲さが問題なんだ」と言っていたが、その部分こそ本当に日本人に見習うべきだと思えたんだ。メディアは被害の大きさばかりを伝えるが、伝えきれていない個人レベルでは、さらに悲しい出来事が起きているはずだしね。
――原発事故が起こってしまった今、全く臆することなく来日出来ていますか? また今、日本の人々に伝えたいメッセージとは何でしょうか?
Alec : 来日するにあたっての恐怖は、何故だか分からないけど抱くことは無かったね。育った環境がベルリンという土地柄もあって、ベルリンの壁であったり、冷戦という事実を常に危機感と共に感じていたんだ。だから、恐怖というよりも何かやらなければという意識がすぐに生まれたよ。メッセージというのは、すごく難しい質問だ。本当に大変な状況だと思うが、強い気持ちをもって乗り越えてほしいと思う。ショックな反面、ポジティヴなニュースも目のあたりにしていて、それが僕らのエネルギーにもなっているんだ。ある子供が、家族を皆失ってもしっかりとインタビューに応えている姿を見た時に、とても勇気を貰えたんだよ。
――以前に、インターネットに政府の介入は必要ないと言っていましたが、今も日本では福島の情報が伝わりづらい状況です。こんな世の中で、ミュージシャンは何が出来るでしょうか?
Alec : とにかく行動することだよ。一方で、政府側の人間の中からWikiLeaksで告発が起きたように、そういう選択肢もあるってことを認識する必要がある。政府側の人間ということ関係なしに、個人で間違いを発見した時に、それを言う言わないを選択出来るということを考えたほうがいい。大衆の人達は、その動きを待っているだけではなくて、力を信じることが必要だ。政府を動かすのは自分達なんだっていうのを忘れては駄目だ。途中で諦めたらすぐにそこで止まってしまうからね。最近だとアメリカで起きたウォール街のデモだね。あれは僕らのアメリカ・ツアー初日のことだったんだけど、ツアーが終わる頃にはベルリンにもデモの波が来ていて、世界中で多発していたんだ。音楽もそうだろ? 自分で音を作って「これ伝わるかな? 」なんて考えている暇なんてない。とにかく行動していくことが重要だ。
――政府の監視はどんどんきつくなっているように感じています。そんな中で、ATARI TEENAGE RIOTがメッセージを発信し続ける大きな理由を教えて下さい。
Alec : ドイツでも検閲の監視があり、問題提起するようなことをライヴで言うと放送されなかったりとか、ベルリンのフェスティバルでもメイン扱いなのに、テレビでは放映されなかったりするんだ。以前に、ネオナチと警察の関係を問題提起している曲をDJでかけようとしたら、周りのDJに「やめとけ」って言われたことすらあったよ。でも、そこで黙った時点で問題がある側と同じだと思うんだ。簡単な道を選んでばかりいると、よりシチュエーションを悪くするということを理解したほうがいい。俺はそういうところに溜まりたくないんだ。その罪悪感でおかしくなってしまうんだよ。
――正に今、音楽で出来ることとは?
Alec : 「Re-arrange Your Synapses」だよ。音楽は人に考えさせて、行動させることが出来るんだよ。特にATARI TEENAGE RIOTの音楽は、ただエンターテインメントとして聞くだけではなくて、音圧を人の体に響かせるフィジカルな効果を持っているんだ。それってパンチみたいなもんだろ。
(2011年11月17日取材)
ATARI TEENAGE RIOT DISCOGRAPHY
ATARI TEENAGE RIOT PROFILE
アレック・エンパイア(Programming,Shouts)
ニック・エンドウ(Noise Control,Vocal)
CX キッドトロニック(MC)
1992年、アレック・エンパイアを中心に結成。それまでのロックとテクノの既成概念を覆し、ドイツ国内においては幾度となく発禁を受ける過激なメッセージと極端にヘヴィなサウンド・スタイルは、デジタル・ハードコアというジャンルを作り上げた。1996年、アレック・エンパイアはビースティ・ボーイズと組みレコード契約、アルバム『Burn Berlin Burn』を完成。それ以降、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、ウータン・クラン、ベック等とのツアーが続き、バンドは全盛期を迎える。そして1999年、3rdアルバム『60 Second Wipe Out』をリリースした。
2000年のオーストラリアのビッグ・デイ・アウト・フェスティヴァルに出演した際には、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ナイン・インチ・ネイルズ、ザ・クラッシュのジョー・ストラマー、フー・ファイターズ、プライマル・スクリームなど蒼々たる面々がステージ袖で彼らのパフォーマンスに目を奪われた。しかし2001年、MCカール・クラックの死をきっかけに2010年9月までバンドは事実上解散の状態となっていた。
2010年に再結成を記念して、日本を含むワールド・ツアーを行う。その成功に続く形で、新たなメンバーとしてCX キッドトロニックを迎え、2011年6月に最新アルバムをリリース。
2010年にNMEが大絶賛し、今年レッド・マーキーの大トリとして出演したフジロックでは、登場前から異様な盛り上がりを見せ、まさに決起集会の様相を呈した。途絶えることの無いモッシュとエアーを巻き起こし、ステージとフロアが混然一体となった爆発的パフォーマンスはライヴ・アルバム『RIOT JAPAN IN 2011』に凝縮されている。
ATARI TEENAGE RIOT official website
連続記事「REVIVE JAPAN WITH MUSIC」
OTOTOY東日本大震災救済支援コンピレーション・アルバム
『Play for Japan Vol.1-Vol.6』
『Play for Japan Vol.7-Vol.10』
>>>『Play for Japan』参加アーティスト・コメント一覧はこちらから
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