〈NEWFOLK〉はなぜ、愛されるのか──クロス・レヴューと主宰者への20の質問から全体像を読み解く
台風クラブやラッキーオールドサン、本日休演、西村中毒バンドなど幅広いアーティストが所属する〈NEWFOLK〉。今回、OTOTOYでは、松永良平、井草七海、綿引佑太のライター3名による、〈NEWFOLK〉の魅力に迫るクロス・レヴューを展開。さらに後半では、主宰者である須藤朋寿の人物像やレーベルにかける想いがわかる「20の質問」コーナーも。
NEWFOLK所属 西村中毒バンドのインタヴューはこちら
音楽を続けて生きてゆく人たち(フォーク)から | Text by 松永良平
〈NEWFOLK〉の前身といえるレーベルは〈kiti〉だった。2010年代初頭、東京のインディー・シーンで〈kiti〉から出ている作品は、不器用だが自分のやりたいことに率直で、危なっかしさと愛おしさの両方があった。ジャンルやシーンではなく、ひとりひとりのやりたいこと、やっていることに寄り添っていくスタンスを感じた。麓健一、mmm、oono yuuki、平賀さち枝が〈kiti〉から作品を出していたと書けば、ぼくの言っていることに思い当たる人もいるかもしれない。
〈kiti〉後期に登場した、新人の男女デュオがラッキーオールドサンだった。渋谷のO-Nestで見た、彼らふたりとドラマーの3人でのすごくゴツゴツとしたライブを、いまも覚えている。やがて〈kiti〉を現〈NEWFOLK〉主宰の須藤朋寿さんが引き継いだのも、そのライブの前後じゃなかっただろうか。台風クラブの『初期の台風クラブ』(2017年)を須藤さんがリリースした頃は、まだ〈NEWFOLK〉という名前はなかった。名乗りだしたのは2019年頃だそうだが、あまりにも自然に定着したので、ずっと前からそうだったような気もする。レーベル名には、人から人へ伝えられてゆくフォーク・ミュージックへの愛着と、それを現代的に更新したいという意志の両方がある。そんな強い思いを須藤さんのインタビューでも読んだことがあるし、2018年と19年に東京と京都で主宰した〈うたのゆくえ〉というイベントは、レーベルのショーケースの意味合いを大きく超えて、この場所から生まれてゆく歌を見届け、祝福していこうという情熱を感じた。
「フォーク(FOLK)」という言葉は、もともと「人々」と訳すことが多い。集団を示す言葉はいろいろあるが、「グループ」とか「サークル」という表現よりも、「フォーク」にはばらばらな個人であるままその場にいることを許す感覚があって、そこがいいなと思っていた。〈NEWFOLK〉からは相変わらずいろんなシンガーや気になるバンドがどんどん出てくるけど、そのばらばら感から来る風通しの良さは変わらないし、それは〈kiti〉の昔から続いているものだとも思う。今度出るわがつまって女性シンガーソングライター、いいよね。家主はまた新しいの作ってるって聞いた。工藤将也は最近なにしてるのかな?こんな井戸端会議が風に乗って聞こえてくる。こうやって当たり前に音楽を続けて生きてゆく人たち(フォーク)から、きっと次の新しい時代は勝手に生まれて出る。
松永良平(リズム&ペンシル)
ライター。1968年熊本県生まれ。2019年末『ぼくの平成パンツ・ソックス・シューズ・ソングブック』(晶文社)刊行。