2021/04/30 18:00

〈NEWFOLK〉はなぜ、愛されるのか──クロス・レヴューと主宰者への20の質問から全体像を読み解く

台風クラブやラッキーオールドサン、本日休演、西村中毒バンドなど幅広いアーティストが所属する〈NEWFOLK〉。今回、OTOTOYでは、松永良平、井草七海、綿引佑太のライター3名による、〈NEWFOLK〉の魅力に迫るクロス・レヴューを展開。さらに後半では、主宰者である須藤朋寿の人物像やレーベルにかける想いがわかる「20の質問」コーナーも。

レーベル主宰の須藤朋寿への20の質問はこちら

NEWFOLK所属 西村中毒バンドのインタヴューはこちら

長く多彩なキャリアと新作から読み解く、アーティスト西村中毒の真髄とは

音楽を続けて生きてゆく人たち(フォーク)から | Text by 松永良平

 〈NEWFOLK〉の前身といえるレーベルは〈kiti〉だった。2010年代初頭、東京のインディー・シーンで〈kiti〉から出ている作品は、不器用だが自分のやりたいことに率直で、危なっかしさと愛おしさの両方があった。ジャンルやシーンではなく、ひとりひとりのやりたいこと、やっていることに寄り添っていくスタンスを感じた。麓健一、mmm、oono yuuki、平賀さち枝が〈kiti〉から作品を出していたと書けば、ぼくの言っていることに思い当たる人もいるかもしれない。

 〈kiti〉後期に登場した、新人の男女デュオがラッキーオールドサンだった。渋谷のO-Nestで見た、彼らふたりとドラマーの3人でのすごくゴツゴツとしたライブを、いまも覚えている。やがて〈kiti〉を現〈NEWFOLK〉主宰の須藤朋寿さんが引き継いだのも、そのライブの前後じゃなかっただろうか。台風クラブの『初期の台風クラブ』(2017年)を須藤さんがリリースした頃は、まだ〈NEWFOLK〉という名前はなかった。名乗りだしたのは2019年頃だそうだが、あまりにも自然に定着したので、ずっと前からそうだったような気もする。レーベル名には、人から人へ伝えられてゆくフォーク・ミュージックへの愛着と、それを現代的に更新したいという意志の両方がある。そんな強い思いを須藤さんのインタビューでも読んだことがあるし、2018年と19年に東京と京都で主宰した〈うたのゆくえ〉というイベントは、レーベルのショーケースの意味合いを大きく超えて、この場所から生まれてゆく歌を見届け、祝福していこうという情熱を感じた。

 

 「フォーク(FOLK)」という言葉は、もともと「人々」と訳すことが多い。集団を示す言葉はいろいろあるが、「グループ」とか「サークル」という表現よりも、「フォーク」にはばらばらな個人であるままその場にいることを許す感覚があって、そこがいいなと思っていた。〈NEWFOLK〉からは相変わらずいろんなシンガーや気になるバンドがどんどん出てくるけど、そのばらばら感から来る風通しの良さは変わらないし、それは〈kiti〉の昔から続いているものだとも思う。今度出るわがつまって女性シンガーソングライター、いいよね。家主はまた新しいの作ってるって聞いた。工藤将也は最近なにしてるのかな?こんな井戸端会議が風に乗って聞こえてくる。こうやって当たり前に音楽を続けて生きてゆく人たち(フォーク)から、きっと次の新しい時代は勝手に生まれて出る。

松永良平(リズム&ペンシル)
ライター。1968年熊本県生まれ。2019年末『ぼくの平成パンツ・ソックス・シューズ・ソングブック』(晶文社)刊行。

わがつま - 街
わがつま - 街

台風クラブ

工藤将也

この記事の筆者
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井草 七海

東京都出身。2016年ごろからオトトイの学校「岡村詩野ライター講座」に参加、現在は各所にてディスクレビュー、ライナーノーツなどの執筆を行なっています。音楽メディア《TURN》にてレギュラーライターおよび編集も担当中。

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この記事の筆者
この記事の編集者
梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

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1万通りの1対1を大切にするpolly──つぶれかけていたロマンを再構築した新作

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理想郷は自分たちで作っていく──ひとつの“カルチャー”を目指すバンド、the McFaddinの新作EP

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これも、あれも、全部YAJICO GIRL──新作EPから聞こえる数々の好奇心

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音楽ライターがオススメする〈FRIENDSHIP.〉の注目作品(2021年10月〜12月)

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バンドサウンドの必然性を深く問う新作──étéが鳴らす、流行へのカウンター

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原動力は「なにかを壊したい」という気持ち── 光と影が交差する、イズミカワソラの歩み

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PEOPLE 1 『PEOPLE』クロスレビュー  ── 集団として闘い、大衆を救う決意

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余白を楽しみつつ、ストレートな表現へ──Helsinki Lambda Clubのリアルなモードに迫る

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The fin. 『Outer Ego』クロスレビュー  ── 主観と客観を行き来する、普遍的なポップ・ミュージック

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“あなた”がいるからこそ綴られた、足立佳奈の言葉

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初ミニ・アルバムのテーマは“脱出ゲーム”!? ── ポップで攻撃的な5人組、あるくとーーふの全貌

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ポップなPARIS on the City!が、泥臭いロック・サウンドに振り切るまでの歩み

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ギタリストではなく、ひとりのアーティストとしての表現──25曲で語るDURANの人間性と感受性

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BALLOND'ORの止まらぬ鼓動! ── 国内外から注目を集めるサウンドの生まれ方

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キュートだけじゃない! さとうもかの新作『WOOLLY』が描く、リアルでちょっとビターな共感

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京都から現れた、あえて言おう“すごいバンド“! WANG GUNG BAND!!!

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谷口貴洋はどのように育ったのか?ー自由で冷静な人間性の生まれ方

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ネクストモードなEmeraldが伝える制作の秘訣──10年間で培ったバンドサウンドの楽しみ方

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日米韓を跨ぐR&BシンガーソングライターVivaOla──シェイクスピアを参考にした初のフル・アルバムが描くストーリー

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謎多きアーティスト・マハラージャン──2つの新作から浮かび上がる人物像とは?

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Laura day romanceがたどり着いた新局面──対照的なふたつの新作から鳴る輝きと情緒

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ドレスコーズ志磨遼平がピアノで描く孤高と反抗──コンセプチュアルな新作『バイエル』に迫る

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自分のドキュメンタリーを音楽で表現する──新作『はためき』に込めたodolの祈り

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「音楽って宇宙みたいなもの」──大柴広己の真髄に触れた新作『光失えどその先へ』

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「人のためになれるような作品ができました」── 愛はズボーンが2つの新作で提示するアルバムの楽しみ方

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パワー・ポップを愛する者へ───Superfriendsのルーツと現在地が反映された新作ミニ・アルバム

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