noumi yoshie band ラスト・アルバム完成
ガロリンズの藤井よしえ(noumi yoshie)が、2010年の1月から9月までの9ヶ月の間、闘病生活を続けながら、極めて近くにいた友人たちと藤井よしえとその家族(夫・野海順治、娘・野海はるね)と一緒に制作したアルバム『life』。彼女が曲を書いてほしいと選んだミュージシャンたちが楽曲を提供し、それをnoumi yoshie チーム(松雪弘[蝶丁・noumi yoshie band]、加藤久輝[moth])がアレンジ。2010年11月の他界後も、彼女の意思は多くの人々に引き継がれ、あたたかな12曲が完成しました。この作品こそnoumi yoshie の"life" です。
noumi yoshie band / life
1. キルト / 2. Rock'n roll is dead / 3. family / 4. マルクスはどこへいったの? / 5. tink / 6. girlie / 7. かたちのないたからもの / 8. in the place / 9. しまうま / 10. パリの花売り少女 〜 ベルリラ / 11. よろこびの朝 / 12. sweet wind
【曲提供】
藤井 邦弘 (魚座) / 岩永ハナエ (空室・TERROR CITY TAGAWA) / 牧畜業者 (暗渠のガーネット) るゥ (雅だよ雅) / 松雪 弘 (蝶丁・noumi yoshie band) / 野海 順治 (TIME MARKET) / ノウミヒロキ (サイクロプス) / 井上周一 (folk enough) / 有田桃子 (いんぱらのヘソ・TIME MARKET)
【曲アレンジ】
松雪 弘 (蝶丁・noumi yoshie band) / 加藤久輝(moth)
【演奏】
noumi yoshie / 野海 順治 (TIME MARKET) / 野海 はるね / 松雪 弘(蝶丁・noumi yoshie band) / 松田 美和子 (雅だよ雅・miu mau) るゥ (雅だよ雅) / カサハラダイスケ / 西塔正崇 (nui・cafe&bar gigi・TIME MARKET) / 有田桃子 (いんぱらのヘソ・TIME MARKET) ゴトウイズミ(ヲルガン座) / 牧畜業者 (暗渠のガーネット) / 加藤久輝(moth) / 猛者 真澄
音楽に対する姿勢、皆をひっぱる力、そして決して見せない努力。俺の憧れの人でした。R.I.P 藤井よしえ(from ガロリンズ)。九州ローカル・シーンの思いを、静かに聞いてみてください。
飯田仁一郎(JUNK Lab Records / OTOTOY / Limited Express (has gone?) / BOROFESTA)
生み出すこと、繋げること
藤井よしえ(野海よしえ)は、「死」がすべての終りではないことを教えてくれた。2010年11月7日、子宮がんとの闘病生活の末に、彼女は亡くなった。その事実を書いているだけでとてもつらい気持ちになるけれど、彼女の存在がなくなったわけではない。むしろ、1年近く経とうとしている今、存在感はより強くなっている。全国各地の人たちの中で、よしえさんは強く生きている。noumi yoshie band、3枚目のアルバムとなる『life』は、藤井よしえの誕生日である9月3日に生まれた。このアルバムは、タイトル通り「生」を描いた作品である。そこでは2つの「生」が描かれている。1つは、がんと闘いながら新しい曲を生み出し続けることをやめなかった、藤井よしえの「生」。もう1つは、彼女の家族や友人、ミュージシャンたちの「生」である。
藤井よしえは、福岡の3ピース・ガールズ・バンド、ガロリンズのヴォーカルであり、フリーペーパー『TIME MARKET』の主宰や、『総決起集会』の発起人の一人でもあった。そうした多彩な活動からもわかるように、休むことなく全力で「生」を走り抜けた人だった。今作も2010年の1月から9月までの9ヶ月間に、闘病生活とともにレコーディングを続けて完成させたものだ。闘病中の様子を彼女はブログで更新し続けた。生きたいという希望と、ダメかもしれないという葛藤が渦巻く心の叫びが描かれたものだった。そんな最中にレコーディングされた作品にも関わらず、痛みや苦しみとはまったく正反対の穏やかで心地いいサウンドが鳴らされている。それは、この作品がよしえさんの「生」を描いただけのドキュメンタリーではないことを物語っている。彼女の家族、友人、ミュージシャンの「生」が、そこには共存している。
そもそも今作は、よしえさん本人が曲を書いてほしいと選んだミュージシャンたちに楽曲を提供してもらっている。その曲を、noumi yoshieチーム(松雪弘、加藤久輝)がアレンジして制作している。その様子と曲については、松雪弘氏のツイートがまとめられているので、参照していただきたい(https://togetter.com/li/184139)。アルバム全体のディレクターを勤めたのは、よしえさんの夫である野海順治氏。娘の野海はるねの弾くピアノも収録されている。参加者一人一人の名前を書ききれないくらい、沢山の人たちがこのアルバムには関わっている。リリース元のJUNK Lab Recordsも、この作品は絶対にリリースする必要があると、CD化に全面的に協力している。今作は、よしえさん本人だけでなく、彼女に繋がりのある人たちとともに出来上がっている。彼女が歌っていない曲も収録されているけれど、noumi yoshie bandとしてアルバムに統一感があるのは、全員が一体となって「生」を描いている何よりの証に他ならない。
生前、人と人を繋げたいという主旨のメールをもらったことがある。その想いは、彼女が亡くなってしまった今でも、しっかり生きている。個人的にやっているファンジン『StoryWriter』のvol.5で、よしえさんに埋火の論評を書いてもらった。それを福岡のcafe & bar『gigi』に10部ほど置いてもらっていたのだが、全部売れてしまったので追加をお願いしたいというメールをいただいた。よしえさんは、今もなお人と人を繋げてくれている。『life』は、そのようにして新たに人と人を繋げてくれる作品になるということだろう。「死」はすべてを終わりにするものではない。生きている者たちが、どれだけその人のことを忘れずに想いを繋いでいけるか。その気持ちが途切れない限り、よしえさんは僕たちの中に生き続けている。(text by 西澤裕郎)
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