『疑念とか迷いってものがなくできました』――OLDE WORLDE、2年半振りとなるニュー・アルバム・リリース
沼田壮平によるソロ・ユニット、OLDE WORLDE(オールディ・ワールディ)。2年半振りとなるニュー・アルバム『The Blue Musk-Oxen』には、NTTドコモCMソングとして使用された話題曲「Thinking About You」など12曲が収録されています。プロデューサーにブラッド・ウッド(スマッシング・パンプキンズ、ピート・ヨーン、ベン・リー、サニー・デイ・リアル・エステイト、トータス、リズ・フェア他)を起用し、ロサンゼルスでレコーディング&ミックスを実施した今作は、音楽的にあらゆる面でブラッシュアップされ、何度も繰り返し聞きたくなる快然たる傑作に仕上がりました。OTOTOYではハイレゾ音源(24bit/96kHz)にて一週間先行配信開始です!!透き通るボーカル、琴線に触れるギターの奏でをぜひ高音質でお楽しみください。
OLDE WORLDE / The Blue Musk-Oxen(24bit/96kHz)
【配信価格】
wav(24bit/96kHz) アルバム価格1500円(単曲は各200円)
【Track List】
01. Wishing You Well
02. Your Bird
03. Number City
04. Thinking About You
05. A Girl Across The Country
06. Lemon Lake
07. Beating
08. Stuck In Hibernation
09. Realize Poppies
10. No One's Gonna Be
11. Good Boy
12. Be Alone
OLDE WORLDE / The Blue Musk-Oxen
【配信価格】
mp3 アルバム価格1500円(単曲は各200円)
【Track List】
01. Wishing You Well
02. Your Bird
03. Number City
04. Thinking About You
05. A Girl Across The Country
06. Lemon Lake
07. Beating
08. Stuck In Hibernation
09. Realize Poppies
10. No One's Gonna Be
11. Good Boy
12. Be Alone
INTERVIEW : OLDE WORLDE
2013年1月19日、南青山MANDALAにて開催したOTOTOY主催のイベント「お腹が痛い Vol. 3」。このイベントに出演したのは、若き3組のアーティスト、南壽あさ子、ROTH BART BARON、OLDE WORLDE。彼らを選んだ基準は、シンプルに、力強く、まっすぐ音楽の素晴らしさを伝えるミュージシャンであるかどうか。そして、彼らがその基準を超えているという想いは、イベントから1年経ったいまも変わらない。それどころか、彼らはよりシンプルに、芯のある音楽を聴かせるようになっている。
そして、同イベントで一番手を飾ってもらったOLDE WORLDEが、2年半ぶりとなるアルバムを完成させた。女性かと間違えるような高いヴォーカル、シンプルなコードで駆け抜けるメロディ、それを際立たせるバック・トラック。すべてがキレイに絡み合い、清々しい作品となっている。今回、すべての楽曲を作っている沼田壮平に取材をした。これほど目がキレイな青年に会ったことはほとんどない。その笑顔はあまりに無邪気で、素直で、どこまでも純粋だ。印象そのままに、シンプルな気持ちで好きなことをやりきったという本作について、ゆっくりと話を訊いた。
インタビュ―&文 : 西澤裕郎
英語もやりたいときにやって、休むときには休むみたいな感じでやっていたから、楽しくできるようになってきたのかなって
ーー沼田さんのうたう英語のうたは、とても流麗ですよね。
沼田壮平(以下、沼田) : 別に英語の授業が好きだったわけではないんですけど、中学生のときから教科書を読むのが好きで。あとは、AFNっていう日本のアメリカ基地に住んでいる人のためのラジオ・チャンネルをよく聴いていたんです。
ーーそれで、しゃべれるようになったんですか?
沼田 : これはおもしろいな!! と思って。そこから徐々にSkypeとかで海外の人とコミュニケーションをとるようになったり、東京に住んでる外国の人とかで会うようになったりして、適当でいいんだなっていうのがわかってきてたんですよ。苦手意識がなく、ただ楽しもうと思えばできるんだなって。
ーーそれが自然にできるフラットさみたいなところが、うらやましいです。
沼田 : それは、最近になって思い始めたことなんです。昔、サッカーをしていたんですけど、小学校のときとかはやらされてる感が強くて。それで中学3年のとき、もうサッカーなんてやりたくなくなっちゃったんです。その後は友達と遊び程度でやるくらいだったんですけど、そこからまたサッカーがおもしろいってことに気づいて。いまはフットサル・チームをやってるんですけど、ただ自由に好きなようにやってるだけなんで、まったくストレスがないんですよね。そういうのと一緒で、英語もやりたいときにやって、休むときには休むみたいな感じでやっていたから、楽しくできるようになってきたのかなって。
あるとき気楽に自分の好きなようにやってみようと
ーー楽器の話になりますが、沼田さんは小学校の頃からピアノを習いはじめ、15歳からギターをやり始めたんですよね。ギターをはじめたきっかけはなんだったんですか?
沼田 : 初めて買ったCDがMy Little Loverだったんですけど、たまたま試聴機にジュディ&マリーも入っていて。聴いてみたらすごいよくて、クラスの女の子とバンドを組んで、僕もギターリストになろうと思って買ったんです。ただ、エレキギターとアコギの違いがわからなかったんで、アコギを買っちゃって。その後、あ、これアコギなんだって気づいて、17歳くらいでエレキを始めましたね。
ーーエレキギターを買ってから、実際バンドは実際やられたんですか
沼田 : やりましたね。高校2年のときはソフトボールってバンドが好きで、そういうバンドを作りたくて、女の子2人、男の子2人の4人組バンドをやりました。
ーーソフトボールって、女性3人のメロディック・パンクですよね。そこから、OLDE WORLDEに至るまでの過程がとても興味深いですね(笑)。
沼田 : 僕の兄がルー・リードとかトム・ウェイツのCDを持っていて、聴けよみたいな感じで説得してくるわけですよ。で、聴いたんですけど、わからなくて。だけど、寝る前とかに聴いているうちに、これすごくいいなと思いはじめて。こういう音楽も作ったらおもしろいんじゃないかと思いはじめたんですよね。
ーーたしかに、中学生でトム・ウェイツは難しいかもしれないですね。
沼田 : 全然ポップじゃないと思ったんです。でも、なぜかわからないんですけど、ルー・リードの場合はすごくすんなり入れたんですよね。「ベルリン」と「トランスフォーマー」は、19、20歳のころ、すごく聴きました。
ーー最初にやらされている感という話があったんですけど、音楽においてやらされている感を感じたことはありますか?
沼田 : それは全然なかったんですけど、ソロ・プロジェクトでOLDE WORLDEをやることになったあとに、義務感みたいなものが強くなっていってしまって。これは大変だな、なんか違うな、っていうのをずっと思っていましたね。
ーーレコード会社からリリースするうえで、すべて自分の思うがままというのは難しいですからね。
沼田 : そこで大きな葛藤がありまして。これを続けていくかどうかっていうのをずっと考えていたんですね。で、今回のアルバムに繋がる話なんですけど、作ったデモに対して、けっこう自信があったんですよ。でも、そのデモがほぼ却下されてしまって。もう時間もないし、どうしようと思って、にっちもさっちもいかなくなってしまって。休みながらいろんな本を読んだり、考え事をしたりして、徐々に回復していって、あるとき気楽に自分の好きなようにやってみようと思ったんですね。そのときに、いままでの大変だったことも、自分の気持ちを見つめ直すきっかけに繋がっていたんだと思えるようになって。そういう時期を体験したことが、むしろ自由な感覚、気持ちに繋がっていったんだと思いますね。
歌に集中することで、より自分と深く向き合うことができた
ーー沼田さんにとって、曲を作る作業って、どういう感じなんでしょう。産みの苦しみみたいなものはありますか?
沼田 : どうですかね。あるんでしょうけど、第一歩は、そんなに大変じゃないんですよ。いっぱいいろんなものを作って、そのあとでコードはこうかなとか、ちょっとずつ練っていくのに時間がかかりますよね。僕の場合は、デモが全部却下されたことでふっきれた部分もあって、とにかくシンプルなものを作ろうと決めまして。だから、今回のアルバムの曲は非常に構成がシンプルなんですよね。シンプルだから、その分、メロディとかを丁寧に作った感じがありますね。
ーー音色がこれまでに比べて、脚色なくストレートな感じがしますよね。それこそエフェクトの入った単音とか楽器が前にでていたけど、オーガニックになった感じがします。
沼田 : そうですね。単純に、楽曲がすごくシンプルだと思うんですよ。普通にヴァース1、コーラス、ヴァース1、コーラス、みたいな感じで、そこになにかを加えようと思うと大変なんですよね。だから、そのまま出したって感じですよね。
ーー裸のまま出ていくような感じともいえますね。
沼田 : 今回は非常にふっきれた感があって。プロデューサーもキャリアのある人だし、アコギの弾き語りをプリプロで一緒に作ったり、そういうふうに委ねる部分が多くて。それによって歌だけに集中することができたので、細かい部分に関しては、ほとんどなにも意識せずに歌だけに気持ちを傾けたって感じですね。
ーーそれじゃあ、歌うことに対しての意識はも違ったんじゃないですか。
沼田 : 違いましたね。前回、前々回で試したことを元に試行錯誤して考えて、自分の歌いやすいところとかをより研究して。レコーディングに入る前も、カラオケのトラックで毎日12曲を歌うようにしていました。毎回レコーディング毎にちょっとずつ修正するのも繰り返していたし、自分の声質とかどういうものが歌いたいかっていうのもよりわかってきたんです。歌に集中することで、より自分と深く向き合うことができたので、自分の歌声にも自信を持てるようになりましたね。
ーー裏を返すと、前までは自信を持ちきれなかった部分もあった?
沼田 : もちろん歌うことが好きだし、自分の声質も好きだったんですけど、OLDE WORLDEをはじめたあとから、英語に対しても義務感が出てきてしまって、英語で歌うことへの圧迫感があったんですよね。自分は好きなことを好きにやっていたのに、なんでこうなったのかな? っていうのを考えていて。好きな気持ちもあるんですけど、やめたいなって気持ちもあって。でも、3年間を経て、まっいっかと(笑)。
ーー(笑)。
沼田 : 自分が好きならいいかと思ったんですよ。サッカーもピアノも、好きなときほど、楽して続けられるときはないなと思って。なので、自分が歌うことを好きってことわかったってことは、英語で歌うことも好きなんだなってことの確認にもなって。より自分の歌声や、やっているものを大切だと思うようになりましたね。
ーーいろんな面でシンプルな考え方ができるようになったんですね。
沼田 : ほとんど無駄なものを削ぎ落としていく感じですね。こんなことにとらわれていたんだなっていうのが明確にわかりましたね。第三者的に観られるようになったので、いままで霧がかかっていてわかりづらかったものが、意識すれば理解できるってことがわかったんです。自分のやりたいこと、好きなことがなにか、ってことに重点を置くようになって。例えば、なにかやるときには、それが楽しそうか、心地良さそうか、不快か、っていうところで決断を下すようにしていますね。
疑念とか迷いってものがなくできました
ーーそして、今回はレコーディングをロサンゼルスでやられたんですよね。
沼田 : 2012年の12月1日にプロデューサーのブラッド・ウッドさんとご飯を一緒に食べて、3日から東京のスタジオでプリプロをして。12月の暮れくらいから1月のはじめまでは、もう一回プリプロをして、2月の後半から3月中旬までロサンゼルスでレコーディングをしました。
ーーブラッドさんとのレコーディングで、どういうところがよかったですか。
沼田 : プリプロをしているときに、アコギの音を録ってくれるわけじゃないですか。その時点ですでに音がいいんですよ。その人の音っていうのがあるので、これはすごくいいものになるなって。東京のプリプロで思っていたので、ロサンゼルスでレコーディングするときには疑念とか迷いってものがなくできましたね。
ーーちなみに、スタジオはどういう場所だったんですか。
沼田 : ブラッドさんの家の離れにスタジオがあって、そこにレコーディング・ブースとコントロール・ルームがあるんですよね。だからリラックスできました。日本のスタジオでレコーディングするときは、どうしても地下に潜っていく感覚があって、外界からどんどん離れていく感覚があるんですよ。朝と夜が徐々に逆転していくって感覚もあって。今回は、反対側が家になっているわけですよ。ここでバーベキューをしたりして。あと娘さんとか犬も出入りしているので、家のなかで録っている感覚でできました。
ーー環境として東京とは全然違うんですね。
沼田 : そうですね。外も緑があって、昼間はずっと晴れているんですよね。2、3月だったんですけど夏っぽい空気感があって。でも、夜はすごい寒いんですよ。だから朝の10時から夕方6時7時くらいまで録って、そのあとは普通にご飯食べにいったり、部屋で読書したり、体力面でもゆとりがありましたね。
ーーかなり生活感があるなかでできたんですね。プロデューサーのブラッドさんからは、なにかしら指示みたいなものや参考にするものはあったんですか。
沼田 : いろいろあったし、こういうのがいいんじゃないか、って提案もしたんですけど、最終的に録っていくなかで、やりたいこととかがでてきて、その場その場で、こうしたらいいんじゃないかって、ダイレクトに進んでいきましたね。2人で話して、こういう曲にしたいとか、こうしたらいいんじゃないかって、やっていきました。
ーーちなみに、歌詞はどういうことを歌っているんですか。
沼田 : 登場人物が2人くらいのものが多いですね。なぜかはわからないんですけど、すごく明るく終わるものがないんですよ。なぜか切ない話っていうのが多くて。でも、やっぱり希望はあるというか。もしかしたら、自分の何年か対立していた気持ちがすっと抜けたときの感覚も反映されているのかなって思いますね。
ーー本当に純粋な気持ちでできた作品なんですね。
沼田 : 無理するのは、やめようって決めたんですよ。一時期、英語を嫌いになっていた時期もあったんです。それは努力して身につけようって気持ちがあったからで、もはや努力はやめようと。努力することで、なにか身に付くかもしれないけど、弊害も大きいなと思うんです。努力したあとに大変だった思いも残るじゃないですか。それよりはスッと好きな気持ちだけが残って続いていったほうが、精神的にもバランスがとれて続けられると思ったので。自分なりに歌ったほうがいいと思って、突き抜けた感覚があるアルバムになっていますね。
ーーなにかのためとか、誰かのためっていうより、好きかどうか、やりたいかって基準を大事に制作できたんですね。
沼田 : そうですね。もし僕が嫌いって思ったり、大変だなと思って歌ったとしたら、いいものができなくなると思うんですよね。だから、自分が気分よく、好きなものを楽しくできるっていうのが一番にくるようにしました。だから、歌っている時点では、第三者、リスナーのことは一切考えてないですね。自分が楽しいかどうかってだけ。出来上がったあとに、どうするかっていうのを考えていましたね。
ーーここが新たなスタート地点であり、自信作といっていいんじゃないかと思います。
沼田 : なんかいろいろなことがすっきりしましたね。細かいことをいえば、もっとこうできたんじゃないか、ってのは常にあるんですけど、やり残したことはないって気持ちでいます。ああいい人生だったなあって思ってますよ(笑)。
RECOMMEND
OLDE WORLDE / Your Bird (24bit/96kHz)
OLDE WORLDE(オールディ ワールディ)の2年半振りとなる 3rdアルバムからの先行曲。今作は、プロデューサー・ブラッド・ウッド(スマッシング・パンプキンズ、ピート・ヨーン、ベン・リー、サニー・デイ・リアル・エステイト、トータス、リズ・フェア他)が音源を気に入ってくれてロサンゼルスの彼のスタジオでレコーディング/ミックスが行われた。
沼田が多大な影響を受けた一人。通算12作目となる本作は、全米4位/全英9位を獲得し、第51回グラミー賞「最優秀オルタナティヴ・アルバム」ノミネートを獲得した前作『モダン・ギルト』から6年振りとなるスタジオ・アルバム。
LIVE INFORMATION
2014年3月14日(金)@福岡INSA
2014年3月15日(土)@長崎Ohana Cafe
2014年3月16日(日)@熊本HAPPY JACK 2014
2014年3月21日(祝)@高松SANUKI ROCK COLOSSEUM
2014年3月23日(日)@広島MUSIC CUBE 14
2014年4月20日(日)@神戸トアロード・アコースティック・フェスティバル2014
2014年4月23日(水)@名古屋CLUB UPSET
2014年4月24日(木)@福井Flat
2014年5月4日(日)@新潟Rainbow ROCK Market
〈OLDE WORLDE acoustic "The Blue Musk-Oxen〉
2014年4月25日(金)@大阪digmeout ART & DINER
〈OLDE WORLDE 2014 「The Blue Musk-Oxen」〉
2014年6月6日(金)@吉祥寺 Star Pine's Cafe(ワンマン)
PROFILE
OLDE WORLDE
OLDE WORLDE(オールディ ワールディ)は、中性的で無垢な純粋さを醸し出す浸透度の高い声、多彩な才能を感じる自由度の高いメロディと洋楽的サウンドが印象的なシンガーソングライター沼田壮平によるソロユニット。
2009年5月に活動開始。同年11月『time and velocity』でデビュー。2010年4月ファースト・アルバム『Anemone "Whirlwind"』をリリース。2011年7月ほぼ全ての楽器を自分で演奏し、マルチ・インストゥルメンタリスト振りを発揮したセルフプロデュースのセカンド・アルバム『THE LEMON SHARK』をリリース。ライヴは、アコーステックな弾き語りとバンドの両形態で活動、SUMMER SONIC、FUJI ROCK FESTIVALはじめ様々なフェスティヴァル・イベントにも出演。
2014年 2年半振りにプロデューサー、ブラッド・ウッド(スマッシング・パンプキンズ他)を起用し、米ロサンゼルスでレコーディングした、サード・アルバム「The Blue Musk-Oxen」をリリース。 今作のアートワークは全て本人が描き、作品の世界観をより一層際立たせている。