1999年の結成以来、都内を中心に活動を続けているオルタナティブ・バンド、CONDOR44が、2013年より44th musicへと名義を変更、同名義としては初となるフル・アルバム『44th album』をリリースした。現在は、佐々木博史(Vo,Gt)、石田千加子(Vo,Ba)のツイン・ヴォーカル2名に、サポート・ドラムとして元・東京事変のハタトシキを迎え、構築されながらも肉体的な2013年のオルタナティブ・ロックを奏でている。このたびOTOTOYでは、改名後初となるメンバー・インタビューを決行。さらにアルバムより「PBK」を期間限定でフリー・ダウンロードでお届けする。音楽だけでなく、表現の枠を広げて突き進む44th musicのサウンドと考えに注目してみてほしい。
>>「PBK」のフリー・ダウンロードはこちら (9/19〜10/3) <<
44th musicとして初となるアルバムを配信スタート
44th music / 44th album
【価格】
wav / mp3
ともに単曲 150円 / まとめ購入 1,200円
【Track List】
1. PBK / 2. ハイビス / 3. Coffee & Cigarettes / 4. ハルカリ / 5. Rhythm vs Rock / 6. A.F.R.O / 7. 2&40[44th ver] / 8. RT SUCCESSION
INTERVIEW : 佐々木博史、石田千加子、ハタトシキ(ex.東京事変)
本ページに掲載するための取材前、彼らのライヴを初めて観て、思い描いていたバンド像との違いに驚いてしまった。正直にいうと、44th musicは、構築された楽曲を元にしこしこと宅録しているような人物たちによるバンドだと思っていた。しかし、ステージに立っているのは、その場のノリを活かしながら肉体感溢れる演奏を繰り広げるバンドの姿だった。なんといってもこの日、彼らは約30分のライヴで同じ楽曲を2回演奏した。その理由は、気持ちいいから。あまりに素直な理由に、思わず笑ってしまった。そして、取材用に考えてきた質問用紙をカバンから取り出すことはやめて、ライヴハウスのテラスで夜風を浴びながらインタビューを行うことにした。プレイヤーから監督へ。音楽に対して視野が広がり、表現の幅も膨らんだ44th musicの未来が楽しみになる対話を一緒に楽しんでほしい。
取材 & 文 : 西澤裕郎
凝り固まっていた考え方やスタイルが抜けおちて、ほどけた感触があった
ーー現在は2人で活動をされていますけど、CONDOR44時代は3ピースでしたよね?
佐々木博史(以下、佐々木) : そうですね。オリジナル・メンバーがもう一人いたんですけど、脱退してしまって。いまは2人とサポートでハタ(トシキ)さんらにドラムを叩いてもらっています。
ーー家庭のことや仕事のことも現実的になってくるから、メンバーの脱退は避けられない部分だと思うんですが、佐々木さんと石田さんの状態はいかがだったんでしょう。
佐々木 : 8年も9年もバンドをやっていることもあって、確かにテンションは下がっていたのかもしれません。
ーーそこからバンドが立ち直っていったのは、いつくらいのことですか?
石田千加子(以下、石田) : 2007年にアルバム『Good Bye 44th music』を出してからかな。ハタさんが手伝ってくれるようになってからだと思います。
ーーハタさんは、東京事変でもドラムを叩かれていたわけですけど、CONDOR44のどういうところに惹かれてサポートを引き受けたんですか。
ハタトシキ(以下、ハタ) : じつはそれまでCONDOR44は見たことなくて。いきなりスタジオに行って曲をもらって、「お願いします!!」といった感じ(笑)。
石田 : 対バンしたことあるのに、ハタさん観てなかったのか…。
ハタ : 俺はそういう人だから(笑)!
ーーあはははは。
佐々木 : ハタさんが叩いてくれることによって、知らない間に凝り固まっていた考え方やスタイルが抜けおちてほどけた感触が、かなりありました。
ハタ : それ、すっごくうれしいね。ひとついいですか? 西澤さんは今日初めてライヴを観たんですよね? 主観的に見て、どうでしたか?
ーーもっと構築されたライヴかなと思ったら、ストレートな感じというか肉体感のある感じで、それが意外だったし気持ちよかったです。
佐々木 : レコーディングでは計算するけど、ライヴはぜんぜん別ものになるので。
石田 : ライヴではそこまでこだわらないよね。
自分のギターに関しても、無駄なことをしなくなった
ーー音楽活動を続ける上で「音楽だけで食えたとしても仕事も並行して続ける」というスタンスもありますけど、その点、佐々木さんは音楽に対してどういうふうに向き合っているんでしょう。
佐々木 : 食っていきたいという気持ちは、明確にはないです。結果、食えたら受け入れるけど。みんなに聴いてほしいのが一番です。でも。もしお金が入ってきたら、それはそれでうれしいけど(笑)。
石田 : まあ、大人に怒られる考えですよね。売り上げ度外視だから。
佐々木 : それでも聴いてもらいたい気持ちが強いです。いまって、やりようによっては夢が叶う状態だからやりやすいですよね。レーベルに所属しなくても、ステータスを保つことはできるし。
石田 : 守ってもらえないぶん大変ではあるけど、逆におもしろいよね。
ハタ : おもしろくなかったら、俺も絶対やらないから。曲を聴いてもらいたくて演奏するっていう考えかたは甘えかもしれないけど、それでもやりたいと思える。そういった意味で、ふたりはアーティストというよりも、最高のバンドマンという印象で、すごくおもしろいよね。
ーーしこしこ家で録りためてるのが好きっていうイメージがあったから、本当に印象が変わりました。
佐々木 : いまはスタジオであわせて、ライヴ用の曲の仕上がりになっていくんですけど、そのほうが魅力的な結果が出ています。録音した原案を持ってって、細かい絡みがああだこうだってやるより、いまのやり方がうちらに合ってるかなって。
ーーひとりの世界観でなく、その場の偶然性を楽しむようになってきたんですね。
佐々木 : ようやく楽しめるようになりました。
ーーじゃあ、このタイミングで音源をリリースしようと思ったのは、そういう変化のひとつの集大成みたいなことでしょうか。
佐々木 : えーと… 特に理由はないですね…(笑)。急いでいたわけでもなくて、レコーディングをしたときに「おっいいね」ってなって、そこから一気に進めた感じです。いつでもいける状態だったけど、いまが出し時かなっていう気配になったので。
ーーそうなんですね(笑)。今回のアルバムで、強く打ち出した部分ってどこでしょう?
佐々木 : どうなんだろうな… 前にくらべていい意味で変わったのが、自分のギターに関しても、必要最低限のことしかやらなくなったというか、無駄なことをしなくなった。大人になったカッコよさを出せているんじゃないかなと。
ーーシンプルになっていったということですか?
佐々木 : そうですね。以前はかっこいいリフをただただ繰り返すということに恐怖があったんです。いまは、カッコいいからひたすら繰り返してもいいんだって思えるようになった。音の装飾も、手応えがあればそれ以上つけ加えなくなってます。
音楽だけにとらわれない、もっと大きい括りでやっていきたい
ーー佐々木さんは、インタヴューやブログで「気持ちいい」という言葉をよく使いますよね。気持ちよさに対して素直になっている感じがあります。
佐々木 : ああ、ライヴの楽しさがわかるのと一緒の感覚かもしれないですね。
石田 : そういえば、最近はおもしろくないライヴが減ってきたって話をしたよね。
ーーおもしろくないライヴっていうのは?
佐々木 : 前はバンド全体のフレーズに求めることが多すぎて、理想が高かったんですよ。あるフレーズを間違ったら、もうその曲はダメで、その曲がダメだからライヴもダメみたいな。いまは全体が楽しかったらもうOK。もし、ライヴ中に音が出なくなっても、それがいいほうに転じたらいいライヴって思える。お客さんも楽しんでくれるし。で、それがレコ―ディングにも出るようになってきて。さっきも話題にあがったけど、レコーディングはあくまで記録で、そのときの空気やプレイを録っているので、とにかく気持ちいいのができたらいいかなって感覚です。
ーー石田さんも、そういう変化を感じますか。
石田 : つられて、そういった感覚になっている感はあります。結局、楽しくなかったらダメじゃんって。それを肝に銘じて、ちゃんと練習しています(笑)。ステージではただ発表するのではなく、楽しく出すというか放出する。ミスでへこたれず、間違えても次の曲に影響させなくなった。だいぶ図太くなったね(笑)。
ーー以前は、型にはまった感じもあったんですか。
佐々木 : それはあるかも! ありますあります。あこがれを持ちすぎちゃっていたんです。
ーーたしかに、今日のライヴでは余裕を感じられました。いまさらですけど、バンド名を変えたことには、どんな理由があるんでしょう?
佐々木 : そうですね… 長くやっているので、ここからが本気ですよ、みたいな(笑)。
ーーあはははは。
佐々木 : なにかを動かそうとしていることを示したかったんです。これからやっていきたいことの構想もあって、それをするきっかけにもしたくて。44th musicでは、音楽だけにとらわれない、もっと大きい括りでやっていきたい気持ちがあるんです。例えば、絵を描く人と何かやれるときは、それを「44th art」と銘打つとか、「44th○○」という形で表現できる幅を広げていきたい。
ハタ : 数ある表現のなかの、ひとつという感じというか。
ーー自分で作るだけでなく、表現できる場を作るといった感じに近いんですね。
佐々木 : そういうのはたくらんでますね。
ーーそれじゃあ、44thとして、どんどん活動幅をひろげてやっていこうと考えているんですね。
佐々木 : そういう理想はもっています。ただ、バンドがおろそかになるのはイヤだなって気持ちもあって。そこをぶれずにやっていれば、進むべき方向は勝手に決まっていくのかなって。そして、そういうスタンスでいれば、いろんな人と会う機会も、やる機会も自ずと増えるんじゃないかなって思っています。なので、ちょっとずつやっていけたらいいですね。いまは松一くんっていう絵を描く人が入って、今回のジャケットも描いてもらいました。
いまは監督という感覚に慣れてきている
ーー3~4年前のインタヴューで、佐々木さんがやさしくなったという石田さんの発言があったんですけど、今日話していて、さらにそういった印象を受けました。
石田 : 以前にくらべて、さらに丸くなってきてるよね。
佐々木 : 前は自分でしたいことができなくて、もがいて、イライラしていたところはあったと思います。自分が輝きたくて、周りのひとに「ぼくを輝かせて!」感があった。そういうのがなくなったら、不思議なことに、自信がうまれたんですよね。
ーー野球でたとえると、プレイヤーから監督になったような。
佐々木 : その感覚を受け入れられるようになってきたんです。以前は「自分はプレイヤーだ!」感が強すぎたんですよ。いまは監督という感覚に慣れてきている。プレイヤーとしても、これでいいかな、という感じも出てきまして。古田(選手)感ですね(笑)。
ーーあははは。ライヴでもそういった感じが出てきてますよね。
佐々木 : ハタさんも、いいエッセンスを加えてくれてますしね。ハタさんは東京事変のとき、ライヴもリハもすごく楽しかったんですって。あのバンドはそれが見ていてわかるし、曲もカッコいいし、演奏も素敵。くやしいけど、すごい理想像というか、それを参考にしている部分もあります。ハタさんが楽しんでやってくれているのは、間違いではないという判断基準にもなっている。
ーー今回、MVもかなり凝っていますよね。
佐々木 : そうなんですよ。今回は僕が絵コンテも書いたりして、それを監督の丸山さんに伝えて。そういうのをするのははじめてですね。いま第2弾も録ってるところです。
ーー画面を四分割するっていうのは、佐々木さんのアイディアですか?
佐々木 : 実際、四分割まで落とし込んでくれたのは監督で。僕はボックスをふむ映像を大きく映して、ちっちゃいワイプ画面で歌ってる映像を映すっていうのを考えていたんです。そのアイデアから、「四画面のほうがおもしろいですよ」って監督が言ってくれて、素敵なものが完成しました。
ーー監督さんとも相性がよかったんですね。
佐々木 : 監督のスタンスはうちらとよく合っていて、「ホントは映っちゃいけないものも、映っちゃってていいんじゃないか」って感じで。実際、PVの一番最初に映っちゃってるのもゴミ収集車なんですよ(笑)。ステップを映しているカメラでは、捨てられたおばあちゃんの手押し車みたいのが映り込んでたんですけど、「それがいいかもしれない」って言ってくれて。そういうところも合ったんですよね。
石田 : そうそう。あり・なしの感覚はすごく近かったよね。
佐々木 : だからすっごく楽しかったし、すぐ撮影も終わって。
ーーそういえば、佐々木さんはあまり音楽を聴かないということをインタビューで読んだんですけど、いまもそうなんですか。
佐々木 : そうなんです、まったく聴かなくなっちゃって。
石田 : でも、対バンした人とかにもらった音源は聴いて、かっこいいって話してくれるよね。
佐々木 : そう、教えてもらったらなんでも聴きます。でも波があって。聴きたいときはどんどん調べるんだけど、それが2日ぐらいで治まっちゃう(笑)。
ーーとなると、楽曲をつくる上でのアイデアの源泉は、いったいどこからきているんでしょう?
石田 : それはわたしも聴きたい(笑)! どうなってんの? 思い出の中からとか?
佐々木 : どうなんですかね… とはいえ、ぼくは音楽が嫌いなわけではないので。曲とかアーティスト自体のことは知らなくても、「こういうのかっこいい」「ああいうのかっこいい」という感覚は覚えていて。その感覚探しが曲作りなのかもしれないですね。J-POPなんかも同じく好きで、そういう感じも僕たちの楽曲には入っているかなって。自分の感覚からいろんなものがちょっとずつ、繋がっているのかなと思いますね。
ーーどうしても聴き手はジャンルを定義付けたがるけど、もっと生理的な部分に素直に作っているのかなって。
佐々木 : それしかできないのかなっていうのはありますね(笑)。
ーー今日のライヴ、そして話を聞いて、本当に印象がかわりました。10月にはO-nestでのワンマンもありますし、ぜひライヴに足を運んで体感してほしいですね。
佐々木 : ぜひライヴを観にきてほしいですね。きっちりお金を払って(笑)。
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LIVE INFORMATION
44th music presents 『44th album』発売記念 ”44th NIGHT” ワンマン
2013年10月26日(土)@渋谷O-NEST
PROFILE
44th music
1999年結成、佐々木博史(Vo,Gt)、石田千加子(Vo,Ba)の二名で活動を行う感傷系オルタナティヴ・バンド。前名義は「CONDOR44」で、2013年から現名義へと変更して活動中。
44th music 公式HP
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