ツジコノリコ×Tyme.(ヤマダタツヤ)の新作を高音質で!
アルバムごとに進化していく、フランス在住の女性音響/エクスペリメンタル・ポップ・ミュージシャン、ツジコ・ノリコのオリジナルな歌世界にヤマダタツヤ aka Tyme.(MAS)の緻密で豪快なビート感が注ぎ込まれた圧倒的アルバムが完成。Tyme.の不可思議な派手さのあるトラックと、Tujiko Norikoのいつになくポップなメロディが重なり合った、暗くも明るい、踊りながらの年末/年始ムード。「階段から転げ落ちる」ツジコと「ハートをギュンギュンいわせる」Tyme. の強力なコンビネーションにカラダが動き、ハートが “ギュー”となってしまう。 2011年最後に大傑作アルバムが到着! 2人の長年の盟友PPAも参加しています。
Tyme. X Tujiko / GYU
1. あけて、あけて / 2. ギュンギュン / 3. トロピックペンギン / 4. ハート凍らせて / 5. 神様のバケーション / 6. 泉より / 7. ゴールデンハート / 8. 点と線 / 9. スローモーション / 10. 忘れない光 / 11. 世界
販売形式 : mp3 / HQD(24bit/48kHzの高音質WAV)
★アルバム購入者にはオリジナル・ウェブ・ブックレットをプレゼント!
ツジコノリコ、ヤマダタツヤ(Tyme./MAS) INTERVIEW
6年前から年末年始限定のフリー・ギフトソングをプレゼントしてきたTyme. × Tujikoが、ついにアルバムを完成させた。2年前にインタビューしたときには、1年に1曲ずつマイペースに作っていくと笑っていた彼らだが、一気にペースをあげてアルバムを作りあげた。リスナーにとっては思いがけないプレゼントだ。基本的には、これまでのギフトソングの延長をいくエレクトロニカであるが、ツジコのメロディラインはよりキャッチーになり、アルバムというフォーマットを意識して、Tyme.のビートも滑らかな仕上がりになっている。耳をそばだてて聴いてみると、どこか低体温なサウンドに聴こえるのだが、力を抜いたまま聴いていると、いつの間にか体の中からゆっくりと暖まってくるような不思議な感覚のするアルバムだ。そんな2011年の彼らからのギフトについて、2年前と同じように、ツジコとTyme.にSkypeで話を伺った。相変わらず、ほっこりしていて、笑い声の絶えないインタビューとなった。
インタビュー&文 : 西澤裕郎
誰かのチカラになった事が嬉しかった
――2年前にインタビューさせていただいたとき、「6年後くらいにアルバムを出せればいいな」とおっしゃっていましたよね(笑)。
Tyme. : 言ってましたね(笑)。
――予想より早いリリースとなりましたけれど、なぜこのタイミングでアルバムにまとめようと思ったのでしょう。
Tyme. : 特にきっかけがあったわけではなく、どちらからともなく気楽な感じで、まとめよっかってなったんだよね。
ツジコ : そうそう。たっちゃん(Tyme.)が、これで最後にしよう的なことを言ってたの。
Tyme. : アルバムに収録するのが10曲だとしたら、その半分が出来て、一気にまとめたい欲が出てきたんですよ。1年に1曲ずつ増やしていって5年後にと思ってたけど、一緒に他に作ってた曲もあったし、まとめてもいいかなと思って。
――アルバム用に作った曲が半分くらいあるんですか。
Tyme. : アルバム用に作った曲もあるし、今回参加してくれているP.P.A.君のトラックが2曲あって、その曲が好きだったので入れたいなと思ったんです。
ツジコ : 「点と線」は、たっちゃんのために作ったんだよ。
Tyme. : そうそう。2人が俺のために作ってくれた曲なんです。
ツジコ : すごくプライベートな想いで作ってプレゼントしたの。そしたら、アルバムに入れることになって、たっちゃんも参加しちゃったんだよね(笑)。
――(笑)。これまでに配信されていた曲のアレンジやミックスは、アルバムに収録されるにあたって、どういう風に変えたんですか。
Tyme. : ここ数年で、自分の音作りも変わってきているので、ひたすら音圧を稼ぐ的な事をやめたり、もっと今の感覚を入れていこうと思ったりして作り直しました。ちなみに一番新しい曲は「ゴールデンハート」で、一番古いのが6年前の「忘れない光」なんです。それだけ期間が離れると変わるのも当然なので、ミックスや音作りをかなりやり直したんです。
――「ゴールデンハート」は、アルバム収録ギリギリまで作っていたみたいですね。
Tyme. : 最終段階でアルバムを俯瞰して聴いてたら、どうしてもあと1曲入れたかったんですよ。前半にキャッチーなのが固まってて中盤以降に明るい感じのがもうひとつ欲しいなと思って、このままだとなんとなく暗い印象が残ったので、自分の中のTyme. × Tujikoを表現するために、元は彼女にざっくり作ってもらってそこからまとめた感じです。この「ゴールデンハート」は制作の過程も含めて今年のギフト・ソングって感じなのかなって思います。
――宮城県石巻の音楽家doinel(ドワネル)さんからメールをもらったことがきっかけで、ツジコさんのホームページで「あけて、あけて」が再度フリー・ダウンロードをされていましたよね。今回のアルバム・リリースも、震災がきっかけなのかなと思ったのですが。
ツジコ : 直接的な関係はないんだけど、doinelさんや色んな人が気に入ってくれたことや誰かのチカラになった事が嬉しかったんだよね。私たちの曲が、少しでも人のためになったら嬉しいでしょ。それもあって、もうちょっとまとめて聴ける形で出したほうがいいかなと思った部分もあるかも。震災どうこうじゃないけど、誰かが気に入ってくれたら嬉しいよね。
Tyme. : そうだね。年末年始ギフトに関しては、ずっとそういうモチベーションでやってきた気はするよね。プレゼントができて、聴いてもらう事が単純に嬉しいってことは大きいかな。
――地震のとき、ツジコさんはパリにいらっしゃったんですよね。
ツジコ : そうだね。最初、お母さんからメールが来て、調べたらすごいことになっていて随分と心配になったの。あの時、みんな自分に何ができるかって考えたと思うのね。出来ることは人それぞれだけど、私たちの曲を喜んでくれる人がいるってことは、モチベーションが上がる一つの理由になったよね。
Tyme. : 確かに、やってきてよかったと思える大きな理由の一つではあります。少しでも人の役に立ったってことが分かる出来事だったから。
――タイトルの『GYU(ギュー)』っていうのも、やさしく抱きしめるって意味を込めているのかなって。
ツジコ : そうそう、そうなの。掴む感じ。もちろん抱きしめるでもいいし、抱きとめる感じっていうのかな。歌詞にもよく出てくるんだよね、「ギュ」って。ソロでは、「ギュ」なんて全然出てこないの。でもたっちゃんとやっている曲を振り返ってみると、掴むとか抱きとめる感じがよくあるなと思って。
Tyme. : 確かにそうかも。
ツジコ : 「世界」の歌詞は、まさに「ギュ」的な感じで作ったの。たっちゃんも歌っているし、それが嬉しくってすごく気に入っているの。やっぱり「ギュ」だなって。アルバムの最後の方に作った曲だから、気持ちは代表曲って気分になっちゃって。
Tyme. : そんな気分だったんだ(笑)。
ツジコ : だって、たっちゃんとデュエットしているし。
Tyme. : 僕も思い入れあるよ。この曲は僕も歌っているんですけど、そもそもシンガーじゃないのでなかなか歌えないのと、どういう方向に持っていこうかアレンジにも悩んでいたから、完成がずるずると遅れてしまいました。だいぶ急かされてましたけど(笑)。
――毎年同じ時期に曲を出すことって珍しいですよね。その年毎にテーマみたいなものは持っているんですか。
Tyme. : あると言えばありますね。去年リリースした「スローモーション」とかは、前の年が「あけて、あけて」だったのでノリコが今度はバラードがやりたいと言ってたりしてたのもあったり、個人的な思いもあって、明確にこういう曲を作りたいって、情景まで伝えて作ってもらいました。
ツジコ : あれはたっちゃん、かなりイメージを持ってたよね。
Tyme. : テーマというか隔年で明るめな曲、しっとりした曲みたいな感じでわけたりしてましたね。他に、いつも1曲だけの配信なので曲によっては長めのアウトロを作ってまた頭からループで聴けるようにしたり、「神様のバケーション」は、僕が1972年生まれだからBPMを72にしたり地味にそういうことはしてました(笑)。基本的にはどんよりしない音楽を作ろうと思ってました。ギフト曲以外のアルバム収録曲は年末に向けて作ったわけではないので、やりたいことをやっているって感じですね。
ツジコ : 年末年始あたりに作ってる事もあって、気分的には未来に向かって作ってます。
メロディを作る力がすごく上がってきている
――ちなみに、アルバム・ジャケットはツジコさんの髪の毛ですか? アルバムを聴いた後に見たので、すごく意外な感じがしました。
ツジコ : そうそう。自分の髪の毛を自分で撮った写真で、それを繋ぎ合わせたんだけど、何か暗くなっちゃって(笑)。
Tyme. : 一瞬ギョっとしたけどね(笑)。しかも裏のイラストは赤いし、一体何が起こってんだろ…? って。
ツジコ : イラストも暗かったんだよね。何でかって言うと、イラストを描いてくれている木村(敏子)さんに「世界」の曲と歌詞を聴いてもらって、そのイメージで描いてほしいって言ったの。それもあって「世界」の歌詞をイラストと一緒に載せたんだよね。
――前回話したときも思ったんですけど、本当にお2人は仲がいいですよね。曲作りも、リラックスした状態なんですか。
Tyme. : ギフト・ソングに関しては、クイックに作るって事は念頭に置いてますね。2人とも別の活動や師走で忙しかったりするから、リラックスしてゆっくり作るというよりは、勢いで作ろうみたいに思ってやっています。
――ツジコさんも歌詞を書く際は、スピード感を持って書いてしまうんですか。
ツジコ : 歌詞の内容自体にスピード感があるかはわからないけど、作るのは早いよね。
Tyme. : 最近感心するのは、メロディが毎年よくなっていっていることなんですよ。メロディを作る力がすごく上がってきている。もちろん昔からそれなりにちゃんとしていたけど、コーラスとかハーモニーの付け方がすごい技巧的になっている感じ。だから、いつも曲が上がってくると嬉しいんだよね。「スローモーション」「世界」「トロピックペンギン」のコーラスとか特に気に入ってます。「ギュンギュン」も不思議なメロディだなって。
ツジコ : 最近メロディをちゃんと考えなきゃなと思ったんですよね。今更ですけど(笑)。
――逆に言うと、今まではメロディのことはあまり考えていなかったんですか。
ツジコ : そうなの、考えてなかったの。最近たっちゃんと何曲かやっているうちに考えるようになってきたの。でも全然ソロの作品をリリースしてなかったから、まだ発揮できてないんだけどね(笑)。
Tyme. : いや、この2、3年で発揮しているなと思ったよ。
ツジコ : 昔は適当だったの。今でもそうなんだけどね(笑)。
Tyme. : 考えてないんじゃん(笑)。
――あははは。そもそもの始まりは、お2人とイラストレーターの木村さんで何かを作ろうと思ったことがきっかけなんですよね。
Tyme. : そもそもは友達の結婚パーティで僕のバンドMASで演奏する機会があってその時のイントロ的なネタとして軽くノリコに歌ってもらったものがあって、その後そのメロディを使って僕が勝手に1曲作ってごく身近な人達にメールだけで送ったのが始まりですね。今回はその曲は収録されてませんけど。次の年からは2人でちゃんと曲を作って、どうせなら、とグリーティング・カード的に木村さんのイラストを使って… という流れですね。なので木村さんの存在も大きいです。GYUのジャケにある彼女のイラストも楽しんでほしいですね。過去の作品も書き下ろしてくれているので、そのアーカイブを見れる機会を作れたらいいなと思います。
ツジコ : それも含めて、みんなに聞いてもらえたら嬉しいな。
Tyme. : そうだね。聴いてもらえることや喜んでくれることが楽しくて続けていることなので、いつも通りギフトソングを聴くのと同じ感覚でアルバムを聴いてもらえたら嬉しいですね。
ツジコ : 日本だけじゃなくて、他の国にも広げていけるように、レーベルのみんなも応援してくれるのが嬉しいよね。
Tyme. : そうだね。Editions Megoからもリリースされるし、色んな場所にツアーにも行きたいよね。
ツジコ : 私は日本に住んでいないから、すごくアジアに思い入れがあるの。今までは欧米の音楽ばかり流行っていたじゃない。最近は韓国の音楽とかも聴かれるようになっているみたいだけど、アジアの音楽をちょっとでも欧米の人にも紹介できると嬉しいよね。
――そういえば、年末恒例のギフト・ソングは今後どうしていくんですか? 個人的には、やってほしいなと思うのですが。
Tyme. : やると思うけど、どうかな?
ツジコ : 時期を変えてお盆とかにやってもいいね。
Tyme. : それもいいかもね。めっちゃジャパニーズ・テイストにして。
ツジコ : お化け的なね(笑)。そうだ、お化けアルバムにしちゃおっか!
Tyme. : で、ジャケは逆にめっちゃ明るい感じでしょ(笑)。
RECOMMEND
V.A. / penguin2009 remixies
『GYU』にも収録されている「トロピックペンギン」の元となる楽曲(「penguin2009」(2009年リリース))を、Ametsub、fragment、SU:の気鋭の3組がリミックス。ツジコノリコの作品としては珍しい、ポップでスペーシーな原曲を、それぞれのアーティストが解体・再構築しました。
ツジコノリコ / 少女都市+
2006年に良音エレクトロニカレーベル「インパートメント」より発表されたツジコノリコのアルバム。2001年のアルバム『少女都市』に以前Megoから12インチとしてのみリリースされていた『I Forgot The Title』から5曲、そして日本盤オリジナルとして新曲 "ハープソング"をプラスした復刻日本盤!ポップでありながら非常に心地よいノイズを同居させるアーティスト。
MAS / 音源えんけい / En Kei (HQD ver.)
円径、遠景... 点と点がつながる輪や線。彼方の景色。Rock、Dub、Jazz、Electronicaを内包した音楽性でMASの3rdアルバム。過去2作から格段に進化したサウンド、そして様々な情景や感情をゆさぶる美しいメロディやリズムが踊る最高傑作。シンプルで複雑、ポップでアンチ・ポップな全9曲を24bit/48kHzの高音質でお届け。ゲスト・プレイヤーとしてpasadena/あらかじめ決められた恋人たちへの石本聡がdub mixで、BALLOONSの塩川剛志がギターで参加。ジャケットを手がけるのは創作漫画集団mashcomixメンバーであり、MASの1st、2ndも手がけた仙こと軍司匡寛。
PROFILE
Tyme.
エレクトロニカ/ダブ/ジャズのエッセンスをサウンドに注入したバンド"MAS(マス)"のリーダー「ヤマダタツヤ」のソロ名義。美術作家ヤノベケンジ作品の音楽やtoto (suika)のアルバム「○to○」のプロデュース、ツジコノリコとのコラボレーション、cokiyu、sgt.のリミックスを手がける。MASとして"えんけい/En Kei"を始め3枚のアルバムをリリース。他にもグランツーリスモ5、FIFA、HONDA、BMW、SONY、札幌国際短編映画祭など様々な映像作品の音楽制作を数多く行う。現在Tyme.名義でのEPを準備中。
https://ttymd.com/
https://soundcloud.com/tymemas
Tujiko Noriko
2000年、1stアルバム『化粧と兵隊』(『I forgot the title』Mego, '02 )を発表以降、14枚のソロ、共作アルバムを、Mego, Tomlab, Room40, Fat Cat, NatureBliss,Asphodel等からリリース。2003年『ハードにさせて』はPrix Ars Electronicaにて受賞。ヨーロッパを中心に、映画、ダンス、インスタレーション、アニメーションに楽曲提供、そして、Sonar, Benicassim, Mutekをはじめ、世界のいたる土地でコンサートを行う。過去共作者には、Aoki Takamasa, Riow Arai, Lawrence English, Peter Rehberg, Stephen O'Malley, Tyme. 等。また、2005年より、映画制作をはじめ、2本の中編「Sand And Mini Hawaii」「SUN」を完成。カルティエ財団, uplink, Image Forum Festival等での上映を行う。近々、竹村延和とのコラボレーションアルバムのリリース予定、そして現在、6年ぶりソロアルバム、2本の初の長編映画制作を準備中。パリ在住。一児の母でもある。
https://www.tujikonoriko.com/