銀杏BOYZと壊れたバイブレーターズ / SEX CITY〜セックスしたい〜
全18曲入り
発売日 : 7月28日発売
価格 : 150円(MP3 / WAV) / 1200円(アルバム価格)
本作は銀杏BOYZ初のインストゥルメンタル劇伴全曲集。更に環ROY等にトラックを提供しているECCYもリミキサーとして参加している。今回、彼らはルールを決めた。それは「峯田が台本を読み全体を把握しつつ、そのイメージにとらわれずに普段の銀杏BOYZの活動ではできないことをやる」というもの。銀杏BOYZがバンドとして大人になる瞬間を感じるとることが出来るアルバムになっている。
本人達の意思を超えた存在
本来ならアルバム内容について語るのが筋だろうけど、少し脇道の部分から話を始めさせてほしい。今作のリリースに伴うインタビューが、雑誌『bridge』vol.64に掲載されている。そこで峯田和伸が語っている言葉からは、彼がどれほど複雑な状況下におかれているか読み取れる。 「僕がやりたい音楽はあるけど、そういうものを超えて、もうやんなくちゃいけないバンドになってるから」。もはや銀杏BOYZは、峯田やメンバーだけのバンドではない。聴き手や世間の期待を背負った、本人たちの意思を超えた存在になっている。そのことに峯田は自覚的だ。「やっぱりお金が発生して、お客さんにぶつける以上、どっかでまがいものとアートの狭間というか。だから本物であり、そんな高尚なものでもないどっかでうさんくさいものになってんだよな、僕ん中で銀杏BOYZっていうのは」と、バンドを評している。 自分の本当にやりたい音楽と、ファンや世間から求められている銀杏BOYZ像。その相反する2つの状況に挟まれた峯田にとって、映画や演劇の世界は唯一解放される場所なのだろう。2009年以降、『少年メリケンサック』や『ボーイズ・オン・ザ・ラン』など、映画への出演が増えている。それは、銀杏BOYZの峯田和伸からの逃避という意味合い以上に、一歩ひいた部分に身をおくことでバンドのあり方を再確認する意味合いもあるに違いない。
今回リリースされる『SEX CITY 〜セックスしたい〜』は、やはり(というのも、なんだけど…)銀杏BOYZ名義のオリジナル・アルバムではない。『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の監督であり、演劇ユニット「ポツドール」の主宰者でもある三浦大輔氏の舞台「裏切りの街」の劇伴全曲集である。今作には、「ピンクローター」を除けば、歌ものはほぼない。グラインド・ハードコア色の強い「魔er 羅er」では歌詞ともつかない歌詞を叫んでいるが、明白な意味を想起させるような曲はない。それがこのアルバムの風通しをよくしている。舞台用の音楽という特性もあるけれど、舞台の空気や雰囲気を第一に考えることによって、これまでの銀杏BOYZ像に縛られた緊張感から少し離れた楽曲作りが出来たのだろう。普段の銀杏BOYZでは出来ない、チン中村(Gt)の作曲や我孫子(ba)と村井(Dr)が考えたパーカッションなども採用しているようだ。
作家の村上春樹が、短編を書いたり翻訳の仕事をすることで、長編に向かって調整をしていくように、銀杏BOYZにとっても『SEX CITY 〜セックスしたい〜』は新しいアルバムと過去の2枚の作品を繋げるブリッジになっていくことだろう。ポルカ曲やEccyによるリミックスまで収録された今作からは、どんな作品が出来上がっていくのか想像もつかないけれど、単に聴き手の期待に沿っただけの作品にはならないことだけは分かる。5年分の葛藤と経験が詰め込まれた銀杏BOYZのアルバムが日の目を見る日も、そう遠くないように思える。(text by 西澤裕郎)
張りつめた緊張感を持っているバンド達
elements / MACHINATIONS
京都アンダー・グラウンドの重鎮、3年ぶりのニュー・アルバム! プロデューサーにスーパーカー等を手掛けた益子樹(ROVO、 ASLN他)を迎え、全て一発録りで切り開いた最新型elementsサウンド。
オストアンデル / ostoandell
2001年に東京で結成、2004年には拠点を故郷に移し今も沖縄で活動を続けるオストアンデル。都会、田舎、それぞれの土地の匂いを吸収し音に反映させているのだろうか? 彼らの奏でるメロディは淡白で都市的な印象を与えつつも、どこかに郷愁の影も隠し持っている。うるさくなく物足りなくもなく、適量の音を正確に並べて進む曲と、そこに乗るyukaDの飄々としていながら時に感情的に揺れる声は、渇いた中にまだ湿り気を残していて、その無気力さを更に切なく感じさせる。
割礼 / PARADISE・K
日本のサイケデリック・バンドの重鎮、「割礼」あの幻の名盤をリマスター+ボーナス・トラック収録で再発! 今聴くと、絶妙に現在のニューウェーヴ、ゴスパンク、リバイバルに命中しているこの盤。実に23年前の作品であるにもかかわらず、内容的に古さを全く感じさせないのは当時からすでに特別なバンドであった事の証であろう。
銀杏BOYZ profile
2003年1月、ゴーイング・ステディを突然解散させた峯田和伸(Vo/Gt)が、当初ソロ名義の「銀杏BOYZ」として活動。のちに同じくゴーイング・ステディの安孫子真哉(ba)、村井守(Dr)と、新メンバーのチン中村(Gt)を加え、2003年5月から本格的に活動を開始。2005 年1月にアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と「DOOR」を2枚同時発売し、続くツアーやフェス出演では骨折、延期、逮捕など多くの事件を巻き起こす。2007年にはメンバー自ら編集に参加したDVD「僕たちは世界を変えることができない」、シングル「あいどんわなだい」「光」を発売。 2008年にシングル「17才」を発売。ヴォーカル峯田は「アイデン&ティティ」「色即ぜねれいしょん」「ボーイズ・オン・ザ・ラン」など映画出演も多数。