ヒップホップ・ライター斎井直史による定期連載がスタート!!第1回は今話題のSuchmosとMigosについて!!
jjj、Febb、KID FRESINOからなる、今をときめくヒップホップ・グループFla$hBackSや、日本人初となるグラミー賞ノミネートを果たした(2017年時)、starRoをいち早く取り上げてガチンコ・インタヴューを行ってきたライター、斎井直史が月1連載のコラムをスタート!! 気になる第1回は、斎井がスタートの意気込みと鬱憤を糧にコーナーの趣旨を説明するイントロダクション的な回となっております。今後もお楽しみに!!
第1回 SuchmosとMigos
突然、3年ぶりくらいに編集長の飯田仁一郎さんからお呼ばれしまして、ヒップ・ホップの事をフリーテーマで書いていいと言われました。過去にはあんな記事や、こんな記事を書かせてもらっていましたが、おっしゃ、初めてコラムを書くで!!
初回は飯田さんにお呼ばれした時期にOTOTOYではSuchmosがトップにあるので、それを見た瞬間に思ったことを書こうと思います。それは、同時期に米ビルボード・チャートで起きたMigosの快挙と、最近メキメキと有名になってゆくSuchmosと並べて思った事でした。Suchmosの音楽はヒップ・ホップではないですが、ブラック・ミュージックの影響が色濃いってことで許してやってくだせぇ。メンバーにはヒップ・ホップ・バンドのSANABAGUN.兼任者も2人いる事だし。
Migosというのは2013年に「Versace」で知られるようになった、若くてド派手な南部の3人組です。彼らは以降も話題性に欠くことがなく、今では現行ヒップ・ホップ・シーンのアイコン的存在ですが、それはヒップ・ホップ界のみの話…。「Versace」ですら、ビルボード総合チャートでは最高99位でした。 それが遂に今年1月下旬に総合チャート1位となったのが、「Bad & Boujee」です。目を疑いました。これはSuchmosで言えば「インディーズ界では頭一つ出てるよね」という存在から、「女子高生なら大体知ってる」レベルになるくらいの快挙です。
ちなみに、「Bad & Boujee」のBoujeeとはブルジョアジーのスラング。この曲はご多分に漏れず、ワルでリッチなライフ・スタイルをネタに言葉遊びに興じています。高級ブランドの名前を羅列し「こんなん普段着」と〆る。「Uberを呼んだらバッドなビッチもセットで来た」くらいモテる。この種のラップはウィード、マニー、そしてビッチを歌詞に混ぜ、いかに曲をヒットさせるかというゲームだと思うくらいが丁度いいかもしれません。
ここでようやっと本題になります。Suchmosは真逆なんですね。「STAY TUNE」ではまさに対局の事を歌詞にしています。ブランドでキメてる奴にはグッド・ナイトなSuchmos。グッとくる女性を探してても見つからないSuchmos。てか、Suchmosのビデオには女性すら出てこないのも、なんか清潔感あっていい感じです。そして、そもそも世界観よりも音の響きからして真逆。いや、真逆なのはSuchmosだけじゃない。最近で言えば星野源もそう。昔で言えば、久保田利伸やDREAMS COME TRUEもそうです。ラップで言えば、スチャダラパーやDragon Ash、少し違うけどtofubeatsですらもそう。何が言いたいかというと、日本で市民権を得たブラック・ミュージックって、総じてオシャレなものとして広まる。しかし、それだけでは物隠しきれない物足りなさ…俺にはあります。その物足りなさを少し埋める小さな一つになれればと思います。知られざる存在を語る際にはメジャーなものと対比し、既に認知されたものを紹介する時には、新鮮味ある解釈を届ける…。逆を突かれたり、上に被せられたり、まるでカウンターがキマった時のような高揚感を求める気持ちを、記事に反映していこうとおもいます。
ということで、コーナー名は題して「パンチ・ライン of The Month」! 個人的に印象に残ったラインを紹介して毎度終わろうかとおもいます。今回で言えばMigosの「Bad & Boujee」のイントロ部から「俺らの金に貰った金(Old Money)なんて無い。この大金、全て俺らが稼いだ金だ(New Money)だ。」と言う、
We never really had no old money. We got a whole new money tho.
でしょうか。こんな曲が日本でもオリコン1位になったりしたら、日本も少しは元気になってるかもしれない。ストリート・ビジネスで。(斎井)
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