数年前、CDショップにはメロー系ヒップ・ホップがよく陳列されていた。その頃を覚えている人なら、Kero-Oneと聞いてこう思うのではなかろうか?「Kero-Oneね。キレイな音が、しっとりしたビートに乗っているんでしょ? 」
そんな人にこそ、彼の新譜『Kinetic World』を聴いて欲しい。今作は彼を世に知らしめた「ジャジー・ヒップ・ホップ」の枠をはみ出している。勿論、Kero-Oneの曲は依然としてスムース。だが今作は、モノクロ写真を、カラフルにデザインしたような曲ばかり。歌っちゃうし(歌うようなフローではないが )、エレクトロな音も使うし、バウンス系な曲さえある。セル・アウトなどと思うなら、ぜひ試聴してほしい。彼は急な作風の変化を試みたわけではなく、まさにアルバム・タイトル通り『動的な世界』を持っているが故の多様性であるとわかるはず。進歩し続けるKero-Oneの音楽観を、ダイレクトに感じ取れるのではないだろうか?
インタビュー & 文、翻訳 : 斉井直史
全部のアルバムが同じようなサウンドになってほしくない
——Black Eyed Peasのwill.i.amからのビデオ・メッセージ見ましたよ。彼はあなたの相当なファンみたいですね。お互い知り合いになったのは、いつ頃から?
Kero-One (以下K): 彼が僕の曲を知ったキッカケが、僕の知り合いがwill.i.amの所で働いてて、僕の曲をオススメしてくれたからみたいなんだ。だから、彼からビデオ・メッセージが送られてきたときは、本当にビックリした。Estelleの『AmericanBoy』とか、Black Eyed Pease の『I got a feeling』とか彼の曲がビッグ・ヒットして、なおかつ僕も彼の作品にリスペクトを抱いた時期だったからね。
——彼と一緒に音楽をやる機会などありますか? 多くのファンがにわかに期待していると思いますよ。
K : 実はもうコラボレーションについて、いくつかトラックがあって、will.i.amとも話たんだけどね。まだ、今は何も僕の口からこれ以上は何も言えないかな。
——西海岸のシーンについて教えてください。とりわけ、日本でも人気の高いアンダー・グラウンド・シーンについて。
K : 西海岸は依然として、素晴らしいシーンだよ。Fashawnっていうフレズノ出身のラップ・スキルが凄くて、アメリカでも凄い勢いで広まっててね。今回、参加してもらったよ。もちろん、dumbfoundeadっていうウエスト・コーストのナンバー・ワン・バトル・エムシーもいるよ。
——アメリカではヒップホップ・シーンにおけるアジアンの立ち位置とは、どのようなものですか?
K : 「ASIAN KIDS」っていう曲で、それについて触れているよ。僕らはついに才能溢れるアジアン・ミュージシャンがアメリカでは市民権を獲得しつつある時代にいると感じている。この10年は、アジアンにとって、それはもう巨大な何かを、アメリカのヒップホップ・シーンに残す気がするんだ。
——「Asian Kids」では韓国のラッパー、MYFをフューチャリングしています。韓国系アメリカ人として、やはり韓国のシーンはチェックしている?
K : ああ、勿論だよ。 dumbfoundead, myk, epik highのtabloみたいな韓国のアーティストの曲全部ね。実は、epik highとは最近まで一緒に仕事してたんだ。
——普段、どういった音楽を聴いている?
K : いつも全ての種類の音楽に触れているよ。エレクトロ、ヒップホップ、ファンクにジャズ。たまにそれが僕にとって問題なんだ。其故、僕は一つのスタイルに定まることができない。みんな僕にジャジー・ヒップホップを要求するけど、いつもそればかりやってられないよ。最近はEpik HighやJay Electronica、La Rouxなんかを聴くね。
——アルバムをリリースするごとに、聴きやすく洗礼されたものになっていきますね。自身の音楽観の将来のヴィジョンが明確に見えている?
K : 常にアーティストとして成長しつづけるさ。全部のアルバムが、同じようなサウンドになってほしくない。ファンクやソウルの要素を引き継ぐよりも、人々が僕の曲を思い出した時のそのスタイルっていうのが、幅広くておもしろいものでありたいね。
——またビックリしたのが、ヴォーカルがふんだんに盛り込まれていますね。「My Devotion」で歌ってるのはご自身ですよね?
K : どうもありがとう。そう、アレは僕が歌ったんだ。ブリティッシュ・エレクトロ・ヒップホップな感じの曲を思わせる曲をつくりたかったんだ。
——日本でもブレイクして来日も経験していますが、日本で競演したいアーティストはいますか?
K : ああ、日本は大好きだよ。既にMitsu The Beats、Cradle Orchestra、そしてDJ Deckstreamとは競演したんだ。Nujabesとは一緒にやるべきだったが、悲しいことにもう遅すぎる話しだよね... Comachiには去年会ったんだけど、彼女はとても謙遜家だね。たぶん、彼女とは一緒にやる気がするなぁ。
——ちなみにアメリカで競演したいアーティストや、ホットな人は?
K : Jay Electronica、EminemやDR.DRE、そういった先駆者たちとやってみたいな。
——今後のプランを教えてください。
K : 今韓国のラッパーのMYKと新しいプロジェクトに向けて動いている最中で、Epik Highとも動いてる。また、僕がプロダクションの全てを担っているとこの新しいソウル・シンガーとも作業を進めているよ。沢山の事が進んでいるから、うまく時間を捌いていきたいね。曲を作る時に焦るのだけは絶対に嫌だからさ。
KERO ONE Works
Kero One / Early Believers
パーフェクトと言う言葉はこの作品のためにある! ファースト・アルバムで大ブレイクを果たした西海岸が誇るコリアン・ラッパー、ケロ・ワン待望のセカンド・アルバムにはベン・ウェストビーチ、トゥオモという世界的ソウル・シンガーが参加、グッド・ヴァイブの極みとも言うべき最高のビートに載せて鬼キャッチーなコラボを演じる超話題盤! マジでジャジー・HIPHOPの枠を超えた神がかり的なPOPさ!
JAZZY HIPHOPの枠では終わらない
Q-ILL / High Life
95年頃より都内、横浜を中心にライブ活動、サウンド創りを始める。1999年DIYU(現diy Toikon)と活動を共にするようになる。2000年B-BOY PARK MC BATTLEでは驚愕のパフォーマンスで審査員特別賞を受賞。2004年を迎えて様々な事情から活動ペースが鈍り、春からはほぼ活動停止状態になる。しかし、同年11月活動を再開、待望の新しいアルバムの制作に入る。2000年に制作された幻の自主制作盤が待望の再リリース。
THE RESIDENTS feat. Rob Swift / Open House
HIPHOPシーンで絶大な支持を獲得しているMuneshineと、EmskeeとのユニットThe Good Peopleで見事ブレイクしたSaintとの張強力ユニットが贈る、魔法のビート・メイキングと卓越したライミングの詰まった1stアルバム。
V.A / The Love Movement
JAZZY HIP HOP is NOT DEAD... DJ OKAWARIやtsunenoriなどリバイアスの誇る最強クリエイター陣がN.Y.の人気Hip HopグループTha ConnectionのリードMC「Hus」を迎えたリバイアス史上、最大のコラボ・アルバムが完成!! サウンドとアート・ワーク他全てがリバイアス・ミュージックの今後の方向性を指し示し、『Listening is Believing』シリーズをも凌駕する最重要作品です!
PROFILE
2003年の『Check The Blueprints』、翌年の「Keep It Alive」という2枚のシングルでアンダー・グラウンド・ヒットを飛ばした、カリフォルニア出身の韓国系ラッパー/プロデューサー。2005年、待望のデビュー・アルバム、『Windmills of My Soul』をリリース、メローで音楽性の高い内容が好評を得た。2007年にはレーベル・サンプラーKero One presents Plug Labelを、09年にはセカンド・アルバム『Early Believers』を発表している。
・KERO ONE official web
・KERO ONE my space