ベースメント・ジャックスの新作はバック・トゥ・ベーシックなハウス・ミュージック!
彼らの音で、残りの夏の日々を踊り尽くそうじゃないか。 約5年ぶり、7作目のフル・アルバム『Junto(フント)』をリリースしたベースメント・ジャックス。ハウス・ミュージックを基礎としたダンス・アクトとして、ある意味でフランスのダフト・パンクと双璧を成す存在と言っても良いかもしれない。先頃も、フジロックで来日し、圧倒的なライヴを繰り広げたばかりだ。本作もベースメント・ジャックスらしい、ハウスを起点としながら音楽が極上のエンターテインメントであることを指し示す、そんな作品を作り続けている。これまで、ラテンにはじまり、南米~カリビアンやアフロなどなど様々な音楽性を取り入れ、そのダンスフロアの面積を広くしてきた彼ら。新たにCharaが参加した「Wherever You Go」も収録。
Basement Jaxx / Junto (Special Edition)
【配信フォーマット】
ALAC / FLAC / WAV(16bit/44.1kHz) / mp3
【価格】
単曲257円、アルバムまとめ購入1,851円
【収録曲】
01. Intro / 02. Power to the People / 03. Unicorn / 04. Never Say Never / 05. We Are Not Alone / 06. What's the News / 07. Summer Dem / 08. Buffalo / 09. Rock This Road / 10. Sneakin' Toronto / 11. Something About You / 12. Mermaid of Salinas (Album Version) / 13. Love Is At Your Side
01. Galactical / 02. What A Difference Your Love Makes / 03. Daddy Makes Boom Boom / 04. Never Say Never (Jaxx Extended Mix) / 05. House Scene (Edit) / 06. Back 2 The Wild (Jaxx Extended Mix) / 07. Mermaid of Salinas (Boris Brejcha Remix) / 08. Moments In Dub / 09. Wherever You Go / 10. Back 2 The Wild (Korean Version) / 11. Back 2 The Wild (Gorgon City Remix) / 12. Never Say Never (GotSome Bring It Back Remix - Edit)
彼らなりのハウス・ミュージックのトリビュート
さぁ、夏も終わりだと言うのに(まだまだ残暑は続きそうだけど)、やっぱり熱くなる、ベースメント・ジャックスの新作はあいも変わらずだが楽しいグルーヴに満ちあふれている。とはいえ、その中心はあくまでも“ハウス・ミュージック”ではないんでしょうかね。 古い話になっちゃってすまないんですが、一応、彼らはどんなアーティストなのかおさらい。1990年代後半からロンドンで活動を続ける、フェリックス・ブラクストンとサイモン・ラトクリフによるデュオ。1990年代は、自身のレーベル〈Atlantic Jaxx〉からマイペースにシングルをリリースしながらも、疾風のラテン・ハウス「Eu Nao」、サンバ・ハウスの決定版「Samba Magic」といった楽曲、アンダーグラウンド・ヒットさせ、デリック・メイなんかもそのミックスCDに使ったりと、とにかくコアなハウス / テクノのDJ層にも人気のアーティストだったわけです(このあたり楽曲を収録している当時のレーベル・コンピ『Atlantic Jaxx Recordings』が、それこそ数百円で中古屋に転がってるので必聴!)。
で、転機はやはり1997年リリースのシングル『EP3』に収録された「Fly Life」。ディスコのフレーズをメタメタにエフェクトしながらループさせるその手法は、同年のダフト・パンクのファースト『Homework』あたりとも共振して、ハウス・ミュージックを、それこそメジャーなチャートにまで押し上げる、ひとつ大きなヒットとなるわけ。ある種、パンキッシュな「Fly Life」の自身のリワークなどは、パンク・ガラージなどと評されるわけです。
と、この動きがひとつ契機となって〈XLレコーディング〉と契約、アルバムで言うと1999年の『Remedy』~『Rooty』あたりを境に、DJカルチャーへとダンス・トラックを届けるクリエイターというよりも、エンターテインメントへと振り切れた態度で“ダンス・ミュージック”をよりフロアに共振させるアクトとして活動の軸が移ってくわけです。それこそ、その音楽性にはラガ・ダンスホール、UKガラージやワールド・ビート的な要素を迎え入れ、よりエンターテインメント性を強く、強靭にしていく様は、DJカルチャーらしいどん欲な拡張性そのものって感じたるものとなるわけです。そのあたり、今年のフジロックに行って、熱狂した方に感想を伺ってみるのがいいでしょう!
そして本作。そんな、ここ10年以上、モンスター・ダンス・アクトとして蜜月を送った〈XL〉を離れ、自身のレーベルである〈Atlantic Jaxx〉に出戻ってのアルバムと相成なったわけですが、このアルバムのタイトルは「一緒に / ともに」という意味だそうで、フェリックスの「このアルバムで、世界と一つになれるようななにかをやりたかった」というテーマが影響してか、本作はここ数年の作品に比べると、わりとバック・トゥ・ベーシックなハウスのグルーヴが前面にでてきております。言って見れば、そう、わりと初期の〈Atlantic Jaxx〉のノリに近いんじゃないでしょうか。もちろん、ジャングル~UKガラージの変種的な「Buffalo」なんかを聴くと「さすが」といった感覚なんですが、「Power to people」「We Are Not Alone」といった曲は、まさにそのタイトルも含めて、初期のゲイ・カルチャー由来のハウス・ミュージックのと言えば、ビンビンにフロアを煽っていた彼らの姿よりも、これ、彼らなりのハウス・ミュージックのトリビュートなんじゃないのという姿が浮かんでくるわけです。
垂直に爆発する、これまでの彼のパーティ・ソングから、一歩、彼らのその足下にあるハウス・ミュージックのパーティーが延々に続いて行きそうな、そんな意志がそのグルーヴからも伝わってくるわけです。 いやはや、これって刺激物だけをめったくそにモザイク上にビルドアップしただけのEDMとの格の違い、センスの違い、出自の違いを見せつけるように、バック・トゥ・ベーシックした作品であるようにも思うわけですよ。はい。(text by 河村 祐介)
Basement Jaxx過去作
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PROFILE
Basement Jaxx / ベースメント・ジャックス
フィリックス・バトンとサイモン・ラトクリフによるダンス・ユニット。コア層からも支持を得ながらダンス・ミュージックをポップスに押し上げたアーティスト。99年のデビュー作から英チャート4位を獲得し、05年にはグラミー賞を受賞。フジロック04ではトリ、フジロック09ではクロージング・アクトとして出演し史上最大の観客を動員。09年に発表した5作目『スカーズ』が世界各国の主要メディアで年間ベストを獲得。14年7月フジロックで再来日した。