まさにレフト・フィールド!! UKでいま最も刺激的なレーベル〈Planet Mu〉
OTOTOYアプリにて4アルバムを毎週連続フル試聴スタート
第1回 11月5日 〜 11月12日 μ-Ziq『Chewed Corners』
第2回 11月12日 〜 11月19日 Machinedrum『Room(s)』
第3回 11月19日 〜 11月26日 RP Boo『Legacy』
題4回 11月26日 〜 12月3日 Boxcutter『Dissolve』
OTOTOYアプリの最新機能:アルバム・フル試聴。この機能を利用していま最も刺激的なエレクトロニック・ミュージックのレーベル〈Planet Mu〉の、その魅力を紹介しよう。〈Planet Mu〉は、いまやジュークやポスト・ダブステップ、さらにはシンセ・ウェイヴ / ヴェイパー・ウェイヴ / ニューエイジなどといった、ある意味でここ数年のエレクトロニック・ミュージックのカッティング・エッジな部分をリリースするレーベルだ。4週の間、〈Planet Mu〉のアルバム×4枚をフル試聴+レヴューで紹介していく。(text by 河村祐介)
第四回 Boxcutter『Dissolve』
12月03日(火)24 : 00までOTOTOYアプリでフル試聴可能!!
Boxcutter『Dissolve』
【配信形態】
MP3のみ 単曲価格 150円 / まとめ購入価格 1,500円
【トラック・リスト】
01 : Panama
02 : Zabriskie Disco
03 : All Too Heavy
04 : Cold War (vs Ken & Ryu)
05 : Passerby
06 : TV Troubles
07 : The Dissolve
08 : Moon Pupils
09 : Factory Setting
10 : Allele
11 : Topsoil
12 : Little Smoke vs Kab Driver
13 : Ufonik ft Brian Greene
14 : Other People
15 : Porno
16 : Under’D-Stat
ボックスカッターの、その作品の軌道は〈Planet Mu〉の、2000年代後半のある部分を代弁するかのようだ。ある意味でその時期の〈Planet Mu〉らしいアーティストといえば、彼のことがどうしても浮かんでしまう感覚がある。
ボックスカッターは、北アイルランド出身のバリー・リンのプロジェクトで、そのスタートは2000年代半ばだ。最初のリリースはマウント・キンビーやスキューバを輩出するなど、いわゆるポスト・ダブステップの下地を作ったロンドンのレーベル〈Hotflush〉から。レーベルにおいても最初期のリリースにあたる2005年にリリース。このときはグライミーなワンドロップ・タイプのダブステップをリリースしている。シーンが「これから」という時期で、数多くリリースされるシングル・レベルのリリースから、正直頭一つ抜き出たという感覚のものではなかったのといえるだろう。やはり、その固有の音楽性を表現しだしたのは〈Planet Mu〉からアルバムをリリースしてから、という印象がある。
2006年、突如として〈Planet Mu〉の、そのリリースにダブステップのリリースが増えた時期に彼もその戦列に加わることになる。当時の〈Planet Mu〉のダブステップ路線はというと、レーベルがそれまで得意としていたレフトフィールドなブレイクコアやエレクトロニカとも共鳴するような感覚を持ったもので、それを端的に言えばディスタンスやベックスドのように刺々しいインダストリアル色の強いものであったり、もしくはウィルス・シンジケートなどグライム寄りのサウンドだ。ボックスカッターもこうした流れにいた(どちらかと言えばグライム寄りだが、ブレイクコア的なセンスもある)。彼の個性というと、作品でときおり見せるエレクトロニカ的なシンセの感覚であった。それはある意味で、親分、マイクの音楽性――奇怪でインダストリアルなリズムに、柔らかなシンセにも通じるものとも言えるし、いわゆるサウス・ロンドン・ストリートから生まれてくるダブステップとはひと味違ったサウンドを示している。そのあたりは2006年のファースト『Oneiric』と2007年のセカンド『Glyphic』あたりで聴くことができる。
こうした路線が変化してくるのは2009年のサード『Arecibo Message』あたりで、このアルバムではダブステップ的なビート感は交替し、メロウなエレクトロ・ファンク的な要素が加わったアルバムとなった。その方向性を変えているのがはっきりとわかる。時期的には、この後、〈Planet Mu〉自体のリリースもいわゆるダブステップから“ポスト”ダブステップ的な方向性になっていく時期だ。またこの作品が呼び水になったのか、2010年には、同じ様なメロウ・ファンク路線のオリオル『Night And Day』やアイタル・テック『Midnight Colour 』といった作品がリリースされている。
そして、2011年、4枚目のアルバムとしてリリースされた本作『The Dissolve』は、まさにこうしたボックスカッター自体の、そしてレーベルのメロウ・ファンク路線が結実した作品と言えるだろう。この動きは、フローティング・ポイントあたりが押し進める、J・ディラ~フライング・ロータス以降のビート・ミュージックとポスト・ダブステップの交点とみることもできるだろうし、またはストレートにディム・ファンクや、ここ日本のLUVRAW&BTBなどの、エレクトロ・ファンクのリヴァイヴァリストとみても良いかもしれない。ともかくその艶やかなサウンドはレーベルと本人の音楽性の変遷を鑑みるににかなり驚くべきものなのだ。あれからこの傑作をリリースしたのちに、あまり動きがないこと、そしてジュークやヴェイパー・ウェイヴなど、〈Planet Mu〉もさまざまな動きをみせていることを考えると、次作がどのようなものになるのか? 楽しみで仕方が無い
第三回 RP BOO『Legacy』
11月27日(火)24 : 00までOTOTOYアプリでフル試聴可能!!
RP Boo『Legacy』
【配信形態】
MP3のみ 単曲価格 150円 / まとめ購入価格 1,500円
【トラック・リスト】
01 : Steamidity
02 : Invisibu Boogie!
03 : Red Hot
04 : There U’Go Boi
05 : Battle In The Jungle
06 : The Opponent
07 : 187 Homicde
08 : Speakers R-4 (Sounds)
09 : Havoc Devastation
10 : No Return
11 : Robotbutizm
12 : Sentimental
13 : What Cha-Gonna Du
14 : Area 72
15 : Porno
16 : Under’D-Stat
〈Planet Mu〉は、シカゴ・ジューク・シーンの重要なアーティストを確実にとらえている。DJアール、DJロック、DJダイアモンド、DJトラックスマン、そしてこのRPブーだ。現地の人間しか知らない、ローカル・スターにスポットをあて、着実にリリースを重ねている。ギーク向け音楽レーベルと思われがちだが、ところがどっこい超フィジカルな音楽と真っ正面から向き合ってるレーベルである。RPのリリースはそうしたレーベルの象徴的なできごとだろう。
音楽がヤバイから。ものすごくヤバいから。
本名、Kavain WayneことRPブー。“ジューク界のオーパーツ”と形容されるほど、奇抜でいながら地味、という作風である。芸名のあたまにひっついてる”RP”とは、「レコード・プレイヤー」の頭文字だそうで、そこらのDJとひと味ちがうことくらいおわかりいただけるだろう…… 以上。
スンマセン。これでは、なんの説明にもならないので少し掘り下げてみます。現地(シカゴ・サウス・サイド)のフットワーク・バトルでは、クルー所属の専属トラックメイカーが存在し、基本DJはよそのクルーのトラックをバトルの現場で使うことがないんですよ(使用するトラックにも縄張り意識があるのでしょうね。レゲエのサウンドクラッシュみたいですね)。しかし、RPブーのトラックはクルーの垣根を超えて、バトルの現場で長年使用されてるんですよ。なぜか? ヤバイから。フッドを暴力と金で支配するギャングスタでもなく、自転車屋さんを営む温厚な一般人ケヴィンさんが、なぜダンサーの支持を得ているのか? 音楽がヤバイから。ものすごくヤバいから。
RPブーのビートは、一聴しただけでは、打ち込みを間違ったかのようなタイミングで鳴らされるシーケンスが組まれている。そんな、通常のリスニングやクラブ・プレイでは機能しないような代物が、フットワーク・バトルという限定された環境では、絶大な効果を発揮するんですよ。ミニマルなベースライン上で、突然打ち鳴らされるスネアやタムにあわせて、ダンサーがトリッキーなムーヴをきめるんですわ。人馬一体ならぬ、人音一体といいますか。とにかく、めっちゃ合うんです。くわえ煙草に缶コーヒーというか。で、こんなんなんぼいうてもわからんから。アルバム収録の「Speakers R-4 (Sounds)」で、ダンスをしている動画をみていただきたい。
トラックスマンが去年来日したとき、こんなふうにいってました。「RPの曲は理解するのに3ヶ月かかる」。3ヶ月は大げさですが、それほど練り込まれた曲を作ってしまうんです。R70という、時代遅れのドラムマシーンで(※D.J.FULLTONOとほぼ同一の制作環境。このドラムマシーンのプリセット音が超重要だったりするんですが… タㇺとか)。そんな、フリーキー1等賞トッラクメイカーの彼だが、温厚さもハンパない。そのエピソードとして、ひとつ紹介。
フットワークの起源のひとつとされる、DJ SLUGOの「114799(通称ゴジラ・トラック)」(Databass Records)は、実はRPが制作したものだった。タイトル通り、怪獣映画のあの有名なサンプリングが印象的なフリーキーなトラック。ちょうどヒップホップ・シーンではファラオ・モンチの「Simon Says」が一世風靡したころにドロップされたシットである。SLUGOが自分の曲として〈Databass〉を経営するDJゴッドファザーに売っちゃったんです。あれよあれよとゲットー・ハウスとしては異常なセールスを記録し、めっちゃ金儲けしたそうで…2000枚くらい? ふつうやったら、「出るとこ出まっせ?!」てなるか、問答無用ではじいてしまうはずですが、RPは「ええで」って全然気にしてないそうです。金に執着してないのか、人ができてるのか、その両方か…。計り知れないとこですね。(※ファラオと同じネタであることについて尋ねたら、「偶然」とのこと。)
≈ RP BOO JAPAN TOUR 2013 ≈
<東京公演>
11.23 (SAT) @ Shinjuku LOFT Tokyo
OPEN/START 23:30 ADV 3,000円 | Door 3,500円
shinjuku LOFT Presents「SHIN-JUKE vol.5」
【出演者】
RP Boo (Planet Mu from Chicago)
D.J.Fulltono (Booty Tune)
Satanicpornocultshop (negi)
hanali (Gorge In, Terminal Explosion!!)
HABANERO POSSE
ALchinBond
Booty Tune crew
SHINKARON crew
<大阪公演>
11.22 (FRI) @ Club Circus Osaka
OPEN/START 21:00 ADV 2,500円 | Door 3,000円
Booty Tune & Dress Down Presents「SOMETHINN3」
【出演者】
RP Boo (Planet Mu from Chicago)
D.J.Fulltono (Booty Tune)
Keita Kawakami (Dress Down)
DJ TUTTLE (Marginal Records)
Quarta330 (Hyperdub)
terror fingers (okadada + Keita Kawakami)
CRZKNY (Dubliminal Bounce)
DjKaoru Nakano
Paperkraft (Alt)
AZUpubschool (doopiio)
第二回 Machinedrum『Room(s)』
11月19日(火)24 : 00までOTOTOYアプリでフル試聴可能!!
Machinedrum『Room(s)』
【配信形態】
MP3のみ 単曲価格 150円 / まとめ購入価格 1,800円
【トラック・リスト】
01 : She Died There
02 : Now U Know Tha Deal 4 Real
03 : Sacred Frequency
04 : U Don’t Survive
05 : Come1
06 : Youniverse
07 : GBYE
08 : The Statue
09 : Lay Me Down
10 : Door(s)
11 : Where Did We Go Wrong?
12 : TMPL
本人には悪いが、その名前を若干忘れかけていたベテランの、まさかのシーンの最前線への帰還。本作がリリースされ、そして2011年を通して、高い評価を受けるなかで多くの人が思ったことではないだろうか? これもポスト・ダブステップ~ベース・ミュージックの出現によってシーンに生じた、音楽の新たな可能性の成せる技なのだろう。
NYのトラヴィス・スチュワートによるプロジェクト、マシーンドラムは2000年代初頭、エレクトロニカ~アブストラクト・ヒップホップの巻き起こる泡のなかで産声を上げた。言ってみれば、プレフューズ73やプッシュ・ボタン・オブジェクトといったアーティストたちのフォロアーだ。もっと言えば、1990年代後半にオウテカが風穴を明けた電子音響とヒップホップによるビートの実験に身を投じたアーティストだ。とはいえ、決して、いま上げた様な先駆的アーティストたちよりも大きなインパクトを感じるアーティストではなく、2番手、3番手といった印象があったのは、当時を知る者にとって正直なところだろう。
2000年代を通じて、コンスタントにリリースを続けていたが、現在に続く流れとなるのは、やはり2010年グラスゴーのポスト・ダブステップ・レーベル〈Lucky Me〉でのリリースからだろう(ちなみにリミックスはこれまたポスト・ダブステップ系で重要な〈Night Slugs〉筆頭のBok Bok)。その音楽性はダブステップやジューク、新たなビート・ミュージックに接続するメロウなエレクトロ・ファンクといったもので、丁度、〈Planet Mu〉が当時リリースしていたOriolやItal Tekといったアーティストの音楽性と通じるものだ。恐らくだが、この流れによって、2011年〈プラネット・ミュー〉からシングル、そして本作『Room(s)』がリリースされるわけだ。
『Room(s)』のひとつのエポック・メイキングなサウンドの特性は、やはりそのブレイクビーツ使いだろう。それは〈Ninja Tune〉からの最新作『Vapor City』でさらに発揮されている。ダブステップやジュークといった、ハウス/テクノ以上のBPMを持つ新世代のビートに、彼の昔からの得意技でもあるグリッチ以降のチョップされたブレイクビーツを融合させたものとすればわかりやすい(ある意味で、ここ最近のラシャドの作品などの、ジュークとジャングルの融合に通じるものだ)。この『Room(s)』は、その年の最後には、同じく〈Planet Mu〉から2011年リリースされたKUEDO『Severant』とともに、RAをはじめとした主要な海外メディアの年間ベストものを総なめにし、〈Planet Mu〉のポスト・ダブステップ、ポスト・ジュークと言ったサウンドのイメージを決定つけたリリースであった。こうして、シーンに返り咲き、前述のように、つい先頃、〈Ninja Tune〉から最新作をリリースしたばかりで、そのノリにノっているっぷりに拍車をかけている。〈Planet Mu〉のここ数年の活発な動きと注目度を考えると、恐らく『Room(s)』が〈Planet Mu〉からリリースされなければ、彼の再起もまた違ったスピードの、違ったものになっていのではないだろうか。
OTOTOYアプリのインストールはこちら⬇
第一回 μ-Ziq『Chewed Corners』
11月12日(火)24 : 00までOTOTOYアプリでフル試聴可能!!
ファーストやセカンドの頃の未発表楽曲を編集した『Somerset Avenue Tracks』を挟んで今夏に届けられたμ-Ziqのひさびさのアルバム。まるで、直前にリリースされた未発表曲集が本作の序章のように響く、そんなサウンドだ。初期作品と地続きのきらめく、鮮やかなシンセの感覚。それを支えるリズムにはジャリジャリとしたブレイクビーツの感覚が残っている。しかしながら、新作を聴いて感じることができるのは、その延長線上にありながらアップデートされている部分だ。それはやはり昨今のレーベルの路線と軌道を同じくしている。透明感のあるシンセは、ニューエイジ的なギラギラとした感覚やヴェイパー・ウェイヴに漂うどこか胡散臭いまがい物感を発散しながら、彼特有のメランコリックなメロディを大げさに描いていく。そしてビリビリとスピーカーを揺らすベース・ミュージックのサブ・ベースだ。まだに“いま”の彼のサウンドというのがビンビンと伝わってくる。「このアーティストにして、このレーベルあり」といった作品に仕上がっている。〈Planet Mu〉というレーベルのいまを知るにも良い作品と言えるだろう。
μ-Ziq『Chewed Corners』
【配信形態】
MP3のみ 単曲価格 150円 / まとめ購入価格 1,500円
【トラック・リスト】
01 : Taikon
02 : Christ Dust
03 : Wipe
04 : Monyth
05 : Twangle Melkas
06 : Melting Bas
07 : Houzz 10
08 : Feeble Minded
09 : Hug
10 : Mountain Island Boner
11 : Tickly Flanks
12 : Smooch
13 : Gunnar
14 : Weakling Paradinas
15 : Forger
16 : Smear
17 : New Bimple
18 : XT
μ-Ziq、そして〈Planet Mu〉とは?
〈Planet Mu〉のレーベル・イメージは、設立から約20年ほどたって、むしろ年々良くなっているような感覚すらある。1990年代のテクノ好きや2000年代初頭のエレクトロニカ好きにとって、〈Planet Mu〉は決してクールなレーベルというわけではなく、もう少しオタク……というか、もっと知る人ぞ知る的な存在であったはずだ。
〈Planet Mu〉は、1995年メジャーの〈Virgin〉に移籍したμ-Ziqのレーベルとして発足した。むしろ初期においては、彼のレーベルというよりも、彼の作品に対するメジャー内部でのカタログ番号的な部分が大きい。その後、1998年あたり、メジャーとの契約が切れたあたりから、μ-Ziqの〈Planet Mu〉は自身の作品をリリースし、彼が目をつけたアーティストたちをリリースしていくことになり本格的にレーベルとしてのスタイルになっていく。
ちなみに、μ-Ziqことマイク・パラディナスのデビューは、エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェームスに直接、デモ・テープを渡したことによってはじまる。よって、1993年のデビュー・アルバム、続くセカンドはリチャードのレーベルである〈REPHLEX〉からのリリースとなった(その後、自身のレーベル〈Planet Mu〉から再発)。その作品の基礎はその後、ジャングル/ドラムンベースへと進化するハードコア・レイヴやブレイクビーツ・テクノのビート感と、エイフェックス・ツインら、インテリジェンス・テクノ方面を結びつけたような作品で、ノイジーなブレイクビーツとメランコリックなシンセのラインが独自の雰囲気を醸し出していた。
その後、メジャー時代は、やはりリチャード一派のルーク・ヴァイバートとともに、ある意味でDJカルチャーのなかで成熟&フォーマット化していくドラムンベースを、よりフリーキーに展開していく(このあたりの音が〈Virgin〉からリリースされたのは、ドラムンベースの当時の盛り上がりもあったのだろう)。これがいわゆるドリルンベースやその後、ブレイクコアと呼ばれるような音へと発展していく。とはいえ、並行して、彼は多作&多名義の活動で知られ、モンド的なダウンテンポをJake Slazenger名義で名門〈Warp〉や〈Clear〉からアルバムを、またはイージー・リスニングなリチャードとのMike&Rich名義を出すなど、さまざまなタイプの楽曲をリリースする。
2000年代をまわると〈Planet Mu〉では、若手のブレイクコア系のアーティストのリリースなどが増えていく。レーベルのイメージとしては、ナードなエレクトロニカのやんちゃなレフトフィールド・サイドを担うようになってくる感覚だ。
しかし、2004年あたりから、そうした“ブレイクコア”的な流れが少し変わってくる。具体的に言えばマンチェスターのグライム・クルー、Virus Syndicateやそのトラック・メイカー、Mark One、さらにはVex'd ―― 現在ではKuedoとRoly Porterといった方が良いだろう――のリリースをしたあたりからだ。まだまだそれらは当時はかなりアンダーグラウンドなダブステップやグライムをより広く伝えるものであった(とはいえ、相変わらず実験的なエレクトロニカ系の作品も平行してリリースしている)。とはいえ、このあたりの感覚は、グライムやダブステップの当時のリリースしている音を聴けば、その祖たる、彼のハードコア・レイヴやジャングルへの愛情を考えれば実際は理解しやすい感覚でもあったりする。
その後は、異形&カッティング・エッジな音楽を自ら内側へと引き寄せる能力を発揮し、先述のようなジューク(~ポスト・ジューク)、そしてポスト・ダブステップ、ニューエイジやシンセ・ウェイヴといった作品群を世に送り出している。噂では、そのあたりの路線は若い奥方の影響もあるとかないとか…… 。とはいえ、いまや“ハウス以外”とでも言えそうなビート・パターンを持ったダンス・ビート、そしてシンセ・ミュージックの最前線を送り出すレーベルとなっている。