OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.169
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
追悼:クラウス・シュルツェ
さる4月26日、ドイツのエレクトロニック・ミュージック・シーンの巨匠、クラウス・シュルツェが亡くなった。いわゆるクラウト・ロックと呼ばれる、ドイツのプログレッシヴ・ロックの文脈にて、エレクトロニクスを追求したアーティストのひとりで、その後のアンビエント、ニューエイジ、テクノ、エレクトロニカといった電子音楽に多大な影響を与えたアーティストである(おそらくゲーム音楽もそのひとつだ)。ワーグナーなどドイツの伝統的なクラシック音楽とジャーマン・トランスを結ぶような、重厚かつ壮大でシンフォニックな作風で知られる。そのキャリアはドラマーとしてスタート、まだまだサイケデリックなムードの残る1960年代末に、エドガー・フローぜを中心としたバンド、タンジェリン・ドリームに加入、後にクラスター(Kluster)やソロとしても活動する、コンラッド・シュニッツラーとともに3人でアルバム『Electronic Meditation』を1970年にリリースした。まだ当時はシンセ・サウンドではなく、バンド編成で作られた作品。サイケデリックでアブストラクトなフリー・ミュージックで、アモン・デュールの『Psychedelic Underground』やカンの『Monster Movie』とともに、いわゆるロックの外側へと出ようとする1970年前後のクラウト・ロックの芽生えを捉えた作品として語られることが多い作品だ。ただしクラウスはその後脱退(タンジェリン自体はエドガーのソロ・プロジェクトとして電子音楽に没頭、その後、ニューエイジの大家に)、ギターリスト、マニュエル・ゲッチング(『E2-E4』などで知られる)とともにアシュ・ラ・テンペルを結成するもこちらもファーストのみに参加後、脱退、ある意味でその後のクラウト・ロック、特に電子音部門の重要アーティストたちのプロジェクトに関わりながら、以降はソロへ、そしてドラマーから彼自身も電子音楽家としての道を歩むことになる。
元祖ダーク・アンビエントな感覚もある『Irrlicht』(1972)がファースト・ソロとなる。その後は怒濤の勢いで作品をリリースし続け、そのシンセ・サウンドは、1980年代にはニューエイジ・ミュージック、さらには1990年代にはテクノと、時代のエレクトロニック・ミュージックと邂逅(もちろん強烈に荘厳なクラウス・シュルツェ“らしさ”が溢れたサウンドはそこに溶け込むのは拒みつつ)、約50年にわたるキャリアで膨大な作品を残している。昨今のニューエイジ・リヴァイヴァルなどで、一時期は忘れ去られていた1980年代の作品やそのプロデュース作品など、その多岐にわたるシンセ・サウンドがたびたび時代を超えて注目されてきた。とにかく、なにかと名前が消えないアーティストであった。OTOTOYには、その全盛期と呼ばれる1970年代から、昨今のニューエイジ・リヴァイヴァルで注目される1980年代の作品などもロスレスでそろえているので、そのなから10曲を。合掌。