ドロっと濃いブラック・マシン・ジャズ・ファンクを!――国内注目のビートメイカーのアルバムを独占先行ハイレゾで
鈴木信之によるビート・プロジェクト、ンガホ・タキーア(N'gaho Ta'quia) 。sauce81名義などでも活躍する彼の新たなプロジェクトは、ヒップホップ~ビート・ミュージックを基礎構造に、ファンク、ジャズなど、ブラック・ミュージックの要素が強く入り交じるアルバムだ。その響きは、ジャズ~ファンクの黄金時代をビート・ミュージックのタイムマシンによって蘇らせた、そんな作品と言えるだろう。日本でのLAビート~J・ディラ以降のジャズ・カルチャーの紹介者のひとり、原雅明のレーベル〈disques corde〉からのリリースとなっている。
OTOTOYでは本作を1週間先行、独占ハイレゾ音源にてリリース。細かなビートやキーボードの“隙間”のニュアンスをぜひともお楽しみ下さい。
N'gaho Ta'quia / In The Pocket(24bit/48kHz)
【配信フォーマット / 価格】
alac flac wav ともに : トラック価格 216円 / アルバム価格 1,944円(税込)
【Track List】
01. In The Pocket (Intro)
02. Reminiscence
03. Same Treat
04. I'm Not Playing Any Games
05. Rollin'
06. Shake It
07. Turnover
08. I Ain't Your…
09. The Chase Pt.1
10. Chocolate River
11. All Night In The Groove
12. They're Gonna Funk Us Out
13. Somethin' Funky's Goin' Down
14. The Chase Pt.3
15. The Woozie Town
16. In The Pocket
※UKのジャーナリスト、Laurent Fintoniによる本作へのライナーノーツが付属します。
巨大な力を過去と未来にて行使する仮面の男
まるでヴードゥーのイコンのようなジャケット(世界的に活躍するTOKIOこと青山宗央が担当) 、そのプロジェクト名といい、どこか遠く、音の地平線の向こう側にアフリカを見る、そんなヴィジョンが浮かぶプロジェクトだ。そのサウンドは、ハイブリッドなビートと、70年代のジャズ、ファンクが入り交じり、言ってしまえばJ・ディラ以降のビート・ミュージックの地平に広がる、現在のジャズのニュー・ジェネレーション=ロバート・グラスパーやその周辺とも接続する響きを持っている。とはいえ、接続と言っても本作の立ち位置は、そうしたシーンの中心よりもサイケデリックでレフトフィールドなものではあるが。
ここまできて、本作がこの国のアーティストである、と明確に意識した人はいるだろうか? 別にそんなこと大して大事なことではないが、ンガホ・タキーアはsauce81名義などでも活躍する(本名義よりも、もう少し、ベース~ハウスなどエレクトロニック・ミュージックの要素が強い)、鈴木信之によるソロ・プロジェクトだ。彼は秋田に生まれ、幼少期はアメリカは南部、ジョージア州で過ごしたアーティストだ。いまやエレクトロニック・ミュージックの巨大な登竜門となっているRed Bull Music Academyを卒業後、アーティスト活動を本格化させた。自身の活動以外にもポッドキャスト・メディア〈コズモポリフォニック〉の運営を行うなど、その活動は多岐に渡っているようだ。また珍しいところでは、多くのブラック・ミュージックの土台とも言えるゴスペルに傾倒し、本格的なゴスペル・グループにも参加していたことがあるという。
sauce81の音楽性とも共通しているブラック・ミュージックの豊潤な香りは、本作ではよりストレートに現出している。資料にはこうある。本アルバムは「仮面の男に支配される過去と未来が交錯する架空の街Woozie Townのためのサウンドトラック」であると。なるほど、その豊潤なキーボードの鳴りやベースラインのファンクネスはブラックスプロイテーション映画のフィルムから聴こえるジャズ・ファンクと、それを支えるビートはヒップホップ~エレクトロニックなフューチャー・ファンクを奏でる。まるで未来と現在が呪術的にサイケデリックに交差するSF映画のようでもある。ヒップホップ~ビート・ミュージック上に生き返った黄金時代のジャズ、ソウル&ファンクの電気仕掛けのサイケデリックな走馬灯とも言うべき音楽性を示しているのだ。彼が音楽制作において最も大きなインスピレーションの源泉として見ているであろう、ブラック・ミュージックが大きな流れとなってサウンドを定義つけている。それはまるで彼が夢想する映画のシナリオに関連付けていうのなら、その巨大な力を過去と未来にて行使する仮面の男、それではないだろうか。
最後に蛇足になるかも知れないが、本作もその一部と言えるかも知れないが前述のようなJ・ディラ~ロバート・グラスパーの出現以降の世界で盛り上がりつつある現在のジャズというものがある。この流れ、OTOTOYでもそうした作品をいつくか扱っているのでぜひとも体感していかがだろうか? (河村祐介)
RECOMMEND
Kan Sano / 2.0.1.1.(24bit/48kHz)
アルバムのタイトル・チューンに参加したキーボーディストであるKan Sanoのソロ作。現代のヒップ・ホップ、R&B・シーンに不可欠な存在である彼のピアノは、世界中のミュージシャンを魅了している。極端にレイド・バックしたビートに乗るメロウなローズ・ピアノを聴くだけで、彼の魅力に納得せざるをえない。
Diggs Duke / Offering For Anxious
ワシントンを拠点に活動するマルチ・プレイヤーであるディグス・デュークの初アルバム。J・ディラの影響を受けた現在進行形のジャズを思わせるグルーヴにほのかな土臭さが加わったことで、同じシーンのどのアーティストにの似つかない独自の音像を作り出している。クラブ・ミュージック界のキーパーソンであるジャイルス・ピーターソンも賞賛を送っている。
Jose James / Blackmagic
スムースで豊かな肌触りの歌声が人々を魅了するホセ・ジェームズの2ndアルバム。ジャジー・ヒップホップ、R&Bなグルーヴが大変聴きやすい。ドロっとしたファンクネスに少し疲れた耳に最高にフィットするであろう。
LIVE
N'gaho Ta'quia "In The Pocket" Release Party
"What's In Your Pocket?" 6月14日(土) 17:00OPEN
KATA(恵比寿 LIQUIDROOM 2F)
1500円(w/フライヤー)/2000円(当日)
Live : N'gaho Ta'quia aka sauce81,Yosi Horikawa
DJ : 矢部直,Mr.Melody,RLP
Exhibition : TOKIO
PROFILE
N'gaho Ta'quia
プロデューサーsauce81ことnobuyuki suzukiの別プロジェクト。sauce81としては、2013年に『Fade Away EP』12"<Wonderful Noise>、『All In Line / I See It EP』12"<Catune>、77 Karat Gold(grooveman Spot & sauce81)『Love / Memories In The Rain』7"<Jazzy Sport>のリリースがある。生々しいマシン・グルーヴとラフで温かみのあるシンセ使い。雑味たっぷりの楽器演奏と時折表すファジーでメローなボーカルワーク。ディープなソウルとファンクネスをマシンに宿すプロダクション・スタイルで、これまで国内外多数のコンピに楽曲提供、TOKiMONSTA、LOGIC SYSTEM、Julien Dyne、Ovall などのリミックスも行ってきた。2008年、バルセロナにて開催された Red Bull Music Academy に招待され、Metamorphose や Sonar Sound Tokyoなどの国内フェスにも出演。COSMOPOLYPHONIC のメンバーとして活動している。N'gaho Ta'quiaでは、よりグルーヴとファンクネスを深めると共に、アルバム制作へと繋がるコンセプチュアルな世界観を表現している。
>>N'gaho Ta'quia Official Twitter