ネット・ネイティヴ世代から飛び出したバリアリック・フィーリング、KAZURAMOS
ここにデビューを飾るは、エレクトロ・トリオ、KAZURAMOS。獣の着ぐるみで正体を隠した3人の男女によるユニットだ。ここにリリースされたファースト・アルバム『Surf』は、その自らの前途を照らすように明るく光り輝く電子音で彩られた新たな世代のチャーミングなエレクトロ・ポップを体現している。
ベース・ミュージック / EDM以降のリズムの足運びと、アルバム全体を貫くシンセは、開放感と多幸感に満ちたチルウェイヴ経由のバリアリック・フィーリングを携えている。若き、希望に満ちたエレクトロ・ミュージックをぜひとも!
KAZURAMOS / Surf
【配信価格】
wav 単曲 250円 / まとめ購入 1,800円
mp3 単曲 200円 / まとめ購入 1,500円
【Track List】
01. Waves / 02. Surf / 03. Peach Web / 04. SICILY / 05. Shampoo Boy / 06. Y&G / 07. Enigma's Dance / 08. Ms Donut / 09. Three Seven / 10. Pentagram / 11. Tottoria
INTERVIEW : MIRU(KAZURAMOS)
もはやネットだって現場だ。インターネットを媒介に、ここ数年で広がり続ける、(ヒップホップすらもふくめた広義の)エレクトロ・ミュージックの波。ここ、日本にも間違いなくそうしたシーンは存在して、DAコンバータを通して、デジタル・サウンドが現実の空気へと放たれるように、現実の音楽シーンに対しても、ひとつのうねりを作っている。前述のように、まさにこのネット・ネイティヴ世代のバンド、KAZURAMOSもそうしたユニットのひとつと言えるだろう。
メンバーは、紅一点のMIRUと、テグジュペリと、神戸に在住のTsudioStudioの3人。インターネット・ネイティヴな世代らしく、その音楽趣味はあっけらかんとマニアックで、その音楽への姿勢は音にて示されていると言えるだろう。今回は、MIRUに単独インタヴューとなった。この獣の着ぐるみに隠された、その正体とは?
インタビュー&文 : 河村祐介
究極なんでもできちゃうじゃないですか、電子音って限界がない
――今回、インタヴューはMIRUさん、おひとりですが、KAZURAMOSとしては、メンバーは3人、あとテグジュペリと、神戸に在住のTsudioStudioさんの3人って感じなんですね。
MIRU : そうですね。
――いつからやってるんですか?
MIRU : このプロジェクト自体は3年前くらいですね。
――今回が初音源と。
MIRU : 作品としてはそうですね。
――どうやってこの3人に?
MIRU : もともとテグジュペリとTsudioStudioが、音楽好きの仲間というか。そういう話をよくしていて。ふたりが音楽談義しているようなつながりのところに私が連れてこられて…、そこから私も混ざって音楽の話をするようになって…。そうしたら聴いている音楽も近いところもあって仲良くなって。最終的に、この3人で遊んでるときに、テグが「俺らはもう音楽やるでしょ」って、「俺ら、もうつきあってるよね」ぐらいの軽いノリ(笑)。そこから音楽を作り出して、結成が決まったという感じですかね。本当に自然で、とにかく軽いノリでしたね。言葉で音楽のこととかを語るっていうのは難しいじゃないですか? でも、その感覚がすぐに共有できたのがこの3人だったという。
――共通の音楽趣味っていうのがあったと。
MIRU : そうですね。でも、他のふたりは私に比べて、無茶苦茶マニアックに雑食に音楽を聴いてて。でも、私の好きな音楽とも似ているところもあって。いまで言うと、トキモンスタとか、ジェームス・ブレイク、グライムス、カシミヤ・キャット、アニマル・コレクティブ、フォー・テットとか…、そのあたりはみんなメンバーも好きで、そのへんは共通って感じなんですよ。聴き方としては、他のふたりがディープに、マニアックに聴いているので、それを教えてもらうというスタイルで。私に関してはなんの先入観もなく、とりあえず教えてもらったものを聴いて、好きか嫌いか判断して、そこから好きなものをチェックして。で、自分でもそのアーティストに関して掘っていくっていう聴き方ですね。なんの先入観もなく、良いものは良いって聴くんです。
――傾向的には打ち込みといっても、いわゆるゴリゴリのDJもののテクノとかダブステップとか、そういう感覚ではなくて、チルウェイヴとかエレクトロとか、いわゆるインディ・ロックに近いフィールドのが好きそうですね。
MIRU : そうですね。
――そのあたりのエレクトロニック・ミュージックに引かれた理由は?
MIRU : やっぱり、どんどん新しいアイディアを出していける。というか、究極なんでもできちゃうじゃないですか、電子音って限界がないというか。
――ああ、そこですか。
MIRU : そこはポイントですね。
――ちなみに、入り口自体はどこなんですか? この手のダンスものなんかを聴くようになったのは。
MIRU : もともと10代のころに、そういう音楽ばかり聴いてて…、あ、えっと、そのきっかけか(笑)。でも、好きなものを聴いてたらそっちの寄っていったというか。最初は…、あ、あるとき海外でCDを見てたときに、DJフードのアルバムを買ったんですよ。そこからNINJA TUNEとかWARPを聴いていって…、最終的にすごい好きになったのはヘクスタティック。そこからですね。
いまのインディ・ロック系のエレクトロのシーンは日本であんまりないので
――ちなみにこのユニットはじめるときから、みんな打ち込みとはやってたの?
MIRU : テグジュペリとTsudioStudioは打ち込みができる状態。私もシンセで作曲をやる感じだったので。
――そして、その手の音楽が好きで、彼らと出会ってKAZURAMOSに至ると。まだ数回のライヴですけど、フィールド的にはライヴハウスというか、そこまで思いっきりクラブでやるみたいな感じではなさそうじゃないです。
MIRU : いま、一緒にやったのはDE DE MOUSEさんとか、WONDER WOLRDとか、あとはフルカワミキさんとか、いわゆるエレクトロ系にはなるんですが。
――ライヴは活動のなかで重要にしている部分だったりするんですか?
MIRU : 最初はライヴはやらないで良いかなとか思ってたんですけど。単純に楽曲をリリースするだけで、それをDJが使おうが、リスニングだけに使われようがどっちでも良いんですけど。このいまのインディ・ロック系のエレクトロのシーンは日本であんまりないので。海外では、普通になってるけど、まだそんなに大きな動きにはなってないと思うんですが。でも、私たちはダンス・ミュージックの今? というか、次はココなんじゃないかと思ってて。
――おお、大きく出たね。
MIRU : なんと言ったら良いかな、とにかく新しい道を切り開きたかったというか。いわゆるクラブでも、バンドでも、どっちかに偏ったところではないシーンを切り開きたかったというか。
MIRU : 作詞作曲、アレンジは3人ともやるので役割分担は大まかにはあるんですけど、基本的には全部をみんなでやるって感じですね。誰かがネタを持って来て、そこに付け加えてみたいな作り方もしたりしますけど。とにかく、基本的にひとりで完結することはないですね。データを送って、足したり引いたりというのを3人でやってて…、バンドみたいな作り方だと思う。
――このアルバムに対して「こういうアルバムにしたい」みたいなのは、制作途中に話したりはしたんですか?
MIRU : そうですね。普段自分たちが聴いてるものに近いものを作るというのが、やりたいねという、わりとストレートなところで。あとは、テーマは“海"というのだけあって。それが土台にあったんですよ。
――じゃあ、そのテーマに収まらないでこのアルバムに入らなかった曲というのはあったの?
MIRU : ありましたね。
――例えば、今回はわりといまの“海"みたいなものから来るのかもしれないけど、開放感がある曲調が多かった気がするんだけど。例えばダークなものとか。
MIRU : 作ってたりはしてたんですけど、やっぱり3人で作業しているあいだに、ここにくるまでの段階ではじかれられて。逆に「これはリード曲だよね」って、はじめに作ってた曲も入ってなかったり。結局、それもはじかれて。
――曲作りで大事にしている部分とかってどこですか?
MIRU : 一応、メロディは単純に弾いても良いものっていうのは共通認識としてあるかな。メロディを重視しているというのは、大事にしてきましたね。リズムから作ったりとか、コード進行を作って、とか作りはじめは結構まちまちなんですが、それを結局は3人のなかでグルグル回して。
――でも、メンバーのTsudioStudioさんは神戸在住ですよね? 他のふたりは東京となると、ほぼ会わないでデータのやりとりのみって感じなんですか?
MIRU : 基本はそうなんですけど、合宿みたいに集まって一気に仕上げるっていうときもありましたね。もちろん、その後もデータで持って帰って作業もしましたけど。
「こんな感じじゃないよね」ってところからはじめて、試して、試して
――このアルバムを作ってるときなんかは、なに聴いてました?
MIRU : 私個人で言えば、ダントツでトキモンスタとグライムスですね。別に「女性アーティストが」という先入観があって聴いたわけではないんですけど、女性が作った曲が好きみたいで、自然と選んでしまうんですよね。後から調べると「あ、女性だったんだ」っていうぐらいのことが多いです。それは、独特の間とか女性らしいセクシーさとかかもしれないですけど。絶えず、他のふたりからいろいろな音を紹介されるので、どんどん聴くっていう感じですね。
――他のふたりはどんな感じで探してるんですか?
MIRU : やっぱりSoundCloudが大きいみたいですよ。アーティストとかリミキサー伝いに巡って、良い物をどんどんチェックしていくっていう感じみたいですね。あとはYouTubeとかも。海外のメディアとか見るって言うよりも、直接音を聴いて、そこから伝って探すって感じみたいですね。
――DJとかはしてないんですか?
MIRU : 3人ともやってませんね。
――そういえば、KAZURAMOSという名前はどこかきてるんですか?
MIRU : みんなで名前を決めているときに怪獣っぽい名前にしたいねって、モスラとか、いろいろ考えてて、バブリー感も欲しくて…、で、偶然出たKAZURAMOSっていうのに決まって。それは前に言った「3人で音楽やるよね」って言った、その日に決まりました、
――ああ、「つきあっちゃう?」みたいなノリの日ですね。
MIRU : そうそう(笑)。
――ヴォーカルの処理の仕方とか気になったんですけど。
MIRU : おお、すごいですね。
――すごい(笑)?
MIRU : そこが1番今回のアルバムで実験したかったところなんですよ。ヴォーカルは、特に他のふたりの処理のやりとりは数学の世界っていう感じで。もう計算とかしだして…、その時間、私は休憩時間なんですけど(笑)。そうやって“抜け"感を出すのに気をつかった。そこが1番、実は聴いてほしかったところで。
――まんまと当てたと!
MIRU : さすがですねぇ。自分たちが好きなアーティストたちの声の“抜け"感がすごくて、とにかくどうやってやってるのかいろいろ実験してみてって感じですね。「こんな感じじゃないよね」ってところからはじめて、試して、試して。探求するのがおもしろくて。あとはサンプリングもひとつもしてないんですよ。全部メンバーで作った音で、そのあたりはこだわりがあって。この手のジャンルにしては、実は珍しいところかなと思ってます。
――なんちゃって打ち込み系とは違うぞ、と(笑)。
MIRU : ちょっとありますね(笑)。
――あと、ちらりとTwitterを見たんですが、そのあたりからだと思いますが、マスタリングに関してもEDMとかみたいなエッジーな感じの音を避けたみたいなことを書いてましたが。
MIRU : そう、丸みが欲しいというのはしつこいぐらいメンバーで言ってたんですよ。もう、音圧詰め込むような感じって嫌だなと思ってて。
――やってみたいことってなんですか?
MIRU : 今回、結構、自分たち的には実験的なことをやってみたんですけど、あとは…… フェスとかに出てみたいですね。
LIVE INFO
Honey-Vol.3-dorothy- by あまいものないと
2014年2月15日(土) @渋谷kinobar
EAM2014
2014年3月14日(金)@神戸 神仙閣
en004
2014年3月16日(日)@渋谷NEO
PROFILE
KAZURAMOS
MIRU、テグジュペリ、TsudioStudioからなる3人組ユニット。
ジェームス・ブレイク、ハドソン・モホーク、フォー・テット、フライング・ロータス、グライムスといった海外アーティストと共鳴するサウンドを土台に、どこか捻くれた独特のポップネスを表現。
レイヴ、バレアリック、エレクトロニカを筆頭に様々な音楽的要素を取り入れ、日本の音楽シーンの歩調を乱すべく現れた3匹が、日本のダンスミュージック界の未来を食い散らす!
>>KAZURAMOS Twitter
>>KAZURAMOS Facebook
KAZURAMOS Soundcloud
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ShinSight Trioのトラック・メイカー、Shin-Skiによるソロ・プロジェクト、ALMA DE STELLAの1stアルバム。飛び跳ねる電子音に悠久な風景を彷彿させる民族音が重なることで生まれる、不思議なポップ・ミュージック。95年に渡米し、本場のヒップホップ、ハウス、テクノ等のダンス・ミュージックの洗礼を受けたことから音楽制作を始め、そこにもともと持っている日本人としての感性をミックスさせることで、無国籍で普遍性を持ったALMA DE STELLAとしての音楽が完成。