電音部、ハラジュクエリアに再び青い炎が灯る!──〈電音部 AREA MEETING -HARAJUKU-〉ライヴレポート
バンダイナムコエンターテインメントが仕掛ける本格的なダンスミュージックを中心とした、音楽原作のキャラクタープロジェクト〈電音部〉。そのイベント〈電音部 AREA MEETING -HARAJUKU-〉が2023年3月5日、中野サンプラザにて開催されました。ハラジュクエリアの魅力がステージで爆発した、その模様をOTOTOYのスペシャルレポートでじっくりお届けします。
〈電音部〉の音源、配信中!
REPORT :〈電音部 AREA MEETING -HARAJUKU-〉
取材&文 : 西田健
バンダイナムコエンターテインメントが仕掛ける本格的なダンスミュージックを中心とした、音楽原作のキャラクタープロジェクト〈電音部〉。このプロジェクトのテーマである「新たなカルチャーとの遭遇体験」をイベントで提供する試みのひとつとして開催されたイベント〈電音部 AREA MEETING -HARAJUKU-〉が、2023年3月5日、中野サンプラザにて開催された。このレポートは、その夜公演である『承』の部の様子を記したものである。
現在5つある電音部のエリアだが、この〈電音部 AREA MEETING -HARAJUKU-〉は、そのなかからハラジュクエリアにスポットを当てたイベント。キャストによるライヴアクトと、楽曲を手がけたコンポーザーによるDJアクトのふたつが合わさって、ハラジュクエリアの世界観を十分に楽しむことができる公演だ。
そしてハラジュクエリアといえば、1年前の2022年3月19日、パシフィコ横浜 国立大ホールにて開催された、電音部ライヴイベント〈電音部 2nd LIVE -BREAK DOWN-〉で起きた、ハラジュクエリアのひとりである桜乃美々兎の、いわゆる“闇堕ち”である。それ以降電音部のストーリーは大きく動きはじめ、ヒール的な存在であるカブキエリアの出現や、美々兎の心情に沿った楽曲のリリースなど様々な動きがあった。あれから1年。「起承転結」の「承」と銘打たれた本日の公演で、果たしてどのようなストーリーが展開されるのか。美々兎は復活するのか。中野サンプラザの空気は、そんな期待と不安が入り混じっていた。
〈電音部 2nd LIVE -BREAK DOWN-〉神無月の部 ライヴレポート
開演前、ハラジュクエリアの3人による影アナが入る。この日は声出しが可能ということで、練習がてらのコールアンドレスポンスが行われたのだが、この日を待ち望んでいたかのように客席からの歓声はバッチリだった。さらに、この公演においては、スマホの使用が可能であることもアナウンスされる。ハッシュタグを付けてイベント内容のツイートを推奨するなど、明らかに普通のライヴイベントとは違うレギュレーションに驚かされる。こういう部分は、インターネットとの親和性の強い、電音部ならではの動きだ。実際公演中もSNSでは、リアルタイムにイベントの模様を実況したり、DJがかけている曲をシェアしたりと、いわゆるアニクラ現場と同じ楽しみ方をするお客さんも多かった。
アナウンスが終わると、激しいビートと共に客席からはクラップが鳴り響き、〈電音部 AREA MEETING -HARAJUKU-〉のイベントの幕が開く。『承』の部の1曲目はなんと、ハラジュクエリアきってのキラーチューン“Hyper Bass”。地鳴りのような重低音が中野サンプラザにこだまする。そこに桜乃美々兎役の小坂井祐莉絵、水上雛役の大森日雅、犬吠埼紫杏役の長谷川玲奈の3人によるウィスパーヴォイスが重なり、ライヴはすでに最高潮の盛り上がりを記録していた。無数の赤いランプのような照明に彩られ、2曲目に披露されたのは、これまたハラジュクの人気楽曲“ディストーション”。Yunomi謹製の激ヤバサウンドの連発に、脳髄からドーパミンが溢れ出していく。この2曲で、このイベントにかけるハラジュクエリアの気合がホンモノであることが伝わって来た。
ハラジュクメンバーの3人によるMCを挟んで、DJアクトとしてブースに現れたのは、現れたのはNeko Hackerのふたり。初手から。「ウー!ハイ!」という会場一体となるコールアンドレスポンステンションを上げ続ける。彼らは、DJに生のギターを合わせていくというスタイルなのだが、この生演奏が本当に圧巻だった。後半戦、「体力残すなよ!」と煽った後は、Neko Hackerが楽曲を制作した桜乃美々兎のソロ曲、“Do You Even DJ?”をプレイ。ギターの生演奏というスペシャルな要素も加え、この曲の可能性がガンガンに引き出されていた。そして、彼らのラストは、ハラジュク推しにとってのトラウマ曲“Do You Even DJ? 2nd”。この曲がかかることによって、このイベントが起承転結の「承」であることを体現しているかのようだった。
Neko Hackerのふたりがブースを去ると、スクリーンにはハラジュクメンバーのストーリーが映像で挟み込まれる。自らの闇を吐露する桜乃美々兎と、それに寄り添う水上雛と犬吠埼紫杏の姿に、胸がグッと締め付けられていく。映像が終わると、ステージには美々兎役の小坂井祐莉絵が現れ、“teardrop”を切なく歌い上げる。美々兎の心情を映し出したような歌詞に情緒が揺さぶられてしまった。続いて現れた犬吠埼紫杏役の長谷川玲奈は、ソロ曲“Tokyo Bug Night”を披露。その透き通るような歌声に、不穏な気持ちが和らいでいくような気がした。
DJアクトの2番手は、Nor。チルいビートで始まったかと思いきや、徐々に徐々に会場のボルテージを上げていく。自身の楽曲を軸にプレイしながら、バッチバチのエレクトロ・サウンドを会場全体に響かせていく姿は実に見事だった。途中、ハラジュクエリアの水上雛の楽曲、“Chick Chick Love♡”でハラジュクエリアファンを沸かせたかと思えば、シブヤエリアの大賀ルキアの楽曲“JUNGLE WAHHOI”をかけるなど、サービスも欠かさない。Neko Hackerと毛色は違えども、しっかりブチ上がるセットを展開していた。
また、電音部のイベントにおいて忘れてはならないのは、映像やレーザーを使ったビジュアル面での演出である。今回の映像演出とVJ を担当したのはFAIO、LAKU、higrasyの3名。その職人技はキュートさとダークさを併せ持つ、ハラジュクの世界観を表現する上で欠かせないものとなっていたのは間違いない。
再びスクリーンにはハラジュクメンバーのストーリーが展開され、そのあとは犬吠埼紫杏役の長谷川が“Prayer”を、そして水上雛役の大森が“タカラモノ”をそれぞれ歌い上げた。piccoの旋律が、聴く者の眼に涙を誘っていく。さらに、長谷川と大森のふたりはデュエットで、新曲“Full Moon”を披露。欠けた月が満ちていくように、ふたりの想いが聴く人の心を、そして美々兎の心をゆっくりと照らしていくようだった。
暗転のあと、DJブースにはさきほどの新曲“Full Moon”を手がけたYunomiがスタンバイ。初手からまるで浮遊するようなビートで会場を支配する。自身がこれまでに手がけた楽曲やremixをフロアに叩き込んでいくのだが、中野サンプラザを閉館する前に破壊してしまうかのごとき、強靭な低音がフロア全体に轟いていく。そのスタイルには一切容赦などない。それにもかかわらず、温かさすら感じさせられたのは、そのプレイの凄みが成せる技だと思う。DJとして圧巻のステージングを見せつけた後、Yunomiはプレイ中一言を発することなく、ただただお辞儀だけをしてブースを去っていった。
Yunomiが去ったあとのステージには、美々兎役の小坂井がひとりで立ち、独白がはじまった。そして、そこにキックが重なり、そしてシンセが重なり、それが歌になっていく。やがてハラジュクメンバーの全員が揃い、ひとつの曲が紡ぎ上げられていった。MCによると、この曲はYunomiが手がけた“Change”という最新曲とのこと。シンプルな四つ打ちのビートに、かなり複雑かつ緻密なメロディーが絡み合い、そこに乗せられる言葉が感情を揺さぶっていく。「踊れ、心!」。そのメッセージ通りにどんどん心が踊り出していくのを感じた。
魂のこもった熱唱を終えたあと、美々兎役の小坂井が「先ほど、披露した楽曲“Change”で再び美々兎の心に青い炎が灯りました!」と告げると客席から歓喜の声が上がっていた。美々兎が暗い闇の中から復活した。その事実に、感謝の気気持ちを話すハラジュクエリアの3人も胸がいっぱいの様子。それだけ演じているキャラクターとシンクロしていたということだろう。会場全体が大きな感動に包まれ、最後は「電音部が!」「ハラジュクエリアが!」「大好きー!」という愛に満ち溢れたコールアンドレスポンスの声とともに、〈電音部 AREA MEETING -HARAJUKU-〉は、その幕を閉じた。
しかし、気になるのは今回の公演が「起承転結」の『承』の部であるということ。つまり、これから先には『転』が待っているのである。新たに動き出したハラジュクエリアの物語がこれからどのように展開していくのか。その答えは自らの眼で確かめるしかなさそうだ。