JP3881776B2 - 車両の自動操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライバーのステアリング操作によらずに車両を自動的に駐車するための車両の自動操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる車両の自動操舵装置は特開平3−74256号公報、特開平4−55168号公報により既に知られている。これらの車両の自動操舵装置は、従来周知の電動パワーステアリング装置のアクチュエータを利用し、予め記憶した車両の移動距離と規範転舵角との関係に基づいて前記アクチュエータを制御することにより、バック駐車や縦列駐車を自動で行うようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動操舵制御を開始するスタート位置までの車両の誘導はドラバー自身のステアリング操作に基づいて行われるため、車両がスタート位置に停止したときの車輪の転舵角はその都度異なっており、その転舵角が自動操舵制御を開始する際の規範転舵角に一致しているとは限らない。自動操舵制御が開始されるとアクチュエータが作動して車輪の転舵角が規範転舵角に一致するように制御されるが、車輪の転舵角が規範転舵角から大きく外れているような場合には両者が一致するまでに時間が掛かり、その間に車両の実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れてしまう問題がある。このような不具合は、自動操舵制御の実行中にアクチュエータの故障、転舵角検出手段の故障、制御装置の故障等が起きた場合にも発生する可能性がある。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、自動操舵制御による車両の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れるのを未然に防止することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、目標位置までの車両の移動軌跡を記憶または演算する移動軌跡設定手段と、車輪を転舵するアクチュエータと、車両が目標位置まで移動する間に移動軌跡設定手段により記憶または演算された移動軌跡に基づいてアクチュエータの駆動を制御する制御手段とを備えた車両の自動操舵装置において、車輪の転舵角を検出する転舵角検出手段と、車両の移動距離を検出する移動距離検出手段とを備えてなり、前記制御手段は、転舵角検出手段で検出した転舵角と移動軌跡に対応する目標転舵角との偏差が所定角度以上になったときに、前記移動軌跡に基づくアクチュエータの駆動を中止し、また前記偏差が所定角度以上の状態で移動距離検出手段により検出された移動距離が所定距離以上になったときにも、前記移動軌跡に基づくアクチュエータの駆動を中止することを特徴とする。
【0006】
また請求項2の発明は、目標位置までの車両の移動軌跡を記憶または演算する移動軌跡設定手段と、車輪を転舵するアクチュエータと、車両が目標位置まで移動する間に移動軌 跡設定手段により記憶または演算された移動軌跡に基づいてアクチュエータの駆動を制御する制御手段とを備えた車両の自動操舵装置において、車輪の転舵角を検出する転舵角検出手段を備えてなり、前記制御手段は、転舵角検出手段で検出した転舵角と移動軌跡に対応する目標転舵角との偏差が所定角度以上になったときに、前記移動軌跡に基づくアクチュエータの駆動を中止し、また前記偏差が所定角度以上の状態となる時間の累積値が所定時間以上となったときにも、前記移動軌跡に基づくアクチュエータの駆動を中止することを特徴とする。
【0007】
また請求項3の発明は、目標位置までの車両の移動軌跡を記憶または演算する移動軌跡設定手段と、車輪を転舵するアクチュエータと、車両が目標位置まで移動する間に移動軌跡設定手段により記憶または演算された移動軌跡に基づいてアクチュエータの駆動を制御する制御手段とを備えた車両の自動操舵装置において、車輪の転舵角を検出する転舵角検出手段と、車両の移動距離を検出する移動距離検出手段とを備えてなり、前記制御手段は、転舵角検出手段で検出した転舵角と移動軌跡に対応する目標転舵角との偏差が所定角度以上になったときに、前記移動軌跡に基づくアクチュエータの駆動を中止し、また前記偏差が所定角度以上の状態で移動距離検出手段により検出された移動距離の累積値が所定距離以上になったときにも、前記移動軌跡に基づくアクチュエータの駆動を中止することを特徴とする。
【0008】
また請求項4の発明は、目標位置までの車両の移動軌跡を記憶または演算する移動軌跡設定手段と、車輪を転舵するアクチュエータと、車両が目標位置まで移動する間に移動軌跡設定手段により記憶または演算された移動軌跡に基づいてアクチュエータの駆動を制御する制御手段とを備えた車両の自動操舵装置において、車輪の転舵角を検出する転舵角検出手段を備えてなり、前記制御手段は、転舵角検出手段で検出した転舵角と移動軌跡に対応する目標転舵角との偏差が所定角度以上の状態が所定時間以上継続したときに、前記移動軌跡に基づくアクチュエータの駆動を中止し、前記所定時間は、前記偏差の大きさに基づいて変更されることを特徴とする。
【0009】
請求項1〜4の上記構成によれば、転舵角検出手段で検出した転舵角と移動軌跡設定手段で設定した移動軌跡に対応する目標転舵角との偏差が所定角度以上になると、制御手段によるアクチュエータの駆動が中止されるので、車両の実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れるのを未然に防止することができる。
【0010】
前記所定角度は、実施例では180°(自動操舵制御開始時)あるいは10°(自動操舵制御中)に設定されているが、その値は適宜変更可能な設計上の事項である。
【0011】
また特に請求項4の上記構成によれば、実際の転舵角と目標転舵角との偏差が所定時間に亘って所定角度以上になったときに制御手段によるアクチュエータの駆動を中止するので、車両の実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れるのを確実に防止することができる。
【0012】
前記所定時間は、実施例では2secに設定されているが、その値は適宜変更可能な設計上の事項である。
【0013】
また特に請求項1の上記構成によれば、実際の転舵角と目標転舵角との偏差が所定角度以上の状態で車両が所定距離以上移動したときに制御手段によるアクチュエータの駆動を中止するので、車両の実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れるのを確実に防止することができる。
【0014】
前記所定距離は、実施例では1mに設定されているが、その値は適宜変更可能な設計上の事項である。
【0015】
また特に請求項2の上記構成によれば、実際の転舵角と目標転舵角との偏差が所定角度以上の状態となる時間の累積値が所定時間以上となったときに制御手段によるアクチュエータの駆動を中止するので、車両の実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れるのを確実に防止することができる。
【0016】
前記所定時間は、実施例では2secよりも長い時間に設定されているが、その値は適宜変更可能な設計上の事項である。
【0017】
また特に請求項3の上記構成によれば、実際の転舵角と目標転舵角との偏差が所定角度以上の状態で検出された車両の移動距離の累積値が所定距離以上になったときに制御手段によるアクチュエータの駆動を中止するので、車両の実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れるのを確実に防止することができる。
【0018】
前記所定距離は、実施例では1mよりも長い時間に設定されているが、その値は適宜変更可能な設計上の事項である。
【0019】
また請求項5の発明は、請求項2の構成に加えて、前記偏差の大きさに基づいて前記所定時間を変更することを特徴とする。
【0020】
また請求項6の発明は、請求項4または5の構成に加えて、前記偏差が大きいほど前記所定時間を短くすることを特徴とする。
【0021】
また請求項7の発明は、請求項1または3の構成に加えて、前記偏差の大きさに基づいて前記所定距離を変更することを特徴とする。
【0022】
また請求項8の発明は、請求項7の構成に加えて、前記偏差が大きいほど前記所定距離を短くすることを特徴とする。
【0023】
また特に請求項4〜請求項8の上記構成によれば、実際の転舵角と目標転舵角との偏差が大きいほど自動操舵制御が早く終了するので、車両の移動軌跡が目標とする移動軌跡から大きくずれることがない。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0025】
図1〜図7は本発明の一実施例を示すもので、図1は自動操舵装置を備えた車両の全体構成図、図2はバック駐車/左モードの作用説明図、図3はモード選択スイッチおよび自動駐車スタートスイッチを示す図、図4は自動操舵制御開始時における規範転舵角と実転舵角との関係を示すグラフ、図5は自動操舵制御中に制御を中止する第1の条件を示すグラフ、図6は自動操舵制御中に制御を中止する第2の条件を示すグラフ、図7は所定時間および所定距離を設定するテーブルを示す図である。
【0026】
図1に示すように、車両Vは一対の前輪Wf,Wfおよび一対の後輪Wr,Wrを備える。ステアリングホイール1と操舵輪である前輪Wf,Wfとが、ステアリングホイール1と一体に回転するステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2の下端に設けたピニオン3と、ピニオン3に噛み合うラック4と、ラック4の両端に設けた左右のタイロッド5,5と、タイロッド5,5に連結された左右のナックル6,6とによって接続される。ドライバーによるステアリングホイール1の操作をアシストすべく、あるいは後述する車庫入れのための自動操舵を行うべく、電気モータよりなるステアリングアクチュエータ7がウオームギヤ機構8を介してステアリングシャフト2に接続される。
【0027】
操舵制御装置21は制御部22と記憶部23とから構成されており、制御部22には、ステアリングホイール1の回転角に基づいて前輪Wf,Wfの転舵角θを検出する転舵角検出手段S1 と、ステアリングホイール1の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段S2 と、左右の前輪Wf,Wfの回転角を検出する前輪回転角検出手段S3 ,S3 と、ブレーキペダル9の操作量を検出するブレーキ操作量検出手段S4 と、セレクトレバー10により選択されたシフトレンジ(「D」レンジ、「R」レンジ、「N」レンジ、「P」レンジ等)を検出するシフトレンジ検出手段S5 と、車両Vの前部、中央部及び後部に設けられた合計8個の物体検出手段S6 …とからの信号が入力される。物体検出手段S6 …は公知のソナー、レーダー、テレビカメラ等から構成される。尚、8個の物体検出手段S6 …と制御部22とを接続するラインは、図面の煩雑化を防ぐために省略してある。制御部22は本発明の制御手段を構成し、記憶部23は本発明の移動軌跡設定手段を構成する。
【0028】
図3を併せて参照すると明らかなように、ドライバーにより操作されるモード選択スイッチS7 および自動駐車スタートスイッチS8 が制御部22に接続される。モード選択スイッチS7 は、後述する4種類の駐車モード、即ちバック駐車/右モード、バック駐車/左モード、縦列駐車/右モードおよび縦列駐車/左モードの何れかを選択する際に操作される4個のボタンを備える。自動駐車スタートスイッチS8 は、モード選択スイッチS7 で選択した何れかのモードによる自動駐車を開始する際に操作される。
【0029】
記憶部23には、前記4種類の駐車モードのデータ、即ち車両Vの移動距離Xに対する規範転舵角θrefの関係が、予めテーブルとして記憶されている。車両Vの移動距離Xは、既知である前輪Wfの周長に前輪回転角検出手段S3 ,S3 で検出した前輪Wfの回転角を乗算することにより求められる。尚、前記移動距離Xの算出には、左右一対の前輪回転角検出手段S3 ,S3 の出力のハイセレクト値、ローセレクト値、あるいは平均値が使用される。前輪回転角検出手段S3 ,S3 は本発明の移動距離検出手段を構成する。
【0030】
制御部22は、前記各検出手段S1 〜S6 およびスイッチS7 ,S8 からの信号と、記憶部23に記憶された駐車モードのデータとに基づいて、前記ステアリングアクチュエータ7の作動と、液晶モニター、スピーカ、ランプ、チャイム、ブザー等を含む操作段階教示装置11の作動とを制御する。
【0031】
次に、前述の構成を備えた本発明の実施例の作用について説明する。
【0032】
自動駐車を行わない通常時(前記モード選択スイッチS7 が操作されていないとき)には、操舵制御装置21は一般的なパワーステアリング制御装置として機能する。具体的には、ドライバーが車両Vを旋回させるべくステアリングホイール1を操作すると、操舵トルク検出手段S2 がステアリングホイール1に入力された操舵トルクを検出し、制御部22は前記操舵トルクに基づいてステアリングアクチュエータ7の駆動を制御する。その結果、ステアリングアクチュエータ7の駆動力によって左右の前輪Wf,Wfが転舵され、ドライバーのステアリング操作がアシストされる。
【0033】
次に、バック駐車/左モード(車両Vの左側にある駐車位置にバックしながら駐車するモード)を例にとって、自動駐車制御の内容を説明する。
【0034】
先ず、図2(A)に示すように、ドライバー自身のステアリング操作により車両Vを駐車しようとする車庫の近傍に移動させ、車体の左側面を車庫入口線にできるだけ近づけた状態で、予め決められた基準(例えば、ドアの内側に設けられたマークやサイドミラー)が車庫の中心線に一致する位置(スタート位置(1) )に車両Vを停止させる。そして、バック駐車/左モードによる自動駐車を行うべく、モード選択スイッチS7 のバック駐車/左モードに対応するボタン(図3参照)を押すと、そのボタンが点滅するとともに操作段階教示装置11のスピーカが「左バック駐車です。」と報知する。
【0035】
図4に示すように、記憶部23に記憶されたバック駐車/左モードの規範転舵角θrefの初期値は0°であり、従って前輪Wf,Wfは転舵されていない状態から自動駐車制御が開始されるが、そのときの前輪Wf,Wfの実際の転舵角θは必ずしも0°に一致しているとは限らない。モード選択スイッチS7 のボタンが点灯している状態で、時刻t0 にドライバーが自動駐車スタートスイッチS8 を押すと、そのボタンが点灯して自動駐車制御が開始される。自動駐車制御が開始された瞬間の規範転舵角θrefは初期値は0°であり、例えば1秒後の時刻t1 にドライバーが車両Vを発進させると、車両Vの移動距離Xに応じて規範転舵角θrefは初期値の0°から右操舵方向に増加する。
【0036】
さて、時刻t0 にドライバーが自動駐車スタートスイッチS8 を押した瞬間の前輪Wf,Wfの実際の転舵角θが±180°未満であれば、その転舵角θを規範転舵角θrefに一致させるべくステアリングアクチュエータ7が駆動され、転舵角θは0°に向かって収束する。そしてドライバーが車両Vを発進させる時刻t1 迄に転舵角θは規範転舵角θrefの初期値である0°に一致するため、車両Vは発進と同時に規範移動軌跡上を移動することができる。この場合には、ドライバーが自動駐車スタートスイッチS8 を押したときに、操作段階教示装置11のスピーカが「自動駐車開始できます。」と報知する。
【0037】
一方、時刻t0 にドライバーが自動駐車スタートスイッチS8 を押した瞬間の前輪Wf,Wfの実際の転舵角θが±180°以上であれば、その転舵角θを規範転舵角θrefに一致させるべくステアリングアクチュエータ7が作動しても、車両Vが発進する時刻t1 に転舵角θは規範転舵角θrefの初期値である0°に達することができず、かなりの転舵角θが残存してしまう。この状態から時刻t1 に車両Vが発進すると、転舵角θが規範転舵角θrefに一致するまでの間の車両Vの移動により、車両Vの実際の移動軌跡が規範移動軌跡からずれてしまう。
【0038】
この場合には、ドライバーが自動駐車スタートスイッチS8 を操作した時点で、操作段階教示装置11のスピーカが「ハンドルが切れすぎています。」あるいは「ハンドルをまっすぐにしてください。」と報知し、同時に自動駐車制御が中止される。尚、ドライバーがモード選択スイッチS7 を操作した時点で上記報知を行うようにすれば、ドライバーはステアリングホイール1を操作して転舵角θを±180°未満に減少させた後に自動駐車スタートスイッチS8 を操作することが可能になり、自動駐車制御が中止される頻度を減らして使い勝手を向上させることができる。
【0039】
以上説明したように、記憶部23に記憶された規範転舵角θrefと転舵角検出手段S1 で検出した実際の転舵角θとを比較し、その偏差E(=θref−θ)が所定角度(実施例では180°)以上である場合に自動駐車制御を中止するので、自動駐車制御により車両Vが予期せぬ方向に移動するのを確実に回避することができる。
【0040】
自動駐車制御が開始されると操作段階教示装置11のスピーカが「ゆっくりと前進してください。」と報知する。自動駐車制御が行われている状態では、操作段階教示装置11には自車の現在位置、周囲の障害物、駐車位置、スタート位置から駐車位置までの自車の予想移動軌跡、前進から後進に切り換える折り返し位置等が表示され、併せてスピーカからの音声でドライバーに各種の指示や警報が行われる。この自動駐車制御中には、ドライバーがブレーキペダル9を緩めて車両Vをクリープ走行させるだけでステアリングホイール1を操作しなくても、モード選択スイッチS7 により選択されたバック駐車/左モードのデータに基づいて前輪Wf,Wfが自動操舵される。
【0041】
即ち、スタート位置(1) から折り返し位置(2) まで車両Vが前進する間は前輪Wf,Wfは右に自動操舵される。車両Vが折り返し位置(2) に達すると、操作段階教示装置11のスピーカが「停止してシフトチェンジしてください。」と報知し、ドライバーがシフトチェンジすると「ゆっくりと後進してください。」と報知する。折り返し位置(2) から目標位置(3) まで車両Vが後進する間は前輪Wf,Wfは左に自動操舵される。そして車両Vが目標位置(3) に達すると、操作段階教示装置11のスピーカが「左バック駐車終了です。停車してください。」と報知して自動駐車制御が終了する。
【0042】
図2(B)から明らかなように、自動操舵が行われている間、制御部22は記憶部23から読み出したバック駐車/左モードの規範転舵角θrefと、転舵角検出手段S1 から入力された転舵角θとに基づいて偏差E(=θref−θ)を算出し、その偏差Eが0になるようにステアリングアクチュエータ7の作動を制御する。このとき、規範転舵角θrefのデータは車両Vの移動距離Xに対応して設定されているため、クリープ走行の車速に多少の変動があっても車両Vは常に前記移動軌跡上を移動することになる。
【0043】
上記自動駐車制御は、ドライバーが自動駐車スタートスイッチS8 を再度押した場合に解除されるが、それ以外にもドライバーがブレーキペダル9を緩め過ぎて車速が自動駐車制御に適した最大車速(例えば、5km/h)を越えた場合、ドライバーがステアリングホイール1を操作した場合、何れかの障害物検出手段S6 が障害物を検出した場合に解除され、通常のパワーステアリング制御に復帰する。
【0044】
上記自動駐車制御が正常に実行されていれば、規範転舵角θrefと実転舵角θとの偏差Eが0に収束するようにステアリングアクチュエータ7が制御される。しかしながら、転舵角検出手段S1 が故障して正確な転舵角θが検出できなくなった場合や、ステアリングアクチュエータ7が故障して前輪Wf,Wfを正常に転舵できなくなった場合や、過積載のようなシステム適用範囲外の使用条件によりステアリングアクチュエータ7がスムーズに作動しないような場合には、前記偏差Eが速やかに0に収束しない場合があり、このような場合にも規範移動軌跡からの逸脱を回避すべく自動駐車制御が中止される。
【0045】
図5はその具体例を示すもので、ラインAで示す正常状態では、時刻T0 に閾値(実施例では30°)より大きくなった偏差Eがステアリングアクチュエータ7の作動により次第に減少し、所定時間(実施例では2sec)が経過した時刻T1 に偏差Eは閾値(実施例では30°)未満に減少する。一方、転舵角検出手段S1 やステアリングアクチュエータ7が故障したような異常状態では、ラインB,Dで示すように偏差Eが減少せず、時刻T1 になっても偏差Eが閾値未満にならない場合がある。また過積載によりステアリングアクチュエータ7がスムーズに作動しないような異常状態では、ラインCで示すように偏差Eが速やかに減少せず、時刻T1 になっても偏差Eが閾値未満にならない場合がある。
【0046】
このような場合には、規範移動軌跡からの逸脱を回避すべく自動駐車制御が中止され、併せて操作段階教示装置11により異常状態の発生がドライバーに報知される。その結果、自動駐車制御により車両Vが予期せぬ方向に移動するのを確実に回避することができる。
【0047】
図5の実施例では、偏差Eが閾値より大きくなってから所定時間内に閾値以下となるか否かにより異常状態を判定しているが、図6の実施例に示すように、車両Vの移動距離Xを基準にして異常状態を判定しても良い。即ち、車両Vの移動距離がX0 のときに閾値(実施例では30°)より大きくなった偏差Eが、そこから車両Vが所定距離(実施例では1m)移動して移動距離がX1 になる前に閾値(実施例では30°)未満となれば、正常状態であると判定して自動駐車制御を継続するとともに(ラインA参照)、前記移動距離がX1 になった時点で偏差Eが閾値以上であれば、異常状態であると判定して自動駐車制御を中止しても良い(ラインB,C,D参照)。
【0048】
前記所定時間について詳述すると、図5の実施例において、複数の閾値(例えば、閾値1、閾値2および閾値3)を設定し、偏差Eがより大きい閾値以上となれば、それに応じてより短い所定時間(例えば、T1 ,T2 ,T3 )に持ち替えるようにしても良い。このとき、閾値と所定時間との関係を、図7(A)に示すようなテーブルで設定することができる。また前記所定距離について詳述すると、図6の実施例において、複数の閾値(例えば、閾値1、閾値2および閾値3)を設定し、偏差Eがより大きい閾値以上となれば、それに応じてより短い所定距離(例えば、X1 ,X2 ,X3 )に持ち替えるようにしても良い。このとき、閾値と所定距離との関係を、図7(B)に示すようなテーブルで設定することができる。これにより、目標とする移動軌跡に対して実際の移動軌跡が大きくずれたような場合に、早い時点で的確に自動駐車制御を中止することができる。
【0049】
次に、前記図5および図6の実施例を変形した実施例を図8および図9に基づいて説明する。
【0050】
この実施例では、先ず、偏差Eが閾値を越えている時間の累積値が予め設定された所定時間を越えた場合、あるいは偏差Eが閾値を越えている間の車両の移動距離の累積値が予め設定された所定距離を越えた場合に、自動駐車制御を中止するものである。即ち、ラインEで示すように偏差Eが閾値を越えている時間TA が第1の所定時間T1 以上になるか、あるいは偏差Eが閾値を越えている間の移動距離XA が第1の所定距離X1 以上になると自動駐車制御が中止される。
【0051】
ところで、ラインFで示すように、前記第1の所定時間T1 あるいは第1の所定距離X1 には満たないが偏差Eが閾値を頻繁に越えるような場合に、偏差Eが閾値を越えている時間TB ,TC および偏差Eが閾値を越えている間の車両の移動距離XB ,XC がそれぞれTB >T1 、TC >T1 、XB >X1 、XC >X1 の条件を満たしていないために自動駐車制御が中止されずに継続されると、目標とする移動軌跡と実際の移動軌跡との誤差が次第に累積されて最終的に目標とする移動軌跡を大きく外れてしまう可能性がある。
【0052】
そこで本実施例では、ラインFで示すように、偏差Eが閾値を越えている時間TB ,TC の累積値、あるいは偏差Eが閾値を越えている間の移動距離XB ,XC の累積値をカウンタ等で算出し、これら累積値がそれぞれ第2の所定時間T4 あるいは第2の所定距離X4 を上回ったときに自動駐車制御が中止される。即ち、TB +TC >T4 あるいはXB +XC >X4 という条件を満たせば自動駐車制御が中止されることになる。これにより、前記移動軌跡のずれが蓄積された結果、実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から大きく外れるのを防止することができる。ここで、第1の所定時間T1 と第2の所定時間T4 とは、T1 ≦T4 となるように設定され、また第1の所定距離X1 と第2の所定距離X4 とは、X1 ≦X4 となるように設定される。
【0053】
尚、上記図8の実施例および図9の実施例において、偏差Eが閾値を越えている時間、あるいは偏差Eが閾値を越えている間の移動距離が所定時間あるいは所定距離を越えているか否かという条件(TA >T1 、XA >X1 、ラインE参照)と、図8の実施例および図9の実施例で示した偏差Eが閾値を越えている時間の累積値、あるいは偏差Eが閾値を越えている間の移動距離の累積値が所定時間あるいは所定距離を越えているか否かという条件(TB +TC >T4 、XB +XC >X4 、ラインF参照)との何れか一方を用いて自動駐車制御を中止するように構成しても良いし、両方の条件を併用して何れか一方の条件が成立したときに自動駐車制御を中止するように構成しても良い。
【0054】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0055】
例えば、実施例では目標位置までの車両Vの移動軌跡が予め記憶部23に記憶されているが、車両Vの現在位置および目標位置から前記移動軌跡を算出することも可能である。また実施例では自動駐車のスタート位置を車庫の中心線を基準に設定しているが、これに限らず車庫の両端間の任意の位置を基準に設定することができる。
【0056】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、転舵角検出手段で検出した転舵角と移動軌跡設定手段で設定した移動軌跡に対応する目標転舵角との偏差が所定角度以上になると、制御手段によるアクチュエータの駆動が中止されるので、車両の実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れるのを未然に防止することができる。
【0057】
また特に請求項4の発明によれば、実際の転舵角と目標転舵角との偏差が所定時間に亘って所定角度以上になったときに制御手段によるアクチュエータの駆動を中止するので、車両の実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れるのを確実に防止することができる。
【0058】
また特に請求項1の発明によれば、実際の転舵角と目標転舵角との偏差が所定角度以上の状態で車両が所定距離以上移動したときに制御手段によるアクチュエータの駆動を中止するので、車両の実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れるのを確実に防止することができる。
【0059】
また特に請求項2の発明によれば、実際の転舵角と目標転舵角との偏差が所定角度以上の状態となる時間の累積値が所定時間以上となったときに制御手段によるアクチュエータの駆動を中止するので、車両の実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れるのを確実に防止することができる。
【0060】
また特に請求項3の発明によれば、実際の転舵角と目標転舵角との偏差が所定角度以上の状態で検出された車両の移動距離の累積値が所定距離以上になったときに制御手段によるアクチュエータの駆動を中止するので、車両の実際の移動軌跡が目標とする移動軌跡から外れるのを確実に防止することができる。
【0061】
また特に請求項4〜請求項8の発明によれば、実際の転舵角と目標転舵角との偏差が大きいほど自動操舵制御が早く終了するので、車両の移動軌跡が目標とする移動軌跡から大きくずれることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 自動操舵装置を備えた車両の全体構成図
【図2】 バック駐車/左モードの作用説明図
【図3】 モード選択スイッチおよび自動駐車スタートスイッチを示す図
【図4】 自動操舵制御開始時における規範転舵角と実転舵角との関係を示すグラフ
【図5】 自動操舵制御中に制御を中止する第1の条件を示すグラフ
【図6】 自動操舵制御中に制御を中止する第2の条件を示すグラフ
【図7】 所定時間および所定距離を設定するテーブルを示す図
【図8】 図5の実施例の変形実施例を説明するグラフ
【図9】 図6の実施例の変形実施例を説明するグラフ
【符号の説明】
7 ステアリングアクチュエータ(アクチュエータ)
22 制御部(制御手段)
23 記憶部(移動軌跡設定手段)
E 偏差
S1 転舵角検出手段
S3 前輪回転角検出手段(移動距離検出手段)
V 車両
Wf 前輪(車輪)
θ 転舵角
θref 規範転舵角(目標転舵角)
Claims (8)
- 目標位置までの車両(V)の移動軌跡を記憶または演算する移動軌跡設定手段(23)と、車輪(Wf)を転舵するアクチュエータ(7)と、車両(V)が目標位置まで移動する間に移動軌跡設定手段(23)により記憶または演算された移動軌跡に基づいてアクチュエータ(7)の駆動を制御する制御手段(22)とを備えた車両の自動操舵装置において、
車輪(Wf)の転舵角(θ)を検出する転舵角検出手段(S1 )と、車両(V)の移動距離を検出する移動距離検出手段(S 3 )とを備えてなり、
前記制御手段(22)は、転舵角検出手段(S1 )で検出した転舵角(θ)と移動軌跡に対応する目標転舵角(θref)との偏差(E)が所定角度以上になったときに、前記移動軌跡に基づくアクチュエータ(7)の駆動を中止し、また前記偏差(E)が所定角度以上の状態で移動距離検出手段(S 3 )により検出された移動距離が所定距離以上になったときにも、前記移動軌跡に基づくアクチュエータ(7)の駆動を中止することを特徴とする車両の自動操舵装置。 - 目標位置までの車両(V)の移動軌跡を記憶または演算する移動軌跡設定手段(23)と、車輪(Wf)を転舵するアクチュエータ(7)と、車両(V)が目標位置まで移動する間に移動軌跡設定手段(23)により記憶または演算された移動軌跡に基づいてアクチュエータ(7)の駆動を制御する制御手段(22)とを備えた車両の自動操舵装置において、
車輪(Wf)の転舵角(θ)を検出する転舵角検出手段(S 1 )を備えてなり、
前記制御手段(22)は、転舵角検出手段(S 1 )で検出した転舵角(θ)と移動軌跡に対応する目標転舵角(θref)との偏差(E)が所定角度以上になったときに、前記移動軌跡に基づくアクチュエータ(7)の駆動を中止し、また前記偏差(E)が所定角度以上の状態となる時間の累積値が所定時間以上となったときにも、前記移動軌跡に基づくアクチュエータ(7)の駆動を中止することを特徴とする、車両の自動操舵装置。 - 目標位置までの車両(V)の移動軌跡を記憶または演算する移動軌跡設定手段(23)と、車輪(Wf)を転舵するアクチュエータ(7)と、車両(V)が目標位置まで移動する間に移動軌跡設定手段(23)により記憶または演算された移動軌跡に基づいてアクチュエータ(7)の駆動を制御する制御手段(22)とを備えた車両の自動操舵装置において、
車輪(Wf)の転舵角(θ)を検出する転舵角検出手段(S 1 )と、車両(V)の移動距離を検出する移動距離検出手段(S 3 )とを備えてなり、
前記制御手段(22)は、転舵角検出手段(S 1 )で検出した転舵角(θ)と移動軌跡に対応する目標転舵角(θref)との偏差(E)が所定角度以上になったときに、前記移動軌跡に基づくアクチュエータ(7)の駆動を中止し、また前記偏差(E)が所定角度以上の状態で移動距離検出手段(S 3 )により検出された移動距離の累積値が所定距離以上になったときにも、前記移動軌跡に基づくアクチュエータ(7)の駆動を中止することを特徴とする、車両の自動操舵装置。 - 目標位置までの車両(V)の移動軌跡を記憶または演算する移動軌跡設定手段(23)と、車輪(Wf)を転舵するアクチュエータ(7)と、車両(V)が目標位置まで移動する間に移動軌跡設定手段(23)により記憶または演算された移動軌跡に基づいてアクチュエータ(7)の駆動を制御する制御手段(22)とを備えた車両の自動操舵装置において、
車輪(Wf)の転舵角(θ)を検出する転舵角検出手段(S 1 )を備えてなり、
前記制御手段(22)は、転舵角検出手段(S 1 )で検出した転舵角(θ)と移動軌跡に対応する目標転舵角(θref)との偏差(E)が所定角度以上の状態が所定時間以上継続したときに、前記移動軌跡に基づくアクチュエータ(7)の駆動を中止し、
前記所定時間は、前記偏差(E)の大きさに基づいて変更されることを特徴とする、車両の自動操舵装置。 - 前記偏差(E)の大きさに基づいて前記所定時間を変更することを特徴とする、請求項2に記載の車両の自動操舵装置。
- 前記偏差(E)が大きいほど前記所定時間を短くすることを特徴とする、請求項4または5に記載の車両の自動操舵装置。
- 前記偏差(E)の大きさに基づいて前記所定距離を変更することを特徴とする、請求項1または3に記載の車両の自動操舵装置。
- 前記偏差(E)が大きいほど前記所定距離を短くすることを特徴とする、請求項7に記載の車両の自動操舵装置。
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