JP3828654B2 - 車両の自動操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライバーのステアリング操作によらずに車両を自動的に駐車するための車両の自動操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる車両の自動操舵装置は、例えば特開平4−55168号公報により既に知られている。この車両の自動操舵装置は、従来周知の電動パワーステアリング装置のアクチュエータを利用し、予め記憶した車両の移動距離と転舵角との関係に基づいて前記アクチュエータを制御することにより、バック駐車や縦列駐車を自動で行うようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記従来の車両の自動操舵装置は、車輪の回転に伴って出力されるパルス信号の数から車両の移動距離を検出するものであるが、そのパルス信号は車輪の回転方向に拘わらず同じように出力されるために車両の移動方向までは検出することができない。そこで、現在確立しているシフトレンジが「D」レンジであれば車両は前進走行していると推定し、また現在確立しているシフトレンジが「R」レンジにあれば車両は後進走行していると推定することが考えられる。
【0004】
しかしながら、シフトレンジが「N」レンジや「P」レンジにあっても路面の傾斜や慣性で車両が移動する場合があり、このような場合には車両の移動方向を推定することができなくなり、そのまま自動操舵装置を続行すると車両が予期せぬ方向に移動する可能性がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両の移動方向が判別不能になったときに、自動操舵装置により車両が予期せぬ方向に移動するのを確実に防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、車輪を転舵するアクチュエータと、車両に搭載された自動変速機のシフトレンジを検出するシフトレンジ検出手段と、車両の移動距離を検出する移動距離検出手段と、目標位置までの車両の移動軌跡を、車両の移動方向を含む移動距離に対する車輪の転舵角の関係として記憶または演算する移動軌跡設定手段と、移動軌跡設定手段により記憶または演算された移動軌跡および移動距離検出手段により検出された車両の移動距離に基づいてアクチュエータの駆動を制御するアクチュエータ制御手段とを備えた車両の自動操舵装置において、前記シフトレンジ検出手段が走行レンジを検出していないときに前記移動距離検出手段が車両の移動距離を検出した場合に、前記アクチュエータ制御手段は前記移動軌跡および前記移動距離に基づくアクチュエータの駆動を中止することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、シフトレンジ検出手段が走行レンジを検出していないときに車両が移動すると、その移動方向が前進なのか後進なのかを判別することができないため、移動軌跡設定手段により設定された移動軌跡設に基づいて自動操舵制御を的確に行うことができなくなるが、このような場合にアクチュエータ制御手段がアクチュエータの駆動を中止することにより車両が予期せぬ方向に移動するのを未然に回避することができる。
【0008】
前記走行レンジとは、車両を前進走行あるいは後進走行させるレンジであり、実施例の「D」レンジおよび「R」レンジに相当する。また走行レンジを検出していないときとは、シフトレンジが停止レンジ(つまり、「N」レンジまたは「P」レンジ)にある場合に限定されず、シフトレンジ検出手段が故障してシフトレンジが検出不能になった場合が含まれる。
【0009】
また請求項2に記載された発明は、請求項1の構成に加えて、前記シフトレンジ検出手段が走行レンジを検出していないときに前記移動距離検出手段が所定値以上の車両の移動距離を検出した場合に、前記アクチュエータ制御手段はアクチュエータの駆動を中止することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、シフトレンジ検出手段が走行レンジを検出していないときの車両の移動距離が所定値未満であれば、アクチュエータ制御手段はアクチュエータの駆動を中止しないので、目標位置のずれに大きな影響を与えない程度の僅かな車両の移動によりいちいち自動操舵制御が中止されるのを回避して利便性を高めることができる。
【0011】
前記所定値は、車両の移動距離がその値を越えると目標位置のずれが許容できなくなる値であり、実施例では20cmに設定されているが適宜変更可能である。
【0012】
また請求項3に記載された発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記シフトレンジ検出手段が走行レンジを検出している状態から走行レンジを検出していない状態に変化したときに、前記移動距離検出手段が継続して車両の移動距離を検出している場合に、前記アクチュエータ制御手段は前記検出された走行レンジが継続して確立していると見做してアクチュエータの駆動を制御することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、シフトレンジが走行レンジになくても車両の移動方向を判別することが可能な場合には、アクチュエータ制御手段によるアクチュエータの駆動を継続することにより、自動操舵制御が不必要に中止されるのを回避して利便性を高めることができる。
【0014】
また請求項4に記載された発明は、請求項1〜3の何れかの構成に加えて、前記シフトレンジ検出手段が走行レンジを検出していないときに前記移動距離検出手段が車両の移動距離を検出した場合に、前記アクチュエータ制御手段は検出された車両の移動距離を無視し、車両が移動していないものと見做してアクチュエータの駆動を制御することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、車両が移動してもその移動方向を判別することができないとき、車両が停止していると見做して制御を行うことにより、アクチュエータの駆動を確実に中止して車両が予期せぬ方向に移動するのを未然に回避することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図5は本発明の一実施例を示すもので、図1は自動操舵装置を備えた車両の全体構成図、図2はバック駐車/左モードの作用説明図、図3はモード選択スイッチおよび自動駐車スタートスイッチを示す図、図4は作用を説明するフローチャート、図5は作用の説明図である。
【0018】
図1に示すように、車両Vは一対の前輪Wf,Wfおよび一対の後輪Wr,Wrを備える。ステアリングホイール1と操舵輪である前輪Wf,Wfとが、ステアリングホイール1と一体に回転するステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2の下端に設けたピニオン3と、ピニオン3に噛み合うラック4と、ラック4の両端に設けた左右のタイロッド5,5と、タイロッド5,5に連結された左右のナックル6,6とによって接続される。ドライバーによるステアリングホイール1の操作をアシストすべく、あるいは後述する車庫入れのための自動操舵を行うべく、電気モータよりなるステアリングアクチュエータ7がウオームギヤ機構8を介してステアリングシャフト2に接続される。
【0019】
操舵制御装置21は制御部22と記憶部23とから構成されており、制御部22は本発明のアクチュエータ制御手段を構成するもので、そこにはステアリングホイール1の回転角に基づいて前輪Wf,Wfの転舵角θを検出する転舵角検出手段S1 と、ステアリングホイール1の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段S2 と、左右の前輪Wf,Wfの回転角を検出する前輪回転角検出手段S3 ,S3 と、ブレーキペダル9の操作量(ブレーキ操作量)を検出するブレーキ操作量検出手段S4 と、アクセルペダル10の操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度検出手段S5 と、セレクトレバー11により選択されたシフトレンジ(「D」レンジ、「R」レンジ、「N」レンジ、「P」レンジ等)を検出するシフトレンジ検出手段S6 と、車両Vの前部、中央部および後部に設けられた合計8個の物体検出手段S7 …とからの信号が入力される。物体検出手段S7 …は公知のソナー、レーダー、テレビカメラ等から構成される。尚、8個の物体検出手段S7 …と制御部22とを接続するラインは、図面の煩雑化を防ぐために省略してある。
【0020】
本発明の移動距離検出手段を構成する前輪回転角検出手段S3 ,S3 は、前輪Wf,Wfが所定角度回転する毎にパルスを出力するもので、検出されたパルス数に前輪Wf,Wfの半径に応じて決定される定数を乗算することにより車両Vの移動距離Xを算出することができる。
【0021】
更に制御部22には、ドライバーにより操作されるモード選択スイッチS8 および自動駐車スタートスイッチS9 が接続される。図3から明らかなように、モード選択スイッチS8 は、4種類の駐車モード、即ちバック駐車/右モード、バック駐車/左モード、縦列駐車/右モードおよび縦列駐車/左モードの何れかを選択する際に操作されるもので、各モードに対応する4個のスイッチボタンを備えている。自動駐車スタートスイッチS9 は、モード選択スイッチS8 で選択した何れかのモードによる自動駐車を開始する際に操作される。
【0022】
前記記憶部23は本発明の移動軌跡設定手段を構成するもので、そこには前記4種類の駐車モードのデータ、即ち車両Vの移動方向(前進または後進)を含む車両Vの移動距離Xに対する規範転舵角θrefの関係が、予めテーブルとして記憶されている。
【0023】
而して、制御部22は前記各検出手段S1 〜S7 およびスイッチS8 ,S9 からの信号と、記憶部23に記憶された駐車モードのデータとに基づいて、前記ステアリングアクチュエータ7の作動と、液晶モニター、スピーカ、ランプ、チャイム、ブザー等を含む操作段階教示装置12の作動とを制御する。
【0024】
ところで、記憶部23に記憶された駐車モードのデータと、車両Vの移動方向を含む車両Vの移動距離Xとに基づいて制御部22がステアリングアクチュエータ7の作動を制御するとき、車両Vの移動方向を正しく検出することができないと移動軌跡に誤差が発生して目標位置に車両Vを導くことができなくなる。そのために、車両Vの移動方向の検出が不能になると制御部22は自動操舵制御を中止するようになっている。
【0025】
次に、前述の構成を備えた本発明の実施例の作用について説明する。
【0026】
自動操舵制御を行わない通常時(前記自動駐車スタートスイッチS9 がONしていないとき)には、操舵制御装置21は一般的なパワーステアリング制御装置として機能する。具体的には、ドライバーが車両Vを旋回させるべくステアリングホイール1を操作すると、操舵トルク検出手段S2 がステアリングホイール1に入力された操舵トルクを検出し、制御部22は前記操舵トルクに基づいてステアリングアクチュエータ7の駆動を制御する。その結果、ステアリングアクチュエータ7の駆動力によって左右の前輪Wf,Wfが転舵され、ドライバーのステアリング操作がアシストされる。
【0027】
次に、バック駐車/左モード(車両Vの左側にある駐車位置にバックしながら駐車するモード)を例にとって、自動操舵制御の内容を説明する。
【0028】
先ず、図2(A)に示すように、車両Vを駐車しようとする車庫の近傍に移動させ、車体の左側面を車庫入口線にできるだけ近づけた状態で、予め決められた基準(例えば、ドアの内側に設けられたマークやサイドミラー)が車庫の中心線に一致する位置(スタート位置▲1▼)に車両Vを停止させる。そして、モード選択スイッチS8 を操作してバック駐車/左モードを選択するとともに自動駐車スタートスイッチS9 をONすると、自動操舵制御が開始される。自動操舵制御が行われている間、操作段階教示装置12には自車の現在位置、周囲の障害物、駐車位置、スタート位置から駐車位置までの自車の予想移動軌跡、前進から後進に切り換える折り返し位置等が表示され、併せてスピーカからの音声でドライバーに前記折り返し位置▲2▼におけるセレクトレバー11の操作等の各種の指示や警報が行われる。
【0029】
自動操舵制御により、ドライバーがブレーキペダル9を緩めて車両Vをクリープ走行させるだけで、あるいはアクセルペダル10を僅かに踏んで車両Vを走行させるだけで、ステアリングホイール1を操作しなくても、モード選択スイッチS8 により選択されたバック駐車/左モードのデータに基づいて前輪Wf,Wfが自動操舵される。即ち、スタート位置▲1▼から折り返し位置▲2▼まで車両Vが前進する間は前輪Wf,Wfは右に自動操舵され、折り返し位置▲2▼から目標位置▲3▼まで車両Vが後進する間は前輪Wf,Wfは左に自動操舵される。
【0030】
図2(B)から明らかなように、自動操舵が行われている間、制御部22は記憶部23から読み出したバック駐車/左モードのデータに、前輪回転角検出手段S3 ,S3 の出力に基づいて算出した車両Vの移動距離Xを適用して規範転舵角θrefを検索する。そして前記規範転舵角θrefと転舵角検出手段S1 から入力された転舵角θとに基づいて偏差E(=θref−θ)を算出し、その偏差Eが0になるようにステアリングアクチュエータ7の作動を制御する。このとき、規範転舵角θrefのデータは車両Vの移動距離8に対応して設定されているため、自動操舵制御中の車速に多少の変動があっても、前記移動距離Xが正しく検出されている限り車両Vは常に前記移動軌跡上を移動することになる。
【0031】
但し、車両Vが前記移動軌跡上を正しく移動するには、スタート位置▲1▼から折り返し位置▲2▼までは車両Vが前進走行し、折り返し位置▲2▼から目標位置▲3▼までは車両Vが後進走行する必要がある。前輪回転角検出手段S3 ,S3 が出力するパルス信号は車両Vが前進走行しているか後進走行しているかに拘わらず出力され、検出された移動距離Xも前進方向の移動距離Xであるか、後進方向の移動距離Xであるかの判断を行うことができないため、シフトレンジ検出手段S6 により検出されたシフトレンジにより車両Vの移動方向を確認している。即ち、スタート位置▲1▼から折り返し位置▲2▼までの間に検出されたシフトレンジが「D」レンジであれば車両Vが正しく前進走行していると確認し、折り返し位置▲2▼から目標位置▲3▼までの間に検出されたシフトレンジが「R」レンジであれば車両Vが正しく後進走行していると確認することができる。
【0032】
上述した自動操舵制御は、ドライバーがモード選択スイッチS8 をOFFした場合に解除されるが、それ以外にもドライバーがステアリングホイール1を操作した場合、何れかの物体検出手段S7 が障害物を検出した場合、車速が所定値を越えた場合、あるいはシフトレンジが「N」レンジや「P」レンジにあるにも拘わらず車両Vが慣性や路面の傾斜により移動して、その移動方向が判別できなくなった場合に解除され、通常のパワーステアリング制御に復帰する。
【0033】
次に、車両Vの移動方向が判別できなくなって自動操舵制御が中止される場合の作用を、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
先ず、ステップS1で前輪回転角検出手段S3 ,S3 がパルス信号を出力して車両Vの移動が検出された場合は、ステップS2に移行する。ステップS2でシフトレンジ検出手段S6 により検出されたシフトレンジが走行レンジ(「D」レンジあるいは「R」レンジ)にあれば、車両Vの移動方向は判別可能であると判断してステップS3に移行する。ステップS3でシフトレンジが「D」レンジであれば、ステップS4で車両Vは前進走行していると判定し、ステップS5でバック駐車/左モードのデータに基づいてスタート位置▲1▼および折り返し位置▲2▼間の前輪Wf,Wfの自動操舵が実行される。またステップS3の答えがNOでシフトレンジが「R」レンジであれば、ステップS6で車両Vは後進走行していると判定し、ステップS5でバック駐車/左モードのデータに基づいて折り返し位置▲2▼および目標位置▲3▼間の前輪Wf,Wfの自動操舵が実行される。
【0035】
尚、ステップS1で前輪回転角検出手段S3 ,S3 がパルス信号を出力しておらず、従って車両Vの移動が検出されないときには、ステップS7で現在の転舵角θを保持する指令が出力され、ステップS5で車両Vの前輪Wf,Wfの転舵角θがそのまま保持される。
【0036】
一方、前記ステップS2でシフトレンジ検出手段S6 により検出されたシフトレンジが停止レンジ(「N」レンジあるいは「P」レンジ)にあれば、車両Vの移動方向は判別不能であると判断してステップS8に移行するが、シフトレンジが停止レンジにあっても、後述する所定の条件が成立した場合には車両Vの移動方向が推定可能であるとして自動操舵の実行を許容し、それ以外の場合には車両Vの移動方向が判別不能であるとして自動操舵の実行を中止する。
【0037】
即ち、ステップS8でシフトレンジが停止レンジにあるにも拘わらず車両Vが移動した場合に、その移動距離の合計が所定値(例えば、20cm)以上であるか否かの判断がなされ、移動距離の合計が前記所定値に達していなければ移動方向の推定を行うためにステップS9に移行する。
【0038】
ステップS9において以前にシフトレンジが走行レンジにあれば、即ち、走行レンジが選択されている状態から停止レンジが選択されている状態にかけて連続的に前輪回転角検出手段S3 ,S3 からのパルス信号が検出される場合にはステップS10に移行する。そしてステップS10で以前のシフトレンジが「D」レンジであればステップS11で車両Vは前進走行中であると推定され、またステップS10で以前のシフトレンジが「R」レンジであればステップS12で車両Vは後進走行中であると推定されてステップS5で自動操舵が実行される。
【0039】
このような場合を具体的に説明すると、例えば図2に示すバック駐車/左モードによる自動操舵制御を行いながらスタート位置▲1▼から折り返し位置▲2▼まで前進走行する間に、折り返し位置▲2▼に到達する手前でシフトレンジを「D」レンジから「N」レンジに切り換えてしまい、車両Vが惰性で折り返し位置▲2▼に向かって前進走行する場合、本来ならばシフトレンジを「D」レンジから「N」レンジに切り換えた瞬間に車両Vの移動方向が判別不能になって自動操舵制御が中止されるところ、シフトレンジが「N」レンジに切り換えられる以前のシフトレンジが「D」レンジであったことに基づき、現在のシフトレンジが「N」レンジであっても車両Vは引き続き前進走行しているものと見做され、自動操舵制御は中止されることなく継続される。このように、シフトレンジが停止レンジにあっても、車両Vの移動方向を把握することが可能な場合には自動操舵制御を継続することにより、自動操舵制御が不必要に中止されるのを回避して利便性を高めることができる。
【0040】
さて、ステップS9において以前にシフトレンジが走行レンジにない場合、即ち、車両Vの停止状態から移動状態に亘って継続的に停止レンジが選択されている場合にはステップS13に移行する。ステップS13では、車両Vの移動方向を推定することが不可能なため、現在の前輪Wf,Wfの転舵角θを保持するように指示がなされ、ステップS5で転舵角θを保持するように自動操舵が実行される。即ち、車両Vの移動方向が分からない状態で検出された移動距離は無視され、移動距離が検出されなかったものとして自動操舵が行われる。
【0041】
このような場合を具体的に説明すると、例えば図2に示すバック駐車/左モードにおける折り返し位置▲2▼において一旦車両Vが停止して前輪回転角検出手段S3 ,S3 からのパルス信号が途絶えた後、シフトレンジを「D」レンジから「N」レンジに切り換えたときに路面が下り坂であると、ブレーキを緩めたときに車両Vが前進方向に移動してしまう場合が考えられる。このような場合、前輪回転角検出手段S3 ,S3 からパルス信号が出力されても、シフトレンジが「N」レンジにあるために車両Vが前進走行したのか後進走行したのか判別することができない。従って、実際には折り返し位置▲2▼で「N」レンジにて距離X1 だけ前進してから「R」レンジにシフトチェンジして後進を開始したとしても、最初から後進しているものとして折り返し位置▲2▼および目標位置▲3▼間の自動操舵制御を開始すると、図5(A)に示すように、前進時にも自動操舵が行われて車両Vの移動軌跡が図5(B)に破線で示すようになってしまい、目標位置▲3▼から大きく位置ずれする可能性がある。
【0042】
しかしながら、本実施例によれば、車両Vの移動方向が把握できない場合に、車両Vが停止しているものと見做して現在の前輪Wf,Wfの転舵角θを保持するので、図5(A)に太い実線で示すように、前進時には自動操舵が行われず、「R」レンジになって車両Vが後進を開始してから自動操舵が行われるため、図5(B)に太い実線で示すように、目標位置▲3▼からの位置ずれを最小限に止めて前記問題を改善することができる。
【0043】
尚、ステップS8で停止レンジでの移動距離の合計が前記所定値以上になると、ステップS14で自動操舵制御が中止されるので、前述したように目標位置▲3▼から大きく位置ずれするのを防止することができる。
【0044】
また、停止レンジにおける車両Vの移動距離が前記所定値未満のときには自動操舵制御の実行を禁止しないので、目標位置▲3▼での最終的なずれに大きな影響を与えない場合に、いちいち自動操舵制御が中止されるのを回避して利便性を高めることができる。尚、停止レンジにおける車両Vの移動距離は、1回の自動操舵制御を行う間に亘って加算され、その加算値が前記所定値以上になると自動操舵制御が中止される。例えば、スタート位置▲1▼において「P」レンジで車両Vが10cm移動し、続く折り返し位置▲2▼において「N」レンジで車両Vが10cm移動したような場合、トータルの移動距離が20cmに達するために自動操舵制御が中止される。これにより、自動操舵制御によって意図せぬ場所に車両Vが移動するのを確実に防止することができる。
【0045】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0046】
例えば、実施例では目標位置までの車両Vの移動軌跡が予め記憶部23に記憶されているが、車両Vの現在位置および目標位置から前記移動軌跡を演算することも可能である。また図4のフローチャートのステップS2で走行レンジが検出されない場合とは、停止レンジが検出されている場合だけでなく、シフトレンジ検出手段S6 が故障してシフトレンジが検出不能になった場合が含まれる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、シフトレンジ検出手段が走行レンジを検出していないときに車両が移動すると、その移動方向が前進なのか後進なのかを判別することができないため、移動軌跡設定手段により設定された移動軌跡設に基づいて自動操舵制御を的確に行うことができなくなるが、このような場合にアクチュエータ制御手段がアクチュエータの駆動を中止することにより車両が予期せぬ方向に移動するのを未然に回避することができる。
【0048】
また請求項2に記載された発明によれば、シフトレンジ検出手段が走行レンジを検出していないときの車両の移動距離が所定値未満であれば、アクチュエータ制御手段はアクチュエータの駆動を中止しないので、目標位置のずれに大きな影響を与えない程度の僅かな車両の移動によりいちいち自動操舵制御が中止されるのを回避して利便性を高めることができる。
【0049】
また請求項3に記載された発明によれば、シフトレンジが走行レンジになくても車両の移動方向を判別することが可能な場合には、アクチュエータ制御手段によるアクチュエータの駆動を継続することにより、自動操舵制御が不必要に中止されるのを回避して利便性を高めることができる。
【0050】
また請求項4に記載された発明によれば、車両が移動してもその移動方向を判別することができないとき、車両が停止していると見做して制御を行うことにより、アクチュエータの駆動を確実に中止して車両が予期せぬ方向に移動するのを未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動操舵装置を備えた車両の全体構成図
【図2】バック駐車/左モードの作用説明図
【図3】モード選択スイッチおよび自動駐車スタートスイッチを示す図
【図4】作用を説明するフローチャート
【図5】作用の説明図
【符号の説明】
7 ステアリングアクチュエータ(アクチュエータ)
22 制御部(アクチュエータ制御手段)
23 記憶部(移動軌跡設定手段)
S3 前輪回転角検出手段(移動距離検出手段)
S6 シフトレンジ検出手段
V 車両
Wf 前輪(車輪)
X 移動距離
θ 転舵角
Claims (4)
- 車輪(Wf)を転舵するアクチュエータ(7)と、
車両(V)に搭載された自動変速機のシフトレンジを検出するシフトレンジ検出手段(S6 )と、
車両(V)の移動距離(X)を検出する移動距離検出手段(S3 )と、
目標位置までの車両(V)の移動軌跡を、車両(V)の移動方向を含む移動距離(X)に対する車輪(Wf)の転舵角(θ)の関係として記憶または演算する移動軌跡設定手段(23)と、
移動軌跡設定手段(23)により記憶または演算された移動軌跡および移動距離検出手段(S3 )により検出された車両(V)の移動距離(X)に基づいてアクチュエータ(7)の駆動を制御するアクチュエータ制御手段(22)と、
を備えた車両の自動操舵装置において、
前記シフトレンジ検出手段(S6 )が走行レンジを検出していないときに前記移動距離検出手段(S3 )が車両(V)の移動距離(X)を検出した場合に、前記アクチュエータ制御手段(22)は前記移動軌跡および前記移動距離(X)に基づくアクチュエータ(7)の駆動を中止することを特徴とする車両の自動操舵装置。 - 前記シフトレンジ検出手段(S6 )が走行レンジを検出していないときに前記移動距離検出手段(S3 )が所定値以上の車両(V)の移動距離(X)を検出した場合に、前記アクチュエータ制御手段(22)はアクチュエータ(7)の駆動を中止することを特徴とする、請求項1に記載の車両の自動操舵装置。
- 前記シフトレンジ検出手段(S6 )が走行レンジを検出している状態から走行レンジを検出していない状態に変化したときに、前記移動距離検出手段(S3 )が継続して車両(V)の移動距離(X)を検出している場合に、前記アクチュエータ制御手段(22)は前記検出された走行レンジが継続して確立していると見做してアクチュエータ(7)の駆動を制御することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両の自動操舵装置。
- 前記シフトレンジ検出手段(S6 )が走行レンジを検出していないときに前記移動距離検出手段(S3 )が車両(V)の移動距離(X)を検出した場合に、前記アクチュエータ制御手段(22)は検出された車両(V)の移動距離(X)を無視し、車両(V)が移動していないものと見做してアクチュエータ(7)の駆動を制御することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の車両の自動操舵装置。
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JPH0995255A (ja) * | 1995-09-29 | 1997-04-08 | Honda Motor Co Ltd | 車両の自動走行装置 |
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