JP3866403B2 - 車両の自動操舵装置 - Google Patents

車両の自動操舵装置

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライバーのステアリング操作によらずに車両を自動的に駐車するための車両の自動操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる車両の自動操舵装置は特開平3−74256号公報、特開平4−55168号公報により既に知られている。これらの車両の自動操舵装置は、従来周知の電動パワーステアリング装置のアクチュエータを利用し、予め記憶した車両の移動距離と転舵角との関係に基づいて前記アクチュエータを制御することにより、バック駐車や縦列駐車を自動で行うようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記従来の車両の自動操舵装置は、ドライバーがブレーキペダルやアクセルペダルを操作して車速をコントロールする間に、電動パワーステアリング装置のアクチュエータで車輪を自動的に転舵するようになっているが、自動駐車は低速で行われるので前進走行時に自動変速機の変速段は1速変速段になり、ドライバーがアクセルペダルの操作を誤ったような場合に、路面摩擦係数が低いと車輪の駆動トルクが過剰になってスリップが発生する可能性がある。このように自動操舵制御中に車輪がスリップすると、車両が本来の移動軌跡から外れて目標位置に正しく移動できなくなる場合がある。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、自動操舵制御中に過剰な駆動トルクで車輪がスリップするのを防止して車両が移動軌跡から外れないようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、目標位置までの車両の移動軌跡を記憶または演算する移動軌跡設定手段と、車輪を転舵するアクチュエータと、移動軌跡設定手段により記憶または演算された移動軌跡に基づいてアクチュエータの駆動を制御するアクチュエータ制御手段と、減速比を有する低速段および複数の中速段と増速比を有する高速段とを含む複数の変速段を自動的に切り換え可能な自動変速機と、前記移動軌跡に基づいてアクチュエータ制御手段がアクチュエータの駆動を制御しているときに自動変速機の変速段を前記複数の中速段の何れかに設定し、もしくは自動変速機を前記複数の中速段間で変速する変速制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、移動軌跡に基づいてアクチュエータを駆動する自動操舵制御中にドライバーがアクセルペダルを踏み込み過ぎたような場合でも、自動変速機の変速段が複数の中速段の何れかに設定され、もしくは自動変速機が複数の中速段間で変速されるので、自動変速機の変速段が低速段になって過剰な駆動トルクで車輪がスリップしたり、自動変速機の変速段が高速段になって駆動トルクの不足により車両が移動不能になったりするのを防止することができ、これにより車両が移動軌跡から外れるのを効果的に防止することができる。
【0007】
また請求項に記載された発明は、請求項1の構成に加えて、前記移動軌跡設定手段は、車両の移動距離に対する車輪の転舵角の関係として前記移動軌跡を記憶または演算することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、車両の移動軌跡が車両の移動距離に対する車輪の転舵角の関係として記憶または演算されるので、自動操舵制御中に車速が変動しても常に一定の移動軌跡を確保することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。 図1〜図4は本発明の一実施例を示すもので、図1は自動操舵装置を備えた車両の全体構成図、図2はバック駐車/左モードの作用説明図、図3はモード選択スイッチおよび自動駐車スタートスイッチを示す図、図4は作用を説明するフローチャートである。
【0010】
図1に示すように、車両Vは一対の前輪Wf,Wfおよび一対の後輪Wr,Wrを備える。ステアリングホイール1と操舵輪である前輪Wf,Wfとが、ステアリングホイール1と一体に回転するステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2の下端に設けたピニオン3と、ピニオン3に噛み合うラック4と、ラック4の両端に設けた左右のタイロッド5,5と、タイロッド5,5に連結された左右のナックル6,6とによって接続される。ドライバーによるステアリングホイール1の操作をアシストすべく、あるいは後述する車庫入れのための自動操舵を行うべく、電気モータよりなるステアリングアクチュエータ7がウオームギヤ機構8を介してステアリングシャフト2に接続される。
【0011】
操舵制御装置21は制御部22と記憶部23とから構成される。制御部22は本発明のアクチュエータ制御手段を構成するもので、そこにはステアリングホイール1の回転角に基づいて前輪Wf,Wfの転舵角θを検出する転舵角検出手段S1 と、ステアリングホイール1の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段S2 と、左右の前輪Wf,Wfの回転角を検出する前輪回転角検出手段S3 ,S3 と、セレクトレバー11により選択されたシフトレンジ(「D」レンジ、「R」レンジ、「N」レンジ、「P」レンジ、「3」レンジ、「2」レンジ、「1」レンジ等)を検出するシフトレンジ検出手段S4 と、車両Vの前部、中央部および後部に設けられた合計8個の物体検出手段S5 …とからの信号が入力される。物体検出手段S5 …は公知のソナー、レーダー、テレビカメラ等から構成される。尚、8個の物体検出手段S5 …と制御部22とを接続するラインは、図面の煩雑化を防ぐために省略してある。
【0012】
前輪回転角検出手段S3 ,S3 は、前輪Wf,Wfが所定角度回転する毎にパルスを出力するもので、検出されたパルス数に前輪Wf,Wfの半径に応じて決定される定数を乗算することにより車両Vの移動距離Xを算出することができる。
【0013】
更に制御部22には、ドライバーにより操作されるモード選択スイッチS6 および自動駐車スタートスイッチS7 が接続される。図3から明らかなように、モード選択スイッチS6 は、4種類の駐車モード、即ちバック駐車/右モード、バック駐車/左モード、縦列駐車/右モードおよび縦列駐車/左モードの何れかを選択する際に操作されるもので、各モードに対応する4個のスイッチボタンを備えている。自動駐車スタートスイッチS7 は、モード選択スイッチS6 で選択した何れかのモードによる自動駐車を開始する際に操作される。
【0014】
前記記憶部23は本発明の移動軌跡設定手段を構成するもので、そこには前記4種類の駐車モードのデータ、即ち車両Vの移動距離Xに対する規範転舵角θrefの関係が、予めテーブルとして記憶されている。
【0015】
而して、制御部22は前記各検出手段S1 〜S5 およびスイッチS6 ,S7 からの信号と、記憶部23に記憶された駐車モードのデータとに基づいて、前記ステアリングアクチュエータ7の作動と、液晶モニター、スピーカ、ランプ、チャイム、ブザー等を含む操作段階教示装置12の作動とを制御する。
【0016】
車体前部にエンジンEと一体に搭載された自動変速機Tは前進4段および後進1段の変速段を備えており、この自動変速機Tの変速段は本発明の変速制御手段を構成する変速制御装置24により制御される。自動操舵制御が行われていない通常時には、変速制御装置24はセレクトレバー11により選択されたシフトレンジ、アクセル開度、車速等に基づいて自動変速機Tの変速段を制御するが、自動操舵制御中は制御部22からの指令に基づいて自動変速機Tの変速段を制御する。
【0017】
次に、前述の構成を備えた本発明の実施例の作用について説明する。
【0018】
自動操舵制御を行わない通常時(前記自動駐車スタートスイッチS7 がONしていないとき)には、操舵制御装置21は一般的なパワーステアリング制御装置として機能する。具体的には、ドライバーが車両Vを旋回させるべくステアリングホイール1を操作すると、操舵トルク検出手段S2 がステアリングホイール1に入力された操舵トルクを検出し、制御部22は前記操舵トルクに基づいてステアリングアクチュエータ7の駆動を制御する。その結果、ステアリングアクチュエータ7の駆動力によって左右の前輪Wf,Wfが転舵され、ドライバーのステアリング操作がアシストされる。
【0019】
次に、バック駐車/左モード(車両Vの左側にある駐車位置にバックしながら駐車するモード)を例にとって、自動操舵制御の内容を説明する。
【0020】
先ず、図2(A)に示すように、車両Vを駐車しようとする車庫の近傍に移動させ、車体の左側面を車庫入口線にできるだけ近づけた状態で、予め決められた基準(例えば、ドアの内側に設けられたマークやサイドミラー)が車庫の中心線に一致する位置(スタート位置(1) )に車両Vを停止させる。そして、モード選択スイッチS6 を操作してバック駐車/左モードを選択するとともに自動駐車スタートスイッチS7 をONすると、自動操舵制御が開始される。自動操舵制御が行われている間、操作段階教示装置12には自車の現在位置、周囲の障害物、駐車位置、スタート位置から駐車位置までの自車の予想移動軌跡、前進から後進に切り換える折り返し位置等が表示され、併せてスピーカからの音声でドライバーに前記折り返し位置(2) におけるセレクトレバー11の操作等の各種の指示や警報が行われる。
【0021】
自動操舵制御により、ドライバーがブレーキペダル9を緩めて車両Vをクリープ走行させるだけで、あるいはアクセルペダル10を僅かに踏んで車両Vを走行させるだけで、ステアリングホイール1を操作しなくても、モード選択スイッチS6 により選択されたバック駐車/左モードのデータに基づいて前輪Wf,Wfが自動操舵される。即ち、スタート位置(1) から折り返し位置(2) まで車両Vが前進する間は前輪Wf,Wfは右に自動操舵され、折り返し位置(2) から目標位置(3) まで車両Vが後進する間は前輪Wf,Wfは左に自動操舵される。
【0022】
図2(B)から明らかなように、自動操舵が行われている間、制御部22は記憶部23から読み出したバック駐車/左モードのデータに、前輪回転角検出手段S3 ,S3 の出力に基づいて算出した車両Vの移動距離Xを適用して規範転舵角θrefを検索する。そして前記規範転舵角θrefと転舵角検出手段S1 から入力された転舵角θとに基づいて偏差E(=θref−θ)を算出し、その偏差Eが0になるようにステアリングアクチュエータ7の作動を制御する。このとき、規範転舵角θrefのデータは車両Vの移動距離Xに対応して設定されているため、自動操舵制御中の車速に多少の変動があっても、前記移動距離Xが正しく検出されている限り車両Vは常に前記移動軌跡上を移動することになる。
【0023】
上述した自動操舵制御は、ドライバーがモード選択スイッチS6 をOFFした場合に解除されるが、それ以外にもドライバーがステアリングホイール1を操作した場合、何れかの物体検出手段S5 が障害物を検出した場合、車速が所定値を越えた場合に解除され、通常のパワーステアリング制御に復帰する。
【0024】
ところで、自動操舵が行われていない通常時には、自動変速機Tの変速段はシフトレンジ、アクセル開度、車速等に応じて制御されるが、自動操舵中は制御部22から変速制御装置24に出力される指令に基づいて制御される。以下、その作用を図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0025】
先ず、ステップS1でドライバーがモード選択スイッチS6 を操作して何れかの駐車モードを選択し、ステップS2でドライバーが自動駐車スタートスイッチS7 をONすると自動操舵制御が開始される。続くステップS3において、セレクトレバー11により選択されたシフトレンジをシフトレンジ検出手段S4 から読み込み、ステップS4でシフトレンジが「P」レンジ、「N」レンジまたは「R」レンジであれば、即ち前進走行レンジ(「D」レンジ、「3」レンジ、「2」レンジ、「1」レンジ)でなければ、ステップS5に移行して自動変速機Tの特別な制御は行わない。一方、前記ステップS4でシフトレンジが「P」レンジ、「N」レンジおよび「R」レンジの何れでもなく、前進走行レンジの何れかであれば、ステップS6に移行して自動変速機Tの変速段を強制的に2速変速段に固定する。
【0026】
次に、ステップS7で前輪回転角検出手段S3 ,S3 から前輪Wf,Wfの回転角を読み込み、ステップS8で前輪Wf,Wfの回転角から車両Vの移動距離Xを算出する。そしてステップS9で移動距離Xから検索した移動軌跡に基づいてステアリングアクチュエータ7の作動を制御し、これをステップS10で移動軌跡の再生が終了するまで継続する。前記ステップS10で移動軌跡の再生が終了して車両Vが目標位置(3) (図2参照)に達すると、ステップS11で自動操舵制御を終了し、ステップS12で自動変速機Tが通常の変速制御に復帰するとともに、ステップS13でステアリングアクチュエータ7が通常のパワーステアリング制御に復帰する。
【0027】
以上のように、自動操舵制御中にシフトレンジが前進走行レンジである場合、例えば、車両Vが図2のスタート位置(1) から折り返し位置(2) まで前進走行する場合に、自動変速機Tの変速段が強制的に2速変速段に固定される。従って、ドライバーがアクセルペダル10を踏み込み過ぎても、あるいは路面摩擦係数が小さい場合でも、駆動トルクが過剰になってスリップが発生することが防止される。その結果、車両Vの移動距離Xに基づいて読み出される規範転舵角θrefに誤差が発生するのを防止し、車両Vを目標位置(3) に正しく導くことができる。
【0028】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0029】
例えば、実施例では目標位置までの車両Vの移動軌跡が予め記憶部23に記憶されているが、車両Vの現在位置および目標位置から前記移動軌跡を演算することも可能である。 また実施例では自動操舵制御中に変速段を2速変速段に固定しているが、前進4段の自動変速機Tではそれを3速変速段あるいは4速変速段に固定することができ、前進5段の自動変速機Tではそれを3速変速段、4速変速段あるいは5速変速段に固定することができる。また前進4段の自動変速機Tでは2速変速段〜4速変速段間で変速を行い、前進5段の自動変速機Tでは2速変速段〜5速変速段間で変速を行うことも可能である。
【0030】
但し、高速段(例えば、5速変速段)が増速比を有する場合には、駆動トルクが不足して車両Vが走行できなくなるために該高速段に固定されることはなく、減速比を有する複数の変速段のうち減速比が最大の低速段(1速変速段)を除く何れかの中速段(2速変速段〜4速変速段の何れか)に固定されるか、該中速段間で変速が行われる。更に、実施例の自動変速機Tは後進変速段が1段であるが、それが多段である場合には後進の自動操舵制御中に最低速段以外の変速段に設定することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、移動軌跡に基づいてアクチュエータを駆動する自動操舵制御中にドライバーがアクセルペダルを踏み込み過ぎたような場合でも、自動変速機の変速段が複数の中速段の何れかに設定され、もしくは自動変速機が複数の中速段間で変速されるので、自動変速機の変速段が低速段になって過剰な駆動トルクで車輪がスリップしたり、自動変速機の変速段が高速段になって駆動トルクの不足により車両が移動不能になったりするのを防止することができ、これにより車両が移動軌跡から外れるのを効果的に防止することができる。
【0032】
また請求項に記載された発明によれば、車両の移動軌跡が車両の移動距離に対する車輪の転舵角の関係として記憶または演算されるので、自動操舵制御中に車速が変動しても常に一定の移動軌跡を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 自動操舵装置を備えた車両の全体構成図
【図2】 バック駐車/左モードの作用説明図
【図3】 モード選択スイッチおよび自動駐車スタートスイッチを示す図
【図4】 作用を説明するフローチャート
【符号の説明】
7 ステアリングアクチュエータ(アクチュエータ)
22 制御部(アクチュエータ制御手段)
23 記憶部(移動軌跡設定手段)
24 変速制御装置(変速制御手段)
T 自動変速機
V 車両
Wf 前輪(車輪)
X 移動距離
θ 転舵角

Claims (2)

  1. 目標位置までの車両(V)の移動軌跡を記憶または演算する移動軌跡設定手段(23)と、
    車輪(Wf)を転舵するアクチュエータ(7)と、
    移動軌跡設定手段(23)により記憶または演算された移動軌跡に基づいてアクチュエータ(7)の駆動を制御するアクチュエータ制御手段(22)と、
    減速比を有する低速段および複数の中速段と増速比を有する高速段とを含む複数の変速段を自動的に切り換え可能な自動変速機(T)と、
    前記移動軌跡に基づいてアクチュエータ制御手段(22)がアクチュエータ(7)の駆動を制御しているときに自動変速機(T)の変速段を前記複数の中速段の何れかに設定し、もしくは自動変速機(T)を前記複数の中速段間で変速する変速制御手段(24)と、を備えたことを特徴とする車両の自動操舵装置。
  2. 前記移動軌跡設定手段(23)は、車両(V)の移動距離(X)に対する車輪(Wf)の転舵角(θ)の関係として前記移動軌跡を記憶または演算することを特徴とする、請求項1に記載の車両の自動操舵装置。
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