この曲はたぶんBALLOND’ORの核になる
──楽しみです。あともう1曲、最新曲となる“蝶天使“。これはどんなふうに生まれたんでしょうか。
MJM:“DREAMS”ができた後くらいに、これもほんとにメロディから出てきて。僕、メロディが出てきたときってあんまり録音しないんですよ。録音しないまま、いかに自分の頭に残っているのか、ずっと放置する時間があって。この曲も、頭に浮かんでから2ヶ月くらい経って、ようやく作り出したんですね。
──そんなに長く。録音しないのは毎回ですか? それこそスマホに録音機能だってあるわけで。
MJM:そうなんですけど、基本的には自分がちゃんと覚えていられるメロディにしたくて。けっこう僕、物覚えが悪くて、忘れっぽいんですよ(笑)。人の曲とかもなかなか覚えらんなくて。結局自分が歌えないといけないし、なにも録音しなくても頭にずーっと鳴っているものじゃないと。で、この曲は1~2ヶ月放置する期間を経て、そろそろ外の世界に出してみようと思って思いきり歌ったんです。そしたら歌詞もメロディも同時に飛び出してきた感じで。
NIKE:一発目に聴いた時「あ、この曲はたぶんBALLOND’ORの核になる」って思いましたね。自分はそんな、いろんなことに感動する人間ではないんですけど、本当の意味で、一発でこんなに感動したことはなかったっていう体験を、自分のバンドのヴォーカルにさせられてしまった(笑)。そんな感じでしたね。すごくドキドキしました。
──うん。このメロディはオルゴールで聴いてもいいと思えるでしょうね。
NIKE:あぁ。わかりますね。
──本当に優しくて暖かい、普遍的なもの。こちらもただ爆音ノイズをぶつけるのは違う、という判断だったんでしょうか。
MJM:もちろんノイズをぶつけることもできるんですけど、やっぱりBALLOND’ORって、メロディにいちばん合う音を探す旅をいつも心がけてて。この曲、最初に合わせた時はギターもしっくりこなかったんですよ。で、NIKEくんに「このメロディに本当にぶつかり合うようなギターを出してくれ」って言って。それであの完成形のサウンドになったんですけど、正直はじめて聴いたときは、NIKEくんがいま言った、一発でメロディに感動したっていう話と同じ感覚になりましたね。「この曲に、こんなギターぶつけるのか?」って。「これだからバンドってやめらんないな!」と思った。このメロディとギターが重なった時の、胸がそわそわする感覚は自分でも驚きでした。
NIKE:曲を何度も聴き返しながらギター・フレーズを作っていくんですけど。いちばん大事なのは、曲をはじめて聴いた時の感覚なんじゃないかなと思って。だから聴いた瞬間のことを思い出しながらフレーズを作っていくんですね。自分ができること、BALLOND’ORにしかできないことってなんだろうって思いながら。たとえばジーザス・アンド・メリーチェインみたいに甘いムードをすごく大切にしていたり、同時に、アット・ザ・ドライヴインの楽器の苛烈さ、人間の爆発力みたいなものにも感動するし。そのどちらも詰め込んだような音楽をBALLOND’ORで表現できたら最高だなって。それとも違うんですけど、いま自分ができる最高のパフォーマンスをぶつけてやろうって思ったら、いまの形になりました。
──あとこれ、リズムは全部打ち込みなんですか?
MJM:一応ドラムの生音は録って。AKAHIGEくんのキックを生で録って、それを重ねたり。変幻させたり。
NIKE:けっこう重ねたよね?
MJM:重ねて、あと余分なところは削ったり。そういう作り方ですね。 “DREAMS”も“蝶天使“も、どちらも心臓の鼓動っていうものをすごく意識しました。そこにより近く、というか。
──なんでそのイメージなんですか?
MJM:自分のなかでは、“DREAMS”からの変化なんですけど。まずギターがリズムを刻んでるし、歌とギターだけでもうリズムが生まれてるんですね。昔の音楽でいうと、たとえばブルースだったりスキッフルだったりボサノヴァみたいなのも歌とギターでリズムがあるじゃないですか。そこで大きいのがNANCYのシンセサイザー・ベースで。ドーンっていう低音が歌に絡んでくると、ほんと立体的というか、映画で言うIMAXみたいな体験ができる感覚があって。歌とエレキギター、シンセベースに囲まれながら、真ん中にいるのは自分たちの鼓動であって欲しいと思ったんですね。それが心臓の音だった。ドクッ、ドクッ、って波打つようなもの。そういう感覚で音楽を聴いて欲しいって気持ちがありましたね。
──心臓の音って、生きてる証でもありますよね。
MJM:あぁ。好きな音楽を聴いてるときってドキドキしますよね。音楽があって胸の鼓動が速くなる。音楽をよく聴くからこそ逆に自分の心臓の音が確認できるとか。そういうことってよくあると思うんですね。リズムやメロディって、命を吹き込むような力があるものだし。そういうことを、ようやく表現できる機会が来たのかなって思います。
──4人編成になってからでしょうね。音がどんどん整理されていった。
MJM:そうですね。たとえば今回の曲は「ヒップホップっぽい、トラップっぽい」って感想を言われたりもしたんです。2年くらい前から、ビートを心臓的なものにしたいって話はメンバーにもして、その試みも何度もしてたんですね。当時作ってた曲には合わなかったけど。別に、すごくトラップやヒップホップを意識したって意味ではなくて、心臓的な鼓動っていうのを、いつか、どうにかやってみたかった。それがたまたま“DREAMS”でできたことで、新境地に向かっていけたような気がします。
NIKE:ほんとに今回の新作2曲に関しては、これからのBALLOND’ORがどうなっていくのか、僕らにとってもワクワクするものができたと思うし。歌の雰囲気や強さをぜひ感じて欲しいなと思うし。
──はい。ただ、この2曲だけをかいつまむと、だいぶ歌ものに寄ったなと思ってしまうパンク・ファンの気持ちも、実は多少あるんですが。
MJM:あぁ。でもBALLOND’ORって、アルバムを作ればメロウな曲もあるし、うるさい曲もあるし。特別歌ものを作ったつもりでもないんですね。自分たちのなかではパンクの火は全然消えてないですよ。
NIKE:特にライヴは、全然おとなしくなってないです。こないだライヴ中に左見たらMJがいなくなってて、どこにいるのかなと思ったら上のパイプにしがみついてた(笑)。全然、そこは変わってないんじゃないですかね!?(笑)。
──わかりました(笑)。この曲が配信される頃には、12月24日の新宿MARZワンマンも発表されていますよね。
MJM:はい。“DREAMS”と“蝶天使“の2曲ができて、さらに新しい方向に向かっていく曲たちがいま生まれているんですけど。それも一緒に連れていくし、さらにはこのLPに収録されているいままでのBALLOND’ORも両方詰め込んだ一夜にしたいと思っていて。本当にいままでのBALLOND’ORと次のBALLOND’ORが同時に体験できる夜になると思います。
NIKE:うん。刺激的でおもしろい夜になると思ってます。この日はSpecificからリリースするLPも先行販売することになっているんです。日本での店舗販売は来年になるんですが、年内に聴いてみたい方はこの日に来てもらえればレコードを手にしてもらえます。そちらもライヴと一緒に楽しみにしてもらえればと思います。
──素敵なイヴになりそうですね。
MJM:はい。爆音の中にキラメキが見えると思います。
編集:梶野有希
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LIVE INFORMATION
新宿MARZ〜20th Anniversary〜 BALLOND’OR 1MAN 1st LP RELEASE GIG〈Catcher In The Dreams〉
12月24日(金) @新宿MARZ
OPEN 19:00 / START 19:30
Ticket ¥3000
■チケット:https://eplus.jp/sf/detail/3522290001-P0030001 ※e+のみ
先行発売:11月18日(木)まで
一般発売:12月2日(木)12:00〜12月16日(木)
※当日、2021冬にEU/USにてリリースする海外盤LP ‘BALLOND’OR’ を日本先行数量限定にて会場発売。
PROFILE : BALLOND'OR
メンバーは、Vo.Gt MJM / Gt. NIKE / DRUMS AKAHIGE / SYNTHESIZER.Ba.Vo †NANCY†。失恋をして引きこもり生活だったVo.MJMとGt.NIKEがいままでの好きなロックを散々詰め込んだ唯一無二の音楽をかき鳴らそうと、東京下北沢にて結成。メンバーが移住するアートギャラリーにて楽曲や、MVを日々制作しながら活動している。
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