宅録とバンド、両岸を軽やかに渡り歩く喜びを分かち合う、colormal
数多いるアーティストの中からOTOTOY編集部がグッときたアーティストを取り上げるこのコーナー。第15回は、やる計画がなかったライヴをするようになった宅録アーティストの話。彼のライヴをまた観られる日を心から待ち望みつつ、インタヴューと貴重な音源をお届けします。
第15回 : colormal
今回紹介するのは大阪を中心に活動する宅録ソロ・プロジェクト、colormal (カラーマル)。主宰のイエナガ(Gt/Vo)は自身を紹介する際にいつも「大学でバンドを組み損なったので宅録活動をはじめた」と言う。高校時代は(コピー)バンドをしていたとも。実際に楽曲を聴くと、サウンドにはポストロック的なバンド性への志向が、そのメロディアスさには“日本のロックの子ども”であることが強く感じられ、それがcolormalの大きな魅力となっている。そして、これも本人が「自分で歌うつもりじゃなかった」と言うヴォーカルが、とても良い。
2015年、自作楽曲をSoundCloudにアップロードしたことをきっかけに音楽活動を開始。友人のレーベルのコンピ参加を期に、プロジェクトをcolormalと命名。そして2018年1月のファースト・ミニ・アルバム『merkmal』のリリースに至る。
イエナガは『merkmal』リリース時のインタヴューで、ライヴ活動については興味はあるが具体的な計画はないと語っていた。しかし2018年12月からサポートのバンドメンバーを従えてcolormalとしてのライヴ活動を開始すると、2019年は平均月1回のペースでライヴを行うようになる。このライヴが実に魅力的なのだ。
アルバムリリース時にはレーベル・オフィシャル・ページ(Mabase Records - release special site)をはじめ、いくつかのインタヴューに答えているイエナガだが、ライヴ活動開始後に彼がどのように考えているのかの情報はあまりみられない。今回のインタヴューでは、そんなトラックメイカーとして、バンドマンとしてのイエナガに、ライヴ・アーティストとしてのcolormalに、いくつかの質問を投げかけてみた。それでは、お楽しみください!
今回のインタヴューにあわせて、CD/カセットテープともすでにソールドアウトした1stアルバム『merkmal』をOTOTOYで配信させていただくことになりました。もちろんロスレスで。しかもこれまでCDでしか聴くことのできなかった“ラストの演出”も含めた形としては、はじめての配信となります。
MAIL INTERVIEW : イエナガ(colormal)
Q. 音楽活動をはじめたきっかけを教えてください
2015年、SoundCloudに「さまよう」という楽曲をアップロードしたことがきっかけだと思います。大学に進学して、自分がギターを弾くバンドを組みたいと思っていたけど組めなくて。宅録の同人作家やアーティストをそれより前から聴いていたこともあり、興味本位で始めました。
Q. 影響を受けたアーティストは?
宅録活動をはじめたきっかけとしての影響であれば、ヒトリエでギタリストをされているシノダさんの宅録名義である、cakeboxです。音楽をやる中で常に影響を受けているな、と思うアーティストはGRAPEVINEかも。僕はもともとギターだけを弾いていたので、「かっこいいギター」という点が共通項かもしれませんね。こんな風に弾けたら、こんな音が出せたらとか。それは曲のコードであったり、アプローチや単に音色の面でもそうですが。それぞれ『cakebox vol.2』と『愚かな者の語ること』がアルバムとしてはフェイバリットです。
Q. 高校生の頃はコピーバンドをしていたそうですが、どんなバンドでしたか?
現Mabase Recordsのレーベルオーナーが友達で、彼をギター・ヴォーカルに据えてコピーバンドをしていたんですよ。よくコピーしていたのはthe pillows、ナンバーガール、Base Ball Bearあたりです。あとはベース担当でthe telephonesのコピーバンドをやっていたりもしました。
Q. 自分で曲を作りはじめたきっかけは?
大学進学後にバンドを組めなかったからです。当時所属していたサークルで曲を作ろうって志向の人がいなくて。本来自分が歌うのは一番避けたかったことだったので、いずれ組むバンドのために嫌々デモを作る気持ちで曲作りをはじめました。
Q. colormalの音楽性をひとことで言うと?
あなたと同じ、生活をする人がやる音楽です。
Q. 『merkmal』リリース時のインタヴューではライブの具体的な計画はないとおっしゃっていました。その後colormalとしてライブを行うようになった経緯を教えてください
具体的な計画はない、と言い切ったのはメンバーにできる友達がいなかったからです。現サポートメンバーはほぼ固定なんですが、彼らの技術力が凄くて、「背中を預けていいかも」となってからはライブをすることは楽しいですね。
ライブ活動については、以前に僕がライブハウスのPAとして働いている時に出演していたバンドのドラマーだった田井中くんが、「いつかバンド形態やるなら叩かせて」と声をかけてくれたことがきっかけです。そのあと、プールと銃口のジンくん(Gt/Vo)が、自主企画にcolormalで出演してほしいと何度もアプローチしてくれて、ということがあり、そこからイベントへの出演をスタートしました。
Q. サポート・メンバーとの関係は?
ドラムの田井中くんは先述の通りです。
そこから僕の元職場で知りあった、今は、よあけ、というバンドでサポートをしている、ベースのうえまやちゃん(ex.絶景クジラ/フライデーフライデー)を誘って。
ギターのやささく君とは、(最近メジャーデビューした)林青空のサポートで出たコンテスト形式のイベントで知り合っていて、バンド形態に際して僕から声をかけました。
その後、うえまやちゃんが上京することになったので、現サポートのマツヤマ君にお願いして現在に至ります。マツヤマ君は1年半くらい前にTwitterで急に、「曲が好きなんですけど飲みに行きませんか?」ってDMをくれて。一緒にお酒を飲んだ時に音楽の趣味も同じだったので意気投合して、いつかサポートが必要なら呼んでくれと言ってくれてたんです。
Q. colormalとして自作作品をライブでやってみた感想は?
歌いながら弾く予定じゃなかったなあ、と考えながらいつもやってます。
Q. 音源とライブでの表現の違いは?
音数を削いでいるので、必要に応じてフレーズはもちろん変えています。あと、僕はサポートメンバーに好きにフレーズ変えていいよと言っているので、もう何もかも違います。単純に「現実的」な物に置き換えている感じですね。
バンド活動を始めてからの新曲も基本的には僕のデモをベースにやっている感じで、こちらも回数を重ねるごとにアレンジが変わってますね。
Q. 『merkmal』リリース時、ご自身の中で「バンドマン」と「トラックメイカー」の定義や両者の違いについて意識していることはありましたか?
その時は、自分はどちらでもないと思っていました。今もですけど。
バンドはメンバーで作り上げるもの、トラックメイカーはひとりで完結するもの、と考えると、いまだに自分は宙ぶらりんだなと感じています。心持ちも含めて。
両者の違いに関しては全く意識していないです。曲が良ければどうとでも、と考えています。
Q. ライブ活動をはじめてみて、その考えに変化はありましたか?
全くありませんでした。成長なしです。強いて言うなら、その定義づけをする必要がないのが最近の潮流なのかな、って感じたことくらいかもしれません。
Q. これまでの音楽活動で一番嬉しかった反響は? 逆に、へこんだ反響は?
作品のリリースに関しては、正直、今くらいの広まりをみせると想定していなかったので、驚くことばかり……が正直なところです。
ライヴに関してはいつも自分の実力の至らなさにへこんでいて、それをメンバーのアレンジや会いに来てくれたお客さんとの会話で励ましてもらっているような感覚です。
基本的に反響があること自体が嬉しいと思っています。
Q. 今後の予定や計画を教えてください
ほんとに何も考えていません(笑)。音楽活動に対して、戦略とか持ち出したことが一切なくて。
また音源を出して、しばらくは今のスタイルを継続するのかなと思います。今後もライブは今と同じペースやテンションで向き合っていく予定です。客演に関しても。
Q. ちなみに使っているDAWはまだCubaseの無料版のままですか?
もちろん。
Q. アーティストとしての現在の夢は?
もう、だいたい叶いました。憧れだった人に会えて、同世代でシンパシーを感じる人と仲良くなれて、友達が増えて。特に思い残すことはないです。
最近はワンマンでライブをしてみたいなと思ってます。それも夢というか、自分の中ではアフターストーリー的なイメージです。
あとは今のサポートメンバーとかリスナーに楽しい思いをしてもらえるようにやりたい、これが一番かもしれないですね。自分の野望みたいなのはもうないです。
Q. 1年後のcolormalはどうなっているでしょうか?
それに関しては、2019年もライヴ活動をこんなにすることになると思っていなかったので、予想することを諦めました。すごくいい曲を作っていればそれでいいです。
Q. 最後に、1年後のご自身へのメッセージを
「満足しましたか?」
(Some photos courtesy of 瀬戸すなお)
MOVIES
2020年6月6日 心斎橋FANJで行われた無観客ライブ“20200606”の映像をプレミア公開中!
PROFILE
colormal
イエナガ(Gt/Vo)によるソロ・プロジェクト。
2015年初春、「さまよう」をSoundCloudにアップロードしたことをきっかけに音楽活動を開始。Mabase Records [マバセレコーズ]のコンピレーション・アルバム『click noise vol.1 CROSSFADE』への参加にあたり、プロジェクトをcolormalと命名。2018年1月、ファースト・ミニ・アルバム『merkmal』をリリース。2018年12月からサポート・メンバーを得てライヴ活動を開始。
Twitter :
https://twitter.com/InfoColormal (アーティスト公式)
https://twitter.com/colormal (イエナガ)
ライヴ・スケジュール
2020年8月29日(土) @ 大阪・南堀江SOCORE FACTORY
colormalワンマンライヴ「Our,merkmal」
(配信ライブを行うか人数を制限して現地開催を行うか等は今後の状況をみながら判断するとのことです。)
colormalの作品
colormalの1stアルバムCD『merkmal』は2018年のリリースから1年でソールドアウト。「再プレスはしません」という本人の宣言通り、その後カセットテープ+DLコードの形態で数量限定再発されたものの、そちらもすでにソールドアウト。そのアルバムを本インタヴューを期にOTOTOYから配信開始です。もちろんロスレスで。しかもこれまでCDでしか聴くことのできなかった“ラストの演出”も含めた形では、はじめての配信となります!