2019/12/26 18:00

パンキッシュなアティチュードと甘美なメロディ、クールで熱く、そして貫かれる美学──Waater

数多いるアーティストの中からOTOTOY編集部がライヴハウスやネットで出会い、ビビッときた、 これはもうオススメするしかない! というアーティストを取り上げるこのコーナー。 読んで、聴いて、そして何か感じるものがあれば、できるならライヴを観にいってほしい。損はさせません。 そんな絶対の確信とともにお届けする、第3回。

第3回 : Waater

今回紹介するバンドは、秋田県出身、現在は東京を中心に活動する、Waater

アーティスト写真やミュージックビデオでWaaterに接してまず印象付けられるのは、その特異なビジュアルだろう。 ひょっとしたらそこで敬遠してしまう人もいるかもしれない。 だが、ミュージックビデオでも下のOTOTOYの試聴リンクでもかまわない、その楽曲を聴いてみてほしい。 そこには驚くほど間口の広い音楽世界がひろがっている。

実際、彼らは様々なジャンルや形容詞とともに語られるアーティストでもある。 ネオ・パンク、サーフ・ポップ、ローファイ、ドリーム・ポップ、シューゲイザー、サイケデリック、……  あるいは「Feel Slow」という楽曲ではネオアコの香りすら感じられる。 ライヴでの演奏もエネルギッシュかつ魅力的で評価が高い彼らだが、ライヴではそこにダンサブルという言葉も付け加えることができるだろう。

彼ら自身初となる今回のインタヴューでは、その多様な楽曲が彼らから産み出される理由、音楽ジャンルというものへの考え方、 そして様々な形容詞で語られはするがその根幹に確実に据わり彼らの魅力の根源となっているパンキッシュなアティチュードについてなど、 存分に語ってもらうことができた。

2枚目のEPとなる『Escapes』を今年5月にリリースして以来、精力的なライヴ活動に加え、そのEPからすでに6本のミュージックビデオを公開するなど、 ハイペースで活動を続けるWaater。

様々な要素を具現化しつつも常に共にある甘美なメロディ。クールを装いながら熱量に満ちたライヴ。DIY精神と初期衝動。そして彼らのアウトプットに一貫する美学。 インディー・ロックの希望の光を身にまとったバンドと言っても過言ではないだろう。

それではWaaterのフロントマンAkiyamaが全力で応えてくれたメール・インタヴューをお届けします!

MAIL INTERVIEW : Yuya Akiyama (Waater)

Q. 音楽活動をはじめたきっかけを教えてください

音楽好きの親父がいることもあり、中2の時Sex Pistolsに出会い、衝撃を受けて色んな音楽を聴くようになりました。それと同時期くらいに親父が昔弾いてたエレキギターを押し入れから引っ張り出して弾いて練習していました。

高校生になって自分のオリジナルの曲を作ってみたくなって、どうしようかなーって思ってたら、RamonesとかThe Jesus and Mary Chainみたいにうるさくて3コードの簡単な曲なら自分でもできるんじゃないかって思いついて、模倣的に一曲気合い入れて作りました。

そしたら案外上手くいって、SoundCloudにあげたんです。こんな曲です。

これがたまたま南米のネットレーベルに取り上げてもらうことができたんです。 (編集部注 : Mutt Singles #02 - "Sunny Day" by Housekeeper)

今思い返すとこれがきっかけで少し自信がついて作曲にハマっていったのかなって思います。

Q. そこから現在のWaaterまでの経緯は?

さっき言ったような感じで作曲するのは高校生の頃からの趣味だったので、仙台で大学に通っている頃も音楽サークルに入ったり、バンドを組む訳でもなく「FL Studio」っていうDAWを使ってかなりマイペースに作曲していました。その頃の目立った活動と言ったら、SoundCloudに一曲だけアップロードして身内にちょっと聴いてもらうくらいでした。当時は今のWaaterと全く違う音楽をやっていて、一言で言うとエレクトロのようなジャンルの曲を作っていました。

でも3年生になる前あたりに、きっかけはなかったと思うんですが、ロックバンドみたいなサウンドの音楽を作ろうっていう姿勢に変わりました。その際もそれまでと同じく暇があったら少しずつ曲を書いてたんですが、そんななか自律神経をやられて一週間くらい完全に家に引きこもってしまう時期がやって来るんです。その時のことはほんとに辛かったことくらいしか覚えていないんですけど、はっきり覚えているのは、ちょうど1週間目くらいにさすがに何かしないといけないと思ってギターを弾いて即興的に曲を作ってボイスメモに録音していたら、急に白い光みたいなのがパーって見えた気がして、「なんかよくわかんないけど、これだ!」って急に楽しくなったんです。

まあそれがきっかけでちょっとずつ立ち直っていきました。その後、作りかけていた曲を完成させてちゃんと作品にしようと決心し、ギターを抱えて、PCに向き合い続けること一ヶ月、4曲の音源が揃いました。それが後にWaaterの最初のEPになるんですけど、その時は「作ったのはいいけどどうしよう」って悩んでたんですね。

それから何日か経った日に、バイト先にラッパーやってる年下の子がいて、休憩中に完成した音源をなんとなく聴かせてみたら意外にも気に入ってくれて、その子が企画してるパーティーに誘われたんです。そういう偶然から自主制作でEPを作ったり、ライヴをするようになったので、そこからが本格的な音楽活動の始まりだと思っています。それが2016年の8月です。

ちなみにこの時はSSWとしてWaaterをやっていて、今もですけどボロいLenovoのPCしか持ってないんで会場に持ってくわけにもいかず、オケが入ったCDをPAとか共演するDJにかけてもらって、それに合わせてギターを弾いて歌う、っていう変なスタイルでライヴをやってました。

Q. メンバーとの出会いは?

僕らは地元が同じで、みんな小学校から高校までは同じところに進学してます。

地方のニュータウンで育ちまして、丘というか山の上にあって駅に行くのも結構大変でした。なかなか閉鎖的なところだったと思います。街にいる学生が遊ぶところといえばでっかいジャスコと公園くらいで、ギターのShionとドラムのTaikiは同級生だったので、高校の頃なんかは毎日そういうとこでふざけてましたね。彼らとは中学生の頃に音楽の話ができる唯一の友達で、俺が作ったミックスCDとかを渡す仲でした。そういうのもあって高校に入ってから遊びで一緒にバンド組んで、Green DayとかStiff Little Fingersのコピーをやってました。

ベースのTaiseiは後輩なんですけど小学校の時によくオンラインゲームを一緒にやる仲で、その名残で高校までちょいちょい話したりしてました。

シンセのTakashiは存在は知っていたものの、一個上なのであんまり関わる機会がなかったし、そもそもちょっと見た目が怖い先輩だったので恐れていました。でも大学生の時、東京に遊びに行った際に元々彼と仲が良かったShionに紹介されて、そこから東京に遊びに行ったら必ず遊ぶくらいの仲になりました。

Q. バンド結成の経緯は?

さっき言ったバイト先の後輩のイベントに出演してから色んな人と知り合うようになって、ライヴも仙台の色んなとこでやるようになったんです。

そんなとき、当時ELIOTPSYCHO (エリオットサイコ)っていうファッションブランドを立ち上げて服を作ってたShionがファッション&音楽イベントみたいなのに誘われたとき、Akiyaも出てみないかって連絡が来て、そのときに「どうせなら俺ギター弾けるしメンバー集めてバンドでやってみないか?」って言われたんです。

俺もバンドセットで自分の曲をやってみたかったので、すぐにやろうという流れになって。

メンバーはどう集めようって話し合ったら、仲良い地元の奴らを誘えばいいじゃんということになり、高校生の時に一緒にバンドやってたTaikiと、大学で音楽サークルに入ってるって聞いてたTaiseiを誘ったらすんなりオッケーしてくれました。経験者とはいえ、僕も含めてみんなほぼ楽器のテクニック・ゼロみたいな感じだったんですけど、とりあえずなるべく早くバンドを組むというのが大事だったし、絶対に間違いのないメンツだったので満足しました。

当初は4人で活動する予定だったのですが、2018年の年明けにTakashiの実家でShionと俺の3人で日本酒をガブガブ飲んで酔っ払いながら駄弁っていて。そこでバンド始めるって話で盛り上がってる時に、酔った勢いで僕がTakashiのことキーボードで入れたいって言ったら、やろうっていう話になって。僕もキーボードがいたら絶対もっと面白くなると思ったので、その場でヤフオクでシンセサイザーを購入させて、Takashiも加入することになりました。

Q. 影響を受けたアーティストは?

影響を受けたアーティストを答えるのは本当に難しいです。音楽に限って言えば、今となってはこれが苦手とかっていうジャンルもないし、最近は古今東西色んなアーティストから、自分の好きな要素を吸収していこうという姿勢でやっています。

でも常にその下地にあるのが70‘sのオリジナルパンクのバンドが提示したDIYの精神と初期衝動的なスタイルですね。例えばそのシーンで言ったら、Buzzcocksというバンドは、パンクロック初の自主制作をしていたり、マンチェスターっていう当時パンクシーンが浸透していなかった土地で自主企画を進んで開催したり、自分たちで何かを作ろうっていう姿勢が本当にカッコいいと思います。それが実際に人知れず今の音楽にまで影響が及んでいるので、Buzzcocksだけじゃなくて、自分達でなんかやってやろうみたいな野心のあるアーティストは自然と惹きつけられますね。

あと音楽性で言ったら非対称的なものを組み合わせた音楽に影響を受けています。例えばさっき言ったThe Jesus and Mary Chain。サウンド面でももちろん多少の影響はあるかもしれませんが、それよりもダークで暗い雰囲気の曲で歌詞も消極的だけどメロディは超ポップみたいな、そういう非対称的なものを組み合わせたような音楽が面白いと感じる癖があって、Waaterをやっていると不意にその影響を感じることがあります。

2nd EP 『Escapes』製作時

Q. バンドの音楽性を言葉であらわすとしたら?

Waaterの音楽性は僕らの出身地である秋田が形成していると思います。

僕の中の秋田のイメージは一年中曇り空でどんよりした場所だということです。あとは冬は本当に寒い、外出る気にならないです。

そういうところにいたせいか、高校生の頃はダウナーな音楽に傾倒していました。でもその反面ポップな音楽だったり、例えばカリフォルニアみたいな秋田と真逆のイメージにあるところのアーティストにすごく憧れがありました。

そういった好みや先ほど言った非対称性のある音楽の影響をWaaterに感じることがあります。

Q. Waaterの音楽を何らかの「ジャンル」に当てはめて語られることは本意ですか?

本意です。

Q. では、ご自身ではWaaterはどんなジャンルの音楽だと思っていますか?

自分でもWaaterのジャンルを表すのは難しいです。僕の曲作りは常にその時の自然体で作っているので、ああいう曲を意識して作ろうっていうのはWaaterを始めてからほとんどないです。そうやってある意味で無意識の状態で作っているので、その時の表現したいものによって、インプットしてきた音楽が自分の中でブレンドされて曲が生まれている感覚があります。

だからWaaterはあくまでロックという母体の中にいると思いますが、その中の色んな音楽のエッセンスが要所要所に感じられる音楽なのかなと思います。そういうのは曲ができて改めてそういうことに気づくこともあれば、人に言われてそういう聴こえ方もあるんだと驚くこともたまにあります。

悪く言ったらそこまで計算していない作り方をしているので、仕方ないことかもしれないですが、各々に色んな解釈をされるのは僕にとって常に興味深いことです。 ですからWaaterの音楽が色んなジャンルで呼ばれることは「本意」だと言えます。

Q. 曲を作るにあたって、こだわっている点は?

曲を作っている時自分の中に浮かんで来るイメージをなるべくそのまま再現することですね。考えすぎると全然納得いくものが作れないので、さっきも言ったようにその時のセンスで作っています。

でもそういう作り方でも僕が作る曲には、共通するメロディみたいなものがあると思うので面白いと思っています。

Q. これまでの作品のリリースやライヴの経験で、一番うれしかった反響、へこんだ反響は?

ライヴで嬉しい反響は、やっぱり楽しんでもらえたことですかね。

最近はフロアで好きなように踊ってくれる人もいて嬉しいです。演奏する時はその時の自分たちの全力を尽くしたいというのが常にあるので、そういう熱量が伝わった時は喜ばしいことだなって思います。

だからへこむ時はそういうのがあまり伝わらなかったなっていうライヴをした時で、反省してどうしたらいいかって考えることがよくあります。

あと初めの頃はメンバーみんな演奏をするのも精一杯だった気がするんですけど、最近改めて自分達の演奏を見た時に少し余裕が出て来たと思うので、もっと自分たちらしいスタイルを持った演奏をできるように考えながら高めていきたいです。

Q. 今年リリースされた『Escapes』はどんな作品?

『Escapes』はバンドのサウンドを強く意識した作品です。最初のEPとは違ってバンドを組んでから製作したものなので、自分の中ではそれを意識して作ろうという野望がありました。

だから一応宅録なんですが、それがわからないくらいのバンドサウンドはまあまあ再現できたのかなって思います。スタジオでのレコーディングも人から勧められることはあったんですけど、バンドの技量的にまだ早いと思ったし、何より高校生の頃からDAWを使って作曲してきた僕は、現時点での自分自身の宅録の限界に挑戦したいという気持ちが強くありました。だから音質のクオリティは有名な楽曲のようにならなくても、自分なりにスタジオで録ったようなサウンドをイメージして行いました。

あと、このEPは陰と陽みたいなコントラストを意識しています。 アートワークは赤という活発さをイメージする色と冷たい印象を与える青を一緒にすることで、妙な異質さを持った面白いものが生まれました。 音の作りや曲のアレンジの面でもそういうものを意識していて、作品全体に冷たさと温かさが混在したような世界観にしようというプランを元に作業をしました。

『Escapes』のアートワーク担当、ex-Super Shanghai BandのSuga MayuとWaater

Q. 目下のバンドとしての夢を教えてください

メンバーで共通しているのは、常に自分達が作りたいものを作りつづけることです。

今まで僕たちは一貫して自分達のアイデアを大切にしてそれを形にしてきたし、他のバンドには作れないものを作れるという自信があります。そういう自分達のやり方があってこそWaaterのスタイルだと思うんです。それがないとどんなことをするにも、Waaterをやる意味が無いと思うので、ずっとそれを止めないで活動するというのが、夢というか目標ですね。

Q. 1年後のあなたたちはどうなっているでしょうか?

どうなってるのかは全くわからないですね。1年前のことを考えると好きにやり過ぎて、自分達はそもそもどういうバンドなんだって悩んでいたし。

それでも自分たちのスタイルを考え続けて、少しづつ変化しながら今日までやって来て、今回このように初めてのインタビューを受けているので、本当に何があるのかわかんないなって思います。

だからつまんない答えかもしれないですけど、1年後というかやっぱり常に今を大事にしていかないといけないなって思います。そういう積み重ねが1年後どうなろうが、面白い影響は必ず与えると考えています。

Q. 最後に、1年後のあなたたちへメッセージを

やりたいようにやっていて欲しいです。

MUSIC VIDEO

Waater / 「Just Say It」
Waater / 「Just Say It」

Waater / 「Mistaken」
Waater / 「Mistaken」

Waater / 「Feel Slow」
Waater / 「Feel Slow」

Waater / 「Honey」
Waater / 「Honey」

Waater / 「Stardust」
Waater / 「Stardust」

Waater / 「Ocean」
Waater / 「Ocean」

Waater / Live at FORESTLIMIT
Waater / Live at FORESTLIMIT

PROFILE

Waater

2018年結成。秋田県出身の5人組インディー・ロック・バンド。
2017年にフロントマンであるAkiyamaの宅録ソロ・プロジェクトとしてスタート。 同年夏ごろから現在のWaaterにつながるサウンド・スタイルを確立。 バンドセットでのライヴの話をきっかけに、小中高が一緒という幼なじみをメンバーとして誘い、2018年に、 Yuya Akiyama (Vo., Gt.)、Shion Hosobe (Gt.)、Taisei Watanabe (Ba.)、Takashi Kudo (Syn.)、Taiki Yano (Dr.)の5人体制となる。 2019年、2枚目のEP 『Escapes』をリリース。 結成以来、東京を中心に活動中。

Twitter : https://twitter.com/_waater__
Instagram : https://www.instagram.com/_waater__/

Waaterの作品

この記事の筆者
高田 敏弘 (takadat)

Director。東京都出身。技術担当。編集部では “音楽好き目線・ファン目線を忘れない” 担当。

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[インタヴュー] Waater

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