yuzuha──浮遊と疾走、自由に羽ばたくロック・アーティスト
数多くいるアーティストのなかからOTOTOY編集部がグッときたアーティストを取り上げるこのコーナー。第22回はファーストEP『feather』を〈SPEED〉からリリースした、関西を中心にソロで活動するロックアーティストyuzuha。2020年からソロでの活動を開始し、3月には〈MAX SPEED〉、5月のオンライン・パーティー〈AVYSS GAZE〉などに出演。徐々にその名が浸透していくなか、アブストラクトで疾走感のある曲やその掴みどころのなさに惹かれる人も多いと見受けられる。今回はそんなyuzuhaの脳内が垣間見える、初インタヴューをお届けします。
第22回 : yuzuha
夢か現実か、形而上か形而下か? そんな狐につままれるような感覚と、心地よさを同時に抱かせる音楽を生み出す、yuzuha。クラウド・ラップやトラップを思わせるトラックと、ときおり現れる白いフライングVが放つくぐもったギターストローク、何重にも編み込まれる柔らかいヴォイス。飛んで行ってしまいそうなほどの浮遊感を持ちながら、予想外に移ろう展開と独特の疾走感で脳内をかけめぐっていく楽曲はこちらの目をくらませるほどにアブストラクトだ。 上に挙げたようなサウンドの特徴は共通してあれど、リリースされている楽曲はジャンルとしてそれぞれ似通ったものがないというところがまた面白い。ロックにルーツを持つという彼女がこのような特定のジャンルによらない楽曲を作るのは、ロックの形式美への憧れ、そして作曲プロセスから来ているということがインタヴューを読み進めていくうえでわかると思う。彼女自身生きる上での概念であり、EP『feather』のコンセプトでもある「循環」についても詳しく訊ねているので、その視点から楽曲を聴くとまた違った世界が広がるかもしれない。
今回のインタヴューを通して、yuzuhaというアーティストは息をするように楽曲をつくるナチュラルボーンタイプだと感じた。そういったアーティストの楽曲は、なるべくはやく聴くのがいい。WaaterやKen Truthsらを中心としたアーティスト・コミュニティ〈SPEED〉が11月14日深夜に開催する野外レイヴ〈Pure2000〉、11月28日にCIRCUS OSAKAで開催されるEPのリリース・パーティー〈Perfect Skies〉にて目撃する機会があるのでそちらもお見逃しなきよう。
INTERVIEW : yuzuha
──yuzuha名義での活動をはじめたのは何がきっかけだったんでしょう?
もともとはバンドでシューゲイズぽい曲を書いていたんですけど、去年トラップみたいな打ち込みがある“embrace”を作ってみて。ちょうど〈SPEED〉がイベントとしてはじまったくらいのときに、ノリでWaaterのSionとKen Truthsにデモを送ったら「ここからレーベルみたいにしようと思ってるから、うちでソロをやらないか」と誘われたのでちゃんとソロをはじめようかなと、それがきっかけですね。
──バンドからソロになって、違う音楽性でやろうと思ったのはなぜですか
知り合う前から好きだったWaaterやSUPER SHANGHAI BAND、その周辺のいろんな曲を作ってる人と関わるようになって、それまではなんとなくで曲を作っていたのが自分のやりたいことが段々見えてきたんです。あと、去年のBATICAでPsychoheadsを見たとき、細身の男の人がヴィジュアルにもこだわってやるスタイルがバンドにおいて一番かっこいいし、私が真んなかに立つバンドのスタイルであのカッコ良さは出せないなと思って。その日のことは結構大きかったかも。それならソロで、私が自分らしいかっこよさを体現できる別のスタイルを見つけたいと思うようになったので。
──その理想像はルーツの話にも繋がってくると思うんですが、どういう音楽を聴いてきたんですか?
中高生のときはオアシス、ストロークスとかのロックが好きで、そこからGrimesとかビョークにもハマっていきました。あと大学の専攻でもあるんですけど映画が好きで。ソフィア・コッポラという監督の作品にマイ・ブラディ・ヴァレンタインとかが使われてたのもあってシューゲイズも聴いてました。
──独特な疾走感が特徴的だと思うのですが、それは聴いていたロックからの影響なんですかね
そうですね、ヒップホップも好きなんですけど一緒に育ってきたのはロックだからマインドはそこにあると思います。私の音楽には直接的にロックを感じられないかもしれないけど、それがあるから〈SPEED〉のみんなとやるのが波長があっていいのかもしれないです。自分ではロックアーティストだと思ってやってます。ティーンエイジャーの憧れはロックスターにあるし。
──スターをひとりあげるなら誰ですか?
オアシスです、やっぱり小学生のときからずっと聴いてるので。
──ジャンルで分けられないような、クロスオーバーしていく曲が多いのはなぜでしょう
ルーツはロックだし、マインドもロックにあるんですけど、色々聴くし好きなのでそうなってます。わたしは人もジャンルも「境界」って曖昧なものだと思っていて。人間は二律背反ぽいところを持っているし自分自身もいろんな面を持っているから、やってる音楽もいろんな面を出したらいいんじゃないかなと。なのでジャンルは絞らずにやってます。あえていうなら、オアシスやストロークスとかのロックの精神とFour TetやAphex Twinの音像が融合していまの曲の雰囲気ができているのかな。
──曲を作るときのインスピレーションはあるんでしょうか
「自然」がインスピレーション源です。私にとって「循環」というのが重要なテーマになっていて、輪廻転成とか食物連鎖もそうだし、生きているものの周りに飛んでいるエネルギーも循環していると感じています。私にとって曲を作ることは、そういうものと一緒ですごく自然なことで。生きることとほとんど同義かもしれないです。
──曲を作ることが生きることと同義だというのは、循環のなかにいるからこそそれを表現しなければと思うということですか?
長い目でみたら私も循環の一部なので、今世の私の時間を使ってなにかを表現しようという感じです。いまの太陽光が何年前かの光なように、いま私が発する光も100年後に影響するんじゃないかなと思って。私が作った曲も結局は循環のなかで消えていくんですけど、私がいなくなっても残した曲が誰かのなかに残っていれば、私もあと100年、200年と生きられる。
──その感覚はどうやってできたものなんでしょう
大学で主に映画と芸術全般を学んでいて。手塚治虫の『火の鳥』とか宮崎駿の『風の谷のナウシカ』とか仏教の影響を感じる漫画を読んだのが大きい気がします。あとフランスとかヨーロッパの根底に諦観が感じられるようなロマンス映画も好きです。どれかひとつじゃなくてそのときしっくりくるものを都度引っ張り出して来て、自分のものにしたいなと思います。
──「循環」が作曲するときのフィルターになっているということですが、EPの曲ではどんな循環が描かれているんでしょうか
“mercury天使”はオーストラリアの森林火災があったときにできました。母がオーストラリアに住んでいた頃の話をよく聞いていて、行ったことはないけど親近感がある場所だったので、燃えてる森とかコアラの映像を見て結構心にきてしまって。魂とかエネルギーが天に登っていくイメージが浮かんだので、それを曲にしました。“injured”は水の循環を歌っています。それは例えば、いま私が話している言葉が水蒸気になって雲になって雨が降って海になるというようなことで。明日私の上に降る雨は100年前の人の言葉かもしれないなって。だったら私が歌うことで誰かを優しく包む雨がいつか降ればいいな、と考えて作りました。
──“injured”の歌詞ってなんていってますか?
「I need your help to love this world」です。前半は水の循環についてなんですけど、後半ずっといってる英語の歌詞は、人と人との関わり合いで、一枚布が折られていくイメージがありました。そうやって世界が出来上がっているという感じです。そのなかには私も周りの友達もいて、曲を聴いてくれる人がいて、その人たちにも周りの人がいて。もしかしたらまだ出会っていない人もいるし。
──全体的な作品のイメージはありますか?
はじめて出すものなので、私の色々な面が伝わればいいかなと思ってます。いろんなジャンルの曲があるので。あと全体を通して聴くと「循環」がテーマになってるから、そのイメージでRSCのMt.Choriにロゴを描き起こしてもらいました。
──ほかの曲はどういう循環なんですか
結構感覚的に作ってるので曲のことを説明するのはすごく難しいです...インナーワールドの情景があって、音を使ってそれをデッザンしているようなイメージかな。その心の中にある場所は感情とか出来事によって生まれていて。曲を作ることで、その場所を思い出すことができる地図ができていくような感覚かもしれないです。なのでその場所は浮かんでるんですけど...
──場所を忘れないために曲を作ってる部分もあるんですかね
好きな場所はやっぱり取っておきたいから。その手段として私は音楽を選んで、残してます。内側と外側との世界との摩擦と共鳴で曲が生まれているイメージです。
──“embrace”のMVは撮影場所はどこなんでしょう
両親が結婚式を挙げた教会で撮ってます。自分の誕生とか運命みたいな象徴的な意味を込めてロケーションを決めました。
──関西で近い界隈とか、気になってる人など教えてください
最近だとLe MakeupがやってるPure Voyageから出た、Cristel Bereの新譜が良かったです。Lil Soft Tennisが手伝ってたcHinyuも好きで、今後の作品を楽しみにしてます。あと11/28に開催するEPのリリイベは、関西で繋がった自分の好きな人たちをたくさん集めた感じです。
──今後やりたいことはありますか?
細かくこれをやりたいというものはなくて、ただyuzuhaでいることを楽しみたいです。ときめきとか大事にしていきたいですね。
MUSIC VIDEO
PROFILE
yuzuha
2000年生まれのロックシンガー。2020年よりソロとしての活動を開始し、3月には〈MAX SPEED〉に出演。10月17日にはEP『feather』をアーティスト・コレクティヴ〈SPEED〉よりリリース。
Twitter : https://twitter.com/yuzzha_
Instagram : https://www.instagram.com/yuzzha_
Release Info
yuzuha 『feather』
Label : SPEED
Release date : October 17 2020
Stream / Download : https://linkco.re/sbVGr575
1. cocoon
2. mercury天使
3. embrace
4. 幻日
5. °+.*ʚ me ɞ*. +°
6. injured
Event Info
〈PURE2000〉 by Speed
at SECRET LOCATION
11/14(Sat.) 18:00 ~ 11/15(Sun.) 9:00
DOOR ¥4000
https://pure2000.official.ec/
【LIVE】
・JUBEE
・LIL SOFT TENNIS
・LUXY
・Psychoheads
・tamanaramen
・Waater
・yuzuha
【DJ】
・babyiqing
・Cemetery
・Ȼ𝑯𝑨𝑶𝑺
・EUREKA
・JACKSON kaki
・Mari Sakurai
・Miru Shinoda
・Mt.Chori
・Ultrademon
・ykah
feather release party
〈Perfect Skies〉
at CIRCUS OSAKA
11/28 18:00 start
DOOR ¥2000+1D
【LIVE】
・Le Makeup
・Ultrademon
・yuzuha
【DJ】
・akane
・Yana
・YUKIPACIFIC