JPH05331072A - プロリルエンドペプチダーゼ阻害剤 - Google Patents

プロリルエンドペプチダーゼ阻害剤

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JPH05331072A
JPH05331072A JP4160354A JP16035492A JPH05331072A JP H05331072 A JPH05331072 A JP H05331072A JP 4160354 A JP4160354 A JP 4160354A JP 16035492 A JP16035492 A JP 16035492A JP H05331072 A JPH05331072 A JP H05331072A
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pro
val
leu
peptide
prolyl endopeptidase
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Hideoki Tanaka
秀興 田中
Hidekatsu Maeda
英勝 前田
Shinsuke Mitsuyoshi
新介 三吉
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 新規かつ有用なプロリルエンドペプチダーゼ
阻害剤の提供 【構成】 L体のアミノ酸から構成される下記のペプチ
ド及びその酸付加塩の少なくとも1種を有効成分として
含有するプロリルエンドペプチダーゼ阻害剤: Val-His-Leu-Pro-Pro-Pro, Leu-Pro-Pro-Pro-Val-His,
His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val, His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val-H
is-Leu-Pro-Pro-Pro-Val, Leu-Pro-Pro-Pro-Val,Pro-Pr
o-Pro-Val, Pro-Arg-Pro-Gln-Pro-His-Pro-Gln-Pro-His
-Pro, Lys-Pro-Pro-Val, Lys-Pro-Pro-Ile及び Thr-Pro
-Pro-Val。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はプロリルエンドペプチダ
ーゼ阻害剤に関し、さらに詳しくは近年増加の傾向にあ
り対策が望まれている痴呆症の予防及び/または治療に
有用な医薬品又は食品に利用できることが期待されてい
るプロリルエンドペプチダーゼ阻害剤に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】プロリルエンドペプチダーゼ(EC 3.4.2
1.26) は、最初、オキシトシン不活性化酵素として19
71年にWalterらによってヒト子宮中に発見され、その
後、子ヒツジやウシ脳から単一に精製された(Science
173 , 827 (1971),Molecular &Cellular Biochemistry
30, 111 (1980), 日本農芸化学会誌 58,1147(198
4))。また、同様の酵素が Flavobacterium属細菌から
も発見されている(J.Biol.Chem. 255 , 4786 (1980) 。
一方、脳内には、バソプレシン及びバソプレシン誘導体
〔pGlu4, Cyt6 〕AVP-(4-9) の存在が確認されている
が、これらのペプチドはステップスルー型受動的回避学
習法で記憶保持活性があるとされている (Science 221,
1310 (1983),Nature 308, 276 (1984))。
【0003】芳本と鶴は、記憶の固定場所とされている
脳の海馬部分にプロリルエンドペプチダーゼの高い活性
が観られたことと、脳のプロリルエンドペプチダーゼが
バソプレシンのような10アミノ酸程度以下のぺプチド
によく作用する点に注目し、通常は脳でのプロリルエン
ドペプチダーゼが正常に働いているが何らかの理由で調
節機構が外れると、バソプレシンが必要以上に分解さ
れ、記憶保持に障害が現れると考え、Z-Gly-Pro-CH2Cl,
Z-Pro-prolinal, Z-Val-prolinal, Boc-Pro-prolinal
などのプロリルエンドペプチダーゼ阻害剤を合成し、こ
れらが抗健忘作用を示すことを確認した(日本農芸化学
会誌 58 (111), 1147 (1984) 、化学と生物 25 (9),
554 (1987)) 。また最近では、微生物や食品成分に由来
するプロリルエンドペプチダーゼ阻害剤も発見されてい
る(Agric. Biol. Chem. 55, 825(1991)、特開平 3-31
298、1990年薬学会年会講演要旨集 p.119) 。
【0004】一方、トウモロコシ、大豆、ニンジンなど
の植物は、プロリンを多く含む蛋白質を生産しており、
それらには Pro-Pro-Pro-Val-His-Leu, Pro-Pro-Val-Ty
r-Lys, Pro-Pro-Ile-Tyr-Lys, Pro-Pro-Val-Tyr-Thr,
Pro-Pro-Val-His-Lys などアミノ酸5〜6残基のペプチ
ドが繰り返し配列として存在している(The Journalof
Biological Chemistry 262, 8367 (1987)) 。特に、ト
ウモロコシ蛋白質はプロラミンを50〜60%、グルテリン
を35〜40%含み、主成分であるプロラミンはゼイン(zei
n)と呼ばれる。ゼインはα、β、γの3種に分けられ
(J.Cereal Sci.5, 117 (1987))、γ−ゼイン中には Pr
o-Pro-Pro-Val-His-Leuを基本単位とする6回繰り返し
構造及びプロリンが1つ置きに並んだ配列 Pro-Arg-Pro
-Gln-Pro-His-Pro-Gln-Pro-His-Proが含まれている (Nu
cleic Acids Res.13 (5), 1493 (1985))。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はプロリルエン
ドペプチダーゼ阻害作用を有し、従って痴呆症治療及び
/または予防薬として、または日常の摂取を通して痴呆
症等の症状の予防を図る機能性食品として有用であるこ
とが期待される特定のペプチド系プロリルエンドペプチ
ダーゼ阻害剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】多くのプロリルエンドペ
プチダーゼ阻害剤は分子中にプロリン(Pro)を有し、ま
た幾つかの食用植物は、プロリンを多く含む蛋白質を生
産しており、それらには、Pro-Pro-Pro-Val-His-Leu, P
ro-Pro-Val-Tyr-Lys, Pro-Pro-Ile-Tyr-Lys,Pro-Pro-Va
l-Tyr-Thr, Pro-Pro-Val-His-Lysなどアミノ酸5〜6残
基のペプチドが繰り返し配列として存在している。本発
明者らはこれらの事実より、植物蛋白質を蛋白質分解酵
素(プロテアーゼ)で処理することにより、プロリルエ
ンドペプチダーゼ阻害剤を安価に大量生産できる可能性
があると考え、上記繰り返し配列に関連した種々のペプ
チドを化学合成し、それらのプロリルエンドペプチダー
ゼに対する作用を調査した。その結果、下記ペプチドが
プロリルエンドペプチダーゼを阻害することを見い出し
た。
【0007】すなわち、本発明はL体のアミノ酸から構
成される下記ペプチド及びその酸付加塩のすくなくとも
1種を有効成分として含有するプロリルエンドペプチダ
ーゼ阻害剤: Val-His-Leu-Pro-Pro-Pro, Leu-Pro-Pro-Pro-Val-His,
His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val, His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val-H
is-Leu-Pro-Pro-Pro-Val, Leu-Pro-Pro-Pro-Val,Pro-Pr
o-Pro-Val, Pro-Arg-Pro-Gln-Pro-His-Pro-Gln-Pro-His
-Pro, Lys-Pro-Pro-Val, Lys-Pro-Pro-Ile, 及び Thr-P
ro-Pro-Valに関する。
【0008】ここで酸付加塩は、製薬上許容される酸
(無機酸及び有機酸)付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素
酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、マレイン
酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸
塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホ
ン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等を包含す
る。また付加する酸の当量は、0当量より大からペプチ
ド中の塩基性アミノ酸残基、 His 、Arg 、Lys の総数
+1と等しい当量まで可能である。
【0009】本願の特許請求の範囲中のペプチドは既知
の植物蛋白質の配列中に存在するが、そのフラグメント
であってかつ未だ知られていなかった有用性を有する。
かかる観点からアンジオテンシン変換酵素阻害剤等とし
て既知のものを除いた下記ペプチドは本発明者らの知る
限りにおいて新規化合物である: His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val-His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val, L
eu-Pro-Pro-Pro-Val, Pro-Arg-Pro-Gln-Pro-His-Pro-Gl
n-Pro-His-Pro, Lys-Pro-Pro-Val, Lys-Pro-Pro-Ile 及
び Thr-Pro-Pro-Val。 なお、本願の特許請求の範囲のペプチド中、Val-His-Le
u-Pro-Pro-Pro, Leu-Pro-Pro-Pro-Val-His及びHis-Leu-
Pro-Pro-Pro-Val は公知である(特開平2−3612
7,Agric.Biol. Chem. 53, 1077 (1989))。
【0010】本発明で使用するペプチドは通常有機化学
的な合成方法によりアミノ酸を段階的に導入する方法、
または天然蛋白質の酵素加水分解法により製造される
が、また、加水分解酵素の逆反応を利用したペプチド合
成法、遺伝子工学的方法等によって製造することも可能
である。これまで多くのペプチド合成方法が知られてお
り、例えば泉屋信夫、加藤哲夫、青柳東彦、脇道典、
「ペプチド合成の基礎と実験」丸善(株)に詳細に記載
されている。本発明で用いるペプチドはこれらの合成法
のいずれかによって、例えばいわゆる固相ペプチド合成
または液相ペプチド合成によって製造することができ
る。
【0011】液相ペプチド合成は上述の「ペプチド合成
の基礎と実験」に記載されており、それにしたがって、
たとえば本ペプチドのC末端に位置するべきアミノ酸で
あってそのカルボキシル基がベンジル基(Bzl)、t−ブ
チル基(t-Bu) 等で保護されたアミノ酸とC末端アミノ
酸に隣接して位置するべきアミノ酸であってそのα−ア
ミノ基がt−ブチルオキシカルボニル基(Boc) 、ベンジ
ルオキシカルボニル基(z) 等で保護されたアミノ酸をジ
メチルホルムアミド(DMF) 、ジメチルアセトアミド等に
溶解し、それらをジシクロヘキシルカルボジイミド(DC
C) 及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)の存
在下室温で一夜反応させることによって行うことができ
る。ついで生成物のアミノ保護基の常法による除去の後
に得られるジペプチドをアミノ保護した第3のアミノ酸
と同様に反応してアミノ保護基を除去し、ついで同様な
手順を繰り返して本ペプチドを得る。反応させるアミノ
酸が反応に関与すべきでないα位以外のアミノ基、グア
ニジノ基またはイミダゾリル基を有する場合には、これ
らの基は一般に反応に先立って保護すべきである。アル
コール性ヒドロキシル基の保護基 Bzl等包含し、α位以
外のアミノ基の保護基はα−アミノ基の保護基として述
べたものを包含し、グアニジノ基の保護基はトシル基
(Tos)等を包含し、イミダゾリル基の保護基は Tos等を
包含する。これらの保護基の導入は常法によって、例え
ば上述の「ペプチド合成の基礎と実験」に記載されたよ
うにして行うことができる。最終反応の終了後、これら
の保護基を除去するが、これらの脱保護は常法によっ
て、例えば上述の「ペプチド合成の基礎と実験」に記述
されたようにして行うことができる。例えば、アミノ保
護基については Bocはトリフルオロ酢酸(TFA) またはギ
酸によって、Zは接触還元によって、カルボキシル保護
基については、Bzl は、例えば、接触還元によって、t
−Buは TFAまたは HCl/ジオキサンによって除去するこ
とができる。さらに、アルコール性ヒドロキシル基につ
いては、Bzl は、例えば、接触還元またはHFによって、
グアニジノ及びイミダゾリル保護基については TosはNa
/NH3またはHFによって除去することができる。
【0012】一方、固相ペプチド合成については、ペプ
チドシンセサイザー(例えばアプライドバイオシステム
ズ社によって生産された430A型ペプチドシンセサイ
ザー)を用いる合成が最近広く用いられている。すなわ
ち、この方法においては基本的には、アミノ基が Bocで
保護されたα−アミノ酸(Boc −アミノ酸)を、出発物
質としての、例えば、L-Pro が結合したフェニルアセト
アミドメチル(PAM)樹脂、すなわち、L-Pro-O-CH2 -PAM
( アプライドバイオシステムズ社より入手し得る) のN
−側からペプチドと Bocの除去の繰り返しによって段階
的に延長する。Boc-Arg(Mts)(Mtsはメシチレン-2- スル
ホニルである)及び Boc-L-Glnは中間体として1−ヒド
ロキシベンゾトリアゾール(HOBT)を経由する延長反応に
付し、他のBoc-アミノ酸は中間体として DCCを使用する
対称無水物を経由する延長反応に付す。上記 Boc- アミ
ノ酸においては、反応性官能基がある場合には、一般に
それを適当な保護基によって保護するべきである。本発
明に関して保護 Boc- アミノ酸の例は Boc-L-Arg(Mts)
、Boc-L-Lys(Cl-Z)(Cl-Zは4 −クロロベンジルオキシ
カルボニルである)、Boc-L-Thr(Bzl)、Boc-L-His(DNP)
(DNPは2,4−ジニトロフェニルである)等である。
【0013】430A型ペプチドシンセサイザーを用い
る合成系においては、アミノ酸物質以外に以下の試薬及
び溶媒を用いる:N,N−ジイソプピルエチルアミン
(TFAニュートラライザー), TFA (Boc 切断), MeOH(生
成した尿素化合物の溶解及び除去), HOBT (0.5M HOBT/D
MF), DCC (0.5M DCC/ ジクロロメタン(DCM), DCM 及び
DMF(溶媒, ニュートラライザー (70% エタノールアミ
ン,29.5%メタノール)(廃液の中和)。アミノ酸物質
及びこれらの試薬及び溶媒を定められた所に装備する。
これらの物質の使用はペプチドシンセサイザーによって
自動的に行われる。反応温度及び時間の設定も自動的に
なされるが、反応温度は通常室温である。上記手段によ
ってペプチド中の反応性官能基が保護されたペプチド -
O-CH2-PAMが得られる。上記固相ペプチド合成の実験の
操作はアプライドバイオシステムズ社による430A型
ペプチドシンセサイザーユーザーズマニュアル(Part N
umber 900066, Version 1.3B, July 1, 1988) に従って
行った。
【0014】得られた反応性官能基が保護されたペプチ
ド-O-CH2-PAMを常法に従って、例えば上述の「ペプチド
合成の基礎と実験」または430A型ペプチドシンセサ
イザーユーザーズマニュアルに記述されたようにして、
例えば保護基の切断によって生じるカチオンを捕獲する
ためのスカベンジャーとしてのチオアニソール及び/ま
たはエタンジチオールの存在下にトリフルオロメタンス
ルホン酸(TFMSA)をTFMSA の希釈剤としての TFAと共に
用いて処理して樹脂及び保護基を切断しそれによって目
的とするペプチドを得る。上記 TFMSA法において、保護
されたペプチド-O-CH2 -PAMがL-His(DNP)残基を有する
場合には、これをチオフェノールによるDNP の除去の後
上記処理に付す。また、例えば(株)ペプチド研究所製
のフッ化水素装置に反応性官能基が保護されたペプチド
-O-CH2-PAM、アニソール及びフッ化水素を導入し、−2
℃で1時間の反応を行った後、フッ化水素の除去とエー
テルによる洗浄を行うことにより目的とするペプチドを
得ることもできる。
【0015】本発明のプロリルエンドペプチダーゼ阻害
剤中の有効成分として使用し得るペプチド中、His-Leu-
Pro-Pro-Pro-Val, His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val-His-Leu-P
ro-Pro-Pro-Val, Leu-Pro-Pro-Pro-Val, Pro-Pro-Pro-V
al, 及び Pro-Arg-Pro-Gln-Pro-His-Pro-Gln-Pro-His-
Proはトウモロコシ蛋白質γ−ゼインをズブチリシン、
ペプシン、パパインまたは類似の基質を有するプロテア
ーゼで酵素的にあるいは酸で加水分解することによって
も得ることができる。本酵素反応は通常単に水中または
緩衝液(例えは、トリス−HCl 緩衝液またはリン酸緩衝
液) 中で行う。
【0016】使用するγ−ゼインはγ−ゼイン単独であ
ってもよいし、γ−ゼインの他にα−ゼイン、β−ゼイ
ンを含む混合物であってもよい。これらのゼインは市販
のものでもよいし、またコーンスターチの製造過程で得
られるとうもろこし蛋白質から分離したゼイン、または
それから公知の手法で分離した(Plant Physiol., 8062
3 (1986))γ−ゼインであってもよい。また特開平2−
36127の参考例1にγ−ゼインの製造例が示されて
いる。使用される酵素はズブチリシン、パパインまたは
ペプンである。
【0017】蛋白質基質の濃度は攪拌及び混合を行うこ
とが可能である限り、特に限定されないが、攪拌を容易
にする、2−20%(w/v)の範囲にあることが好まし
い。酵素サーモライシンの添加量はその力価によって変
化するが、蛋白質に基づいて通常0.01重量%以上、好ま
しくは0.1 〜10重量%であるのが適当である。酵素の一
部を反応の途中で加えることも可能である。反応のpH及
び温度は使用酵素の至適温度付近であればよく、ズブチ
リシンはpH6〜9、温度30〜70℃、パパイン及びペプシ
ンではpH5〜8、温度30〜60℃が適当である。反応時間
は酵素の種類、添加量、反応温度、反応pHによって異な
るため一定ではないが、通常は1〜40時間程度である。
加水分解反応の停止は公知の方法によって、例えば、加
水分解物の加熱によるかクエン酸、リンゴ酸等の有機
酸、塩酸、リン酸等の無機酸または水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム等のアルカリの添加によるpH変化による
酵素の不活性化によって、または限外濾過膜等を用いる
濾過による分離によって行うことができる。
【0018】得られる加水分解物溶液を次いで固液分離
(例えば、遠心分離または濾過)に付し、得られる液体
を限外濾過、ゲル濾過等によって分画して10000 以下の
分子量を有する液体を得る。この液体は本発明の目的ペ
プチドを含有し、この液体またはその濃縮物( 例えば、
凍結乾燥物) をさらに分画して各目的ペプチドを得る。
本発明においては上記凍結乾燥物をγ−ゼイン凍結乾燥
物と称し、それを用いる場合についてさらに説明する。
γ−ゼイン凍結乾燥物をまずアニオン交換樹脂、例えば
弱塩基性アニオン交換樹脂(例えば、東ソー(株)製 D
EAE トヨパール650M) による処理、またはカチオン交換
樹脂、例えば、弱酸性カチオン交換樹脂( 例えば、東ソ
ー(株)製 SP-トヨパール650M) による処理に付す。
【0019】γ−ゼイン凍結乾燥物を最初にアニオン交
換樹脂に通す分画方法においては、各ペプチドを直線濃
度勾配溶出(例えば、DEAET トヨパール 650M 使用の場
合にはトリス緩衝液→適当な濃度の、トリス緩衝液中の
NaCl) によって分画する。溶出液をいくつかの画分に取
り、各々をゲル濾過( 例えば、セファデックスLH-20使
用) 、カチオン交換樹脂処理( 例えば、SP- トヨパール
650M 使用) 、逆相HPLC( 例えば、資生堂(株)製のオ
クタデシルシランの商品名であるカプセルパックC18
たはセンシュウ化学(株)製のオクタデシルシランの商
品名であるセンシュウパック1251-Y) 等に付して個々の
ペプチドに分画する。また、簡単には、後記実施例2に
例示される如く、上記10000 以下の分子量を有する液体
を濃縮し、HPLCによって化学合成した本ペプチドと同位
置に溶出されてくるペプチドを分取することによって各
ペプチドを得ることもできる。
【0020】本ペプチドの酸付加塩は常法によって製造
することができる。例えば、酸付加塩は本ペプチドとそ
れに対し0当量より大からそこに含まれる塩基製アミノ
酸残基の総数+1当量までの量の酸とを水中で反応さ
せ、ついで生成物を凍結乾燥することによって得ること
ができる。また、本発明における製造過程で酸付加塩と
して得られる場合もある。
【0021】本ペプチド及びその酸付加塩はプロリルエ
ンドペプチダーゼ阻害作用を有し、ヒトの痴呆症の治
療、予防に有効であると期待される。本ペプチド及びそ
の酸付加塩はそのまま、または通常少なくとも1つの製
薬補助剤と製薬組成物にして使用する。本ペプチド及び
その酸付加塩は非経口(すなわち、静脈注射、直腸投与
等)または経口的に投与し、各投与方法に適した形態に
製剤することができる。
【0022】注射剤としての製剤形態は、通常滅菌水水
溶液を包含する。上記形態の製剤はまた緩衝剤pH調節剤
(リン酸水素ナトリウム、クエン酸等)、等張化剤(塩
化ナトリウム、グルコース等)、保存剤(パラオキシ安
息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル等) 等の
水以外の他の製薬補助剤を含有することができる。該製
剤は細菌保持フィルターを通す濾過、組成物への殺菌剤
の混入、組成物の照射や加熱によって滅菌することがで
きる。該製剤はまたは殺菌固体組成物として製造し、用
時滅菌水等に溶解して使用することもできる。
【0023】経口投与剤は胃腸器官による吸収に適した
形に製剤する。錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、粉
末剤は常用の製薬補助剤、例えば結合剤(シロップ、ア
ラビアゴム、ゼラチン、ソルビット、トラガカント、ポ
リビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース
等)、賦形剤(ラクトース、スクロース、コーンスター
チ、リン酸カルシウム、ソルビット、グリシン等)、滑
沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレ
ングリコール、シリカ等)、崩壊剤(ポテトスターチ、
カルボキシメチルセルロース等)、湿潤剤(ラウリル硫
酸ナトリウム等)を包含することができる。錠剤は常法
によりコーティングすることができる。経口液剤は水溶
液等にしたり、ドライプロダクトにすることができる。
そのような経口液剤は常用の添加剤例えば保存剤(p−
ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル、ソルビン
酸等)を包含していてもよい。
【0024】本プロリルエンドペプチダーゼ阻害剤中の
本ペプチドまたはその酸付加塩の量は種々変えることが
できるが、通常5〜100%(w/w) 、特に10〜60%(w/w)が適
当である。本プロリルエンドペプチダーゼ阻害剤の投与
量は有効成分として10〜200mg/kg/dayが適当である。な
お、本ペプチドの急性毒性はLD50(ICR系マウス、経口投
与)>3g/kg である。
【0025】また、本ペプチドは多量に摂取しても生体
に悪影響を与えない利点を有することから、そのまま、
または種々の栄養分等を加えて、もしくは飲食品中に含
有せしめて抗痴呆作用、痴呆症予防の機能をもたせた機
能性食品、健康食品として食してもよい。すなわち、例
えば各種ビタミン類、ミネラル類等の栄養分を加えて、
例えば栄養ドリンク、豆乳、スープ等の液状の食品や各
種形状の固形食品、さらには粉末状としてそのままある
いは各種食品へ添加して用いることもできる。かかる機
能性食品、健康食品としての本プロリルエンドペプチダ
ーゼ阻害剤中の有効成分の含有量、摂取量はそれぞれ上
記製薬における含有量、投与量と同様でよい。
【0026】
【実施例】次に本発明を実施例により説明する。実施例1 His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val の合成とプロリル
エンドペプチダーゼ阻害活性 a) His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val の合成 アプライド・バイオシステムズ社製ペプチド合成装置
(430A型)に0.5 ミリモルの Boc-Val-O-CH2-PAM樹
脂及び各2ミリモルのBoc-His(Tos), Boc-Leu, Boc-Pro
を充填し、DCC による無水対称法により His-(Tos)-Leu
-Pro-Pro-Pro-Val-O-CH2-PAMを合成した。なお、Tos は
トシル基を示す。次に、ペプチド研究所製フッ化水素装
置に上記合成ペプチド樹脂を導入し、アニソール1.5ml
を添加後、フッ化水素10mlを導入した。−2℃、1時間
の反応後、フッ化水素を減圧下に除去し、ペプチドを無
水エーテル、クロロホルムで交互に3回洗浄し、2N酢
酸60mlにペプチドを溶解させ、凍結乾燥した。この方法
により His-Leu-Pro-Pro-Pro-Valの白色粉末 130mgを得
た。次いで本ペプチドを高速液体クロマトグラフィー(H
PLC)により精製した。
【0027】HPLCよる精製条件を下記に示す。 カラム : メルク社製 LiChosorb RP-SelectB (250 x
φ25mm) 溶出液 : 0.1%トリフルオロ酢酸を含む3.5 〜67% アセ
トニトリルのグラジエント 流速 : 6ml/min 本ペプチドの各種分析値を後記表1に示す。なお、アミ
ノ酸分析は6N塩酸 110℃,24 時間の加水分解後、日立8
35型アミノ酸分析装置により行った。また、質量分析
は日本電子製HX-110型質量分析装置によるFAB-MS法で行
った。
【0028】b) Val-His-Leu-Pro-Pro-Pro, Leu-Pro-P
ro-Pro-Val-His, His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val-His-Leu-Pr
o-Pro-Pro-Val, Leu-Pro-Pro-Pro-Val, Pro-Pro-Pro-Va
l, Pro-Arg-Pro-Gln-Pro-His-Pro-Gln-Pro-His-Pro, Ly
s-Pro-Pro-Val, Lys-Pro-Pro-Ile, Thr-Pro-Pro-Val の
合成 His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val の合成と同様にアプライド・
バイオシステムズ社製ペプチド合成装置(430A型)
を使用した DCCによる無水対称法により合成し、フッ化
水素により保護基と樹脂を切断した。ペプチドの精製条
件も前述と同一である。これらのペプチドの各種分析値
を後記表1に示す。
【0029】c) プロリルエンドペプチダーゼ阻害活性
の測定 以上のようにして得たペプチドのプロリルエンドペプチ
ダーゼ阻害活性を以下のごとく測定した。 c-1) 微生物由来プロリルエンドペプチダーゼに対する
阻害活性の測定 生化学工業(株)より購入したF.meningosepticum 由来
プロリルエンドペプチダーゼを pH7.0の0.1Mリン酸緩衝
液に溶解し、0.1unit/mlの酵素溶液とした。また、2mM
Z-Gly-Pro-pNA(バッケム社製、Zはベンジルオキシカ
ルボニル基、pNA はパラニトロアニリドを示す) を上記
リン酸緩衝液(40%ジオキサンを含む) に溶解し基質溶液
とした。上記の各種ペプチドの水溶液をそれぞれ1.5ml
容量のプラスチックチューブに40μl 入れ、これにリン
酸緩衝液80μl 、基質溶液40μl を添加し、30℃で10分
間保温した後、上記プロリルエンドペプチダーゼ溶液40
μl を加えよく混合して、30℃で10分間の反応を行っ
た。その後、1N HCl 200μl を添加することにより反
応を停止させた。反応停止後、酵素反応により遊離して
くるパラニトロアニリンをHPLCにより定量した。HPLC測
定条件は以下の通りである。
【0030】HPLC測定条件 カラム : ウオーターズ社製 μBondasphere 5 μ C8-
300A (150 x φ3.9mm) 溶出 : 0.1%トリフルオロ酢酸を含む53% アセトニト
リル 検出 : 410nm の吸収 この様な実験を複数行い、阻害率を次の式より算出し
た。 A:阻害剤を含まない場合のパラニトロアニリンのピー
ク面積 B:阻害剤添加の場合のパラニトロアニリンのピーク面
積 その結果を後記表2に示す。また、阻害率50%のときの
ペプチドの濃度をIC50値とし、それを後記表3に示す。
【0031】c-2) 牛脳由来プロリルエンドペプチダー
ゼに対する阻害活性の測定 牛脳アセトンパウダー( シグマ社製)25gを10mM EDTA 及
び 10mM 2-メルカプトエタノールを含む20mM Tris-HCI
緩衝液(pH7.0)200mlに溶解させ、16,000rpm,20分の遠心
を行い、上清を回収した。次いで、DEAE−トヨパール
(東ソー)によるカラムクロマトグラフィーにてプロリ
ルエンドペプチダーゼを部分精製し、0.1unit/mlの酵素
溶液とした。また、2 mM Z-Gly-Pro-pNAを上記Tris-HCl
緩衝液(40%ジオキサンを含む) に溶解し基質溶液とし
た。上記の各種ペプチドの水溶液をそれぞれ1.5ml 容量
のプラスチックチューブに40μl 入れ、これにリン酸緩
衝液80μl 、基質溶液40μl を添加し、37℃で10分間保
温した後、上記プロリルエンドペプチダーゼ溶液40μl
を加えよく混合して、37℃で10分間の反応させた。以下
の測定条件は微生物由来プロリルエンドペプチダーゼに
対する阻害活性の測定の場合と同一であり、その結果を
後記表4に示す。
【0032】実施例2 γ−ゼインからのHis-Leu-Pro-
Pro-Pro-Val の生成 γ−ゼイン0.2gを50mM Tris-HCl (pH8.2) 12ml中に分散
させ、これにズブチリシン・カールズベルグ(シグマ社
製)10mgを加えた。37℃18時間の反応後、分子量10,000
の限外濾過膜( ミリポア社製モルカット) に付して通過
する低分子量ペプチドを回収した。これを濃縮して、HP
LCにおいて、化学合成したHis-Leu-Pro-Pro-Pro-Val と
同位置に溶出されてくるペプチドを分取し回収した。HP
LCの条件は以下の通りである。 HPLCの分離条件 カラム : メルク社製 Superspher RP-8 (125 x φ4m
m) 溶出 : 0.1%トリフルオロ酢酸を含む7〜63% アセト
ニトリルグラジエント 検出 : 210nm の紫外部吸収 回収したペプチド溶液は、減圧乾固し最終標品とした。
【0033】
【表1】 合成ペプチドの分析値 ──────────────────────────────────── 〔α〕D 25( °) アミノ酸分析値 質量分析値 ペプチド (H2O) ( 組成比) FAB-MS (m/z) ──────────────────────────────────── Val-His-Leu-Pro-Pro-Pro -192 Val 1.00, His 0.98, 659 (M+H)+ (C=0.4) Leu 1.04, Pro 3.11 Leu-Pro-Pro-Pro-Val-His -228 Leu 1.00, Pro 3.05, 659 (M+H)+ (C=0.2) Val 1.00, His 1.03 His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val -218 His 1.00, Leu 1.08, 659 (M+H)+ (C=0.3) Pro 2.92, Val 1.00 His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val- -242 His 0.81, Leu 1.09, 1299 (M+H)+ His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val (C=0.1) Pro 3.09, Val 1.00 Leu-Pro-Pro-Pro-Val -238 Leu 1.00, Pro 3.08, 522 (M+H)+ (C=0.3) Val 1.04 Pro-Pro-Pro-Val -242 Pro 2.94, Val 1.00 409 (M+H)+ (C=0.4) Pro-Arg-Pro-Gln-Pro-His- -203 Pro 6.3 , Arg 0.8 , 1287 (M+H)+ Pro-Gln-Pro-His-Pro (C=0.3) Glu 2.0 , His 1.7 Lys-Pro-Pro-Val -169 Lys 0.89, Pro 2.06 440 (M+H)+ (C=0.4) Val 1.00 Lys-Pro-Pro-Ile -167 Lys 1.00, Pro 1.94 454 (M+H)+ (C=0.3) Ile 1.12 Thr-Pro-Pro-Val -192 Thr 1.00, Pro 2.07 413 (M+H)+ (C=0.5) Val 1.00 ────────────────────────────────────
【0034】
【表2】 F.meningosepticum 由来プロリルエンドペプチダーゼに対する阻害活性 ──────────────────────────────────── ペ プ チ ド 濃度(μM) 阻害率(%) ──────────────────────────────────── Val-His-Leu-Pro-Pro-Pro 800 31 Leu-Pro-Pro-Pro-Val-His 800 12 His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val 400 80 His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val- His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val 400 88 Leu-Pro-Pro-Pro-Val 400 39 Pro-Pro-Pro-Val 400 26 Pro-Arg-Pro-Gln-Pro-His- Pro-Gln-Pro-His-Pro 400 14 Lys-Pro-Pro-Val 400 65 Lys-Pro-Pro-Ile 400 52 Thr-Pro-Pro-Val 400 12 ────────────────────────────────────
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】 牛脳由来プロリルエンドペプチダーゼに対する阻害活性 ──────────────────────────────────── ペ プ チ ド 濃度(μM) 阻害率(%) ──────────────────────────────────── Val-His-Leu-Pro-Pro-Pro 400 65 Leu-Pro-Pro-Pro-Val-His 400 68 His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val 400 28 His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val- His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val 400 64 Pro-Arg-Pro-Gln-Pro-His- Pro-Gln-Pro-His-Pro 400 71 ────────────────────────────────────
【0037】
【発明の効果】本発明によって新規かつ有用なプロリル
エンドペプチダーゼ阻害剤が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07K 99:00 (72)発明者 田中 秀興 茨城県つくば市東1丁目1番3号 工業技 術院微生物工業技術研究所内 (72)発明者 前田 英勝 茨城県つくば市東1丁目1番3号 工業技 術院微生物工業技術研究所内 (72)発明者 三吉 新介 千葉県船橋市日の出2丁目20番2号 昭和 産業株式会社総合研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 L体のアミノ酸から構成される下記ペプ
    チド及びその酸付加塩の少なくとも1種を有効成分とし
    て含有するプロリルエンドペプチダーゼ阻害剤: Val-His-Leu-Pro-Pro-Pro, Leu-Pro-Pro-Pro-Val-His,
    His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val, His-Leu-Pro-Pro-Pro-Val-H
    is-Leu-Pro-Pro-Pro-Val, Leu-Pro-Pro-Pro-Val,Pro-Pr
    o-Pro-Val, Pro-Arg-Pro-Gln-Pro-His-Pro-Gln-Pro-His
    -Pro, Lys-Pro-Pro-Val, Lys-Pro-Pro-Ile及び Thr-Pro
    -Pro-Val.
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