以下、本発明の変位検出装置の実施の形態例について、図1~図18を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
また、以下の説明において記載される各種のレンズは、単レンズであってもよいし、レンズ群であってもよい。
1.変位検出装置の第1の実施の形態例
まず、本発明の変位検出装置の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)の構成を図1~図3に従って説明する。
1-1.変位検出装置の構成例
図1は、変位検出装置の構成を示す概略構成図である。図2は、変位検出装置における第1の回折格子が設けられた被測定部材を示す斜視図である。
本例の変位検出装置1は、ヘッドと被測定部材のうち少なくとも一方を移動させた際の変位(移動量)を検出する変位検出装置である。
図1に示すように、変位検出装置1は、被測定部材2の被測定面2aに設けた第1の回折格子11と、ヘッド3と、相対位置情報出力手段4とを備えている。なお、相対位置情報出力手段4は、ヘッド3内に収容してもよく、あるいはヘッド3の外部に設けた携帯情報処理端末や、PC(パーソナルコンピュータ)に配置してもよい。
ヘッド3と被測定部材2は、被測定面2aに対して平行な方向でかつ第1の回折格子11の格子ベクトル方向S1(図2参照)と平行をなす方向又は、被測定面2aに対して垂直な方向に相対的に移動可能に配置される。すなわち、ヘッド3と被測定部材2のうち少なくとも一方が、被測定面2aと平行な方向又は、被測定面2aと垂直な方向のうち少なくとも一方に移動可能に配置される。
以下、被測定面2aに対して平行で、かつ第1の回折格子11の格子ベクトル方向S1(図2参照)と平行をなす方向を第1の方向Xとする。また、被測定面2aに対して平行で、かつ第1の方向Xと直交する方向を第2の方向Yとする。そして、被測定面2aと直交する方向、すなわち第1の方向Xと第2の方向Yとも直交する方向を第3の方向Zとする。
図2に示すように、被測定部材2は、平板状に形成されている。被測定部材2におけるヘッド3と対向する被測定面2aには、第1の回折格子11が設けられている。第1の回折格子11は、反射型の回折格子である。
第1の回折格子11は、被測定面2aから突出する複数の突条11aにより構成されている。複数の突条11aは、第1の方向Xに沿って所定の間隔を空けて配置されている。複数の突条11aにおける隣り合う2つの突条11aの間隔が、第1の回折格子11の格子ピッチdRとなる。
そして、この複数の突条11aの格子ベクトル方向S1は、第1の方向Xと平行に配置される。また、突条11aが延在する方向(格子ライン方向)S2は、被測定面2aにおいて第2の方向Yと平行になる。なお、格子ベクトル方向S1及び格子ライン方向S2は、被測定面2aと平行をなす平面上に存在する。そして、格子ベクトル方向S1は、第1の方向Xと平行である必要はなく、同様に、格子ライン方向S2は、第2の方向Yと平行である必要はない。
なお、本例では、被測定面2aから突出する複数の突条11aによって第1の回折格子11が構成される例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、被測定部材2の被測定面2aに複数の溝部を形成することで、第1の回折格子11を構成してもよい。
また、第1の回折格子11は、例えば、ガラスやシリコンの基板からなる被測定部材2に形成される。そして、第1の回折格子11を構成する複数の突条11aは、例えば金やアルミニウム等の反射率の高い材料を被測定部材2の被測定面2aに蒸着することで形成される。なお、第1の回折格子11の格子ピッチdR及び回折角度θについては、後述する。
この被測定部材2に設けた第1の回折格子11は、ヘッド3から照射された光を回折して所定の回折角度によって再びヘッド3に戻す。
ヘッド3は、変位検出部5と、光源6と、変位検出部5に設けられた受光部7とを有している。なお、受光部7は、変位検出部5内に配置してもよく、あるいは変位検出部5の外側に配置してもよい。光源6には、例えば半導体レーザダイオードやスーパールミネッセンスダイオード、ガスレーザ、固体レーザ、発光ダイオード等が挙げられる。
光源6として、可干渉距離が長い光源を用いると、被測定部材2の被測定面2aのチルト等による物体光と参照光の光路長差の影響を受けにくくチルト許容範囲が広くなる。また、光源6の可干渉距離が短くなるほど、不要な迷光の干渉によるノイズを防ぐことができ、高精度な計測をすることができる。
さらに、光源6として、シングルモードのレーザを用いると、波長を安定させるために、光源6の温度をコントロールすることが望ましい。また、シングルモードのレーザの光に、高周波重畳などを付加して、光の可干渉性を低下させてもよい。さらに、マルチモードのレーザを用いる場合も、ペルチェ素子等で光源6の温度をコントロールすることで、不要な迷光の干渉によるノイズを防ぎ、さらに安定した計測が可能になる。
なお、光源6の数は、1つに限定されるものではなく、複数の光源6を配置して互いの光りを重ね合わせることで光量を増加させてもよい。また、光源6は、例えば、光軸を中心に回転した円偏光の光を出射する。
光源6から出射された光Lは、変位検出部5に入射する。なお、光源6と変位検出部5の間には、コリメートレンズ等からなるレンズ16が配置されている。レンズ16は、光源6から出射された光Lを平行光にコリメートする。そのため、変位検出部5には、レンズ16により平行光にコリメートされた光Lが入射される。
変位検出部5は、光源6から照射された光Lを被測定部材2の第1の回折格子11に向けて照射し、被測定部材2から戻ってきた光Lを受光部7に導く。変位検出部5は、第2の回折格子12と、光束分割部13と、光束平行分岐部40と、光束結合部50と、参照光用反射部材の一例を示す参照用ミラー14と、物体光用反射部材の一例を示す物体用ミラー15と、第1の位相板17と、第2の位相板18と、を有している。
光束分割部13としては、例えば、ハーフミラーやビームスプリッタにより構成されている。光束分割部13には、光源から照射され、レンズ16により平行光にコリメートされた光Lが入射する。
光束分割部13は、光Lを物体光である第1の光束L1と、参照光である第2の光束L2の2つの光束に分割する。光束分割部13を透過した光Lが第1の光束L1となり、光束分割部13によって反射された光Lが第2の光束L2となる。光束分割部13を透過した第1の光束L1は、第1の回折格子11に向かって進行し、光束分割部13によって反射された第2の光束L2は、光束結合部50を介して参照用ミラー14に向かって進行する。
光束分割部13では、光Lが第1の光束L1と第2の光束L2に分割されるが、その光量比率は、後述する受光部7に入射する際に、第1の回折格子11側と、参照用ミラー14側でそれぞれが同じ光量となるような比率にすることが好ましい。
さらに、光源6と光束分割部13との間に偏光板を設けてもよい。これにより、s偏光及びp偏光に対して直交した偏光成分としてわずかに存在する漏れ光、ノイズを除去することができる。
また、光束分割部13としてハーフミラーやビームスプリッタを用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。光束分割部13としては、例えば、偏光ビームスプリッタを用いてもよい。
また、光源6、レンズ16、光束分割部13は、光束分割部13を透過する光、すなわち第1の光束L1の進行方向が第3の方向Zと平行になるように配置される。そのため、光束分割部13を透過した第1の光束L1は、被測定部材2の被測定面2a、すなわち第1の回折格子11に対して垂直に入射する。これにより、被測定部材2が第3の方向Zに変位しても第1の回折格子11に入射される第1の光束L1の入射点P11の位置は、第1の回折格子11上において変化しない。
光束平行分岐部40は、第1の回折格子11によって回折された再び変位検出部5に戻った第1の光束L1が入射する位置に配置されている。光束平行分岐部40は、偏光調整位相板42と、三角柱状のプリズムからなる反射ミラー43と、偏光ビームスプリッタ44により構成されている。
偏光調整位相板42は、通過する光の偏光方向を変化させるものであり、入射した第1の光束L1の偏光状態をs偏光に変化させる。偏光調整位相板42における光の出射側には、反射ミラー43が配置されている。反射ミラー43は、偏光調整位相板42を通過した第1の光束L1を偏光ビームスプリッタ44に向けて反射させる。
偏光ビームスプリッタ44は、s偏光の光を反射し、p偏光の光を透過させる。偏光ビームスプリッタ44における光を反射及び透過させる反射透過面44aと、反射ミラー43の反射面は、平行に配置されている。ここで、反射ミラー43によって反射された第1の光束L1は、偏光調整位相板42によってs偏光の光に偏光状態が調整されている。そのため、偏光ビームスプリッタ44は、反射ミラー43によって反射された第1の光束L1を第2の回折格子12に向けて反射させる。
また、光束平行分岐部40の偏光ビームスプリッタ44には、後述する第2の回折格子12及び第1の位相板17を透過し、かつ物体用ミラー15によって反射された第1の光束L1が再び入射する。なお、光束平行分岐部40に再び入射した第1の光束L1の偏光方向は、p偏光に変化されている。そのため、光束平行分岐部40は、再び偏光ビームスプリッタ44に入射した第1の光束L1を透過させる。そして、光束平行分岐部40を透過した第1の光束L1は、再び第1の回折格子11に入射する。
ここで、光束平行分岐部40は、第1の光束L1における第1の回折格子11によって回折されて光束平行分岐部40に入射する光路を行き光路とする。そして、第2の回折格子12によって回折された第1の光束L1が光束平行分岐部40を透過してから第1の回折格子11に入射するまでの光路を帰り光路とする。光束平行分岐部40は、第1の光束L1における行き光路と帰り光路が一致しないように、行き光路と帰り光路を平行に移動させている。そのため、第1の光束L1における再び第1の回折格子11に入射する位置は、行き光路の入射点P11とは異なる入射点P12となる。
第2の回折格子12は、光束平行分岐部40を通過した第1の光束L1が入射する位置に配置されている。第2の回折格子12は、その平面が第3の方向Zに対して傾斜して配置されている。第2の回折格子12は、光を透過させ、かつ透過した光を回折させる透過型の回折格子である。なお、第2の回折格子12の格子ピッチdT及び回折角度φについては、後述する。
第2の回折格子12における第1の回折格子11から入射した第1の光束L1が透過する方向には、物体用ミラー15が配置されている。さらに、第2の回折格子12と物体用ミラー15の間には、第1の位相板17が配置されている。
第1の位相板17は、通過する光の偏光方向を変化させるものであり、例えば、1/4波長板等から構成されている。そのため、第1の位相板17は、通過する光がp偏光の場合、進行方向を中心軸として第1の向きに回転する円偏光に変化させる。また、通過する光が第1の向きに回転する円偏光の場合、s偏光に変化させる。さらに、通過する光がs偏光の場合、進行方向を中心軸として第1の方向とは反対である第2の向きに回転する円偏光に変化させる。そして、通過する光が第2の向きに回転する円偏光の場合、p偏光に変化させる。
第1の位相板17を透過した第1の光束L1は、第1の位相板17によって偏光方向が変化されて、物体用ミラー15に入射する。物体用ミラー15は、第2の回折格子12及び第1の位相板17を透過した第1の光束L1が反射面に対して垂直に入射する位置に配置されている。そして、物体用ミラー15には、第1の光束L1が垂直に入射するため、物体用ミラー15は、第1の光束L1を、第2の回折格子12を透過して入射する際の光路と、反射して第2の回折格子12に再び入射する光路が一致するように反射させる。
物体用ミラー15により反射された第1の光束L1は、第1の位相板17及び第2の回折格子12を透過して再び光束平行分岐部40に入射する。光束平行分岐部40を通過した第1の光束L1は、再び第1の回折格子11に入射する。
ここで、光束平行分岐部40に再び入射した第1の光束L1の偏光方向は、第1の位相板17によってp偏光に変化されている。そのため、光束平行分岐部40は、再び偏光ビームスプリッタ44に入射した第1の光束L1を透過させる。そして、光束平行分岐部40を透過した第1の光束L1は、再び第1の回折格子11に入射する。
ここで、光束平行分岐部40は、第1の光束L1における第1の回折格子11によって回折されて光束平行分岐部40に入射する光路を行き光路とする。また、第2の回折格子12によって回折された第1の光束L1が光束平行分岐部40を透過してから第1の回折格子11に入射するまでの光路を帰り光路とする。
光束平行分岐部40は、第1の光束L1における行き光路と帰り光路が一致しないように、行き光路と帰り光路を平行に移動させている。そのため、第1の光束L1における再び第1の回折格子11に入射する位置は、行き光路の入射点P11とは異なる入射点P12となる。
さらに、第1の光束L1は、行き光路と帰り光路で第1の回折格子11と第2の回折格子12によってそれぞれ2回ずつ回折される。そして、第1の光束L1は、第1の回折格子11によって再び回折されて光束結合部50に入射する。
光束結合部50は、光束分割部13と参照用ミラー14の間に配置されている。光束結合部50は、例えば、偏光調整位相板52と、偏光ビームスプリッタ53により構成されている。
偏光調整位相板52は、偏光ビームスプリッタ53と、光束分割部13の間に配置されている。偏光調整位相板52は、通過する光の偏光方向を変化させるものであり、入射した第2の光束L2の偏光状態をp偏光に変化させる。
偏光ビームスプリッタ53は、光束平行分岐部40の偏光ビームスプリッタ44と同様に、s偏光の光を反射し、p偏光の光を透過させる。そして、偏光ビームスプリッタ53は、偏光調整位相板52を通過したp偏光の第2の光束L2を透過させる。光束結合部50の偏光ビームスプリッタ53を透過した第2の光束L2は、参照用ミラー14に向かって進行する。
参照用ミラー14は、光束分割部13によって分割されて、光束結合部50を透過した第2の光束L2の進行方向に配置されている。参照用ミラー14は、その反射面が光束分割部13における第2の光束L2を照射する面及び光束結合部50の偏光ビームスプリッタ53の光を反射及び透過させる反射透過面と平行に配置されている。すなわち、参照用ミラー14は、その反射面に第2の光束L2が垂直に入射する位置に配置される。そして、参照用ミラー14には、第2の光束L2が垂直に入射するため、参照用ミラー14は、第2の光束L2を、入射する際の光路と反射した後の光路が一致するように反射する。
また、光束結合部50と参照用ミラー14の間には、第2の位相板18が配置されている。第2の位相板18は、第1の位相板17と同様に、通過する光の偏光方向を変化させるものであり、例えば、1/4波長板等から構成されている。そのため、第1の位相板17は、通過する光がp偏光の場合、進行方向を中心軸として第1の向きに回転する円偏光に変化させる。また、通過する光が第1の向きに回転する円偏光の場合、s偏光に変化させる。さらに、通過する光がs偏光の場合、進行方向を中心軸として第1の方向とは反対である第2の向きに回転する円偏光に変化させる。そして、通過する光が第2の向きに回転する円偏光の場合、p偏光に変化させる。
第1の光束L1における光束分割部13から物体用ミラー15に反射されて光束結合部50に入射するまでの光路長の長さと、第2の光束L2における光束分割部13から参照用ミラー14に反射されて光束結合部50に入射するまでの光路長の長さが等しくなるように、参照用ミラー14及び物体用ミラー15が配置されている。
これにより、気圧、湿度や温度の変化によって光源6の波長変動があった場合でも、第1の光束L1と第2の光束L2が受ける影響を等しくすることができる。その結果、気圧補正、湿度補正や温度補正を行うことなく、周囲環境に関わらず安定した測定を行うことができる。さらに、変位検出装置1を製造する際に、第1の光束L1の光路長と、第2の光束L2の光路長や光軸の角度を調整し易くすることができる。
参照用ミラー14により反射された第2の光束L2は、行きの光路と同じ光路を通って、第2の位相板18を通過して、再び光束結合部50に入射する。ここで、第2の光束L2は、第2の位相板18を2回通過することで、p偏光からs偏光に変化されている。また、第1の光束L1は、第1の位相板17を2回通過することで、s偏光からp偏光に変化されている。
そのため、光束結合部50は、p偏光の第1の光束L1を受光部7に向けて透過させて、s偏光の第2の光束L2を受光部7に向けて反射させる。これにより、光束結合部50によって第1の光束L1と第2の光束L2を重ね合わせることができる。そして、光束結合部50によって重ね合わされた第1の光束L1と第2の光束L2は、受光部7に向けて照射される。
受光部7は、集光レンズ21と、ハーフミラー22と、第1の偏光ビームスプリッタ24と、第2の偏光ビームスプリッタ25とを有している。また、ハーフミラー22と、第2の偏光ビームスプリッタ25との光路上には、例えば、1/4波長板等からなる受光側位相板23が配置されている。
集光レンズ21は、光束分割部13からの入射された第1の光束L1及び第2の光束L2を集光する。また、集光レンズ21は、後述する第1の受光素子31、第2の受光素子32、第3の受光素子33及び第4の受光素子34上でビーム径が適当な大きさになるように光を集光する。ハーフミラー22は、光を分割する。ハーフミラー22によって分割された光は、第1の偏光ビームスプリッタ24、又は受光側位相板23を介して第2の偏光ビームスプリッタ25に入射する。
第1の偏光ビームスプリッタ24は、入射される光束の偏光方向が入射面に対して45度傾くように配置されている。この第1の偏光ビームスプリッタ24における光の出射口側には、第1の受光素子31と、第2の受光素子32が設けられている。また、第2の偏光ビームスプリッタ25における光の出射口側には、第3の受光素子33と、第4の受光素子34が設けられている。
これら第1の偏光ビームスプリッタ24及び第2の偏光ビームスプリッタ25は、s偏光成分を有する干渉光を反射させ、p偏光成分を有する干渉光を透過させて、光を分割するものである。
第1の受光素子31、第2の受光素子32、第3の受光素子33及び第4の受光素子34は、光を受光し、干渉信号を得る。そして、受光部7には、相対位置情報出力手段4が接続されている。受光部7は、第1の受光素子31、第2の受光素子32、第3の受光素子33及び第4の受光素子34が得た干渉信号を相対位置情報出力手段4に出力する。
1-2.第1の回折格子と第2の回折格子の関係
次に、上述した構成を有する第1の回折格子11と第2の回折格子12の関係について図3を参照して説明する。
図3は、第1の回折格子11と第2の回折格子12の回折角度の関係を示す説明図である。
図3に示すように、第1の回折格子11には、第1の光束L1が第3の方向Zに沿って垂直に入射する。なお、第1の回折格子11の格子ベクトル方向S1は図2に示すように、第1の方向Xと平行をなしている。そして、第1の回折格子11は、回折角度θで回折する。ここで、第1の光束L1の波長をλ、第1の回折格子11の格子ピッチd
Rとすると、第1の回折格子11の回折角度θは、下記式1及び式2により算出することができる。
[式1]
[式2]
第1の回折格子11で回折した第1の光束L1は、第2の回折格子12に入射され、第2の回折格子12で回折する。このときの第2の回折格子12の格子ベクトル方向は、第1の方向Xと第3の方向Zで形成される平面上に存在する。また、第2の回折格子12の格子ベクトル方向は、第1の光束L1における第1の回折格子11への入射角度に対して、角度θTで傾斜している。すなわち、第2の回折格子12の格子ベクトル方向は、第3の方向Zに対して角度θTで傾斜している。
第1の光束L1が第2の回折格子12に対して角度φで入射した場合、第2の回折格子12がブラッグ条件を満たせば、第2の回折格子12は、第1の光束L1を回折角度φで回折する。そのため、ブラッグ条件は、次の式3及び式4を満たすように第2の回折格子12の格子ピッチd
T又は回折角度φを設定すればよい。なお、λは、第1の光束L1の波長である。
[式3]
[式4]
第2の回折格子12がブラッグ条件を満たすことで、例えば、後述する透過型のボリュームタイプホログラムの第2の回折格子12M(図5A参照)を用いれば、非常に高い回折効率を得ることができる。しかしながら、第2の回折格子12への入射角度φと、格子ピッチdTの設計に制限がかかるため、第2の回折格子12としては、ボリュームタイプホログラムを用いずに、厚みのない透過型の回折格子を用いてもよい。厚みのない透過型の回折格子を用いることで、入射角度と回折角度の選択に自由度を持たせることができる。
第2の回折格子12がブラッグ条件を満たす場合、第2の回折格子12により2回目(1回目は第1の回折格子11)の回折をした第1の光束L1は、物体用ミラー15によって反射されて再び第2の回折格子12に入射する。なお、図1及び図3に示すように、被測定部材2が第3の方向Zに変位していない場合、第1の光束L1における第2の回折格子12に入射する入射点Qの位置は、変化しない。また、被測定部材2が第1の方向X又は第2の方向Yに変位しても、第1の光束L1における第2の回折格子12に入射する入射点Qの位置は、変化しない。そして、第2の回折格子12によって3回目の回折が行われた第1の光束L1は、光束平行分岐部40を通過して第1の回折格子11に入射し、第1の回折格子11により4回目の回折が行われる。
ここで、被測定部材2、すなわち第1の回折格子11が第3の方向Zに長さΔZだけ移動した例について説明する。
図3に示すように、第1の回折格子11が第3の方向Zに沿って上方、すなわちヘッド3に接近する向きに長さΔZ移動すると、第1の回折格子11の入射点P21に入射する時点で、第1の光束L1の光路長は、長さΔZ短くなる。
なお、第1の光束L1は、被測定部材2の被測定面2a、すなわち第1の回折格子11に対して垂直に入射している。そのため、被測定部材2が第3の方向Zに変位しても第1の回折格子11に入射される第1の光束L1の入射点P11、P21の位置は、第1の回折格子11上において変化しない。
第1の回折格子11が第3の方向Zに沿って上方、すなわちヘッド3に接近する向きに長さΔZ移動すると、第1の光束L1における第2の回折格子12に入射する位置は、入射点Q1から入射点Q2に変化する。
また、第1の光束L1における光束平行分岐部40内での光路長は、第1の回折格子11が第1の方向Xや第3の方向Zに移動しても変化しない。そのため、第1の回折格子11の入射点P21から光束平行分岐部40を介して第2の回折格子12の入射点Q2までの光路長は、第1の回折格子11が第3の方向Zに移動していない時の第1の回折格子11の入射点P11から光束平行分岐部40を介して第2の回折格子12の入射点Q1までの光路長よりも長さM1だけ長くなる。さらに、第2の回折格子12の入射点Q2から物体用ミラー15までの距離は、第1の回折格子11が第3の方向Zに移動していない時の第2の回折格子12の入射点Q1から物体用ミラー15までの光路長よりも長さM2だけ長くなる。
そのため、ΔZ=M1+M2を満たせば、第1の回折格子11が第3の方向Zに移動しても第1の光束L1の光路長は、一定となる。また、ΔZ=M1+M2を満たす条件は、第1の回折格子11の回折角度θと、第2の回折格子12の回折角度φから下記式5が示される。
[式5]
したがって、第1の回折格子11の回折角度θと第2の回折格子12の回折角度φは、上記式5を満たす値に設定される。これにより、第1の回折格子11が第3の方向Zに移動しても第1の光束L1の光路長を一定にすることができる。
なお、第1の光束L1が物体用ミラー15によって反射し、光束平行分岐部40を通過した第1の回折格子11に再び入射するまでの光路にも適用できる。さらに、第1の光束L1における光束平行分岐部40内での光路長は、第1の回折格子11が第1の方向Xや第3の方向Zに移動しても変化しない。従って、第1の光束L1における帰り光路の光路長も常に一定にすることができる。
上述したように、被測定部材2が第1の方向X又は第2の方向Yに変位しても、第1の光束L1における第2の回折格子12に入射する入射点Qの位置は、変化しないため、第1の光束L1の光路長を一定に保つことができる。その結果、第1の回折格子11が第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zに移動しても第1の光束L1の光路長が変化しないため、第1の光束L1の光路長と第2の光束L2の光路長を常に一定に保つことができる。
例えば、光源6の波長λが790nm、第1の回折格子11の格子ピッチdRが1μm、第1の回折格子11への第1の光束L1の入射角度が0度、第2の回折格子12の格子ピッチdTの場合、第1の回折格子11の回折角度θ≒52.2°、第2の回折格子12の回折角度φ≒45.9°となる。
1-3.相対位置情報出力手段の構成例
次に、図4を参照して相対位置情報出力手段4の構成例について説明する。
図4は、本例の相対位置情報出力手段4を示すブロック図である。
図4に示すように、相対位置情報出力手段4は、第1差動増幅器61aと、第2差動増幅器61bと、第1のA/D変換器62aと、第2のA/D変換器62bと、波形補正処理部63と、インクリメンタル信号発生器64とを有している。
第1差動増幅器61aには、第1の受光素子31及び第2の受光素子32が接続されており、第2差動増幅器61bには、第3の受光素子33及び第4の受光素子34が接続されている。また、第1差動増幅器61aには、第1のA/D変換器62aが接続されており、第2差動増幅器61bには、第2のA/D変換器62bが接続されている。そして、第1のA/D変換器62a及び第2のA/D変換器62bは、波形補正処理部63と接続している。また、波形補正処理部63は、インクリメンタル信号発生器64に接続されている。
第1差動増幅器61aは、第1の受光素子31及び第2の受光素子32から干渉信号を受信し、第2差動増幅器61bは、第3の受光素子33及び第4の受光素子34から干渉信号を受信する。第1差動増幅器61a及び第2差動増幅器61bは、それぞれ受信した干渉信号を差動増幅し、干渉信号の直流成分をキャンセルする。
第1差動増幅器61aで差動増幅された信号は、第1のA/D変換器62aによってA/D変換され、波形補正処理部63によって信号振幅とオフセットと位相が補正される。この信号は、例えばA相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器64において演算される。
また同様に、第2差動増幅器61bで差動増幅された信号は、第2のA/D変換器62bによってA/D変換される。そして、波形補正処理部63により信号振幅とオフセットと位相とが補正され、A相と位相が90度異なるB相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器64から出力される。
こうして得られた2相のインクリメンタル信号は、図示しないパルス弁別回路等により正逆の判別が行われ、これにより、ヘッド3と被測定部材2との第1の方向X又は第3の方向Zの相対的な変位量が、プラス方向であるかマイナス方向であるかを検出できる。
また、図示しないカウンタによってインクリメンタル信号のパルス数をカウントすることにより、第1の光束L1と第2の光束L2の干渉光強度が上述の周期の何周期分変化したのかを計測できる。これにより、変位検出装置1により被測定部材2とヘッド3との相対的な変位量(移動量)が検出される。
なお、本例の相対位置情報出力手段4の出力する相対位置情報は、上述の2相のインクリメンタル信号であってもよいし、それから算出された変位量、変位方向を含む信号であってもよい。
1-4.変位検出装置の動作例
次に、図1、図3及び図4を参照して、上述した構成を有する変位検出装置1の動作例について説明する。
図1に示すように、光源6から出射した光Lは、レンズ16によりコリメートされて平行光となる。レンズ16によりコリメートされた平行光Lは、光束分割部13に入射する。光束分割部13に入射した光は、第1の光束L1と第2の光束L2に分割される。
光束分割部13によって反射された第2の光束L2は、光束結合部50に入射する。第2の光束L2は、光束結合部50の偏光調整位相板52により、p偏光の光に変化する。p偏光の光に変化した第2の光束L2は、光束結合部50の偏光ビームスプリッタ53に入射する。
上述したように、偏光ビームスプリッタ53は、光のうちs偏光を反射し、p偏光を透過する。そのため、偏光ビームスプリッタ53に入射した第2の光束L2は、偏光ビームスプリッタ53を透過する。
第2の光束L2は、光束結合部50を通過して第2の位相板18に照射される。第2の光束L2は、p偏光であるため、第2の光束L2は、第2の位相板18を通過することで、進行方向を中心軸として第1の向きに回転する円偏光に変化する。第2の位相板18を通過した第2の光束L2は、参照用ミラー14に照射される。
参照用ミラー14に照射された第2の光束L2は、参照用ミラー14で反射されて、再び第2の位相板18に照射される。このときの第2の光束L2の偏光方向は、進行方向を中心軸として第1の向きに回転する円偏光である。そのため、第2の光束L2は、第2の位相板18によって、行きの偏光方向であるp偏光と直交するs偏光に変化する。
第2の位相板18を通過した第2の光束L2は、光束結合部50の偏光ビームスプリッタ53に入射する。第2の光束L2の偏光方向がs偏光であるため、第2の光束L2は、光束結合部50の偏光ビームスプリッタ53によって反射される。
一方、光束分割部13を透過した第1の光束L1は、被測定部材2の被測定面2a、すなわち第1の回折格子11の入射点P11に垂直に入射する。そして、図3に示すように、第1の光束L1は、第1の回折格子11によって回折角度θで回折する。1回目の回折が行われた第1の光束L1は、光束平行分岐部40に入射する。
第1の光束L1は、光束平行分岐部40の偏光調整位相板42によって、偏光状態がs偏光に変化する。s偏光に変化した第1の光束L1は、反射ミラー43によって反射されて偏光ビームスプリッタ44に入射する。第1の光束L1は、s偏光であるため、偏光ビームスプリッタ44によって反射される。
光束平行分岐部40の偏光ビームスプリッタ44を反射した第1の光束L1は、第2の回折格子12に入射角度φで入射点Q(図1参照)に入射する。上述したように、第2の回折格子12は、ブラッグ条件を満たしているため、第1の光束L1は、第2の回折格子12によって回折角度φで回折する。
第2の回折格子12によって回折された第1の光束L1は、物体用ミラー15に垂直に入射する。そして、第1の光束L1は、再び第2の回折格子12に向けて、物体用ミラー15によって反射される。第1の光束L1は、入射角度φで第2の回折格子12に入射する。このとき、第1の光束L1は、行き光路と同じ第2の回折格子12における入射点Qに入射する。そして、第2の回折格子12によって3回目の回折が行われ、光束平行分岐部40の偏光ビームスプリッタ44に入射する。
また、第2の回折格子12と物体用ミラー15の間には、第1の位相板17が配置されている。そのため、第2の回折格子12を通過した第1の光束L1は、s偏光であるため、第1の位相板17によって、進行方向を中心軸として第2の向きに回転する円偏光に変化する。また、物体用ミラー15を反射した第1の光束L1は、第1の位相板17を再び通過することで、第2の向きに回転する円偏光からp偏光に変化する。
光束平行分岐部40に再び入射した第1の光束L1の偏光方向は、第1の位相板17によってp偏光に変化されているため、第1の光束L1は、光束平行分岐部40の偏光ビームスプリッタ44を透過する。
また、光束平行分岐部40は、光束平行分岐部40は、第1の光束L1における行き光路と帰り光路が一致しないように、行き光路と帰り光路を平行に移動させている。そのため、第1の光束L1は、光束平行分岐部40を通過して、第1の回折格子11に入射角度θで、行き光路の入射点P11とは異なる入射点P12に入射する。
このように、第1の回折格子11に対する行き光路の入射点P12と帰り光路の入射点P12が異なる位置であるため、第1の回折格子11にゴミが付着した際の影響を少なくすることができる。
次に、第1の光束L1は、第1の回折格子11で4回目の回折が行われて、光束結合部50に照射される。このときの第1の光束L1の偏光方向がp偏光であるため、光束結合部50の偏光ビームスプリッタ53を透過する。そして、光束結合部50で重ね合わされ、かつ互いに直交した直線偏光の第1の光束L1と第2の光束L2が重なり合った光束が、受光部7に照射される。
光束は、集光レンズ21によって集光されて、ハーフミラー22に照射される。ハーフミラー22は、光束を2つの光に分割する。ハーフミラー22を透過した光束は、第1の偏光ビームスプリッタ24に入射する。
ここで、第1の偏光ビームスプリッタ24は、互いに偏光方向が90度異なる第1の光束L1及び第2の光束L2の偏光方向が、第1の偏光ビームスプリッタ24の入射面に対してそれぞれ偏光方向が45度傾くように傾けて配置されている。これにより、第1の光束L1及び第2の光束L2は、第1の偏光ビームスプリッタ24に対してそれぞれp偏光成分とs偏光成分を有することになる。したがって、第1の偏光ビームスプリッタ24を透過した第1の光束L1及び第2の光束L2は、同じ偏光方向を有する偏光同士が干渉する。よって、第1の光束L1と第2の光束L2を第1の偏光ビームスプリッタ24によって干渉させることができる。
同様に、第1の偏光ビームスプリッタ24によって反射される第1の光束L1及び第2の光束L2は、第1の偏光ビームスプリッタ24に対して同じ偏光方向を有する偏光同士が干渉する。そのため、第1の偏光ビームスプリッタ24によって干渉させることができる。
第1の偏光ビームスプリッタ24を透過した第1の光束L1及び第2の光束L2との干渉光は、第1の受光素子31によって受光される。また、第1の偏光ビームスプリッタ24によって反射された第1の光束L1及び第2の光束L2との干渉光は、第2の受光素子32によって受光される。ここで、第1の受光素子31と第2の受光素子32とによって光電変換される干渉信号は、180度位相の異なる信号となる。
そして、第1の受光素子31と第2の受光素子32によって得られる干渉信号は、A×cos(2×K1x+2×B×K2z+δ)の干渉信号が得られる。ここで、Aは、干渉の振幅であり、K1は、2π/dRで示される第1の回折格子11の波数である。また、xは、第1の回折格子11の移動量、すなわちヘッド3と被測定部材2における第1の方向Xへの相対的な変位量を示している。一方、K2は、2π/dTで示される第2の回折格子12の波数である。zは、第2の回折格子12に入射する第1の光束L1における第2の回折格子12の格子ベクトル方向の移動量を示している。なお、dRは、第1の回折格子11の格子ピッチであり、dTは、第2の回折格子12の格子ピッチである。また、δは、初期位相を示している。
さらに、Bは、第2の回折格子12の格子ベクトル方向が第3の方向Zに対して傾斜角度θTで傾斜することに伴う係数である。そして、第2の回折格子12のへの入射角度(ブラッグ条件では、回折角度も同じになる)をφとした場合、B=cosθT+sinθT×tanφで示すことができる。
ここで、ヘッド3と被測定部材2が第1の方向Xに相対的にx/2だけ移動すると、第1の回折格子11に照射される第1の光束L1の入射点が第1の方向Xにx/2だけ移動する。すなわち、第1の光束L1は、第1の回折格子11上を第1の方向Xにx/2だけ移動する。そのため、第1の光束L1には、K1xの位相が加わり、1周期の光の明暗が生じる干渉光が第1の受光素子31と第2の受光素子32によって受光される。
なお、ヘッド3と被測定部材2が第1の方向Xに相対的に移動しても、第1の光束L1における第2の回折格子12上での入射点は、変化しない。そのため、第1の光束L1には、第1の回折格子11によって回折された位相のみが加わる。
また、ヘッド3と被測定部材2が第3の方向Zに相対的にZ/(2×B)だけ移動すると、第2の回折格子12に照射される第1の光束L1の入射点が第2の回折格子12の格子ベクトル方向にZ/2だけ移動する。すなわち、第1の光束L1は、第2の回折格子12上を格子ベクトル方向にZ/2だけ移動する。そのため、第1の光束L1には、K2zの位相が加わり、1周期の光の明暗が生じる干渉光が第1の受光素子31と第2の受光素子32によって受光される。
なお、上述したように、第1の光束L1は、第3の方向Zと平行に第1の回折格子11に入射する。そのため、第1の光束L1は、第1の回折格子11に垂直に入射する。したがって、ヘッド3と被測定部材2が第3の方向Zに相対的に移動しても、第1の光束L1における第1の回折格子11上での入射点は、変化しない。そのため、第1の光束L1には、第2の回折格子12によって回折された位相のみが加わる。
さらに、第1の回折格子11の回折角度θと、第2の回折格子12の回折角度φは、上記式5を満たす値に設定されている。そのため、ヘッド3と被測定部材2が第3の方向Zに相対的にΔZで移動しても、ΔZと図3に示すM1+M2の和が常に0になる。その結果、第1の光束L1の光路長が変化せず、ヘッド3と被測定部材2が第3の方向Zに相対的にΔZで移動しても、第1の光束L1における第2の回折格子12に入射する位置だけが変化する。
ここで、上述したように、第1の受光素子31及び第2の受光素子32によって得られる干渉信号には、光源6の波長に関する成分が含まれていない。よって、気圧や湿度、温度の変化による光源の波長に変動が起きても干渉強度には、影響を受けない。
一方、図1に示すように、ハーフミラー22を反射した光束は、受光側位相板23に入射する。互いに偏光方向が90度異なる直線偏光である第1の光束L1及び第2の光束L2からなる光束は、受光側位相板23を透過することにより、互いに逆回りの円偏光となる。そして、この互いに逆回りの円偏光は同一光路上にあるので、重ね合わされることにより直線偏光となり、第2の偏光ビームスプリッタ25に入射する。
この直線偏光のs偏光成分は第2の偏光ビームスプリッタ25によって反射され、第3の受光素子33に受光される。また、p偏光成分は、第2の偏光ビームスプリッタ25を透過し、第4の受光素子34によって受光される。
上述したように、第2の偏光ビームスプリッタ25に入射する直線偏光は、互いに逆回りの円偏光の重ね合わせによって生じている。そして、第2の偏光ビームスプリッタ25に入射される直線偏光の偏光方向は、ヘッド3と被測定部材2が第1の方向Xに相対的にdR/2だけ移動すると1/2回転する。また、ヘッド3と被測定部材2が第1の方向Xに相対的にdT/(2×B)だけ移動しても、第2の偏光ビームスプリッタ25に入射される直線偏光の偏光方向は、1/2回転する。
したがって、第3の受光素子33と第4の受光素子34でも、第1の受光素子31及び第2の受光素子32と同様に、A×cos(2×K1x+2×B×K2z+δ’)の干渉信号が得られる。δ’は初期位相である。
また、第3の受光素子33と第4の受光素子34とで光電変換される信号は、180度位相が異なる。
なお、本例では、第1の偏光ビームスプリッタ24に対して、第3の受光素子33と第4の受光素子34に受光される光束を分割する第2の偏光ビームスプリッタ25を45度傾けて配置している。このため、第3の受光素子33と第4の受光素子34において得られる信号は、第1の受光素子31と第2の受光素子32において得られる信号に対し、90度位相がずれている。
したがって、例えば第1の受光素子31と第2の受光素子32で得られる信号をsin信号、第3の受光素子33と第4の受光素子34で得られる信号をcos信号として用いることによりリサージュ信号を取得することができる。
これらの受光素子によって得られる信号は、相対位置情報出力手段4によって演算され、ヘッド3と被測定部材2との相対的な変位量がカウントされる。これにより、ヘッド3と被測定部材2との相対的な変位量を検出することができる。
本例の変位検出装置1では、変位検出部5の受光部7で得られる干渉信号には、第1の方向Xと第3の方向Zの変位情報が含まれる。そのため、ヘッド3と被測定部材2が第1の方向Xのみに相対的に移動する際の、ヘッド3と被測定部材2の第1の方向Xへの相対的な変位を検出する装置に適用できる。または、ヘッド3と被測定部材2が第3の方向Zのみに相対的に移動する際の、ヘッド3又は被測定部材2の第3の方向Zへの相対的な変位を検出する装置にも適用できる。すなわち、本例の変位検出装置1は、1つの装置で2通りの使用方法を有している。
1-5.第2の回折格子の変形例
次に、図5A及び図5Bを参照して回折格子の変形例について説明する。
図5Aは第2の回折格子の変形例を示す断面図、図5Bは第2の回折格子の他の変形例を示す断面図である。
図5Aに示す第2の回折格子12Mは、写真乾板を用いた、いわゆるボリュームタイプのホログラムである。吸収型のホログラムを用いてもよいが、ここでは位相型のホログラムについて説明する。この第2の回折格子12Mにおける格子部12bは、例えば次のようにして形成される。まず、ガラス基板12aの一面に光に感光する銀塩の乳剤を塗布し、干渉縞を露光し、現像後、漂白する。これにより、格子部12bには、銀の粒子が残っている箇所と、残っていない箇所が形成される。
ここで、銀の粒子が残っている箇所は、屈折率が高く、銀の粒子が残っていない箇所は、屈折率が低くなる。すなわち、位相型のホログラムである。また、材料として写真乾板の代わりにホログラム記録用フォトポリマーを使用してもよい。
図5Bに示す第2の回折格子12Nは、略透明なガラス基板12aの一面に例えばクロム(Cr)からなる格子部12cを形成したものである。一般的に、格子部12cは、ガラス基板12aの一面にクロム等の薄膜を真空蒸着によって形成されるため、その厚みは、1μm以下である。
また、図5Aに示す第2の回折格子12M及び図5Bに示す第2の回折格子12Nにおいて、入射角度をφa、回折角度をφbとした場合、下記式6のブラッグ条件を満たすとき、φa=φbとなる。なお、nは、整数である。
[式6]
また、図5Aに示す第2の回折格子12Mの場合、ブラッグ条件を満たすときに、第2の回折格子12Mによって回折される回折光の出力を最大にすることができる。すなわち、第2の回折格子12Mによって回折された回折光の光量が低下することを防ぐことができる。
2.第2の実施の形態例
次に、図6及び図7を参照して第2の実施の形態例にかかる変位検出装置について説明する。
図6は、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置の構成を示す概略構成図、図7は、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置における相対位置情報出力手段を示すブロック図である。
この第2の実施の形態例にかかる変位検出装置101は、第1の方向Xと第3の方向Zの2次元の変位情報を出力可能な変位検出装置である。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図6に示すように、変位検出装置101は、第1の回折格子111が設けられた被測定部材2と、ヘッド3と、相対位置情報出力手段104とを備えている。ヘッド3と被測定部材2は、第1の方向Xと第3の方向Zの2方向に相対的に移動可能に構成されている。
ヘッド103は、第1変位検出部5Aと、第2変位検出部5Bと、光源6と、レンズ16と、第1光束分割部113Aと、第2光束分割部113Bと、を備えている。第1変位検出部5Aは、ヘッド3の第1の方向Xの一側に配置され、第2変位検出部5Bは、ヘッド3の第1の方向Xの他側に配置されている。
そして、第1変位検出部5Aと第2変位検出部5Bにおける第1の方向Xの間には、光源6、レンズ16、第1光束分割部113Aと、第2光束分割部113Bが配置されている。
第1光束分割部113A及び第2光束分割部113Bは、それぞれハーフミラーやビームスプリッタにより構成されている。第1光束分割部113Aは、第2光束分割部113Bよりも第3の方向Zにおいて被測定部材2側に配置されている。すなわち、第2光束分割部113Bは、第1光束分割部113Aよりも光源6側に配置される。第1光束分割部113A及び第2光束分割部113Bは、それぞれ入射した光を、反射した光と、及び透過する光の2つに分割する。
光源6から出射された光Lは、第2光束分割部113Bに入射する。第2光束分割部113Bによって反射された光束は、第2変位検出部5Bで用いられる参照光である第2の光束L2Bとなる。第2光束分割部113Bを反射した第2の光束L2Bは、第1の方向Xの他側に向けて照射される。なお、第2光束分割部113Bの第1の方向Xの他側には、後述する第2変位検出部5Bの光束結合部50B及び参照用ミラー14Bが配置されている。そのため、第2の光束L2Bは、後述する第2変位検出部5Bの光束結合部50B及び参照用ミラー14Bに向けて照射される。また、第2光束分割部113Bを透過した光は、第1光束分割部113Aに入射する。
第1光束分割部113Aによって反射された光束は、第1変位検出部5Aで用いられる参照光である第2の光束L2Aとなる。第1光束分割部113Aを反射した第2の光束L2Aは、第1の方向Xの一側に向けて照射される。なお、第1光束分割部113Aの第1の方向Xの一側には、後述する第1変位検出部5Aの光束結合部50A及び参照用ミラー14Aが配置されている。そのため、第2の光束L2Aは、後述する第1変位検出部5Aの光束結合部50A及び参照用ミラー14Aに向けて照射される。また、第1光束分割部113Aを透過した第1の光束L1は、被測定部材2、すなわち第1の回折格子111の入射点P11に垂直に入射する。
第1の回折格子111の入射点P11に入射した第1の光束L1は、第1の回折格子111によって第1の方向Xに沿って正負の次数を有する2つの光束L1A、L1Bに分けられる。ここで、第1の回折格子111の格子ベクトル方向のプラス方向(一側)へ回折した回折光を正の次数の回折光とし、マイナス方向(他側)へ回折した回折光を負の次数の回折光とする。そして、正の次数を有する回折光が第1変位検出部5Aで用いられる物体光となり、負の次数を有する回折光が第2変位検出部5Bで用いられる物体光となる。
第1の回折格子111によって回折された第1の光束L1における正の次数を有する第1の光束L1Aは、後述する第1変位検出部5Aの光束平行分岐部40Aに入射する。また、第1の回折格子111によって回折された第1の光束L1における負の次数を有する第1の光束L1Bは、後述する第2変位検出部5Bの光束平行分岐部40Bに入射する。
第1変位検出部5Aは、受光部7Aと、第2の回折格子12Aと、参照用ミラー14Aと、物体用ミラー15Aと、第1の位相板17Aと、第2の位相板18Aと、光束平行分岐部40Aと、光束結合部50Aと、を備えている。受光部7Aは、相対位置情報出力手段104の第1相対位置情報出力部4Aに接続されている。そして、受光部7Aは、得られた干渉信号を第1相対位置情報出力部4Aに送信する。
第1変位検出部5Aの光束平行分岐部40Aは、物体用ミラー15Aによって反射され、かつ第2の回折格子12Aを通過した第1の光束L1Aを、第1の回折格子111における1回目の入射位置の入射点P11と異なる入射点P12Aに入射させる。なお、1回目の入射一である入射点P11と、2回目の照射一である入射点P12Aは、被測定部材2における第1の方向X上に位置している。また、光束平行分岐部40Aは、第1の光束L1Aにおける入射点P11から光束平行分岐部40Aに入射するまでの行き光路と、光束平行分岐部40Aから第1の回折格子111の入射点P12Aに入射するまでの帰り光路が一致しないように、第1の方向Xに平行に移動させている。
第1の回折格子111の入射点P12Aに入射した第1の光束L1Aは、第1の回折格子111によって回折され、光束結合部50Aによって第2の光束L2Aと重ね合わされて受光部7Aに入射する。第1変位検出部5Aの受光部7Aは、下記式7に示す干渉信号を得る。ここで、A1は、干渉の振幅である。
[式7]
第2変位検出部5Bは、受光部7Bと、第2の回折格子12Bと、参照用ミラー14Bと、物体用ミラー15Bと、第1の位相板17Bと、第2の位相板18Bと、光束平行分岐部40Bと、光束結合部50Bと、を備えている。受光部7Bは、相対位置情報出力手段104の第2相対位置情報出力部4Bに接続されている。そして、受光部7Bは、得られた干渉信号を第2相対位置情報出力部4Bに送信する。
また、第2変位検出部5Bを構成する第2の回折格子12B、参照用ミラー14B、物体用ミラー15B、第1の位相板17B、第2の位相板18B、光束平行分岐部40B及び光束結合部50Bは、第1変位検出部5Aに対して第1の方向Xに沿って反転して配置されている。
第2変位検出部5Bの光束平行分岐部40Bは、物体用ミラー15Bによって反射され、かつ第2の回折格子12Bを通過した第1の光束L1Bを、第1の回折格子111における1回目の入射位置の入射点P11と異なる入射点P12Bに入射させる。なお、1回目の入射一である入射点P11と、2回目の照射一である入射点P12Bは、被測定部材2における第1の方向X上に位置している。また、光束平行分岐部40Bは、第1の光束L1Bにおける入射点P11から光束平行分岐部40Bに入射するまでの行き光路と、光束平行分岐部40Bから第1の回折格子111の入射点P12Bに入射するまでの帰り光路が一致しないように、第1の方向Xに平行に移動させている。
第1の回折格子111の入射点P12Bに入射した第1の光束L1Bは、第1の回折格子111によって回折され、光束結合部50Bによって第2の光束L2Bと重ね合わされて受光部7Bに入射する。第2変位検出部5Bの受光部7Bは、下記式8に示す干渉信号を得る。ここで、A2は、干渉の振幅である。
[式8]
上記式7と式8に示すように、第1変位検出部5Aの受光部7Aと、第2変位検出部5Bの受光部7Bが得られる干渉信号における第1の方向Xの変位情報は、正負が異なっている。
図7に示すように、相対位置情報出力手段104は、第1相対位置情報出力部4Aと、第2相対位置情報出力部4Bと、演算部114とを有している。上述したように、第1変位検出部5Aの受光部7Aと、第2変位検出部5Bの受光部7Bが得られる干渉信号における第1の方向Xの変位情報は、正負が異なっている。
そのため、第1相対位置情報出力部4Aからの変位情報Aと、第2相対位置情報出力部4Bからの変位情報Bを足し合わせることで、第3の方向Zの変位情報のみを取り出すことができる。また、第1相対位置情報出力部4Aの変位情報Aから第2相対位置情報出力部4Bの変位情報Bを引くことで、第1の方向Xの変位情報のみを取り出すことができる。
そして、演算部114は、第1相対位置情報出力部4Aからの変位情報Aと、第2相対位置情報出力部4Bからの変位情報Bを足し合わせて、2で割ることで、ヘッド103と被測定部材2との第3の方向Zへの相対位置の変位情報を演算している。また、演算部114は、第1相対位置情報出力部4Aの変位情報Aから第2相対位置情報出力部4Bの変位情報Bを引き、2で割ることで、ヘッド103と被測定部材2との第1の方向Xの変位情報を演算している。
これにより、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置101によれば、第1の方向Xと第3の方向Zの2次元の変位情報を出力することができる。
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる変位検出装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する変位検出装置101によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
さらに、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置101によれば、第1の回折格子111によって回折された回折光のうち正の次数の回折光を第1変位検出部5Aで用いて、負の次数の回折光を第2変位検出部5Bで用いている。これにより、相対位置情報出力手段104で得られる干渉信号の出力振幅を増加させることができる。
3.第3の実施の形態例
次に、図8~図12を参照して第3の実施の形態例にかかる変位検出装置について説明する。
図8は、第3の実施の形態例に係る変位検出装置の構成を示す概略構成図である。図9は、第3の実施の形態例に係る変位検出装置における第1変位検出部及び第2変位検出部の構成を示す概略構成図である。図10は、第3の実施の形態例に係る変位検出装置における第3変位検出部及び第4変位検出の構成を示す概略構成図である。図11は、第3の実施の形態例に係る変位検出装置における相対位置情報出力手段を示すブロック図である。図12A及び図12Bは、第3の実施の形態例に係る変位検出装置における第1の回折格子を示すものである。
この第3の実施の形態例にかかる変位検出装置201は、第1の方向Xと、第3の方向Zと、第1の方向X及び第3の方向Zとも直交する第2の方向Yの3次元の変位情報を出力可能な変位検出装置である。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図8、図9及び図10に示すように、変位検出装置201は、第1の回折格子211が設けられた被測定部材202と、ヘッド203と、相対位置情報出力手段204とを備えている。ヘッド203と、被測定部材202は、第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zの3方向に相対的に移動可能に構成されている。
図12A及び図12Bに示すように、被測定部材202は、平板状に形成されている。被測定部材202の被測定面202aには、第1の回折格子211が設けられている。第1の回折格子211は、第1の方向Xと平行をなす第1格子ベクトル方向と、第2の方向Yと平行をなす第2格子ベクトル方向を有している。
また、第1の回折格子211は、複数の突起211aにより構成されている。複数の突起211aは、被測定面202aから第3の方向Zに向けて突出している。この複数の突起211aは、第1の方向Xと平行をなす第1格子ベクトル方向と、第2の方向Yと平行をなす第2格子ベクトル方向に沿ってそれぞれ間隔を空けて格子状に配置されている。
なお、第3の実施の形態例にかかる第1の回折格子211を複数の突起211aにより構成した例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、被測定部材202の被測定面202aに形成された複数の凹部によって第1の回折格子211を構成してもよい。
図8、図9及び図10に示すように、ヘッド203は、第1変位検出部5Aと、第2変位検出部5Bと、第3変位検出部5Cと、第4変位検出部5Dと、光源6と、レンズ16と、第1光束分割部213Aと、第2光束分割部213Bと、第3光束分割部213Cと、第4光束分割部213Dと、を備えている。第1変位検出部5Aは、ヘッド203の第1の方向Xの一側に配置され、第2変位検出部5Bは、ヘッド203の第1の方向Xの他側に配置されている。また、第3変位検出部5Cは、ヘッド203の第2の方向Yの一側に配置され、第4変位検出部5Dは、ヘッド2033の第2の方向Yの他側に配置されている。
第1変位検出部5A、第2変位検出部5B、第3変位検出部5C及び第4変位検出部5Dの間には、光源6、レンズ16、第1光束分割部213A、第2光束分割部213B、第3光束分割部213C及び第4光束分割部213Dが配置されている。すなわち、光源6、レンズ16、第1光束分割部213A、第2光束分割部213B、第3光束分割部213C及び第4光束分割部213Dは、ヘッド203における第1の方向X及び第2の方向Yの中心部に配置されている。
第1光束分割部213A、第2光束分割部213B、第3光束分割部213C及び第4光束分割部213Dは、ハーフミラー又はビームスプリッタにより構成されている。第1光束分割部213A、第2光束分割部213B、第3光束分割部213C及び第4光束分割部213Dは、それぞれ入射した光を、反射した光と、透過する光の2つに分割する。
第1光束分割部213A、第2光束分割部213B、第3光束分割部213C及び第4光束分割部213Dは、第3の方向Zにおける被測定部材202側から、第1光束分割部213A、第2光束分割部213B、第3光束分割部213C、第4光束分割部213Dの順に配置されている。すなわち、第4光束分割部213Dが光源6側に配置される。
第4光束分割部213Dには、光源6から出射された光Lが入射する。第4光束分割部213Dによって反射された光束は、第4変位検出部5Dで用いられる参照光である第2の光束L2Dとなる。第4光束分割部213Dを反射した第2の光束L2Dは、第2の方向Yの他側に向けて照射される。なお、第4光束分割部213Dにおける第2の方向Yの他側には、後述する第4変位検出部5Dの光束結合部50D及び参照用ミラー14Dが配置されている。そのため、第2の光束L2Dは、後述する第4変位検出部5Dの光束結合部50D及び参照用ミラー14Dに向けて照射される。また、第4光束分割部213Dを透過した光は、第3光束分割部213Cに入射する。
第3光束分割部213Cによって反射された光束は、第3変位検出部5Cで用いられる参照光である第2の光束L2Cとなる。第3光束分割部213Cを反射した第2の光束L2Cは、第2の方向Yの一側に向けて照射される。なお、第3光束分割部213Cにおける第2の方向Yの一側には、後述する第3変位検出部5Cの光束結合部50C及び参照用ミラー14Cが配置されている。そのため、第2の光束L2Cは、後述する第3変位検出部5Cの光束結合部50C及び参照用ミラー14Cに向けて照射される。また、第3光束分割部213Cを透過した光は、第2光束分割部213Bに入射する。
第2光束分割部213Bによって反射された光束は、第2変位検出部5Bで用いられる参照光である第2の光束L2Bとなる。第2光束分割部213Bを反射した第2の光束L2Bは、第1の方向Xの他側に向けて照射される。なお、第2光束分割部213Bの第1の方向Xの他側には、後述する第2変位検出部5Bの光束結合部50B及び参照用ミラー14Bが配置されている。そのため、第2の光束L2Bは、後述する第2変位検出部5Bの光束結合部50B及び参照用ミラー14Bに向けて照射される。また、第2光束分割部213Bを透過した光は、第1光束分割部213Aに入射する。
第1光束分割部213Aによって反射された光束は、第1変位検出部5Aで用いられる参照光である第2の光束L2Aとなる。第1光束分割部213Aを反射した第2の光束L2Aは、第1の方向Xの一側に向けて照射される。なお、第1光束分割部213Aの第1の方向Xの一側には、後述する第1変位検出部5Aの光束結合部50A及び参照用ミラー14Aが配置されている。そのため、第2の光束L2Aは、後述する第1変位検出部5Aの光束結合部50A及び参照用ミラー14Aに向けて照射される。また、第1光束分割部213Aを透過した第1の光束L1は、被測定部材2、すなわち第1の回折格子211の入射点P11に垂直に入射する。
第1の回折格子211の入射点P11に入射した第1の光束L1は、第1の回折格子211によって第1の方向Xに沿って正負の次数を有する2つの光束L1A、L1Bと、第2の方向Yに沿って正負の次数を有する2つの光束L1C、L1Dに分けられる。ここで、第1の回折格子211の第1格子ベクトル方向のプラス方向(一側)へ回折した回折光を第1の方向Xにおける正の次数の回折光とし、マイナス方向(他側)へ回折した回折光を第1の方向Xにおける負の次数の回折光とする。そして、第1の方向Xにおける正の次数を有する回折光が第1変位検出部5Aで用いられる物体光となり、第1の方向Xにおける負の次数を有する回折光が第2変位検出部5Bで用いられる物体光となる。
また、第1の回折格子211の第2格子ベクトル方向のプラス方向(一側)へ回折した回折光を第2の方向Yにおける正の次数の回折光とし、マイナス方向(他側)へ回折した回折光を第2の方向Yにおける負の次数の回折光となる。そして、第2の方向Yにおける正の次数を有する回折光が第3変位検出部5Cで用いられる物体光となり、第2の方向Yにおける負の次数を有する回折光が第4変位検出部5Dで用いられる物体光となる。
第1の回折格子111によって回折された第1の光束L1における第1の方向Xにおいて正の次数を有する第1の光束L1Aは、第1変位検出部5Aの光束平行分岐部40Aに入射する。また、第1の回折格子111によって回折された第1の光束L1における第1の方向Xにおいて負の次数を有する第1の光束L1Bは、第2変位検出部5Bの光束平行分岐部40Bに入射する。さらに、第1の回折格子111によって回折された第1の光束L1における第2の方向Yにおいて正の次数を有する第1の光束L1Cは、後述する第3変位検出部5Cの光束平行分岐部40Cに入射する。また、第1の回折格子111によって回折された第1の光束L1における第2の方向Yにおいて負の次数を有する第1の光束L1Dは、第4変位検出部5Dの光束平行分岐部40Dに入射する。
なお、第1変位検出部5A及び第2変位検出部5Bは、第2の実施の形態例に係る第1変位検出部5A及び第2変位検出部5Bと同様の構成を有しているため、その説明は省略する。
なお、第1変位検出部5Aの受光部7Aは、下記式9に示す干渉信号を得る。ここで、A1は、干渉の振幅である。
[式9]
また、第2変位検出部5Bの受光部7Bは、下記式10に示す干渉信号を得る。ここで、A2は、干渉の振幅である。
[式10]
第3変位検出部5Cは、受光部7Cと、第2の回折格子12Cと、参照用ミラー14Cと、物体用ミラー15Cと、第1の位相板17Cと、第2の位相板18Cと、光束平行分岐部40Cと、光束結合部50Cと、を備えている。また、第2の回折格子12Cの格子ベクトル方向は、第2の方向Yと第3の方向Zで形成される平面上に存在する。受光部7Cは、相対位置情報出力手段204の第3相対位置情報出力部4Cに接続されている。そして、受光部7Cは、得られた干渉信号を第3相対位置情報出力部4Cに送信する。
第3変位検出部5Cの光束平行分岐部40Cは、物体用ミラー15Cによって反射され、かつ第2の回折格子12Cを通過した第1の光束L1Cを、第1の回折格子211における1回目の入射位置の入射点P11と異なる入射点P12Cに入射させる。なお、1回目の入射一である入射点P11と、2回目の照射一である入射点P12Cは、被測定部材2における第2の方向Y上に位置している。また、光束平行分岐部40Cは、第1の光束L1Cにおける入射点P11から光束平行分岐部40Cに入射するまでの行き光路と、光束平行分岐部40Cから第1の回折格子211の入射点P12Cに入射するまでの帰り光路が一致しないように、第2の方向Yに平行に移動させている。
第1の回折格子211の入射点P12Cに入射した第1の光束L1Cは、第1の回折格子211によって回折され、光束結合部50Cによって第2の光束L2Cと重ね合わされて受光部7Cに入射する。第3変位検出部5Cの受光部7Cは、下記式11に示す干渉信号を得る。ここで、A3は、干渉の振幅である。yは、第1の回折格子211の移動量、すなわちヘッド203と被測定部材202における第2の方向Yへの相対的な変位量を示している。
[式11]
第4変位検出部5Dは、受光部7Dと、第2の回折格子12Dと、参照用ミラー14Dと、物体用ミラー15Dと、第1の位相板17Dと、第2の位相板18Dと、光束平行分岐部40Dと、光束結合部50Dと、を備えている。また、第2の回折格子12Cの格子ベクトル方向は、第2の方向Yと第3の方向Zで形成される平面上に存在する。受光部7Dは、相対位置情報出力手段204の第4相対位置情報出力部4Dに接続されている。そして、受光部7Dは、得られた干渉信号を第4相対位置情報出力部4Dに送信する。
また、第4変位検出部5Dを構成する第2の回折格子12D、参照用ミラー14D、物体用ミラー15D、第1の位相板17D、第2の位相板18Dは、光束平行分岐部40D及び光束結合部50Dは、第3変位検出部5Cに対して第2の方向Yに沿って反転して配置されている。
第4変位検出部5Dの光束平行分岐部40Dは、物体用ミラー15Dによって反射され、かつ第2の回折格子12Dを通過した第1の光束L1Dを、第1の回折格子211における1回目の入射位置の入射点P11と異なる入射点P12Dに入射させる。なお、1回目の入射一である入射点P11と、2回目の照射一である入射点P12Dは、被測定部材2における第2の方向Y上に位置している。また、光束平行分岐部40Dは、第1の光束L1Dにおける入射点P11から光束平行分岐部40Dに入射するまでの行き光路と、光束平行分岐部40Dから第1の回折格子211の入射点P12Dに入射するまでの帰り光路が一致しないように、第2の方向Yに平行に移動させている。
第1の回折格子211の入射点P12Dに入射した第1の光束L1Dは、第1の回折格子211によって回折され、光束結合部50Dによって第2の光束L2Dと重ね合わされて受光部7Dに入射する。第4変位検出部5Dの受光部7Dは、下記式12に示す干渉信号を得る。ここで、A4は、干渉の振幅である。
[式12]
図11に示すように、相対位置情報出力手段204は、第1相対位置情報出力部4Aと、第2相対位置情報出力部4Bと、第3相対位置情報出力部4Cと、第4相対位置情報出力部4Dと、演算部214とを有している。
上述したように、第1変位検出部5Aの受光部7Aと、第2変位検出部5Bの受光部7Bが得られる干渉信号における第1の方向Xの変位情報は、正負が異なっている。また、第3変位検出部5Cの受光部7Cと、第4変位検出部5Dの受光部が得られる第2の方向Yの変位情報は、正負が異なっている。
そのため、第1相対位置情報出力部4Aの変位情報Aから第2相対位置情報出力部4Bの変位情報Bを引くことで、第1の方向Xの変位情報のみを取り出すことができる。また、第3相対位置情報出力部4Cの変位情報Cから第4相対位置情報出力部4Dの変位情報Dを引くことで、第2の方向Yの変位情報のみを取り出すことができる。そして、第1相対位置情報出力部4A、第2相対位置情報出力部4B、第3相対位置情報出力部4C及び第4相対位置情報出力部4Dの全ての変位情報A、B、C、Dを足し合わせることで、第3の方向Zの変位情報のみを取り出すことができる。
そして、演算部214は、第1相対位置情報出力部4A、第2相対位置情報出力部4B、第3相対位置情報出力部4C、第4相対位置情報出力部4Dの全ての変位情報A、B、C、Dを足し合わせて、4で割ることで、ヘッド103と被測定部材202との第3の方向Zへの相対位置の変位情報を演算している。
また、演算部214は、第1相対位置情報出力部4Aの変位情報Aから第2相対位置情報出力部4Bの変位情報Bを引き、2で割ることで、ヘッド103と被測定部材202との第1の方向Xの変位情報を演算している。演算部214は、第3相対位置情報出力部4Cの変位情報Cから第4相対位置情報出力部4Dの変位情報Dを引き、2で割ることで、ヘッド103と被測定部材202との第2の方向Yの変位情報を演算している。
これにより、第3の実施の形態例にかかる変位検出装置201によれば、第1の方向Xと、第2の方向Yと、第3の方向Zの3次元の変位情報を出力することができる。
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる変位検出装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する変位検出装置201によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
また、第3の実施の形態例では、第1の回折格子211の第1格子ベクトル方向と第2格子ベクトル方向が直交する例を説明したが、これに限定されるものではない。第1格子ベクトル方向と第2格子ベクトル方向は直交しなくてもよく、被測定部材202の被測定面202a上で互いに交差すればよい。そして、第1変位検出部5A及び第2変位検出部5Bは、第1格子ベクトル方向に沿って配置され、第3変位検出部5C及び第4変位検出部5Dは、第2格子ベクトル方向に沿って配置される。
さらに、第3の実施の形態例にかかる変位検出装置201によれば、回折格子211によって回折された回折光のうち第1の方向Xにおける正の次数の回折光だけでなく、第1の方向Xにおける負の次数の回折光を用いている。さらに、第2の方向Yにおける正の次数の回折光及び負の次数の回折光を用いている。これにより、相対位置情報出力手段204で得られる干渉信号の出力振幅を増加させることができる。
4.第4の実施の形態例
次に、図13及び図14を参照して第4の実施の形態例にかかる変位検出装置について説明する。
図13は、第4の実施の形態例にかかる変位検出装置の構成を示す概略構成図、図14は、第4の実施の形態例にかかる変位検出装置における第1の回折格子と第2の回折格子の入射角度及び回折角度の関係を示す説明図である。
この第4の実施の形態例にかかる変位検出装置501が、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と異なる点は、第2の回折格子として反射型の回折格子を用いた点である。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図13に示すように、変位検出装置501は、ヘッド503と、第1の回折格子11が設けられた被測定部材2と、相対位置情報出力手段504とを備えている。ヘッド503は、変位検出部505と、光源6と、変位検出部505に設けられた受光部7とを有している。
また、変位検出部505は、第2の回折格子512と、光束分割部13と、第1の位相板17と、第2の位相板18と、参照用ミラー14と、光束平行分岐部40と、光束結合部50と、を有している。なお、光束分割部13、参照用ミラー14、第1の位相板17、第2の位相板18、光束平行分岐部40及び光束結合部50は、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の構成を有しているため、その説明は省略する。なお、第1の位相板17は、光束平行分岐部40と第2の回折格子512の間に配置される。
第2の回折格子512は、入射した第1の光束L1を反射し、かつ回折する反射型の回折格子である。そして、第2の回折格子512は、第1の回折格子11によって回折された第1の光束L1を、再び光束平行分岐部40を介して第1の回折格子11に向けて反射し、回折する。そのため、第4の実施の形態例にかかる変位検出装置501では、第2の回折格子512が物体光用反射部材としての役割を有している。その結果、物体光用反射部材として新たにミラーやプリズム等を設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。
次に、図14を参照して、第1の回折格子11の回折角度θと、第2の回折格子512への入射角度φ及び回折角度φの関係について説明する。
図14に示すように、第1の回折格子11が第3の方向Zに沿って上方、すなわちヘッドに接近する向きに長さΔZ移動すると、第1の光束L1における第1の回折格子11に入射する位置は、入射点P11から入射点P21に変化する。そのため、第1の光束L1が第1の回折格子11に入射する時点で、第1の光束L1の光路長は、長さΔM短くなる。
また、第1の回折格子11が第3の方向Zに沿って上方、すなわちヘッドに接近する向きに長さΔZ移動すると、第1の光束L1における第2の回折格子512に入射する位置は、入射点Q1から入射点Q2に変化する。そして、第1の回折格子11の入射点P21から光束平行分岐部40を介して第2の回折格子512の入射点Q2までの光路長は、第1の回折格子11が第3の方向Zに移動していない時の第1の回折格子11の入射点P11から光束平行分岐部40を介して第2の回折格子512の入射点Q1までの光路長よりも長さM1だけ長くなる。
そのため、ΔM=M1を満たせば、第1の回折格子11が第3の方向Zに移動しても第1の光束L1の光路長は、一定となる。これにより、第1の回折格子11が第3の方向Zに移動しても第1の光束L1の光路長を一定にすることができる。
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる変位検出装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する変位検出装置501によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
5.第5の実施の形態例
次に、図15及び図16を参照して第5の実施の形態例にかかる変位検出装置について説明する。
図15は、第5の実施の形態例にかかる変位検出装置の構成を示す概略構成図、図16は、第5の実施の形態例にかかる変位検出装置における第1の回折格子と第2の回折格子の入射角度及び回折角度の関係を示す説明図である。
この第5の実施の形態例にかかる変位検出装置601は、第4の実施の形態例にかかる変位検出装置501と同様に、第2の回折格子として反射型の回折格子を用いたものである。そのため、ここでは、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図15に示すように、変位検出装置601は、ヘッド603と、第1の回折格子11が設けられた被測定部材2と、相対位置情報出力手段4とを備えている。ヘッド603は、変位検出部605と、光源6と、変位検出部605に設けられた受光部7とを有している。
また、変位検出部605は、第2の回折格子612と、光束分割部13と、第1の位相板17と、第2の位相板18と、参照用ミラー14と、光束平行分岐部40と、光束結合部50と、物体用ミラー615と、を有している。なお、光束分割部13、参照用ミラー14、第1の位相板17、第2の位相板18、光束平行分岐部40及び光束結合部50は、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の構成を有しているため、その説明は省略する。なお、第1の位相板17は、光束平行分岐部40と第2の回折格子612の間、または第2の回折格子612と物体用ミラー615の間に配置される。
第2の回折格子612は、入射した第1の光束L1を反射し、かつ回折する反射型の回折格子である。そして、第2の回折格子612は、第1の回折格子11によって回折された第1の光束L1を、物体用ミラー615に向けて反射し、回折する。物体用ミラー615は、入射した第1の光束L1を再び第2の回折格子612に向けて反射させる。
この第5の実施の形態例にかかる変位検出装置601では、第4の実施の形態例にかかる変位検出装置501に対して物体用ミラー615が追加されている。しかしながら、物体用ミラー615を設けることで、第1の光束L1の光路長と第2の光束L2の光路長を一致させる作業を容易に行うことができる。
次に、図16を参照して、第1の回折格子11の回折角度θと、第2の回折格子612への入射角度φ1及び回折角度φ2の関係について説明する。
図16に示すように、第1の回折格子11が第3の方向Zに沿って上方、すなわちヘッドに接近する向きに長さΔZ移動すると、第1の光束L1における第1の回折格子11に入射する位置は、入射点P11から入射点P21に変化する。そのため、第1の光束L1が第1の回折格子11に入射する時点で、第1の光束L1の光路長は、長さΔM短くなる。
また、第1の回折格子11が第3の方向Zに沿って上方、すなわちヘッドに接近する向きに長さΔZ移動すると、第1の光束L1における第2の回折格子612に入射する位置は、入射点Q1から入射点Q2に変化する。そして、第1の回折格子11の入射点P21から光束平行分岐部40を介して第2の回折格子612の入射点Q2までの光路長は、第1の回折格子11が第3の方向Zに移動していない時の第1の回折格子11の入射点P11から光束平行分岐部40を介して第2の回折格子612の入射点Q1までの光路長よりも長さM1だけ長くなる。さらに、第2の回折格子612の入射点Q2から物体用ミラー615までの距離は、第1の回折格子11が第3の方向Zに移動していない時の第2の回折格子612の入射点Q1から物体用ミラー615までの光路長よりも長さM2だけ長くなる。
そのため、ΔZ=M1+M2を満たせば、第1の回折格子11が第3の方向Zに移動しても第1の光束L1の光路長は、一定となる。また、ΔZ=M1+M2を満たす条件は、第1の回折格子11の回折角度θと、第2の回折格子612への入射角度φ
1と、第2の回折格子12の回折角度φ
2から下記式13に示す条件となる。
[式13]
したがって、第1の回折格子11の回折角度θと第2の回折格子612の回折角度φ2は、上記式13を満たす値に設定される。これにより、第1の回折格子11が第3の方向Zに移動しても第1の光束L1の光路長を一定にすることができる。また、第2の回折格子612がブラッグ条件を満たす場合、φ1=φ2となり上記式13は、上記式5に変換される。
なお、第4の実施の形態例にかかる第2の回折格子512及び第5の実施の形態例にかかる第2の回折格子612としては、例えば、溝の断面形状を鋸歯状に形成した、いわゆるブレーズド回折格子を用いることが好ましい。これにより、特定の波長に対して回折効率を高めることができる。
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる変位検出装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する変位検出装置601によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
6.第6の実施の形態例
次に、図17を参照して第6の実施の形態例にかかる変位検出装置について説明する。
図17は、第6の実施の形態例にかかる変位検出装置の構成を示す概略構成図である。
この第6の実施の形態例にかかる変位検出装置701は、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1に光路調整部材を設けたものである。そのため、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図17に示すように、変位検出装置701は、ヘッド703と、第1の回折格子11が設けられた被測定部材2と、相対位置情報出力手段704とを備えている。ヘッド703は、変位検出部705と、光源6と、変位検出部705に設けられた受光部7とを有している。
また、変位検出部705は、第2の回折格子12と、光束分割部13と、参照用ミラー14と、物体用ミラー15と、第1の位相板17と、第2の位相板18と、光束平行分岐部40と、光束結合部50と、光路補正部材を示す補正回折格子710と、を備えている。なお、第2の回折格子12、光束分割部13、参照用ミラー14、物体用ミラー15、第1の位相板17、第2の位相板18、光束平行分岐部40及び光束結合部50は、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の構成を有しているため、その説明は省略する。
補正回折格子710は、光束結合部50と、受光部7との間に配置されている。補正回折格子710は、光を透過させ、かつ透過した光を回折させる透過型の回折格子である。補正回折格子710は、光束結合部50を通過し、かつ光束結合部50によって重ね合わされた第1の光束L1と第2の光束L2を回折して受光部7に入射させる。第2の回折格子12は、その平面が第3の方向Zに対して傾斜して配置されている。補正回折格子710の格子ベクトル方向は、第1の方向Xと第3の方向Zで形成される平面上に存在する。
図17に示すように、第1の回折格子11が第2の方向Yを回転軸としてチルトした場合、第1の光束L1における第1の回折格子11で1回目に回折される方向も傾く。そのため、第1の光束L1における光束平行分岐部40を介して第2の回折格子12に入射する位置も変化する。そして、光束平行分岐部40を介して再び第1の回折格子11に入射する位置が、入射点P12から変化する。その結果、第1の光束L1における光束分割部13から光束結合部50までの光路長に変化が発生する。
そして、第1の光束L1の光路長が変化することで、補正回折格子710に入射する位置が変化する。そのため、補正回折格子710は、第1の光束L1を回折させる。このように、第1の光束L1に発生する光路長の変化を補正回折格子710での回折によって補正することができる。
これに対して、第2の光束L2は、第1の回折格子11のチルトの影響を受けることなく、常に一定の光路を辿るため、その光路長は変化しない。そのため、第2の光束L2における補正回折格子710に入射する位置は、変化しない。その結果、補正回折格子710は、第2の光束L2の光路長には影響を及ぼさない。
これにより、第6の実施の形態例にかかる変位検出装置701によれば、第1の回折格子11が設けられた被測定部材2にチルトが発生しても、補正回折格子710によって第1の光束L1の光路長を補正することができる。その結果、被測定部材2がチルトしても、高精度な測定を行うことができる。
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる変位検出装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する変位検出装置701によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
7.第7の実施の形態例
次に、図18を参照して第7の実施の形態例にかかる変位検出装置について説明する。
図18は、第7の実施の形態例にかかる変位検出装置の構成を示す概略構成図である。
この第7の実施の形態例にかかる変位検出装置801は、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1にアイソレータを設けたものである。そのため、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図18に示すように、変位検出装置801は、ヘッド803と、第1の回折格子11が設けられた被測定部材2と、相対位置情報出力手段4とを備えている。ヘッド803は、変位検出部805と、光源6と、変位検出部805に設けられた受光部7と、を有している。
変位検出部805には、アイソレータ811が設けられている。なお、変位検出部805のその他の構成は、第1の実施の形態例にかかる変位検出部5と同様であるため、その説明は省略する。
アイソレータ811は、光源6と光束分割部13との間において、レンズ16と光束分割部13の間に配置されている。アイソレータ811は、光を一方向だけ通過させ、逆方向には光を遮断する光学素子である。光源6から出射された光Lが直線偏光である場合、アイソレータ811によって直線偏光の向きが変わる。そして、アイソレータ811によって向きが変わった光Lは、光束分割部13により1:1で分配されることが好ましい。
これにより、第1の回折格子11によって回折された回折光のうち0次光が光源6に戻ることをアイソレータ811により抑制することができる。その結果、光源6の不要光によるモードホップ、いわゆる波長の飛びが発生することを軽減することができる。
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる変位検出装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する変位検出装置801によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。上述した実施の形態例では、光源から照射される光は、気体中だけでなく、液体中又は真空中の空間を飛ばして光を供給するようにしてもよい。
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。