JP6083505B2 - リチウム二次電池用正極活物質、その正極活物質の製造方法、リチウム二次電池用電極、及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
また、特許文献3には、「好ましい焼成温度は、活物質の酸素放出温度により異なるから、一概に焼成温度の好ましい範囲を設定することは難しいが、好ましくは900から1100℃、より好ましくは950から1050℃であれば高い特性を発揮することができる。」(段落[0078])と記載され、実施例として、共沈水酸化物前駆体を原料として1000℃で焼成した活物質が示されている。
また、特許文献4には、実施例として、炭酸ナトリウムを用いてpH8.6〜11.0で中和し、100℃で乾燥して得た共沈炭酸塩前駆体を原料として850〜1000℃で焼成した活物質が示されている。
Li[Liz/(2+z){(LixNi(1-3x)/2Mn(1+x)/2)(1-y)Coy}2/(2+z)]O2…(I)
(ただし、 0.01≦x≦0.15
0≦y≦0.35
0.02(1−y)(1−3x)≦z≦0.15(1−y)(1−3x))」(請求項1)の発明が記載され、また、前記リチウム二次電池正極材料用リチウムニッケルマンガン系複合酸化物粉体は、その格子定数が2.855Å≦a≦2.870Å、14.235Å≦c≦14.265Åの範囲にあること(請求項4)が記載され、「本発明は、リチウム二次電池正極材料としての使用において、低コスト化、耐高電圧化及び高安全化と電池性能向上との両立が可能なリチウム二次電池正極材料用リチウムニッケルマンガン系複合酸化物粉体及びその製造方法と、このリチウムニッケルマンガン系複合酸化物粉体を用いたリチウム二次電池用正極、並びにこのリチウム二次電池用正極を備えるリチウム二次電池を提供することを目的とする。」(段落[0012])と記載されている。
(1)一般式Li 1+α (Co a Ni b Mn c ) 1−α O 2 、但し、1<(1+α)/(1−α)≦1.5、a+b+c=1、a>0、b>0、c>0で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含有するリチウム二次電池用正極活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、これを正極活物質として用いて作製したリチウム二次電池について正極電位が4.5V(vs.Li/Li + )以上に至る充電と放電とからなる初期充放電工程を行った後の4.3V(vs.Li/Li+)での充電状態にて、空間群R3−mを適用したときの格子定数a、cの比率(c/a)が5.063以上5.113以下であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。
(2)前記リチウム遷移金属複合酸化物は、これを正極活物質として用いて作製したリチウム二次電池について正極電位が4.5V(vs.Li/Li + )以上に至る充電と放電とからなる初期充放電工程を行った後の4.3V(vs.Li/Li+)での充電状態にて、空間群R3−mを適用したときの格子定数a、cの比率(c/a)が5.075以上であることを特徴とする前記(1)のリチウム二次電池用正極活物質。
(3)前記(1)又は(2)のリチウム二次電池用活物質の製造方法であって、溶液中でCo、Ni及びMnを含む遷移金属元素Meの化合物を共沈させて遷移金属水酸化物の共沈前駆体を得る工程、前記共沈前駆体を乾燥する工程、及び、前記共沈前駆体とリチウム化合物とを、前記リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属元素Meに対するLiのモル比が1<(1+α)/(1−α)≦1.5となるように混合し、700〜800℃で焼成する工程を含むことを特徴とするリチウム二次電池用活物質の製造方法。
(4)前記(1)又は(2)のリチウム二次電池用活物質の製造方法であって、溶液中でCo、Ni及びMnを含む遷移金属元素Meの化合物を共沈させて遷移金属炭酸塩の共沈前駆体を得る工程、前記共沈前駆体を乾燥する工程、及び、前記共沈前駆体とリチウム化合物とを、前記リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属元素Meに対するLiのモル比が1<(1+α)/(1−α)≦1.5となるように混合し、800〜900℃で焼成する工程を含むことを特徴とするリチウム二次電池用活物質の製造方法。
(5)前記(1)又は(2)のリチウム二次電池用正極活物質を含有するリチウム二次電池用電極。
(6)前記(5)のリチウム二次電池用電極を備えたリチウム二次電池。
ここで、「正極電位が4.5V(vs.Li/Li + )以上に至る充電と放電とからなる初期充放電工程を行った後の4.3V(vs.Li/Li+)での充電状態」とは、正極電位が4.5V(vs.Li/Li+)以上に至る充電、例えば4.6V(vs.Li/Li+)に至る充電と放電とからなる化成(初期充放電工程)を行った後、さらに4.3V(vs.Li/Li+)での充電を行った状態を意味する。
本発明においては、過充電化成後の4.3V充電状態(及び2V放電状態)に着目し、「立方晶への近づきの度合い」をパラメータとして特性を比較した。その結果、「立方晶への近づきの度合い」である格子定数a、cの比率(c/a)がある臨界値をとることで、優れた効果を得られることがわかった。具体的には、六方晶における格子定数a,cの比率(c/a)が2√6(≒4.90)の値をとるときに六方晶は立方晶へと変化したことを意味する。この値に近づくほど「立方晶への近づきの度合い」が大きい、とみなすことができる。
また、タップ密度は、高率放電性能が優れたリチウム二次電池を得るために、1.25g/cc以上が好ましく、1.7g/cc以上がより好ましい。
本発明のリチウム二次電池用活物質は、基本的に、活物質を構成する金属元素(Li,Mn,Co,Ni)を目的とする活物質(酸化物)の組成通りに含有する原料を調整し、これを焼成することによって得ることができる。但し、Li原料の量については、焼成中にLi原料の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
目的とする組成の酸化物を作製するにあたり、Li,Co,Ni,Mnのそれぞれの塩を混合・焼成するいわゆる「固相法」や、あらかじめCo,Ni,Mnを一粒子中に存在させた共沈前駆体を作製しておき、これにLi塩を混合・焼成する「共沈法」が知られている。「固相法」による合成過程では、特にMnはCo,Niに対して均一に固溶しにくいため、各元素が一粒子中に均一に分布した試料を得ることは困難である。これまで文献などにおいては固相法によってNiやCoの一部にMnを固溶(LiNi1−xMnxO2など)しようという試みが多数なされているが、「共沈法」を選択する方が原子レベルで均一相を得ることが容易である。そこで、後述する実施例においては、「共沈法」を採用した。
100℃乾燥品の色相は、標準色F05−20Bと比べて、赤色方向に標準色F05−40Dに至る範囲内にあり、また、標準色FN−10と比べて、白色方向に標準色FN−25に至る範囲内にあることがわかった。中でも、標準色F05−20Bが呈する色相との色差が最も小さいものと認められた。
一方、80℃乾燥品の色相は、標準色F19−50Fと比べて、白色方向に標準色F19−70Fに至る範囲内にあり、また、標準色F09−80Dと比べて、黒色方向に標準色F09−60Hに至る範囲内にあることがわかった。中でも、標準色F19−50Fが呈する色相との色差が最も小さいものと認められた。
以上の知見から、炭酸塩前駆体の色相は、標準色F05−20Bに比べて、dL,da及びdbの全てにおいて+方向であるものが好ましく、dLが+5以上、daが+2以上、dbが+5以上であることがより好ましいといえる。
焼成温度が高すぎると、得られた活物質が酸素放出反応を伴って崩壊すると共に、主相の六方晶に加えて単斜晶のLi[Li1/3Mn2/3]O2型に規定される相が、固溶相としてではなく、分相して観察される傾向がある。このような分相が多く含まれすぎると、活物質の可逆容量の減少を導くので好ましくない。このような材料では、X線回折図上35°付近及び45°付近に不純物ピークが観察される。従って、焼成温度は、活物質の酸素放出反応の影響する温度未満とすることが好ましい。活物質の酸素放出温度は、本発明に係る組成範囲においては、概ね1000℃以上であるが、活物質の組成によって酸素放出温度に若干の差があるので、あらかじめ活物質の酸素放出温度を確認しておくことが好ましい。特に試料に含まれるCo量が多いほど前駆体の酸素放出温度は低温側にシフトすることが確認されているので注意が必要である。活物質の酸素放出温度を確認する方法としては、焼成反応過程をシミュレートするために、共沈前駆体とリチウム化合物を混合したものを熱重量分析(DTA−TG測定)に供してもよいが、この方法では測定機器の試料室に用いている白金が揮発したLi成分により腐食されて機器を痛めるおそれがあるので、あらかじめ500℃程度の焼成温度を採用してある程度結晶化を進行させた組成物を熱重量分析に供するのが良い。
本発明者らは、本発明活物質の回折ピークの半値幅を詳細に解析することにより、前駆体が共沈水酸化物である場合においては、焼成温度が650℃未満の温度で合成した試料においては格子内にひずみが残存しており、650℃以上の温度で合成することで顕著にひずみを除去することができること、及び、前駆体が共沈炭酸塩である場合においては、焼成温度が750℃未満の温度で合成した試料においては格子内にひずみが残存しており、750℃以上の温度で合成することで顕著にひずみを除去することができることを確認した。また、結晶子のサイズは合成温度が上昇するに比例して大きくなるものであった。よって、本発明活物質の組成においても、系内に格子のひずみがほとんどなく、かつ結晶子サイズが十分成長した粒子を志向することで良好な放電容量を得られるものであった。具体的には、格子定数に及ぼすひずみ量が2%以下、かつ結晶子サイズが50nm以上に成長しているような合成温度(焼成温度)及びLi/Me比組成を採用することが好ましいことがわかった。これらを電極として成型して充放電をおこなうことで膨張収縮による変化も見られるが、充放電過程においても結晶子サイズは30nm以上を保っていることが得られる効果として好ましい。
したがって、放電容量、充放電サイクル性能、高率放電性能を向上させるために、1<モル比Li/Me≦1.5の本発明に係るリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質とする場合、焼成温度は700〜900℃とすることが好ましい。共沈水酸化物前駆体から得られたリチウム遷移金属複合酸化物の場合は、700〜800℃で焼成することがより好ましく、共沈炭酸塩前駆体から得られたリチウム遷移金属複合酸化物の場合は、800〜900℃で焼成することがより好ましい。
本願明細書に記載した合成条件及び合成手順を採用することにより、上記のような高性能の正極活物質を得ることができる。
硫酸コバルト7水和物14.08g、硫酸ニッケル6水和物21.00g及び硫酸マンガン5水和物65.27gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mlに溶解させ、Co:Ni:Mnのモル比が12.50:19.94:67.56となる2.0Mの硫酸塩水溶液を作製した。一方、2Lの反応槽に750mlのイオン交換水を注ぎ、Arガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中の溶存酸素を脱気した。反応槽の温度を50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたパドル翼を用いて反応槽内を700rpmの回転速度で攪拌しながら、前記硫酸塩水溶液を3ml/minの速度で滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、1.0Mの水酸化ナトリウム、1.0Mの水酸化カリウム、0.5Mのアンモニアおよび0.05Mのヒドラジン水溶液を含有する水溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に11.0(±0.05)を保つように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに3h継続した。攪拌の停止後、12h以上静置した。
次に、ブフナー漏斗(130mmφ)と吸引ろ過装置を用いて、反応槽内に生成した共沈水酸化物の粒子を分離し、さらにブフナー漏斗にイオン交換水を200ml注ぎ、ガラス棒で撹拌することで共沈化合物を洗浄した。この洗浄作業を5回行うことにより、粒子に付着しているナトリウムイオンを洗浄・除去した。つぎに、電気炉を用いて、空気雰囲気中、常圧下、100℃にて乾燥させた。その後、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、共沈水酸化物前駆体を作製した。
Li/Me(Co,Ni,Mn)のモル比を、1.325、1.35、1.375、1.4、又は1.45に変更(それぞれ、前記共沈水酸化物前駆体1.758gに対して水酸化リチウム一水和物を1.116g、前記共沈水酸化物前駆体1.749gに対して水酸化リチウム一水和物を1.131g、前記共沈水酸化物前駆体1.739gに対して水酸化リチウム一水和物を1.146g、前記共沈水酸化物前駆体1.729gに対して水酸化リチウム一水和物を1.160g、又は前記共沈水酸化物前駆体1.711gに対して水酸化リチウム一水和物を1.189g混合)した他は、実施例1と同様にして、実施例2〜6に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
Li/Me(Co,Ni,Mn)のモル比を1.25に変更(前記共沈水酸化物前駆体1.788gに対して水酸化リチウム一水和物を1.071g混合)し、焼成温度を700℃から800℃に変更した他は、実施例1と同様にして、実施例7に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
焼成温度を700℃から800℃に変更した他は、実施例1〜6と同様にして、それぞれ、実施例8〜13に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈水酸化物前駆体を作製する際のCo:Ni:Mnのモル比を26.5:20.5:53.0に変更(硫酸コバルト7水和物29.85g、硫酸ニッケル6水和物21.59g及び硫酸マンガン5水和物51.20gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mlに溶解させ、2.0Mの硫酸塩水溶液を作製)した他は、実施例1と同様にして、実施例14に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
Li/Me(Co,Ni,Mn)のモル比を1.25に変更(前記共沈水酸化物前駆体1.788gに対して水酸化リチウム一水和物を1.071g混合)した他は、実施例1と同様にして、比較例1に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
焼成温度を700℃から1000℃に変更した他は、実施例1と同様にして、比較例2に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
焼成温度を700℃から600℃に変更した他は、実施例1〜6と同様にして、それぞれ、比較例3〜8に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈水酸化物前駆体を作製する際の反応槽中のpH(中和pH)を11.0から10.5に変更した他は、実施例1と同様にして、比較例9に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈水酸化物前駆体を作製する際のCo/Me:Ni/Me:Mn/Meのモル比を33:33:33に変更して共沈水酸化物前駆体を作製したこと、共沈水酸化物前駆体に水酸化リチウムを加え、Li/Me(Co,Ni,Mn)のモル比が1:1である混合粉体を調製した他は、実施例1と同様にして、比較例10に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li(Co1/3Ni1/3Mn1/3)O2を作製した。
組成をLi(Co1/3Ni1/3Mn1/3)O2の代わりに、Li(Co1/5Ni2/5Mn2/5)O2に変更した他は、比較例10と同様にして、比較例11に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
組成をLi(Co1/3Ni1/3Mn1/3)O2の代わりに、Li(Co1/10Ni9/20Mn9/20)O2に変更した他は、比較例10と同様にして、比較例12に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
硫酸コバルト7水和物14.06g、硫酸ニッケル6水和物20.97g及び硫酸マンガン5水和物65.15gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mlに溶解させ、Co;Ni:Mnのモル比が0.125:0.199:0.676となる2Mの硫酸塩水溶液を作製した。一方、2dm3の反応槽に750mlのイオン交換水を注ぎ、CO2ガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中にCO2を溶解させた。反応槽の温度を50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたパドル翼を用いて反応槽内を700rpmの回転速度で攪拌しながら、前記硫酸塩水溶液を3ml/minの速度で滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、1.00Mの炭酸ナトリウム、1.00Mの炭酸カリウム及び0.40Mのアンモニアを含有する水溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に7.9(±0.05)を保つように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに3h継続した。攪拌の停止後、12h以上静置した。静置することにより、反応槽内に生成する共沈炭酸塩の粒子を十分に成長させることができる。 次に、吸引ろ過装置を用いて、反応槽内に生成した共沈炭酸塩の粒子を分離し、さらにイオン交換水を用いて200mlによる洗浄を1回としたときに、5回の洗浄を行う条件で粒子に付着しているナトリウムイオンを洗浄除去し、電気炉を用いて、空気雰囲気中、常圧下、80℃にて20時間乾燥させた。その後、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、共沈炭酸塩前駆体を作製した。
得られた共沈炭酸前駆体について、コニカミノルタ社製カラーリーダーCR10を用いて色相の測定を行ったところ、JIS Z 8721に準拠した日本塗料工業会が発行する塗料用標準色(JPMA Standard Paint Colors)2011年度F版の標準色F05−20Bに対してdL=+8、da=+4、db=+8であった。
前記共沈炭酸塩前駆体を作製する際に、前記硫酸塩水溶液の滴下の開始から終了までの間、1.00Mの炭酸ナトリウム、1.00Mの炭酸カリウム及び0.40Mのアンモニアを含有する水溶液を滴下して中和する代わりに、2.00Mの炭酸ナトリウム及び0.40Mのアンモニアを含有する水溶液を滴下して中和した他は、実施例15と同様にして、実施例16に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体を作製する際の反応槽中のpH(中和pH)を7.9から、それぞれ、8.5、8.6、又は9.5に変更した他は、実施例15と同様にして、それぞれ、実施例17〜19に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体を作製する際のCo:Ni:Mnのモル比を26.5:20.5:53.0に変更(硫酸コバルト7水和物29.85g、硫酸ニッケル6水和物21.59g及び硫酸マンガン5水和物51.20gを秤量し、これらの全量をイオン交換水200mlに溶解させ、2.0Mの硫酸塩水溶液を作製)した他は、実施例15と同様にして、実施例20に係るリチウム遷移金属複合酸化物Li1.13Co0.23Ni0.18Mn0.46O2を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体2.253gに、炭酸リチウム0.996gを加え、よく混合し、Li:(Co,Ni,Mn)のモル比が1.35:1.00である混合粉体を調製し、この混合粉体を成型したペレットの焼成温度を900℃から800℃に変更した他は、実施例15と同様にして、実施例21に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体2.228gに、炭酸リチウム1.022gを加え、よく混合し、Li:(Co,Ni,Mn)のモル比が1.40:1.00である混合粉体を調製し、この混合粉体を成型したペレットの焼成温度を900℃から800℃に変更した他は、実施例15と同様にして、実施例22に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体2.204gに、炭酸リチウム1.047gを加え、よく混合し、Li:(Co,Ni,Mn)のモル比が1.45:1.00である混合粉体を調製し、この混合粉体を成型したペレットの焼成温度を900℃から800℃に変更した他は、実施例15と同様にして、実施例23に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体を作製する際の乾燥温度を80℃から100℃に変更した他は、実施例15と同様にして、比較例13に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
前記共沈炭酸塩前駆体を作製する際の反応槽中のpH(中和pH)を7.9から8.6に変更し、乾燥温度を80℃から100℃に変更した他は、実施例15と同様にして、比較例14に係るリチウム遷移金属複合酸化物を作製した。
実施例15に係るリチウム遷移金属複合酸化物について、エックス線回折装置(Rigaku社製、型名:MiniFlex II)を用いて粉末エックス線回折測定を行った。線源はCuKα、加速電圧及び電流はそれぞれ30kV及び15mAとした。得られたエックス線回折データについて、前記エックス線回折装置の付属ソフトである「PDXL」を用いて、エックス線回折図上2θ=18.6°±1°及び2θ=44.1°±1°に存在する回折ピークについて半値幅を決定した。その結果、2θ=18.6°±1°における回折ピークについては0.224°、2θ=44.1°±1°における回折ピークについては0.278°であった。
上記実施例及び比較例に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、次の条件及び手順に沿って粒度分布の測定を行った。測定装置には日機装社製Microtrac(型番:MT3000)を用いた。前記測定装置は、光学台、試料供給部及び制御ソフトを搭載したコンピューターを備えており、光学台にはレーザー光透過窓を有する湿式セルが設置される。測定原理は、測定対象試料が分散溶媒中に分散している分散液が循環している湿式セルにレーザー光を照射し、測定試料からの散乱光分布を粒度分布に変換する方式である。前記分散液は試料供給部に蓄えられ、ポンプによって湿式セルに循環供給される。前記試料供給部は、常に超音波振動が加えられている。今回の測定では、分散溶媒として水を用いた。又、測定制御ソフトにはMicrotrac DHS for Win98(MT3000)を使用した。前記測定装置に設定入力する「物質情報」については、溶媒の「屈折率」として1.33を設定し、「透明度」として「透過(TRANSPARENT)」を選択し、「球形粒子」として「非球形」を選択した。試料の測定に先立ち、「Set Zero」操作を行う。「Set zero」操作は、粒子からの散乱光以外の外乱要素(ガラス、ガラス壁面の汚れ、ガラス凹凸など)が後の測定に与える影響を差し引くための操作であり、試料供給部に分散溶媒である水のみを入れ、湿式セルに分散溶媒である水のみが循環している状態でバックグラウンド操作を行い、バックグラウンドデータをコンピューターに記憶させる。続いて「Sample LD (Sample Loading)」操作を行う。Sample LD操作は、測定時に湿式セルに循環供給される分散液中の試料濃度を最適化するための操作であり、測定制御ソフトの指示に従って試料供給部に測定対象試料を手動で最適量に達するまで投入する操作である。続いて、「測定」ボタンを押すことで測定操作が行われる。前記測定操作を2回繰り返し、その平均値として測定結果がコンピューターから出力される。測定結果は、粒度分布ヒストグラム、並びに、D10、D50及びD90の各値(D10、D50及びD90は、二次粒子の粒度分布における累積体積がそれぞれ10%、50%及び90%となる粒度)として取得される。
実施例1〜14及び比較例1〜9に係るリチウム遷移金属複合酸化物の測定されたD50の値は4μmであった。
実施例15〜23及び比較例13、14に係るリチウム遷移金属複合酸化物の測定されたD50の値は8μmであった。
実施例15に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、ユアサアイオニクス社製比表面積測定装置(商品名:MONOSORB)を用いて、一点法により、活物質に対する窒素吸着量[m2]を求めた。得られた吸着量(m2)を活物質質量(g)で除した値をBET比表面積とした。測定に当たって、液体窒素を用いた冷却によるガス吸着を行った。また、冷却前に120℃15minの予備加熱を行った。また、測定試料の投入量は、0.5g±0.01gとした。
測定された比表面積の値は、4.2m2/gであった。
実施例15に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、REI ELECTRIC CO.LTD.社製のタッピング装置(1968年製)を用いて、300回カウント後の活物質の体積を質量で除した値をタップ密度とした。測定においては、10−2dm3のメスシリンダーに活物質を2g±0.2g投入することで行った。
測定されたタップ密度の値は、1.82g/ccであった。
実施例15に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、次の条件及び手順に沿って細孔容積分布測定を行った。細孔容積分布の測定には、Quantachrome社製の「autosorb iQ」及び制御・解析ソフト「ASiQwin」を用いた。測定対象の試料であるリチウム遷移金属複合酸化物1.00gを測定用のサンプル管に入れ、120℃にて12h真空乾燥することで、測定試料中の水分を十分に除去した。次に、液体窒素を用いた窒素ガス吸着法により、相対圧力P/P0(P0=約770mmHg)が0から1の範囲内で吸着側および脱離側の等温線を測定した。そして、脱離側の等温線を用いてBJH法により計算することにより細孔分布を評価した。
測定された細孔容積分布の結果は、30〜40nmの細孔径におけるピーク微分細孔容積が1.39mm3/(g・nm)であった。
実施例1〜21及び比較例1〜14に係るリチウム遷移金属複合酸化物をそれぞれリチウム二次電池用正極活物質として用いて、以下の手順でリチウム二次電池を作製し、電池特性を評価した。
前記初期充放電工程を行った後の電池は、さらに電流0.1CmA、電圧4.3Vの定電流定電圧充電を行った後、ドライルーム内で電池外装体から正極板を取り出した。取り出した正極板は、洗浄等の操作を行わず、合剤が集電体に接着した状態のままエックス線回折測定を行った。金属箔集電体として用いたアルミニウムに起因するピークを除くすべての回折線についてリートベルト法による結晶構造解析を実施した。リートベルト解析に使うプログラムはRIETAN-2000(Izumi et al., Mat. Sci. Forum, 321-324, 198 (2000))を用いた。解析に使用したプロファイル関数は、TCHの擬フォークト関数とした。ピーク位置シフトパラメータは格子定数既知のシリコン標準試料(Nist 640c)を用いてあらかじめ精密化を行ったものを用いた。正極活物質の結晶構造モデルを空間群R3−mとし、格子定数を含めた次の結晶パラメータについて精密化した。
・バックグラウンドパラメータ
・酸素位置パラメータz
・ガウス関数の半値幅パラメータ
・ローレンツ関数の半値幅パラメータ
・非対称パラメータ
・選択配向パラメータ
・等方性原子変位パラメータ(但し、Li原子は0.75に固定)
実データは15〜85°(CuKα)の間の回折データを使用して、結晶構造モデルとの差を示すS値が1.3を切る程度にまで精密化を行った。
前述した結晶子サイズや格子のひずみ量はそれぞれ、ガウス関数の半値幅パラメータとローレンツ関数の半値幅パラメータから算出することができる。
また、この解析を通して得た、実施例15における充電末での酸素位置パラメータは0.268であった。
また、同じ電極を用いてもう一つ作製したリチウム二次電池を用いて、充電電圧を変更して、1サイクルの充放電試験を行った。電圧制御は全て正極電位に対して行った。この充放電試験の条件は、前述した初期活性化工程の後に、充電電圧を4.3V(vs.Li/Li+)に変更したことを除いて、前記初期充放電工程の条件と同一である。このときに得られた放電電気量を「放電容量(0.1C)mAh/g」として記録した。
続いて、充放電サイクル試験を行った。電圧制御は、全て、正極電位に対して行った。充放電サイクル試験の条件は、前述した初期活性化工程の後に、充電電圧を4.3V(vs.Li/Li+)に変更したことを除いては、前記初期充放電工程の条件と同一である。全てのサイクルにおいて、充電後及び放電後に、30分の休止時間を設定した。この充放電サイクル試験における1サイクル目の放電電気量及び30サイクル目の放電電気量を「放電容量(mAh/g)」として、1サイクル目の放電電気量に対する30サイクル目の放電電気量の比率を「サイクル容量維持率(%)」として記録した。
また、同様の共沈水酸化物前駆体から得られたリチウム遷移金属複合酸化物であっても、 いわゆる「リチウム過剰型」ではない、いわゆる「LiMeO2型」のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質としたリチウム二次電池では、比較例10〜12に示されるように、いずれもc/aが5.113を超え、サイクル容量維持率は高いものの、放電容量が極めて小さくなる。
共沈炭酸塩前駆体から得られたリチウム遷移金属複合酸化物については、共沈炭酸塩前駆体を作製する際の乾燥温度が100℃と高い場合、比較例13及び14に示されるように、c/aが5.113を超え、放電容量が小さくなる。
Claims (6)
- 一般式Li 1+α (Co a Ni b Mn c ) 1−α O 2 、但し、1<(1+α)/(1−α)≦1.5、a+b+c=1、a>0、b>0、c>0で表わされるリチウム遷移金属複合酸化物を含有するリチウム二次電池用正極活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、これを正極活物質として用いて作製したリチウム二次電池について正極電位が4.5V(vs.Li/Li + )以上に至る充電と放電とからなる初期充放電工程を行った後の4.3V(vs.Li/Li+)での充電状態にて、空間群R3−mを適用したときの格子定数a、cの比率(c/a)が5.063以上5.113以下であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。
- 前記リチウム遷移金属複合酸化物は、これを正極活物質として用いて作製したリチウム二次電池について正極電位が4.5V(vs.Li/Li + )以上に至る充電と放電とからなる初期充放電工程を行った後の4.3V(vs.Li/Li+)での充電状態にて、空間群R3−mを適用したときの格子定数a、cの比率(c/a)が5.075以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
- 請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用活物質の製造方法であって、溶液中でCo、Ni及びMnを含む遷移金属元素Meの化合物を共沈させて遷移金属水酸化物の共沈前駆体を得る工程、前記共沈前駆体を乾燥する工程、及び、前記共沈前駆体とリチウム化合物とを、前記リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属元素Meに対するLiのモル比が1<(1+α)/(1−α)≦1.5となるように混合し、700〜800℃で焼成する工程を含むことを特徴とするリチウム二次電池用活物質の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用活物質の製造方法であって、溶液中でCo、Ni及びMnを含む遷移金属元素Meの化合物を共沈させて遷移金属炭酸塩の共沈前駆体を得る工程、前記共沈前駆体を乾燥する工程、及び、前記共沈前駆体とリチウム化合物とを、前記リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属元素Meに対するLiのモル比が1<(1+α)/(1−α)≦1.5となるように混合し、800〜900℃で焼成する工程を含むことを特徴とするリチウム二次電池用活物質の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含有するリチウム二次電池用電極。
- 請求項5に記載のリチウム二次電池用電極を備えたリチウム二次電池。
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