JP4595320B2 - 露光装置、及びデバイス製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、投影光学系と基板との間の少なくとも一部を液体で満たした状態で投影光学系によって投影したパターン像で露光する露光装置、及びデバイス製造方法に関するものである。
半導体デバイスや液晶表示デバイスは、マスク上に形成されたパターンを感光性の基板上に転写する、いわゆるフォトリソグラフィの手法により製造される。このフォトリソグラフィ工程で使用される露光装置は、マスクを支持するマスクステージと基板を支持する基板ステージとを有し、マスクステージ及び基板ステージを逐次移動しながらマスクのパターンを投影光学系を介して基板に転写するものである。近年、デバイスパターンのより一層の高集積化に対応するために投影光学系の更なる高解像度化が望まれている。投影光学系の解像度は、使用する露光波長が短くなるほど、また投影光学系の開口数が大きいほど高くなる。そのため、露光装置で使用される露光波長は年々短波長化しており、投影光学系の開口数も増大している。そして、現在主流の露光波長は、KrFエキシマレーザの248nmであるが、更に短波長のArFエキシマレーザの193nmも実用化されつつある。また、露光を行う際には、解像度と同様に焦点深度(DOF)も重要となる。解像度R、及び焦点深度δはそれぞれ以下の式で表される。
R=k・λ/NA … (1)
δ=±k・λ/NA … (2)
ここで、λは露光波長、NAは投影光学系の開口数、k、kはプロセス係数である。(1)式、(2)式より、解像度Rを高めるために、露光波長λを短くして、開口数NAを大きくすると、焦点深度δが狭くなることが分かる。
焦点深度δが狭くなり過ぎると、投影光学系の像面に対して基板表面を合致させることが困難となり、露光動作時のフォーカスマージンが不足する恐れがある。そこで、実質的に露光波長を短くして、且つ焦点深度を広くする方法として、例えば国際公開第99/49504号公報に開示されている液浸法が提案されている。この液浸法は、投影光学系の下面と基板表面との間を水や有機溶媒等の液体で満たし、液体中での露光光の波長が、空気中の1/n(nは液体の屈折率で通常1.2〜1.6程度)になることを利用して解像度を向上するとともに、焦点深度を約n倍に拡大するというものである。
国際公開第99/49504号パンフレット
ところで、投影光学系と基板との間に液体を流しながら露光する場合や、投影光学系と基板との間に液体を満たした状態で投影光学系に対して基板を移動しながら露光する場合、投影光学系や基板に対して液体が剥離する可能性があり、基板に転写されるパターン像が劣化するといった不都合が生じる。あるいは、投影光学系と基板との間で液体を流しながら露光する場合にその液体の流れに乱流が生じた場合もパターン像が劣化する。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、投影光学系と基板との間に液体を満たして露光処理する際、液体を所望の状態に配置して精度良くパターンを転写できる露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は実施の形態に示す図1〜図10に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の第1の態様に従えば、パターンの像を液体(50)を介して基板(P)上に転写して基板を露光する露光装置であって:
前記パターンの像を基板に投影する投影光学系(PL)を備え、
前記投影光学系(PL)の前記液体(50)と接触する部分(60、PK)は、液体(50)との親和性を調整するために表面処理されている露光装置(EX)が提供される。
本発明の露光装置では、液体投影光学系の液体と接触する部分(以下、適宜、「液体接触部分」という)に、液体との親和性を調整するための表面処理が施されているので、投影光学系と基板との間に液体が所望の状態で維持される。例えば、液体接触部分の液体との親和性が低ぎる場合、前記接触する部分と液体とが剥離したり、あるいは気泡が発生するなどの液浸露光に悪影響を及ぼす現象が生じる。一方、液体接触部分の液体との親和性が高すぎる場合、液体が前記接触する部分に対して過剰に濡れ拡がって投影光学系と基板との間から流出する等の不都合が生じる場合がある。これに対して、本発明の露光装置では、投影光学系の液体接触部分の液体との親和性が調整されているために、露光中に基板が露光光に対して静止されている一括露光のみならず、露光中に基板が移動ステージにより移動される走査型露光装置であっても、液浸状態が確実に基板と投影光学系との間に維持される。
本発明の第2の態様に従えば、パターンの像を液体(50)を介して基板(P)上に転写して基板を露光する露光装置であって:
前記パターンの像を基板に投影する投影光学系(PL)を備え;
前記投影光学系(PL)が、その先端の光学素子(60)表面を含む第1表面領域(AR1)と、第1表面領域(AR1)周辺の第2表面領域(AR2)とを有し、第1表面領域(AR1)の液体(50)に対する親和性が、第2表面領域(AR2)の液体(50)に対する親和性よりも高い露光装置(EX)が提供される。
本発明によれば、投影光学系の先端の光学素子を含む第1表面領域の液体に対する親和性を、その周辺の第2表面領域より高くすることで、第1表面領域により露光光の光路上では液体が安定して配置されるとともに、第2表面領域により液体が周囲に濡れ拡がらず外部に流出しない。したがって、露光中に基板が露光光に対して静止されている一括露光のみならず、露光中に基板が露光光に対して移動される走査型露光であっても、液体を露光光の光路上に安定して配置することができる。
本発明の第3の態様に従えば、露光ビーム(EL)でパターンを照明し、パターンの像を液体(50)を介して基板(P)上に転写して基板を露光する露光装置であって:前記パターンの像を基板に投影する投影光学系(PL)と;投影光学系(PL)と基板(P)との間の少なくとも一部を液体(50)で満たす液浸装置(1、2)とを備え;液体(50)の厚さをd、投影光学系(PL)と基板(P)との間における液体(50)の流れの速度をv、液体(50)の密度をρ、液体(50)の粘性係数をμとして、条件式 (v・d・ρ)/μ≦2000 が満足される露光装置(EX)が提供される。
本発明によれば、上記条件式を満足するように、投影光学系(PL)と基板(P)との間の少なくとも一部に液体が維持される条件を設定することにより、液体に乱流が生じない。したがって、液体の乱流に起因して基板に投影されるパターン像が劣化したりするといった不都合を抑えることができる。
本発明の第4の態様に従えば、露光ビーム(EL)でマスク(M)のパターンを照明し、パターンの像を液体(50)を介して基板(P)上に転写して基板を露光する露光装置であって:前記パターンの像を基板に投影する投影光学系(PL)と;投影光学系(PL)と基板(P)との間の少なくとも一部を液体で満たすための液浸装置(1、2)とを備え;液体(50)が基板(P)の走査方向と平行に層流となって流れる露光装置(EX)が提供される。
本発明によれば、液浸状態を種々の方法により制御することにより、露光中に液体が基板の走査方向と平行に層流となって流れるので、基板に投影されるパターン像の劣化を防止することができる。また、液体に接する投影光学系やウエハあるいはウエハを保持する基板ステージ等に不要な振動を発生させることもない。例えば、液浸装置の液体供給(回収)量を制御したり、液浸装置の液体供給ノズルの構造を調整したり、あるいは露光時に基板を移動する場合にはその速度を調整することで、液体の流れを層流化することができる。
本発明の第5の態様に従えば、露光ビーム(EL)でパターンを照明し、パターンの像を液体(50)を介して基板(P)上に転写して基板を露光する露光装置であって:前記パターンの像を基板に投影する投影光学系(PL)と;基板(P)上のみに液体(50)を供給する液浸装置(1、2)と;液浸装置(1、2)を制御する制御装置(CONT)とを備え;該制御装置(CONT)は、基板(P)の露光中に液体(50)の供給が停止されるように液浸装置(1、2)を制御する露光装置(EX)が提供される。
本発明によれば、液浸装置が基板の露光中に液体の供給を行わないように制御されることにより、基板上に塗布された感光剤を傷めることがなく、基板上に形成されるパターンの劣化を防止でき、また、投影光学系と基板との位置関係を安定して所望の状態に維持できる。
本発明の第6の態様に従えば、投影光学系(PL)によるパターンの像を基板(P)上に投影して基板(P)を露光する露光方法において:露光前に、基板(P)の表面を、液体(50)との親和性を調整するために表面処理することと;投影光学系(PL)と基板(P)との間の少なくとも一部を液体(50)で満たすことと;
パターンの像を、液体(50)を介して基板(P)上に投影して基板(P)を露光することとを含む露光方法が提供される。
本発明によれば、液浸露光が行われる前に、基板の表面に、液体との親和性に応じた表面処理を施すことで、基板上に液体を液浸露光に好適な状態で維持できる。例えば、液体との親和性が低すぎる場合、基板の表面に対して液体が剥離したり、あるいは気泡が発生する等の不都合が生じる。一方、液体との親和性が高すぎる場合、液体が基板上で過剰に濡れ拡がるなどの不都合が生じる場合がある。これに対して、本発明の露光方法のように、液体との親和性を考慮して、基板表面に適当な処理を施すことにより、基板上で液体を所望の状態に保持することができ、また基板上の液体の回収及び除去を適切に行うことができる。
本発明によれば、液浸露光において、投影光学系と基板との間において、液体の剥離や気泡の発生、あるいは乱流の発生を抑え、液体を所望の状態で維持できるので、広い焦点深度の下でパターン転写を正確に行うことができる。したがって、本発明はArFなどの短波長光源を用いる露光に極めて有用であり、所望の性能を有する高集積化デバイスを製造することができる。
以下、本発明の露光装置及びデバイス製造方法について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。図1は本発明の露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図1において、露光装置EXは、マスクMを支持するマスクステージMSTと、基板Pを支持する基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板ステージPSTに支持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。
ここで、本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、Z軸方向及びY軸方向に垂直な方向(非走査方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわり方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここでいう「基板」は半導体ウエハ上にレジストを塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
照明光学系ILは、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明するものであり、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、露光光ELによるマスクM上の照明領域をスリット状に設定する可変視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びFレーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においては、ArFエキシマレーザ光を用いる。
マスクステージMSTは、マスクMを支持するものであって、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。マスクステージMSTはリニアモータ等のマスクステージ駆動装置MSTDにより駆動される。マスクステージ駆動装置MSTDは制御装置CONTにより制御される。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置決めを行う。
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、複数の光学素子(レンズ)で構成されており、これら光学素子は金属部材、例えばステンレス(SUS403)で形成された鏡筒PKで支持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、本実施形態の投影光学系PLの基板P側の先端部7には、石英、フッ化カルシウム(蛍石)などのガラス部材から形成された平行平面板(光学素子)60が設けられている。この光学素子60は鏡筒PKに対して着脱(交換)可能に設けられている。投影光学系PLの先端部7は、光学素子60と、これを保持する鏡筒(保持部材)PKの一部により構成されている。
基板ステージPSTは、基板Pを支持するものであって、基板Pを基板ホルダを介して保持するZステージ51と、Zステージ51を支持するXYステージ52と、XYステージ52を支持するベース53とを備えている。基板ステージPSTはリニアモータ等の基板ステージ駆動装置PSTDにより駆動される。基板ステージ駆動装置PSTDは制御装置CONTにより制御される。Zステージ51を駆動することにより、Zステージ51に保持されている基板PのZ軸方向における位置(フォーカス位置)、及びθX、θY方向における位置が制御される。また、XYステージ52を駆動することにより、基板PのXY方向における位置(投影光学系PLの像面と実質的に平行な方向の位置)が制御される。すなわち、Zステージ51は、基板Pのフォーカス位置及び傾斜角を制御して基板Pの表面をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込み、XYステージ52は基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。なお、ZステージとXYステージとを一体的に設けてよいことは言うまでもない。
基板ステージPST(Zステージ51)上には、基板ステージPSTとともに投影光学系PLに対して移動する移動鏡54が設けられている。また、移動鏡54に対向する位置にはレーザ干渉計55が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計55によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計55の計測結果に基づいて基板ステージ駆動装置PSTDを駆動することで基板ステージPSTに支持されている基板Pの位置決めを行う。
本実施形態では、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに、焦点深度を実質的に広くするために、液浸法を適用する。そのため、少なくともマスクMのパターンの像を基板P上に転写している間は、基板Pの表面と投影光学系PLの先端部7との間に所定の液体50が満たされる。上述したように、投影光学系PLの先端部7には光学素子60及び鏡筒PKの一部が配置されており、液体50は光学素子(ガラス部材)60と、鏡筒(金属部材)PKとに接触する。本実施形態において、液体50には純水が用いられる。純水は、ArFエキシマレーザ光のみならず、露光光ELを例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)とした場合、この露光光ELを透過可能である。
露光装置EXは、投影光学系PLの先端部7と基板Pとの間の空間56に所定の液体50を供給する液体供給装置(液浸装置、供給装置)1と、空間56の液体50を回収する液体回収装置(液浸装置、回収装置)2とを備えている。液体供給装置1は、投影光学系PLと基板Pとの間の少なくとも一部に、基板Pの走査方向と平行に液体50を流すものであって、液体50を収容するタンク、加圧ポンプなどを備えている。液体供給装置1には供給管3の一端部が接続され、供給管3の他端部には供給ノズル4が接続されている。液体供給装置1は供給管3及び供給ノズル4を介して空間56に液体50を供給する。
液体回収装置2は、吸引ポンプ、回収した液体50を収容するタンクなどを備えている。液体回収装置2には回収管6の一端部が接続され、回収管6の他端部には回収ノズル5が接続されている。液体回収装置2は回収ノズル5及び回収管6を介して空間56の液体50を回収する。空間56に液体50を満たす際、制御装置CONTは液体供給装置1を駆動し、供給管3及び供給ノズル4を介して空間56に対して単位時間当たり所定量の液体50を供給するとともに、液体回収装置2を駆動し、回収ノズル5及び回収管6を介して単位時間当たり所定量の液体50を空間56より回収する。これにより、投影光学系PLの先端面7と基板Pとの間の空間56に液体50が配置される。
走査露光時には、先端面60Aの直下の矩形の投影領域にマスクMの一部のパターン像が投影され、投影光学系PLに対して、マスクMが−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、XYステージ52を介して基板Pが+X方向(又は−X方向)に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。そして、1つのショット領域への露光終了後に、基板Pのステッピングによって次のショット領域が走査開始位置に移動し、以下、ステップ・アンド・スキャン方式で各ショット領域に対する露光処理が順次行われる。本実施形態では、基板Pの移動方向と平行に基板の移動方向と同一方向に液体50を流すように設定されている。
図2は、投影光学系PLの先端部7と、液体50をX軸方向に供給する供給ノズル4(4A〜4C)と、液体50を回収する回収ノズル5(5A、5B)との位置関係を示す図である。図2において、先端部7(光学素子60の先端面60A)の形状はY軸方向に細長い矩形状となっており、投影光学系PLの先端部7をX軸方向に挟むように、+X方向側に3つの供給ノズル4A〜4Cが配置され、−X方向側に2つの回収ノズル5A、5Bが配置されている。そして、供給ノズル4A〜4Cは供給管3を介して液体供給装置1に接続され、回収ノズル5A、5Bは回収管4を介して液体回収装置2に接続されている。また、供給ノズル4A〜4Cと回収ノズル5A、5Bとを先端部7の中心に対して略180°回転した配置に、供給ノズル8A〜8Cと、回収ノズル9A、9Bとが配置されている。供給ノズル4A〜4Cと回収ノズル9A、9BとはY軸方向に交互に配列され、供給ノズル8A〜8Cと回収ノズル5A、5BとはY軸方向に交互に配列され、供給ノズル8A〜8Cは供給管10を介して液体供給装置1に接続され、回収ノズル9A、9Bは回収管11を介して液体回収装置2に接続されている。ノズルからの液体の供給は、投影光学系PLと基板Pとの間に気体部分が生じないように行う必要がある。
また、図3に示すように、先端部7を挟んでY軸方向両側のそれぞれに供給ノズル31、32及び回収ノズル33、34を設けることもできる。この供給ノズル及び回収ノズルにより、ステップ移動する際の基板Pの非走査方向(Y軸方向)への移動時においても、投影光学系PLと基板Pとの間に液体50を安定して供給することができる。
なお、上述したノズルの形状は特に限定されるものでなく、例えば先端部7の長辺について2対のノズルで液体50の供給又は回収を行うようにしてもよい。なお、この場合には、+X方向、又は−X方向のどちらの方向からも液体50の供給及び回収を行うことができるようにするため、供給ノズルと回収ノズルと上下に並べて配置してもよい。
図4は、投影光学系PLの先端部7近傍の拡大図である。図4において、投影光学系PLの先端部7には、液体50との親和性に応じた表面処理が施されている。先端部7は、走査露光するために基板Pを走査方向(X軸方向)に移動するときに液体50と接触する部分であって、光学素子60の下面60A及び鏡筒PK下面の一部を含む投影光学系PLの下面7A、及びこの下面7Aに接続する鏡筒PKの一部の側面7Bを含む。本実施形態において、液体50は水であるため、先端部7には水との親和性に応じた表面処理が施されている。
投影光学系PLの先端部7において、光学素子60の表面(下面)60A及び鏡筒PKの下面の一部の領域を含む第1表面領域AR1と、この第1表面領域AR1周辺であって鏡筒PKの下面の残りの領域及び鏡筒PKの側面を含む第2表面領域AR2とは、互いに異なる表面処理が施されている。具体的には、第1表面領域AR1の液体(水)50に対する親和性が、第2表面領域AR2の液体(水)50に対する親和性より高くなるように、第1、第2表面領域AR1、AR2のそれぞれに対して表面処理が施されている。ここでは、光学素子60を含む第1表面領域AR1に対しては親液性を付与する親液化処理(親水化処理)、第2表面領域AR2に対しては撥液性を付与する撥液化処理(撥水化処理)が施されている。親液化処理とは液体に対する親和性を高くする処理であり、撥液化処理とは液体に対する親和性を低くする処理である。
表面処理は液体50の極性に応じて行われる。本実施形態において、液体50は極性の大きい水であるため、光学素子60を含む第1表面領域AR1に対する親水化処理として、例えばアルコールなど極性の大きい分子構造の物質で薄膜を形成することで、この第1表面領域AR1に対して親水性を付与する。あるいは、第1表面領域AR1の光学素子60の下面60A及び鏡筒PKに対して、例えば処理ガスとして酸素(O)を用いてプラズマ処理するOプラズマ処理を施すことによって表面に極性の強いO分子が多く集まるため親水性を付与することができる。このように、液体50として水を用いる場合には第1表面領域AR1にOH基など極性の大きい分子構造を持ったものを表面に配置させる処理が望ましい。また、第1表面領域AR1は、ガラス部材である光学素子60と金属部材である鏡筒PKとを含んでいるため、親水化処理する場合、ガラス部材と金属部材とのそれぞれに異なる物質で薄膜を形成するなど、異なる表面処理を行うことができる。もちろん、第1表面領域AR1のガラス部材及び金属部材のそれぞれに対して同じ表面処理を施してもよい。また、薄膜を形成する場合には、塗布や蒸着などの手法を用いることができる。
一方、鏡筒PK表面を含む第2表面領域AR2に対しては撥水化処理が施される。第2表面領域AR2に対する撥水化処理として、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで、この第2表面領域AR2に対して撥水性を付与する。あるいは、処理ガスとして四フッ化炭素(CF)を用いてプラズマ処理するCFプラズマ処理を施すことによって撥水性を付与することができる。第2表面領域AR2に対して薄膜を形成する場合においても、塗布や蒸着などの手法を用いることができる。
また、本実施形態では、基板Pの表面にも、液体50との親和性に合わせて表面処理が施されている。ここでは、基板Pの表面に対して親水化処理が施されている。基板Pに対する親水化処理としては、上述したような例えばアルコールなど極性の大きい分子構造の物質で薄膜を形成することで基板Pの表面に対して親液性を付与する。なお、基板Pの表面をアルコールなどを塗布して表面処理した場合には、露光後であって次の感光材料の塗布の前工程、例えば、ディベロッパ/コーターに基板を搬送する前に、塗膜を洗浄するための洗浄工程を設けることが望ましい。
そして、第1表面領域AR1の液体50に対する親和性を、第2表面領域AR2の液体50に対する親和性よりも高くすることによって、液体50が第1表面領域AR1内で安定して保持される。
ここで、表面処理のための薄膜は、液体50に対して非溶解性の材料により形成される。また、光学素子60に形成される薄膜は、露光光ELの光路上に配置されるものであるため、露光光ELに対して透過性を有する材料で形成され、その膜厚も露光光ELを透過可能な程度に設定される。
次に、上述した露光装置EXを用いてマスクMのパターンを基板Pに露光する際の作用について説明する。
マスクMがマスクステージMSTにロードされるとともに、基板Pが基板ステージPSTにロードされたら、制御装置CONTは液体供給装置1を駆動し、空間56に対する液体供給動作を開始する。液体供給装置1は空間56に対して基板Pの移動方向に沿って液体50を供給する。例えば、矢印Xa(図2参照)で示す走査方向(−X方向)に基板Pを移動させて走査露光を行う場合には、供給管3、供給ノズル4A〜4C、回収管4、及び回収ノズル5A、5Bを用いて、液体供給装置1及び液体回収装置2により液体50の供給及び回収が行われる。すなわち、基板Pが−X方向に移動する際には、供給管3及び供給ノズル4(4A〜4C)を介して液体供給装置1から液体50が投影光学系PLと基板Pとの間に供給されるとともに、回収ノズル5(5A、5B)、及び回収管6を介して液体50が液体回収装置2に回収され、レンズ60と基板Pとの間を満たすように−X方向に液体50が流れる。一方、矢印Xbで示す走査方向(+X方向)に基板Pを移動させて走査露光を行う場合には、供給管10、供給ノズル8A〜8C、回収管11、及び回収ノズル9A、9Bを用いて、液体供給装置1及び液体回収装置2により液体50の供給及び回収が行われる。すなわち、基板Pが+X方向に移動する際には、供給管10及び供給ノズル8(8A〜8C)を介して液体供給装置1から液体50が投影光学系PLと基板Pとの間に供給されるとともに、回収ノズル9(9A、9B)、及び回収管11を介して液体50が液体回収装置2に回収され、レンズ60と基板Pとの間を満たすように+X方向に液体50が流れる。このように、制御装置CONTは、液体供給装置1及び液体回収装置2を用いて基板Pの移動方向に沿って液体50を流す。この場合、例えば液体供給装置1から供給ノズル4を介して供給される液体50は基板Pの−X方向への移動に伴って空間56に引き込まれるようにして流れるので、液体供給装置1の供給エネルギーが小さくても液体50を空間56に容易に供給できる。そして、走査方向に応じて液体50を流す方向を切り替えることにより、+X方向、又は−X方向のどちらの方向に基板Pを走査する場合にも、レンズ60の先端面7と基板Pとの間を液体50で満たすことができ、高い解像度及び広い焦点深度を得ることができる。
このとき、投影光学系PLや基板Pに表面処理が施されていない場合について考える。図5は表面処理が施されていない状態での液体50の流れを示す模式図である。ここでは、投影光学系PL表面や基板P表面は液体50に対して親和性が低いものとする。
図5(a)は基板ステージPSTが停止している状態を示す図である。液体50は供給ノズル4より供給され、回収ノズル5より回収される。このとき、液体50と基板Pとは親和性が低いため、接触角θは大きい。図5(b)は基板Pが基板ステージPSTによりX軸方向に移動を開始した状態を示す図である。液体50は移動する基板Pに引っ張られるようにして変形する。液体50と基板Pとは親和性が低いため、液体50は基板Pの表面から離れやすい。図5(c)は基板ステージPST上の基板Pの移動速度が更に上昇した状態を示す図である。基板Pと液体50との間に剥離領域(気泡)H1が形成され、しかも光学素子60と液体50との間にも剥離領域H2が形成される。この剥離領域H1、H2が露光光ELの光路上に形成されると、マスクMのパターンが基板Pに正確に転写されない。
図6は、図4を用いて説明したように投影光学系Pの先端部7及び基板P表面が表面処理されている状態での液体50の流れを示す模式図である。
図6(a)は基板ステージPSTが停止している状態を示す図である。表面処理を施して液体50と基板Pとの親和性を高めたので、接触角θは小さい。図6(b)は基板Pが基板ステージPSTによりX軸方向に移動を開始した状態を示す図である。液体50と基板Pとの親和性は高いので、基板Pが移動しても液体50は基板Pに過剰に引っ張られない。また、投影光学系PLの第1表面領域AR1の液体50に対する親和性も高いので、第1表面領域AR1と液体50とは剥離しない。このとき、第1表面領域AR1の周辺は、液体50に対する親和性が低い第2表面領域AR2で囲まれているので、空間56の液体50は外部に流出することなく、空間56に安定して配置されている。図6(c)は基板ステージPST上の基板Pの移動速度が更に上昇した状態を示す図である。基板Pの移動速度を上昇しても、投影光学系PL及び基板Pに対して表面処理が施されているので、液体50と投影光学系PL及び基板Pとの間で剥離は生じない。
以上説明したように、液浸法に基づく露光処理において、液体50と接触する部分である投影光学系PLの先端部7や基板Pの表面に、液体50との親和性に応じた表面処理を施すことで、液体50の剥離や気泡の発生等といった不都合の発生を抑え、投影光学系PLと基板Pとの間に液体50を安定して配置できる。したがって、良好なパターン転写精度を維持できる。
なお、液体50との親和性に応じた表面処理は、投影光学系PLの先端部7と基板P表面のどちから一方だけに施すようにしてもよい。
また、上記実施形態において、光学素子60の表面60A及び鏡筒(保持部材)PKの下面一部を第1表面領域AR1とし、この第1表面領域AR1に対して液体50に対する親和性が高くなるように表面処理が施されるように説明した。すなわち、親液化処理領域と撥液化処理領域との境界が鏡筒PK下面にあるように説明したが、この境界は光学素子60表面に設定されていてもよい。すなわち、光学素子60の一部の領域(少なくとも露光光が通過する領域)に親液化処理が施され、残りの領域に撥液化処理が施されるといった構成でもよい。もちろん、親液化処理領域と撥液化処理領域との境界を、光学素子60と鏡筒PKとの境界に一致させてもよい。すなわち、親液化処理を光学素子60のみに対して行う構成でもよい。更には、上記境界は投影光学系PLの下面7Aに設定することに限らず、投影光学系PLの下面7A全部を親液化処理してもよい。
更に、表面処理を行う際、親液性(撥液性)に分布を持たせることも可能である。換言すれば、表面処理する面上の複数の領域についての液体の接触角がそれぞれ異なる値となるように表面処理を行うことができる。あるいは、親液化領域と撥液化領域とを適宜分割して配置するようにしてもよい。
また、表面処理のための薄膜は単層膜であってもよいし複数の層からなる膜であってもよい。また、その形成材料も、金属、金属化合物、及び有機物など、所望の性能を発揮できる材料であれば任意の材料を用いることができる。
また、光学素子60や基板Pの表面処理には薄膜形成やプラズマ処理等が有効であるが、金属部材である鏡筒PKの表面処理に関しては、例えばこの鏡筒PKの表面を粗面処理するなど物理的手法で液体に対する親和性を調整できる。
なお、上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間における液体の安定した保持を重視して基板P表面を親液化(親液処理)しているが、基板P表面からの液体の回収や除去を重視する場合には、基板P表面を撥液化(撥液処理)してもよい。
また上述の実施形態においては、液体50との親和性に応じた表面処理を、投影光学系PLの先端部7および基板Pの表面に施すようにしているが、投影光学系PLの先端部7と基板P表面の少なくとも一方との親和性に応じた液体を液体供給装置1から供給するようにしてもよい。
上述したように、本実施形態における液体50は純水により構成されている。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44〜1.47程度と言われており、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち131〜134nm程度に短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち1.44〜1.47倍程度に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
本実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子60として平行平面板が取り付けられているが、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整に用いる光学プレートであってもよしレンズであってもよい。一方、液体50と接触する光学素子を、レンズより安価な平行平面板とすることにより、露光装置EXの運搬、組立、調整時等において投影光学系PLの透過率、基板P上での露光光ELの照度、及び照度分布の均一性を低下させる物質(例えばシリコン系有機物等)がその平行平面板に付着しても、液体50を供給する直前にその平行平面板を交換するだけでよく、液体50と接触する光学素子をレンズとする場合に比べてその交換コストが低くなるという利点がある。すなわち、露光光ELの照射によりレジストから発生する飛散粒子、または液体50中の不純物の付着などに起因して液体50に接触する光学素子の表面が汚れるため、その光学素子を定期的に交換する必要があるが、この光学素子を安価な平行平面板とすることにより、レンズに比べて交換部品のコストが低く、且つ交換に要する時間を短くすることができ、メンテナンスコスト(ランニングコスト)の上昇やスループットの低下を抑えることができる。
また、液体50の流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、本実施形態の液体50は水であるが、水以外の液体であってもよい、例えば、露光光ELの光源がFレーザである場合、このFレーザ光は水を透過しないので、液体50としてはFレーザ光を透過可能な例えばフッ素系オイル(フッ素系の液体)や過フッ化ポリエーテル(PFPE)であってもよい。この場合、投影光学系PLの液体50と接触する部分や基板P表面には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。また、液体50としては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。この場合も表面処理は用いる液体50の極性に応じて行われる。
次に、本発明の第2実施形態について図7を参照しながら説明する。
本実施形態の露光装置EXでは、投影光学系PLの下面7Aと基板P表面との間における液体50の厚さ(ここでは、投影光学系PLと基板Pとの間隔)をd、投影光学系PLと基板Pとの間における液体50の流れの速度をv、液体50の密度をρ、液体50の粘性係数をμとした場合、条件式
(v・d・ρ)/μ≦2000 …(3)
を満足するように設定されている。これにより、空間56において液体50は層流となって流れる。なお、液体50中においては、その液体中の位置に応じて異なる複数の流れの速度vが存在することも考えられるが、その最大速度Vmaxが上記(3)式を満たせばよい。
上記条件式(3)を満足するように、制御装置CONTは、液体供給装置1による空間56に対する液体の単位時間当たりの供給量と、液体回収装置2による空間56の液体の単位時間当たりの回収量とのうち少なくともいずれか一方を調整する。これにより、空間56を流れる液体50の速度vが決定され、条件式(3)を満足することができる。条件式(3)を満足することで液体50は空間56を層流となって流れる。
あるいは、制御装置CONTは、基板ステージPSTを介して基板Pの走査方向への移動速度を調整することによっても、条件式(3)を満足することができる。すなわち、空間56を流れる液体50の速度vは基板Pの移動速度で決定されることもある。すなわち、基板P上の液体50が基板Pの移動によって基板Pに引きずられるようにして流れる可能性もある。その場合は、基板Pの移動速度を調整することで条件式(3)を満足することができる。例えば、基板Pと液体50とがほぼ同じ速度で投影光学系PLに対して流れる場合には、基板Pの移動速度を液体50の速度vとして、条件式(3)を満足するようにすればよい。この場合においても、液体50は空間56を層流となって流れる。またその場合には、基板Pの露光中に、必ずしも液体供給装置1および液体回収装置2を動作させる必要がなく、基板Pの移動速度の調整のみで液体50の流れを層流化することができる。
なお、上記条件式(3)を満足させるために、液体50の厚さ(すなわち投影光学系PLと基板Pとの間の距離)dを露光装置の設計値として予め設定し、これに基づいて速度vを決定してもよいし、速度vを設計値として予め設定し、これに基づいて厚さ(距離)dを決定するようにしてもよい。
また、空間56において液体50が層流となって流れるようにするために、例えば図8(a)に示すように、液体供給装置1に接続する供給ノズル4の開口部にスリットを設けたり、図8(b)に示すように、供給ノズル4の開口部に多孔質体を設けることで液体50を整流し層流状態で流すことができる。
そして、液体50が層流となって流れることにより、圧力の変動による屈折率変化や振動といった不都合が抑制され、良好なパターン転写精度を維持できる。更に、投影光学系PLのうち液体50と接触する部分や基板P表面に表面処理を施すとともに、露光装置EXを上記条件式(3)を満足するように設定して露光処理することで、空間56の液体50はパターン転写精度に影響を与えないより一層良好な状態に設定される。
上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間を局所的に液体で満たす露光装置を採用しているが、露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる液浸露光装置や、ステージ上に所定深さの液体槽を形成しその中に基板を保持する液浸露光装置にも本発明を適用可能である。露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる液浸露光装置の構造及び露光動作については、例えば特開平6−124873号公報に、ステージ上に所定深さの液体槽を形成しその中に基板を保持する液浸露光装置の構造及び露光動作については、例えば特開平10−303114号公報や米国特許第5,825,043号にそれぞれ開示されている。
なお、上記実施形態においては、液体供給装置1及び液体回収装置2により前記基板Pの露光中にも液体50の供給及び回収を継続していたが、基板Pの露光中は液体供給装置1及び液体回収装置2による液体50の供給及び回収を停止するようにしてもよい。すなわち、基板Pの露光開始前に、投影光学系PLの先端部7と基板Pとの間に、投影光学系PLのワーキングディスタンス以下(0.5〜1.0mm程度)の厚さの液浸部分ができる程度に、あるいは、基板Pの全面に薄い液膜ができる程度に、少量の液体50を液体供給装置1により基板P上に供給し、その液体50を介して投影光学系PLの先端部7と基板Pとを密着する。投影光学系PLの先端部7と基板Pとの間隔が数mm以下なので、基板Pの露光中に、液体供給装置1及び液体回収装置2による液体の供給及び回収を行わずに基板Pを移動しても、液体50の表面張力により投影光学系PLと基板Pとの間に液体を50を保持し続けることができる。また、液体供給装置1からの液体供給によって基板P上のレジスト(感光膜)が傷むこともない。この場合、基板Pの周縁に所定幅で液体50をはじくコーティング(液体が水の場合は撥水コート)を施しておくと、基板P上から液体50が流出するのを防ぐことができる。なお、基板Pを移動する場合には、上述の条件式(3)を満たすようにして液体50に乱流を発生させないようにすることは言うまでもない。
また、上述の実施形態では、基板ステージPST上で液体(50)の供給を行ったが、基板ステージPST上に基板Pが搬入される前に基板P上に液体を供給してもよい。この場合、基板P上の一部もしくは全面に供給される液体の厚さを0.5〜1.0mm程度にすれば表面張力によって液体を基板P上に載せたまま基板ステージPSTへの搬入、基板ステージPSTからの搬出を行うことができる。またこの場合も、基板Pの周縁に所定幅の撥液コーティングを施しておけば、基板P上での液体の保持力を高めることができる。このように、基板P上に液体を保持したまま、基板ステージPSTへの基板Pの搬入及び基板ステージPSTからの基板Pの搬出を行うことによって、基板ステージPST上で液体の供給及び回収を行う機構を省くことができる。
なお、上記実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体50で満たされている構成であるが、例えば、図9に示すように、基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラス65を取り付けた状態で液体50を満たす構成であってもよい。ここで、カバーガラス65は支持部材66を介してZステージ51上で支持されており、カバーガラス65、支持部材66、及びZステージ51で形成される空間57は略密閉空間である。そして、この空間57内部に液体50及び基板Pが配置されている。カバーガラス65は露光光ELに対して透過性を有する材料により構成されている。そして、カバーガラス65の表面と投影光学系PLとの間の空間56’に対して、液体供給装置1及び液体回収装置2による液体50の供給及び回収が行われ、カバーガラス65の表面と投影光学系PLの先端部7とを間隔をdとした場合、空間56’において上記条件式(3)を満足するように設定されている。
そして、このカバーガラス65の表面(上面)に対しても、液体50との親和性に応じた表面処理を施すことができる。カバーガラス65の表面は親液化処理されることが望ましいため、液体50が水である場合、カバーガラス65の表面には極性の大きい分子構造の物質で薄膜が形成される。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。また、本発明は基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写するステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、本発明は、ツインステージ型の露光装置にも適用できる。ツインステージ型の露光装置の構造及び露光動作は、例えば特開平10−163099号及び特開平10−214783号(対応米国特許6,341,007号、6,400,441号、6,549,269号及び6,590,634号)、特表2000−505958号(対応米国特許5,969,441号)あるいは米国特許6,208,407号に開示されている。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータを用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。ステージにリニアモータを用いた例は、米国特許5,623,853及び5,528,118に開示されている。
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。この反力の処理方法は、例えば特開平8−166475号公報(米国特許5,528,118)に詳細に開示されている。
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。この反力の処理方法は、例えば特開平8−330224号公報(米国特許第5,874,820号)に詳細に開示されている。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図10に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。なお、露光処理ステップ204において、露光前に、基板と液体との親水性を調整するために基板の表面処理を行うステップを含んでいる。
本発明の露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。 供給ノズル及び回収ノズルの配置例を示す図である。 供給ノズル及び回収ノズルの配置例を示す図である。 投影光学系及び基板が表面処理されている領域を説明するための模式図である。 表面処理が施されていない投影光学系と基板との間に液体が流れる様子を説明するための模式図である。 表面処理が施された投影光学系と基板との間に液体が流れる様子を説明するための模式図である。 本発明の他の実施形態を説明するための図である。 供給ノズルの他の実施例を示す図である。 基板上に設けられたカバーガラスを示す図である。 半導体デバイスの製造工程の一例を示すフローチャート図である。
符号の説明
1…液体供給装置(液浸手段、供給手段)、2…液体回収装置(液浸手段、回収手段)、7…投影光学系先端部、50…液体、60…光学素子、65…カバーガラス、
AR1…第1表面領域、 AR2…第2表面領域、EX…露光装置、P…基板、
PK…鏡筒(保持部材)、PL…投影光学系

Claims (11)

  1. パターンの像を液体を介して基板上に転写して基板を露光する露光装置であって、
    前記パターンの像を基板に投影する投影光学系を備え、
    前記投影光学系が、その先端の光学素子表面を含む第1表面領域と、第1表面領域周辺の第2表面領域とを有し、
    第1表面領域の液体に対する親和性が、第2表面領域の液体に対する親和性よりも高い露光装置。
  2. 前記基板の露光は、前記基板を走査方向に移動しながら行われる請求項1に記載の露光装置。
  3. 前記第1表面領域と前記第2表面領域とは、前記液体との親和性を調整するために表面処理が施され、
    前記表面処理は、前記液体の極性に応じて行われる請求項1又は2に記載の露光装置。
  4. 前記液体は水であって、前記第1表面領域には、極性の大きい分子構造の物質で薄膜を形成することにより前記表面処理がされている請求項3に記載の露光装置。
  5. 前記液体はフッ素系液体であって、前記第1表面領域には、極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することにより前記表面処理がされている請求項3に記載の露光装置。
  6. 前記第2表面領域は、前記投影光学系の先端の光学素子を保持する保持部材の表面の少なくとも一部を含む請求項1〜5のいずれか一項記載の露光装置。
  7. 前記第1表面領域は、前記光学素子表面のうちの少なくとも露光光が通過する部分に形成されている請求項1記載の露光装置。
  8. 前記第1表面領域の前記液体に対する親和性を、前記第2表面領域の前記液体に対する親和性よりも高いことによって、前記液体が前記第1表面領域内に保持される請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光装置。
  9. 前記投影光学系と前記基板との間における前記液体の厚さをd、前記投影光学系と前記基板との間における前記液体の流れの速度をv、前記液体の密度をρ、前記液体の粘性係数をμとして、条件式
    (v・d・ρ)/μ≦2000
    を満たすことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載の露光装置。
  10. 前記投影光学系と前記基板との間の少なくとも一部に、前記液体を流す液浸装置を備え、前記液体は層流として流れることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載の露光装置。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項記載の露光装置を用いて基板にパターンを露光する露光処理ステップと、
    ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含み、露光された前記基板を処理するデバイス組み立てステップと、を備えるデバイス製造方法。
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