O.M.Theorem『Corollary1』
LABEL:O.M. Theorem
ドイツの新興レーベル〈O.M.Theorem〉から、リリース第1弾となった2020年作のリミックスEP。空間系フットワークのB2は、〈Sex Tags Mania〉でもお馴染み、ノルウェーの先輩・DJ Sotofettがステッパーズとダブ・ハウスの間を縫うようなトラックへと華麗にリワーク。ブリストルの裏ボス・Ossiaは、パーカッシヴなハーフ・ステップのB1に凶悪なベースラインを加え、高速ダブ・テクノに仕上げている。O.M.Theorem自身が手掛けたVIPもなかなか秀逸で、ハーフで乗り切るA1は、よりマッシヴなフットワーク・ジャングルに変貌、B2もうねるベースとパーカッションが轟く軽やかステッパーズに。ここまで来たら『Lemma2』のリミックス版も聴いてみたい(安定のOm Unit御大や、DJ Mannyあたりはどうでしょうか)。
Karnage 『Dystopian Synthesis』
LABEL:Nocturnal Technology
Mars89主宰の〈Nocturnal Technology〉、その最新リリースは、現在名古屋を拠点に活動するKarnageを招聘。過去2作で提示されたレーベルの世界観を踏襲しながらも、Karnage自身のルーツである、ダブステップやトラップ、さらには最近のライヴ・パフォーマンスでも披露されたノイズ、インダストリアルの要素を華麗に融合したダブ・アルバムに。デトロイトのMarshall Applewhiteとの共作“Silicon Life”の壊れ加減も面白いが、個人的には陰鬱なフレーズがじんわりと絡みつくスローモーなインダストリアル・ステッパーズ“A Silent Loner”が特にお気に入り。トラック群でもってディストピアなムードが構築されていくが、アルバムを締めくくる“Lore”を聴き終えると、その中に一筋の細い光が差し込んできたかのように思えた。
Ghost Dubs 『Damaged』
LABEL:Pressure
ダブの浮遊感、あるいは幽玄さを示すときに「幽霊」と形容したりするが、そのまま「幽霊のダブ」という名を冠したアーティストがいる。Ghost Dubsは、ドイツ拠点のMichael Fiedlerによるソロ名義で、過去の作品を聴くと、音の配置や残響処理に相当なこだわりを感じる。ベーシック・チャンネルを引っ張ってくるまでもないかもしれないが、その系譜を継ぎつつの更にアップデートしたようなミニマル・ダブ集で、ステッパーズ方面(“Hot Wired”)やダブ・ハウス的な解釈(“True to Life”)もあったりと中々聴き応えのある作品。地の底から響いてくる鈍くて重たいベースライン、エフェクトを施した音の粒子の揺らぎこそ、まさに「ダブ」であり、その真骨頂を味わえるのではないか。THE BUGことケヴィン・マーティン主宰〈Pressure〉からのリリースも納得のクオリティ。