頭文字D。今もなお伝説的な人気を誇るカーアクションアニメの金字塔である。
現在、第1期であるFirst StageがYoutubeで期間限定(〜2022/1/17)で配信されている。丁度いい機会なので、このアニメの何が凄かったのか。なぜ沢山の車好きが魅了されたのかを、独断と偏見で論じてみたいと思う。
頭文字Dで最も特筆すべき点は、当時最先端のCG技術を用いて作成されたカーアクションシーンだろう。特に、アニメ第1期であるFirstStageのアクションシーンは、今もなお高く評価できるものだと考える。
First StageのCGの描写は、今の水準からしたら非常にお粗末なものだ。曲線は多角形状にガタガタしていて、車体はテカテカ。あらゆるテクスチャは荒くチープで、木やギャラリーは立体的に見えない。
なぜこんな粗末なCGアニメーションが素晴らしいのか。それは、スポーツ走行する車の挙動を、忠実に再現しようと試みたものだからである。
主人公の藤原拓海が、友人イツキの愛車であるトヨタ・カローラレビン(AE85)をドライブするシーン(第11話前半)は、それが分かりやすい。AE85が、コーナリング時に大きくロールしていることが分かるだろう。
イツキのAE85はノーマルであり、サスペンションもスポーツ走行に適さない柔らかいものが付いている。ゆえに、激しいコーナリングをすると外側のサスペンションが大きく沈み込んでしまうのだ。
しかし、こんなことはまだ序の口である。制作陣は、車の挙動を再現するだけでなく、車に「演技」させた。
この「演技」とは何か。それがよく分かるシーンがある。First Stage第4話の終盤、(Youtubeの動画44:20〜)の場面だ。
髙橋啓介が駆るマツダ・RX-7(FD3S)と、藤原拓海のトヨタ・スプリンタートレノ(AE86)の前輪に注目してほしい。コーナー進入時、RX-7の前輪は進行方向左側に大きく切られているが、後続のAE86は前輪の切れ角がほとんどないことが分かるだろう。
この描写は、髙橋啓介がステアリング操作により無理やり車体の向きを変えているのに対し、藤原拓海は車にはたらく慣性力や遠心力のみで向きを変えていることを表現している。両者が持つテクニックの差が視覚的に分かるよう、車の動きが描き分けれられていのだ。
その思想は、後のシーズンにも引き継がれることになる。シーズンが進むに連れてCGの技術は進歩を遂げ、制作陣はさらに細かい表現を盛り込んでいった。
例えば、Fourth stageでは車が細かく上下に振動している描写が描かれるようになる。これは、スポーツ走行をするためにサスペンションを固めている車が、路面の細かいギャップを拾って上下にはねる様子を描いているのだ。
限りある技術の中で、いかに車の挙動を再現するか。車のモデリングや動かし方、そしてカメラワークは、それを考え抜かれた上で構築されている。車を徹底して研究し、本物を再現しようとする思想。そして、ただリアルに車を動かすだけではなく、ドライバーの技量や性格、心理描写に合わせて車の動きを「演技」させる工夫。これこそが、アニメ頭文字Dが多くの車好きを魅了し、今もなお高く評価されている一番の理由である。
さて、頭文字Dには、伝説的な人気を誇る旧作(First stage〜Final stage)と、リメイクされた新劇場版が存在する。
新劇場版は、今まで作り上げられた頭文字Dのイメージをリセットし、再構築するものであった。「現代の優れたCG技術を用いて頭文字Dを作り直したら、きっと素晴らしいものになるに違いない...。」そんな期待をもとに、新劇場版が製作された。
長い間構築された頭文字Dのイメージをぶっこわすために、長い間担当してきた声優の総入れ替えや、人気を博したユーロビートを使わないという判断がとられた。映像は原作の絵が動き出したようなタッチで、FirstStageよりもずっと綺麗な映像になった。
しかし、旧作のファンからの評価は芳しくない。声優の入れ替えやユーロビートが使われなかったことが理由として挙げられるが、それは新劇場版が評価されない本質的な理由ではない。
新劇場版がつまらない理由。それはまさしく、車の描写にある。旧作で徹底された車の挙動と演技が、新劇場版では分かりづらくなっていることこそが、つまらなくなってしまった理由である。
新劇場版では、迫力のある映像に見えるようダイナミックなカメラワークが多用され、原作の絵のように見えるエフェクトが使われた。しかし、それが車の挙動を分かりづらくさせてしまい、迫力やリアリティを削くことに繋がってしまったのである。
カーアクションの迫力は、カメラワークやエフェクトのような小手先の工夫でもたらされるものではない。
いかに本物を理解し、本物を再現しようとするか。それがアニメ頭文字Dのカーアクションにリアリティと迫力を与え、伝説へと押し上げていった唯一の理由だ。
【追記1】
リアリティとファンタジーのバランスが難しいですね 頭文字Dは時代と合ってたと思うんですけど、MFゴーストはストーリーからしてリアリティを追求するのが難しいと思う
レンタルビデオ屋に、頭文字Dのビデオ借りに行ったんだけど 「か行」探しても全然ないんだよ。で、レンタルビデオ屋の店員は 「あたまもじD」って読んでるんじゃね?と思って「あ行...
評論家の人みたいだ
あれ見てなんで事故起こるようなところでやってんだろとしか感じなかった。 本人が死ぬのであれば自業自得だよねって感じなんだけど、何も知らずに通った一般人は事故に巻き込まれ...
原作が良いから新旧アニメも実写も電車も普通に面白かった
漫画はかなり面白かったしなにより絵が好きだった アニメは一瞬見て全然違うと感じて即切ったな
夜の郊外の山道を車が走っていくあの映像を深夜にテレビで見る体験は子供ながらにエモかった
なるほど~ 新劇場版はみてないけど、たしかに旧TV版、稚拙なCGながらも十分に面白かったし、イニシャルDの原作で「起こってたこと」「見せ場」をちゃんと動く映像にできていたから...
車の挙動については監修が変わったからじゃないの?アニメ版の土屋で新劇場版は谷口に変わったよね。
車の挙動も音も劇場版(レジェンド)はサラッとそれなりに高度なことやってると思う ただ増田の言う通りTV版ほど印象には残らんね
CGショボすぎて笑ってしまった。すまん。 でもマジで今見るとショボすぎだろ。 PSやセガサターンにも劣るんじゃねえかって状態じゃん。 藤原とうふ店の豆腐ってクルマのことだったん...
たしかに当時としてもショボいCGとアホみたいな犯罪行為なのになんだか面白いし流行ったなあ