あつ‐ゆ【熱湯】
ねっ‐とう〔‐タウ〕【熱湯】
熱湯
『アーサーの死』(マロリー)第11巻第1章 ペレス王の娘エレーンは、国中でいちばん美しい姫、と言われていた。そのため、魔女モルガン・ル・フェと北ウェールズの女王がエレーンを憎み、5年間も彼女を塔に幽閉し、火傷しそうな熱湯の中に入れて苦しめた。旅の騎士ラーンスロットがこのことを聞き、塔に入ってエレーンを救い出した〔*ラーンスロットとエレーンの間には、ガラハッドが生まれる〕。
*美女の顔に熱湯をかける→〔火傷(やけど)〕1の『春琴抄』(谷崎潤一郎)。
*樽の中の娘に熱湯をそそぐ→〔樽〕2の『ペンタメローネ』(バジーレ)第3日第10話。
『牛方と山姥』(昔話) 山姥に追われた牛方が一軒家に逃げ込むが、そこは山姥の留守宅だった。牛方が天井の梁の間に隠れていると、やがて山姥が帰って来て、唐櫃(からと)に入って眠る。牛方は唐櫃に穴をあけ、熱湯を流し入れて山姥を殺す(新潟県南蒲原郡)。
*継子を熱湯の中に落として殺す→〔姉弟〕4の『継子と鳥』(昔話)。
*蛇に熱湯をかけて殺す→〔たたり〕2の『古今著聞集』巻20「魚虫禽獣」第30・通巻699話。
『太平記』巻3「赤坂の城軍の事」 東国の北条幕府軍が楯をかざし、鎧兜に身を固め、剣や矢で傷つかぬようにして、赤坂城に攻め登る。城を守る楠正成の軍は、熱湯を長い杓に酌んで浴びせかける。熱湯は東国勢の鎧兜の隙間から身体にしみ通り、重い火傷を負って病み臥す者が、2~3百人に及んだ。
*熱いおかゆを坂に流して、敵を遠ざけようとする物語もある→〔坂〕5の、おかゆ坂の伝説。
★1d.熱湯に身体を浸すと心地よい。熱湯から出ると熱くてたまらない。
『百物語』(杉浦日向子)其ノ41 地獄谷の煮え立つ池に、旅人が指を入れてみる。それほど熱くないが、指を引き抜くと燃えるように熱いので、あわててまた手を池に入れる。池から出せば熱く、池に浸すと心地よい。やがて旅人は全身を池に沈める。
『平家物語』巻6「入道死去」 平清盛が重病にかかり、身体の内の熱いことは、火を焚くがごとくだった。石の浴槽に水を満たし、そこへ入って身体を冷やそうとしたが、水はたちまち沸き上がって湯になった。身体に水を流しかけると、焼けた石や鉄にかけた場合のように、水がほとばしって身体に寄りつかない。まれに身体に当たる水は、ほむらとなって燃えたので、黒煙が御殿に満ち、炎が渦巻いて上がった。
『大和物語』第149段 男が愛人のもとへ出かけるのを、妻は静かに見送る。妻は、男の身を案じる歌を詠んで(*→〔のぞき見〕1d)泣き伏し、金鋺(かなまり)に水を入れて、胸に当てる。するとその水がたぎって熱湯になる。妻は熱湯を捨て、また水を入れる。この様子を隠れて見ていた男は、愛人の所へ行くのをやめ、妻をかき抱いて寝た。
『和漢三才図会』巻第7・人倫類「巫(かんなぎ・みこ)」 巫女が神託を得ようとする時には、竹葉を束ねて極熱の湯に探り入れ、幾度もそれを我が身にふりかける。心身ともに疲れ、意識朦朧となった巫女に、神明(=神。天照大神のことも指す)がかかり、禍福吉凶を告げる。これを湯立(ゆだて)という。
『西遊記』百回本第46回 羊の精の化身である羊力大仙と孫悟空が、術くらべのために、油の煮えたぎる釜に順番に入る。羊力大仙が入った時、悟空が見ると、冷龍が釜の底にいて油を冷やしていた。悟空は龍王に命じて冷龍を取り除かせ、羊力大仙はたちまち煮殺される。
『千一夜物語』「アリ・ババと四十人の盗賊の物語」マルドリュス版第858夜 盗賊の頭が油商人のふりをして、アリ・ババの屋敷に泊まる。部下たちが身を隠した多くの油甕が、中庭に運びこまれる。アリ・ババの侍女マルジャーナがこれに気づき、煮えたぎる油を1つ1つの甕に注いで、盗賊を皆殺しにする。
*油で釜ゆでにする→〔処刑〕4の『本朝二十不孝』(井原西鶴)巻2-1「我と身を焦がす釜が淵」。
★3.熱して溶かした鉛を注ぐこともある。
『ノートル=ダム・ド・パリ』(ユゴー)第10編4 カジモドは、無実の罪で処刑されるエスメラルダを助け出し、ノートル=ダム大聖堂の塔の中の小部屋にかくまう。群集が押し寄せて来るので、カジモドは塔の最上階から、丸太や石を落とし、沸騰した鉛を注いで、彼らを傷つけ、殺した。群集が高い梯子を壁に立てかけると、カジモドは梯子を突き放し、大勢が地上にたたきつけられて死んだ。
★4a.現世で犯した悪業の罰として、死後、熱湯・熱銅を飲まされる。
『今昔物語集』巻7-32 僧・玄渚(げんしょ)が道を行くと、見知らぬ寺の門前に、先頃死んだ僧・道明が立っていた。道明は、生前借りた物を返さなかった罪で、毎夜、熱銅の湯を飲まされていた。道明の願いで、玄渚は法華経を書写して供養する。すると玄渚の夢に道明が現れ、「おかげで、熱銅を飲む苦を免れることができた」と礼を述べた。
*僧たちが死後に毎日1度、熱銅を飲む→〔繰り返し〕2の『今昔物語集』巻19-19。
*天狗道成就のため1日に3度、熱鉄を飲む→〔天狗〕3の『浮世床』二編・巻之上。
『コーラン』56「恐ろしい出来事」1~56 死んで土と骨になった人間たちは、天地の終末の時に、昔の人も今の人も残らず喚(よ)び起こされる。生前、邪道に走り、神兆を嘘よばわりした者は、地獄の底に生えているザックームの木の実を腹いっぱい喰わされてから、ぐらぐら煮えた熱湯を飲まされる。これが審きの日の、彼らにふさわしいもてなしだ。
★4b.「死者が熱銅を飲む」のとは異なり、「生者が熱銅を飲む夢」を見る物語がある。夢の世界は冥界と同じ、ということであろうか。
『今昔物語集』巻19-20 蔵人某が、妻の家で昼寝をして夢を見る。妻、舅の僧、姑の尼をはじめ、家中の者が熱銅の湯を飲まされて苦しむという夢で、蔵人某もそれを飲まされそうになったところで目が覚めた。この一家は寺の物品や食物を盗用しており、その罪の報いが夢に見えたのである。蔵人某は妻をうとましく思い、関係を絶った。
『神曲』(ダンテ)「地獄篇」第12歌・第21歌 地獄の第7圏谷第1円では、アレクサンドロス大王など生前の暴君たちが、煮えたぎる血の川で茹でられている。また第8圏谷第5濠では、汚職贈賄の徒たちが、煮えたぎる瀝青の中に漬けられている。
『檜垣』(能) 檜垣の女(庵に檜垣を巡らせて住んでいた美貌の白拍子)が、白髪の老年に達して死んだ。女は生前の罪が深かったので、死後は、熱鉄の桶をかつぎ、猛火(みゃうくわ)の釣瓶をさげて、三瀬川(みつせがは=三途の川)の水を汲まねばならない。その水は湯となって、女の身体を絶えず焼くのである〔*女の霊は山居の僧のもとへ閼伽(あか)の水を毎日汲んで届け、仏縁を結んだため、猛火の苦はなくなった〕。
★5.地獄の釜の熱湯。
『閻魔の失敗』(昔話) 神主と軽業師と医者が、地獄の閻魔さんの所へ呼ばれた。3人は、熱湯がぐらぐら煮える大釜の中へ入れられる。神主が御幣を振って、「天や地の神々さま、釜の湯をちょうどええ加減にして下され」と祈る。すると湯加減が良い具合になり、3人は気持ち良く入浴した(石川県小松市布橋町)→〔針〕8・〔腹〕1。
『大唐西域記』巻8・2・2 無憂(アショーカ)王は地獄(=牢獄)を作り、人々を殺害した。聖果を證した沙門が捕らえられ、釜の湯に入れられた。しかし沙門の心は生死に動揺することがなかったので、あたかも清池にいて、大きな蓮の花が沙門の座となっているようであった。
湯
熱湯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 10:25 UTC 版)
「バンジョーとカズーイの大冒険2」の記事における「熱湯」の解説
ホットアイスやまのホットサイドに登場。非常に熱いため入るだけでダメージを受け、陸地に強制的に戻される。リュックマンで潜れる。
※この「熱湯」の解説は、「バンジョーとカズーイの大冒険2」の解説の一部です。
「熱湯」を含む「バンジョーとカズーイの大冒険2」の記事については、「バンジョーとカズーイの大冒険2」の概要を参照ください。
「熱湯」の例文・使い方・用例・文例
- 熱湯を入れたらコップにひびが入った
- ポットを熱湯でいっぱいにしてください
- 熱湯
- ゴーヤは熱湯で30秒サッと茹でる
- この煮沸器装置は、一度に50羽の鳥を熱湯消毒することができます。
- 彼女はカップに熱湯を注いだ。
- 熱湯でやけどをしました。
- 熱湯が突然吹き出した。
- ポットに熱湯をいっぱい入れてください。
- アーモンドの甘皮が取れるまで熱湯につけておく.
- 熱湯.
- 彼女は熱いアイロン[熱湯]で手にやけどをした.
- カップに熱湯を注げば 3 分でヌードルのできあがり.
- やかんの中の熱湯がぼこぼこ音を立てている.
- 道具などを熱湯消毒する
- 熱湯で火傷{やけど}する
- 蜂の巣をそっくり熱湯へ突っ込んだ
- 彼女が手に火傷したのは、蛇口をひねって熱湯が出てきたときだ
熱湯と同じ種類の言葉
- >> 「熱湯」を含む用語の索引
- 熱湯のページへのリンク