カオス
カオス(英: chaos)またはケイオスとは、「混沌」を意味する英語である。無秩序で、さまざまな要素が入り乱れ、一貫性が見出せない、ごちゃごちゃした状況・様相を形容する表現として用いられることが多い。
昨今の日本語表現としては、いかにも雑然としていてまとまりのない様子や、およそ関係なさそうな要素が無作為に入り交じってるように見受けられる状況を指して「カオスだ」とか「カオス状態だ」という形で用いられることが多い。「混迷する」「混迷を極める」という意味で「カオスになる」という風に表現されることもある。
「まじカオス」のように俗っぽく用いられる場合は特に「理解に苦しむ」「狂気じみている」というニュアンスを込めて用いられることも多い。
「カオス」の語源はギリシア語の Χάος(khaos)である。これは元々は宇宙(コスモス)が成立する以前の秩序なき状態を意味する語だった。英語では chaos と表記し「ケィオス」に近い発音をする。ちなみにドイツ語における Chaos はカタカナ表記の「カオス」に近い発音である。
日本語の「混沌」という言葉は、「渾沌」とも表記するが、もともと「渾沌」は古代中国神話における「天地が分かれる前の状態」のことであり、また、神話に登場する異形の神(帝)の名である。渾沌の顔には目耳鼻口の七穴がなく、七穴を設けたところ死んだ、と伝えられる。
人の集団において、統率者がおらず、集まった人が皆それぞれ自己主張して好き勝手に振る舞っているような状況も「カオス」と形容されることがある。これと似た状況を指す言い方に「サバト」という表現もある。サバト(sabbat)は「魔女の夜宴」に由来する語であり、混乱・無秩序というよりも淫靡で瀆神的な乱痴気騒ぎを指すニュアンスが色濃い。
「カオス」に類似した意味合いの語として「無秩序」「雑然」などの表現が挙げられる。国語表現としては特にニュアンスの違いがあるというわけでもない。
力学の分野では、初期値の極めて微少な誤差が増幅され結果値を乱雑なものにするため値の予測が事実上不可能であるような条件を扱う理論を「カオス理論」(chaos theory)という。
カオス
「カオス」とは・「カオス」の意味
カオスとは、英語(chaos)で「混沌」や「無秩序」といった意味である。対義語は「秩序」を表す「コスモス」(cosmos)。そこから派生し、主に若者が日常会話やネット上で使う言葉で「意味不明」「様々なことが混ざりあって理解できない状態」「複雑で明確に説明できない」「無秩序で様々なものが入り乱れている」「混沌としていてめちゃくちゃである」「複数の事柄によって大混乱している」場合など多くの場面で使用され、どれも物事が複雑に絡み合っていて一言では言い表せないことを表現している。そのため日常会話での「カオス」という言葉に明確な定義があるわけではなく、「まとまりがなく少し見ただけでは理解できない状態」「すぐに言葉にして伝えることができないもの」「予測から大きく外れた場合」「常識からかけ離れている場合」など、地震の思考や状況がごちゃごちゃとしている場合あっても使われることがある。深刻でない状態であってもいくつかのことが混ざっていたり、とりとめがない状態でも使用される。
奇抜で現実的ではない状態を形容している「シュール」とは違い、事柄一つ一つは秩序があるもののそれらが複雑に絡み合っていてごちゃごちゃとしている状態のことを言う。
「カオス」の語源は古代ギリシャ語のケイオス(Χάος)である。ギリシア神話における最初の神で、ヘーシオドスの「神統記」における最初の始まりから存在した原初の神であり、空隙として無の世界に存在していた神を指す。宇宙(コスモス)ができる前である無秩序な状態を表す言葉であった。ギリシャ人は宇宙成立前のことを「様々な要素が複雑に混ざった空間」として認識しており、そのことを「カオス」として定義している。オルフェウスによれば、「カオス」は有限である存在全てを超越する無限を総称しているという。
ある集団において、指導者がおらず、構成員同士での意見が分かれており、その一つ一つの主張によって集団が荒れていて取り留めのない様子を「カオス」と形容される。
実際に使用する際「カオス」は「複雑である」状態そのものを指すため細かい表現が曖昧であり、受け取り方によっては説明している事柄の深刻さ加減が大きく上下され、上手く伝わらない時があるということに注意しなければならない。しかし、「本来とは違う」ということや「事態が複雑である」という意味では伝わりやすく雰囲気を相手に伝えたい時などに有効である。
IT用語としては、「個々の単位では規則的で秩序がある変化であるが、相対的に見れば複数の事象が複雑に絡み合い、不規則で予測のできない変化」という現象のこと。よって個々の単位としては予測することができるため、まったく予測することができない「ランダム」な状況とは区別され、あくまでも一見不規則に見えているだけのことである。結果的に「無秩序」のように見えていても、実際には非常に簡単な数式によって表現できることがある。
数学において「カオス」は繰り返し計算による写像の動きに注目するのに対し、「フラクタル」はその軌跡に注目したものであるため、「カオス」と「フラクタル」は同時に論じられることがある。
科学技術においては、この世のほとんどが「非線形システム」であるため「非線形性」が本質的にとても重要であるが、その「非線形システム」の典型的で極めて重要な性質が「カオス」の概念である。実質的に予測不可能であるアクシデントにより、初期状態から「カオス状態」へと変化することもあるため、「カオス」は不安定性を持つ。
カオス素子を研究して仕組みを解明し、それを利用してカオスを数理化してコンピューターの演算に利用しようという試みもなされている。
「カオス」の熟語・言い回し
カオスすぎるとは
多くの事柄がひどく入り混じっていて名状しがたい状態のこと。あまりにも複雑である状態のこと。「カオス」に一定の水準を超えている意味の動詞「すぎる」を組み合わせた言葉。「カオス」と形容するときよりも深刻で、ごちゃごちゃとしていることを強調して伝えたい場合などに用いられる。まじカオスとは
状況が非常に複雑な様子。強調を意味する「まじ」に「カオス」を組み合わせた言葉だが、深刻な状況でなくても使われる。理解できない状況である場合や思考がぐるぐると回っているときに使用する。本来の「カオス」よりもポジティブなニュアンスが含まれている。もはやカオスとは
過去に比べ、その事柄が複雑になった状態のこと。現在を意味する副詞「もはや」に「カオス」を組み合わせた言葉。カオスとも表現できる状態に対して使用する。サイバーカオスとは
サイバー上でカオスな状態に陥っていること。一つの事象について、SNSを通して大量の情報が飛び合い、混乱している状態のこと。サイバー空間の秩序が乱れていて取り留めのない状態を表現するときに使用する。また、インターネットが普及している現状、事象とは直接関係のないSNS利用者や経済が巻き込まれることもある。カオスな状況とは
その場がごちゃごちゃで統制されておらず、第三者から見るとなかなか理解できないような状況。風紀が乱れていてみっともなく、無秩序でその場が荒れている状態、その様子。カオス状態とは
カオスである状態。「カオスな状況」と同じ意味で使われる。あらゆる物事が複雑に絡み合っていて、説明できないような状態の時に使用する。カオス理論とは
「予測不可能な変動」「予測できないとされる複雑な様子」を示す現象を扱う理論。決定論的であるのに予測不可能な現象のこと。初期値の誤差が増幅され(初期値鋭敏性)、結果値を乱雑なものにするため計算精度をいくら向上させても正確に予測することが実質不可能である状態のこと。しかし、分析や統計、研究などによって方程式を直せば理論的に究明することができるという立場がある。
パソコンでは画像ファイルの圧縮、電子メールなどに用いられる暗号化ソフトの仕組みに応用されている。数学、物理学、化学、生物学などあらゆる分野において研究されている。
決定論的カオスとは
挙動が不規則で予測不可能であるが、確率的な乱雑さとは異なる状態のこと。決定論的な法則に従うが、不規則であり、複雑なことを示している軌道のこと。
カオス的とは
無秩序で、さまざまな要素が絡み合い、まとまりがない、ごちゃごちゃした状況を形容する表現として用いられる。カオスのような状態。
カオス現象とは
単純な決定論的カオスが予測できないような振る舞いを産みだす現象のこと。「カオス」の使い方・例文
・新しい職場があまりにもカオスすぎてなかなか馴染むことができない。
・ただでさえ仕事が忙しいのに人間関係が複雑になってきて頭の中がカオスになっている。
・めんどうで片づけをさぼっていたら部屋が散らかりすぎてしまった。カオスすぎて誰にも見せることができない。
・職場で想定外のことが起きてしまった。対応が間に合わなくて周りがカオスになっている。
・最近ここら辺では大きな事件は起きていないが、昔はカオスで大変だったらしい。
・急な大雨警報で電車が止まってしまった。そのせいで駅構内がカオスだ。
・今見ている動画がカオスすぎて内容が全然頭に入ってこない。
・グループの意見がバラバラなせいで会議がなかなか終わらず、だんだんカオスになってきた。
・何日か前に実家の近くで何かカオスな現象が起きたらしい。
・相手の発言が支離滅裂なせいで内容がカオスで理解できない。
カオス【(ギリシャ)chaos】
カオス
カオスとは、カオスとは、「個々の単位で見れば規則に従った秩序ある変化を見せるが、総体で見れば複雑で不規則な予測のできない変化を見せる」ような現象のことである。
カオス(Chaos)を和訳すれば「混沌」「無秩序」といった意味になる。基本単位を別個に観察すれば、特定の力学的関係や法則にしっかり則っている、という点において、「ランダム」な状態とは区別される。カオスの一例としては、気流や水流の乱れ、神経の応答時間が示す波形などを挙げることができる。理工学から生物学にはじまり、社会学や経済学の分野にいたるまで、カオスの現象は見出される。
カオスは、一見して把握や予見が不可能であるように思われるが、それでも方程式に直すなどして理論的に究明することが可能であるという立場がある(「カオス理論」)。カオス現象の発生要因を分析・抽象することによって、カオスの発生しない状態を再構築する試みや、逆に人為的には生み出しにくい複雑な動きをカオスの発生に委ねるといった試みが行われている。
また、カオス素子を研究し、その仕組みを解明することによって、カオスを数理化してコンピュータの演算に利用しようという試みもなされている。パソコンでは、画像ファイルの圧縮や、電子メールなどに用いられる暗号化ソフトの仕組みに、カオス理論が応用されている。
ちなみに、Chaosを「カオス」と表記するのはギリシア語の発音に由来しており、英語では「ケィオス」の表記に近い発音をする。
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カオス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/10 09:18 UTC 版)
カオス | |
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配偶神 | なし |
親 | なし |
兄弟 | なし |
子供 | タルタロス、ガイア、エロース、エレボス、ニュクス |
ギリシア神話 |
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主な原典 |
イーリアス - オデュッセイア 神統記 - 仕事と日 イソップ寓話 - ギリシア悲劇 ビブリオテーケー - 変身物語 |
主な内容 |
ティーターノマキアー ギガントマキアー アルゴナウタイ テーバイ圏 - トロイア圏 |
オリュンポス十二神 |
ゼウス - ヘーラー アテーナー - アポローン アプロディーテー - アレース アルテミス - デーメーテール ヘーパイストス - ヘルメース ポセイドーン - ヘスティアー (ディオニューソス) |
その他の神々 |
カオス - ガイア - エロース ウーラノス - ティーターン ヘカトンケイル - キュクロープス ギガンテス - タルタロス ハーデース - ペルセポネー ヘーラクレース - プロメーテウス ムーサ - アキレウス |
主な神殿・史跡 |
パルテノン神殿 ディオニューソス劇場 エピダウロス古代劇場 アポロ・エピクリオス神殿 |
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カオス(古希: Χάος[1])とは、ギリシア神話における原初の神である。
概要
主神ゼウスをはじめとするギリシャ神話体系における原初の神であり、全ての神々や英雄たちの祖にあたる。
オルペウスによれば、このカオスは有限なる存在全てを超越する無限を象徴しているという。
カオスの名は「大口を開けた」「空(から)の空間」の意味を持つ[2]。
配偶神はおらず、奈落のタルタロス、大地のガイア、愛と欲望のエロース、暗黒のエレボス、夜のニュクスを生み出した。
神統記における記述
ヘーシオドスの『神統記』によれば、世界の始まりにあって存在した原初の神である。世界(宇宙)が始まるとき、事物が存在を確保できる場所(コーラー)が必要であり、何もない「場」すなわち空隙として最初にカオスが存在し、そのなかにあって例えば大地(ガイア)などが存在を現した。また、ヘーシオドスはカオスのことをカズム(裂け目)とも呼んでいる[3]。カオスの生成に続いてガイア(大地)が生まれ、次に暗冥の地下の奥底であるタルタロスが生まれた。また、いとも美しきエロース(原愛)が生まれた。しかし、これらの原初の神々はカオスの子とはされていない[4]。カオスより生まれたものは、エレボス(幽冥)と暗きニュクス(夜)である。更に、ニュクスよりアイテール(高天の気)とヘーメレー(ヘーメラー・昼光)が生まれた[5]。世界はこのようにして始まったと、ヘーシオドスはうたっている。
影響
脚注
- ^ 古代ギリシア語ラテン翻字: Chaos
- ^ 里中満智子・名古屋経済大学助教授西村賀子解説 『マンガギリシア神話1 オリュンポスの神々』 中公文庫、2003年。以下は同書の参考文献。
- K・ケレーニイ 『ギリシアの神話-神々の時代』 植田兼義訳、中公文庫、1985年。
- 呉茂一 『ギリシア神話 上・下』 新潮文庫、1979年。
- 串田孫一 『ギリシア神話』 筑摩書房、1961年。
- 山室静 『ギリシャ神話 付北欧神話』 現代教養文庫・社会思想社、1963年。
- T・ブルフィンチ 『ギリシア神話と英雄伝脱 上・下』 佐渡谷重信訳、講談社学術文庫、1995年。
- D・ベリンガム 『ギリシア神話』 安部素子訳、PARCO出版、1993年。
- F・ギラン 『ギリシア神話』 中島健訳、青土社、1982年。
- 『ギリシア神話物語』 有田潤訳、白水社、1968年。
- 高津春繁 『ギリシア・ローマ神話辞典』 岩波書店、1960年。
- L・マルタン監修 『図説ギリシア・ローマ神話文化事典』 松村一男訳、原書房、1997年。
- 水之江有一編 『ギリシア・ローマ神話図詳辞典』 北星堂書店、1994年。
- 村川堅太郎編著 『世界の文化史跡3 ギリシアの神話』 高橋敏撮影、講談社、1967年。
- 『ATENES THE CITY AND ITS MUSEUMS』 Eldptike Athenon S.A.、1979年。
- Piero Ventura&Gian Paolo Ceserani 『TROIA L'avventura di un mondo』 Arnoldo Mondadori Editore、1981年。
- ^ ヘーシオドス 『神統記』。
- ^ 『神統記』116-122行。
- ^ 『神統記』123-125行。
参考文献
関連項目
カオス
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