広域など
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 20:13 UTC 版)
上伊那全域で広く用いられている語彙を中心に、点々と分布するものや主に中部で用いられているものも含む。参考文献: あいく 歩く あいさ 間 あいそしー 可愛らしい。南部では「愛想がいい」の意味も。例.まー なんちゅー あいそしー ぼこずら あいてー、あいて、あいた 痛い あおぴょーたん 顔が青くやせた人のこと あかる 容器が転倒して中のものがこぼれ出る あかん 良くない。関西方言として有名であるが、『おらが知ってる伊那の方言』や『伊那谷 長谷村の方言集』などの方言集に載る。例.このパソコン、すぐエラーが出て、あかんな あけ° 油揚げ あこ°か°かき°にかかる 貧困の余り飯が食えなくなる あこ°た、おとけ° あご あすぶ 遊ぶ あたける 暴れる、悪ふざけする あだじゃねー 容易ではない、気の毒だ。例.あんねに いそがしくちゃー あだじゃねーなえ あっこ(1)、あすこ あそこ。例.あっこえ いって ぼやを もって おいで あっこ(2) かかと あっためる 盗む、隠す。例.他人の 本を あっためる あばよ、あんばよ、あばな、あんば 別れるときの挨拶。「あばよ」は「さらばよ」の約略とする説があるが、福沢武一は「塩梅好う」が語源であると主張する。「あんばよー」は関西などで「具合よく」「都合よく」の意味で用いられる。 あびる、あべる 泳ぐ あらかた、おーけん、ど(ー)えんけん、なから おおよそ、だいたい あらかす(1)、あらける、あらけ°る 例.もみを あらけ°て 干す あらかす(2) 転がす。例.石を あらかす もんで あぶねー あらすか、あらずか、あらすけ、あらずけ ありなどはしない ありこ° 蟻 あれる ころげる。例.石か゜ 坂を あれて いった あわさりめ 重なり目 あわしまさま いつもボロボロな着物を着ている人 あわたく あわてる あんじゃーねー 心配いらない あんと ありがとうの意。宮田村以南やや希薄 いかつい 立派な いかん ダメ、いけない。北部では「いけん」「いけねー」とも。 いかんに いけませんよ、ダメだよ いきあう 遭遇する いきなり 乱雑で、中途半端なさま。放置して、構わぬこと。几帳面の正反対 いけーに どんなに いける 埋める いこ、えこ あまり いしか°け 石垣 いじゃ 行こう(強め)。例.おれと 一緒に まちー 買い物に いじゃ いただきました ご馳走さま いちゃつく (1)恋人同士が仲睦まじい動作をすること、(2)うるさくつきまとう。北端部では「慌てる」、南部では「子供などが調子づいて騒ぐ」の意味でも用いる …いちら …まま いっちょーらん 一枚しかない良い着物。例.お祭りだで いっちょーらんを 着せて よらずよ いってきました ただいま いなだく いただく いのく 動く いび 指 いびくる もてあそぶ。例.そんねに いびくりゃ こわれちまうぞ いぶる 揺さぶる いぼう、いぼる 傷口が化膿する。いぼった とこから うみが でて きた いやんべー 程よい状態 いらんこと、よっこなこと 余計なこと いりのや(入野谷) 高遠からさらに南アルプスの山麓へ入った谷(旧長谷村)。 いれいち 一つおき。例.いれいちに 赤く 塗る いろむ 色づく。例.柿か° いろんで きた いんね いいえ(否定) うだる 茹だる うつかる、うっつかる 背をもたれかかる うっつかっつ 五分五分、同じくらい、損得なし うでる 茹でる うとい バカだ うとんぽ 空洞 うます 蒸す うめる 薄める うんと たくさんに、非常に えーと 灸 えーよ、えーよー ぜいたく えけ°つねー ひどい、あくどい えらい(1)、くたぶれた、ごしたい、だるい、たるい、たるっこい 疲れた。「ごしたい」に関して福沢武一は、万葉集に多出する「こちたし(わずらわしい)」に由来するというのが通説であるが「腰痛い」の訛りである可能性も主張している。疲れからくる腰痛は鈍痛というべきものであり、全身の疲労がそこに根を張った感じであるが、そのような実感がごしたいには宿っているという。 えらい(2) ひどい えれる 入れる えんのしたのくものすまで 全財産残らず。例.えんのしたのくものすまでお前のものだ おいさん おじさん おいでな おいでなさい おいでる いらっしゃる おいでん いらっしゃらない おいはん 夕飯 おいび 行きましょう。例.みよっさ 学校い おいび おいや 食べたくない。例.かぜで ねつっぽいで 今朝わ ごぜんわ おいやだ おいれ 日没 おかたしけ、おかたじけ ありがとう おくびとなり 成長が遅いこと おこた、おこたつ こたつ おこ°っつぉー ごちそう おこりばち 怒りんぼ おさんまくな ご粗末な おしゃんこ 正座。北部系方言の「おつくべ」「おつんべ」「おつんぶ」等と南部系方言の「おかしま」「かしまる」等の接触地域に多く分布する。 おしょる 折る おぞい 品質が悪い おたく°り 動物のはらわたを煮た料理 おちゃ (1)お世辞、(2)おやつ、間食 おっかい、おっかない 恐ろしい。「おっかない」は東日本方言の特徴語であるが、万葉集の「おくかなし(奥処なし)」もしくは「おほけなし(身の程知らずである、似つかわしくない、果敢である)」を語源とする説がある。この説に対し福沢武一は、前者は古すぎ、後者は語義から離れすぎていると批評している。福沢は「おー怖!」から「おっかい」が導かれ、さらにそこから「おっかない」が造語された説を唱える。柳田國男は「おっか」は「おーこれは!」を語源とする説を唱えている。 おつかいな、おつかりな、おつかりなんしょ (1)お疲れ様、(2)夕方のあいさつ おっかさま、おっかさん 母親。南部では「おかーちゃ」「おかーま」とも。 おっさま お坊さん おっとら おっとり おつよ 味噌汁 おと、おとっと 次に生まれた子 おどける 驚く。例.そりょー きーて まず おどけちまった おどし、そめ かかし おとつい、おっとい 一昨日 おとっこ (1)末子、(2)生育の遅れた蚕 おとっさま、おとっさん 父親。南部では「おとーちゃ」「おとーま」とも。 おなし、おんなし 同じ おはずけ 漬かった漬け菜 おべー 着物 おべんこー、べんこー ませた口をきくこと おみゃー お前 (卑語) おめこ、おそそ 女性器 おもしー 面白い おもる おごる。例.今日わ おれか° おもるよ おやき (1)米粉をねり、円板状に薄く伸ばして焼いた食べ物、(2)米粉の皮に小豆あんを入れ、茹でた後に焼いた食べ物。上伊那では平板に発音される。 おやけ°ねー、おやいねー 気の毒な、かわいそう おら おれ、私 おらねー いない。宮田村のテキスト方言訳に載る。この地域では、「おらん」や「いねー」とともに混用される。 おらほ おれの方 おりいろ 紺色 おるすき° お留守番 おろのく 間引く おわい お食べなさい。例.たんと こしれーたで うんと おわいな おわざと しるしばかりの品 おんもり 思う存分 …か° …くらい、…だけ。例.お菓子を 百円か° とこ つつんで おくれ かーち、かーし 代わり かう 閉める …かえ …か、…かね。例.そーかえ かか°かか°する 気ぜわしく動き回る、そわそわする かけじ、おかけじ 掛け軸 かじかざわ 塩。伊那市高遠町で用いられる。甲州鰍沢で陸揚げされた塩が、甲州街道を通ってこの地まで運ばれたためこの名がついた。 かしき、かしき° 炊事 (ひっ)かしぐ、(ひっ)かしがる、よろぶ 傾く かしょ かせ かっつく 追いつく かどま 角 かぶた、かぶつ 株 からい 塩辛い。伊那市以北では「しょっぺー」とも。 からかみ ふすま がりあう 言い争う。例.あの夫婦わ 年中 がりあってばっかいて よわった もんだ かんかん、かんから 空き缶 かんしょ 堪忍して下さい(男性的)。例.おれか° わりかったで かんしょな かんちょろりん 痩せた人 かんな、かんね ごめんね(女性的)。例.わしか° わりかったで かんね きかいこーじょのけつまがり 製糸工場の女性をはやし立てた子どもの失言 きさんじー 立派な、見事な。例.あの えーの 稲わ きさんじー ぎすい 滑りが悪い。例.この 戸は ぎすくて いけんで なおして おくんな きび (1)トウモロコシ、(2)気味 きびしょ 急須 きもがみじかい 短気である ぎゅーす こらしめる、ひどい目にあわす (布団を)きる (布団を)掛ける きんのう、きんにょー 昨日 きんたまのちーせーやつ 小胆の者 くつば(か)す、くすば(か)す くすぐる くつばってー、くすばってー くすぐったい くさくさ、ぐさぐさ 固く締まっていない くざる、く°ざる 悪口を言う ぐしゃつく 水気が多くなる ぐしゃったみ 湿地 くすか°る 刺さる。「串」が「上がる」が語源であるという。現在は串のみならずトゲや矢、釘などさまざまものに対して用いる。なお「刺す」は「くすげる」と「くすぐ」の2通りがある。 くちめんずり 口先ばかりで生意気を言う(辰野)、うわさ話で争いを起こす(駒ヶ根・赤穂)、他人の悪口、陰口を言ったため恨まれる(中川) …くに …のように。例.あのくに いのいちゃー 体に どくだに くねっぽい 年よりませてみえる。例.この ぼこわ ばかに くねっぽいなえ くべる 燃やす くます くずす くむ (1)崩れる、(2)交換する くりょ くれ くるいっこ、くりっこ 戯のとっくみあい ぐるら、ぐるわ 周り、周囲 くろ 田のへり、耕作地の縁ぞい くわずみ、くわぐみ 桑の実 けーど けれども けーむし 毛虫 げーもねー 無益な、つまらない けしくりからん 不都合だ、よろしくない。例.そりゃー けしくりからん ことだぞやい けっからかす 蹴飛ばす けぶ、けむ、けも 煙 げほーもねー 過度にたくさん けもねー 造作もない けやす 消す。例.火を けやす げんと てきめん。例.この薬は げんとに きいて たまけ°た …っこ …するはずがない。例.いきっこ ごーか°わく 腹が立つ。例.こんねに ごーか°わいた こたー ねーよ こーぜ、こーぜー 文句、理屈、言いがかり こき° 枯れ枝 こく (1)言う、(2)打つ・叩く・殴る。例.頭を こかれて こぶか° できた(3)脱穀する こく°り かたまり こくれる 遅れる。例.種まきか° しゅんに こくれちまった こけ (1)ばか、やぼ。例.ゆーだけ こけだで やめとけよ。(2)魚の鱗 こける 転ぶ こさえる、こせーる 作る こしょー、なんばん 唐辛子 こすい ずるい こずむ 沈殿する ごとーむし カミキリムシの幼虫 ごへーもち(五平餅、御幣餅) 竹串、板串へ挿しまたは練りつけて焼き、味噌を塗ってさらにあぶった飯団子 ごまくら、ごまこ°ま しきりと人を欺く手管を使うこと ごまくらかす ごまかす ごむせー 汚い。例.そんな ごむせー しこーを して きちゃー みっともねーぞ ころましー 見事な。例.なんちゅー ころましー 柿ずらなえ こわい 硬い こわる(1) 壊す こわる(2)、こわす くずす。例.一万円札をこわる こんだ 今度 …さ …さん さいなら さようなら (桑が)さく (桑の)芽が伸びて葉が伸びる さけをころしてのむ 酒をちびりちびり飲んで酔った風をしない さざむし トビケラ類の幼虫 ささらほーさら さんざんな状態、 徹底的にダメなさま。救いようのないさまの例えである「ササラ先穂」を語源とする説がある。 さす (警察などに)密告する さっきに、いつに とっくに さっきゃく さしあたり、とりあえず さびお 絆創膏 さぶい 寒い …さら、…せら、…まし …ごと さらける(1)、さらけおちる、さらけくずれる 烈しく転落する、転げ落ちる さらける(2) (1)かきちらす、(2)露出する。北部では「捨てる」の意味でも用いる。 さわす (1)水に浸して柔らかにする、(2)渋を抜く しあさって、しなあさって、しのあさって 明々後日。東京中心部を除く東日本では明々後日のことを「やのあさって」、明々々後日のことを「しあさって」と言い、西日本や東京中心部では明々後日のことを「しあさって」、明々々後日のことを「やのあさって」と言うが、上伊那では西日本系のしあさって類を用いる。ただし北端部の辰野町小野では東日本系の「やのあさって」と混用されている。また、南部では「しがさって」とも。 しきね 敷布団 しくる しくじる しける 雨天になる しこる じっとしている しじつ 手術 (風呂に)しずむ (風呂に)浸かる …しな …ながら しにゃー、せにゃー しなければ。北部では「しねーけりゃー」とも。 しみ 寒気 しみる 寒気が激しい しもけ°る 凍傷を起こす、霜焼けになる。例.手か° しもけ°た もんで かいくて こまる じゃける ふざける …じゃん、…じゃんか (1)…じゃないか、…だったでしょう(自分の推定に他人の承認を求めている、控えめな主張、やわらかい断定)(2)…うよ(勧誘)。例.一緒に カツ丼を食べる じゃん しょいこ、しょいた ワラ製の背負い具。「しょいこ」は北部で「ワラ製の背負い袋」の意味も。 しょーか°ねー 物が腐ってもろいこと しょーわる 臆病。例.しょーわるで 1人じゃー どけーも 行けねー しょずむ つかむ。例.どじょーを しょずむ じょぼじょぼ ずぶ濡れ しょぼろったい 気障りだ じょろじょろ 艶めかしいさま。例.女か° じょろじょろ あいってた しわい けちくさい しん しない。北部では「しねえ」、南部では「せん」とも。 しんしゅーのつれしょんべん(信州の連れ小便) 人がすれば俺もする しんぜる 神仏に供える しんとー 物の中心 …ず (1)…だろう(推量)、(2)…ない(否定)、(3)…しよう (意思) すい 酸っぱい ずいた 性質(悪意)、性格、品性 すかんたらしー いやらしい ずく 熱心さ、ことをする気力、やる気。例.ずくのある人だ(やる気があり、従って根気もあり、精出し、骨惜しみをしない)。「怠け者」は「ずくなし」、「怠ける」は「ずくを病む(ずくーやむ)」もしくは「ずくを抜かす(ずくーぬかす)」と言う。また派生語に「まともな仕事をやり遂げる気力」「大きな仕事はするが小さな仕事を嫌う」「仕事が遅い」などを意味する「おーずく」、「細々とした仕事に精を出す」ことを意味する「こずく」がある。前者は形容動詞、後者は名詞。意味合いの独特さ、信州らしさなどの理由から長野県ではポピュラーな方言である。伊那谷ではずくの有無は人を評価する上での指標ともなっており、「ずくがある」か「ずくなし」かによって将来までも予告されてしまうほどであったという。語源にはさまざまな説があるが、そのいくつかを以下に示す。 「ずつ(術=手段・方法=能力)」の転訛とする説(小宮山説) 山梨県や下伊那で「足」「足の甲」を意味する「ずか」を語源とする説(青木千代吉説) 中信地方などで、「すねたり、意地を張ったりする」「ニワトリが卵を抱いて温める」ことを意味する「ずくねる」と繋がっているとする説(福沢武一説) 「苦労する」「疲れる」を意味する古語「いたづく」の上略とする説(岩波泰明『諏訪の方言』) 「直立するもの」の名であった「つく」を語源とする説(柳田國男説) 「骨」を意味するという説(柳田國男説) すねくる 駄々をこねる、すねる すべくる つるりと滑る。例.道か° 凍ってる もんで よく すべくって あぶねー …ずら、…だら、…ら …だろう、…でしょうの意。このうち「…だら」は、1949年の『上下両伊那方言の境界線』や1980年の『上伊那方言集(改訂版)』では、太田切川以南(=駒ヶ根市赤穂以南)でのみ使われるとされていたが、その後北上を続け、1999年の調査では北端部、塩尻市との境まで分布が確認された。 ずるい 遅い。例.仕事の ずるい 人だ すれる 仲が悪くなる せーどない 騒がしい、うるさい せこをかう、せこーかう 入れ知恵する。北部では「けしかける」の意味でも用いる。 せせじらみがくいついたよー 特別執拗に交渉または請求される場合 せせる、せせくる 集まってくっつく せんねんよ 棟上げ祝いに餅を投げること。北部では餅の名称も同様に呼ぶ場合がある。 そーいだ そういうわけだ。例.おめー そーいだでなー りょーけん してくりょよー そーえ そうですね ぞぜーる (1)甘える、(2)ふざける、(3)わがままを言う。南部では「どぜーる」とも。 そそくる つくろう そっぺか°ねー、そっぺもねー、そっぺなしだ 愛想がない そのまんま そのまま ぞもぞも、ぞむぞむ 寒気を感じる ぞろっぺー だらしがない、投げやり たーくらたー 間抜け だいじょー 大丈夫 たける、たきる 獸類が発情して騒ぎ立てる だだくさもねー 必要以上に大量にあるさま。例.お菓子を だだくさもねー 買っちまった たたっからかす めちゃくちゃ叩く たたった 建った (戸や障子を)たつ (戸や障子を)閉める (虹が)たつ、ふく (虹が)出るの意。この表現は箕輪、伊那、旧高遠町三義、駒ヶ根市中沢、飯島などに散らばって分布する。 たっこねー 物言いが幼稚だ だっちもねー、らっちもねー つまらない、くだらない。例.だっちもねー ことー ゆーと わらわれるぞ たっぽれる (1)目的なくさまよう、(2)ボケる …だに …だよ たねる 束にする だまかす(1) なだめる だまかす(2)、だまくらかす 欺く ためる 狙う たるくさい、とろ(っ)くさい、とろい まだるい たわけ、たーけ ばか者 たわけた、たーけた 愚かな たんだ ただ たんと たくさん たんま タイム ちき° 秤(はかり) ちびる 大小便を少し漏らす ちゃっと すぐに …ちゅー …という ちゅーど 当時 ちょーちんや(提灯屋) 一旦筆を染めた字に、も一度手を加える(えどる)こと ちょろっこい 要領が悪い ちんじゅー 縮れ毛 ちんぼ 男性器 つく 浸水する つくなる 力尽きてしゃがみこむ、立つに堪えないでうずくまる つくねる (1)積む・重ねる、(2)整理しないで物品を積んでおく つっからかす 突きまくる つぶ タニシ。南部では「つぼ」とも。 つまい 窮屈だ。衣類等が窮屈な場合に使われる。「つまる」の形容詞化によって「つまい」が生まれたという。「つもい」を用いる地域もあり。 つめる しめる、とじる、はさむ。例.戸で 手を つめる つよ 露 てか°えし こねどり で かさ、量。例.この かつぶしわ でか° あるなえ …(だ)で、…(だ)もんで …(だ)から てしこ (1)手段、(2)しまつ、(3)力量 てしょ 小皿 てっぺんずけ 最初に でんきんばしら 電柱 てんずけ 最初から、いきなり でんでんまっこ ぐるぐると自分で回ること でんぷに 多量に、贅沢に どいれー、どえれー ひどい、非常な どーいで どうして とーし 篩(ふるい) とーととと 鶏を呼び寄せる声 とーり 土間。南部では「にわ」とも言い、下伊那と接する地域では「にわ」の方が多い。 とか°める 治療すべきところを化膿させ、悪化させる とき°る 尖る とこ たたみ とこば 床屋。例.はやくとこばへ行ってこい とっつく 到達する とと (1)鶏、(2)魚。例.白いマンマにととせーて食うとうまいなえ どどめき、どんどぶき 小さい滝 とびっくら かけっこ とぶ 走る どべ 最下位 とよ 雨どい とりあべる (1)いろいろと組み合わせる、(2)手持ちのものでなにかと間に合わせる とろい 弱い どやす (1)腕ずくで強打する、(2)大声で叱りとばす どろぼーぐさ ヌスビトハギ。北端部では「ばか」とも。 どんど、どんどん、どんどっこ 水の落ち口、堰、滝壺 どんどやき 道祖神の火祭り なかっせ 長男と末子との中間の子供 なききる 泣きに泣いて声も立たなくなる なぜる、なぜくる 撫でる なめくる 舐める ならかす ならす なるい (1)勾配が弱い、(2)寒さが穏やかだ、(3)感覚的に温和である …なんしょ、…ないしょ …なさい。例.おやすみなんしょ …なんだ …なかった。例.行かなんだ …なんでも、…んでも、…でも、…ども …なくても …に (1)…よ、(2)…のに、(3)…から にくたらかす グツグツと長く煮る、形の崩れるほど煮る にすい 未熟である にどいも 馬鈴薯 にねんまいり 大晦日から深夜0時の年明けにかけて神社にお参りに行くこと にばんせ 次男 にる 炊く …にゃ、…にゃー、…な …なければ ぬくとい 暖かい ねこのしっぽ 未子 ねっから ろくに、まるで のせ 傾斜 のり 傾斜面 はーるか 久しく、ながらく はーるかぶり 久しぶり はう 除草する はずむ 大小便を催し堪え切れなくなる ばっか ばかり。例.俺ばっか怒られる はっちらがる 先を争う はっちる (1)はねあがる、(2)張り切る はつる 剃り落とす はなる、はなーる 始まる はならかす 離す はねーる 始める ばばい 汚い。例.てーてか° ばばいで あらっといで はやいとこ 早く ばら 野茨 ばらんけん いい加減 はんじくなる 屈み腰になる。しゃがむ。南部では「ほんじょくなる」とも。 びしょってー 汚らしい。例.いかにも びしょってー しこーを して 来た もんだ ひずこく、ひずーこく 苦労する。上伊那全域で使われているが、隣郡には拾われておらず上伊那独自の方言であるという。福沢武一は、岐阜県や愛知県の方言で元気・勢力を意味する「ひず」との繋がりを指摘している。 ぴすけっと ビスケット ひだす 穀物を箕に入れ、ちりくずを出す びちゃ(ー)る、ぶちゃ(ー)る、ぱいする、ほーる(1)、ほかす(1) 捨てるの意。北部では「さらける」、「ふてる」とも。「びちゃ(ー)る」「ぶちゃ(ー)る」は「打ちやる」がつづまったとする説、「うて(捨て)」に「やる」が結合し変化したという説がある。「ぱいする」の「ぱい」は「投げ捨てる」の擬態語。 ひとじゃく 一人前 ひとなる、しとなる 成長する。例.この 犬わ めた 食べる せーか どんどん ひとなるよ。「人」と「成る」が語源であるという。 ひどろっこい 眩しい ひび 蚕のサナギ ひまぜー むだ手間 ひやかす 浸す ひやめしこぞー 次男以下の子供 ひる 用をたす、大小便を排泄するの意。北部では「まる」とも。 ふっせ 種子を蒔かずに生えた野菜 ふんと 本当、確実 へー (1)もう。南部では「はい」とも。(2)蠅 へつる こっそり抜き取る へぼい 程度が低い へら 舌 へりこじえる 過度の空腹で変調子になる、腹が減りすぎてかえって食欲を失ってしまう・もう何もする気力もなくなっている ほーったね 頰 ほーる(2)、ほかす(2) 投げる。「ほーる」は「はふる(葬る)」が語源である。「ほかす」は「放下(投げ捨てること)す」のつづまったもの。 ほきだす 吐き出す ぼける 保存してある果実が柔らかくしまりがなくなる。例.このリンゴはぼけとっておいしくない ぽこぺん かくれんぼの一種 ほっそく 山奥 ほとーる 熱を持つ ぼぼ (1)ひとみ、(2)ネギの花、(3)人形、赤ん坊 ぼや、ぼさ 柴、枯れた小枝。南部では「もや」とも。 ほんなら それなら。例.ほんなら俺はやめとくよ ほんに 本当に まーず (1)とにかく、(2)先ず。例.まーず驚いた …まいか …しませんか(勧誘)。例.行かまいか まえで、まいで、めーで 前方。例.めーでの 人の かけ°で めーなんだ ましょくにあわん 働き損だ まぜくる 混ぜ合わす まっと もっと まつめる (1)かわいがる・子どもをなつける、(2)集める・まとめる ままやく 吃る まめ (1)大豆、(2)健康・丈夫。例.あねさんは ふんとにまめで たまげたよ まるかる 丸まる …まるけ …だらけ まんが (1)稲こき機、(2)代かき用の馬鍬。南部では「万能鍬」の意味も。 まんま …まま。例.いじらなんで その まんま 置いた みー 見ろ みえる いらっしゃる みじく (1)意気地がない、(2)未熟 みして 見せて みしょ 見せろ みやく 磨く みやましー (1)甲斐甲斐しい、勤勉な、よく働くこと。例.あの 人わ 何をやっても みやましー 人だ。(2)体裁が良い。上伊那地域では「磨く→みやく」といった音韻変化があるが、それと同様な変化として「みがましー→みやましー」となった可能性を福沢武一は指摘する(「みがましー」は上伊那の「みやましー」と同様の意味で愛知県や静岡県で用いられる)。また一方で福沢は、「(他の甲斐甲斐しさを目にし)み(=おのれ自身)をせめる」から「みやむ」という動詞が成り立ち、「みやましー」が成立した説も唱えている。 みんなして 皆で むく (1)まるで…ない、(2)雛をかえす むしっぽい (1)蒸し暑い、(2)気むずかしい、(3)吐き気がする、(4)虫がいるのか子供がむずかりがちである むせっぽい、むせったい むせそうである むらう 貰う めこじき ものもらい めそめそどき たそがれ めた、めためた やたらに、ひっきりなしに。例.今日わ めた 人か° 来て 忙しかった めめぞ みみず もーる 漏れる もちーいく 取りに行く もみついて すずなりに ももっか 化け物 もんも お化け やいやい おいおい、おやおや。例.やいやい大変なことになった やえる 重複する。「八重」を動詞化したもの。 やくざ 何も仕事のできない人、またしない人 やしむ 叱る。例.しょーか° つくよーに うんと やしまれるか° いーわ やたかましー、やたかしー 騒々しい やっこい 柔らかい。北部では「やこい」、南部では「やーこい」とも。 やっぱ、やっぱし やっぱり やんか (1)ふざけること。例.あいつも やんか こぞーだで よわる。(2)こごと ゆいつける 結びつける、縛りつける ゆー 言う。ゆわ-(未然形)、ゆい-(第1連用形)、ゆっ-(第2連用形)、ゆうぇー(目的形)、ゆやー・ゆうゃー・ゆうぃゃー(仮定形)、ゆうぇ(命令形) よ 戸主権。例.むすこに よをゆずる よーせー 弱い …よか …より、…よりかも。例.それよか こっちの 方か° いーぜ よけー 余分。例.よけーにとっておいた よじめる 縮める、開いたものを狭くする よせる (洗濯物を)取り込む よたっこ 乱暴者 よど よだれ よばる 呼ぶ、招待する よべーぼし 流れ星。「夜這い星」の転訛。 よりあう 協力する らくになる 死ぬ れろ 弁 わかされ 道の分岐点 わきゃーねー 容易だ。例.そんな こと く°れー わきゃーねーぜ わく°む、わこ°む 歪む、曲がる わし 私 …ん (1)…の、(2)…ない(否定)、(3)…ないか(勧誘) …んならん …なければならない
※この「広域など」の解説は、「上伊那地域の方言」の解説の一部です。
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