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キヤノン、新インクで発色を向上させた複合機/プリンタ08年モデル最上位はグレーインクを装備(1/3 ページ)

» 2008年09月17日 13時00分 公開
[前橋豪,ITmedia]

色域を広げた新染料カラーインクとグレーインクで高画質化

複合機の最上位機「PIXUS MP980」

 キヤノンは9月17日、インクジェットプリンタ製品群の「PIXUS」シリーズに属する個人向けA4複合機5モデル、およびA4単機能プリンタ2モデルを発表した(発表会の模様はこちら)。いずれも10月上旬に発売する予定だ。複合機と単機能プリンタのエントリーモデルである「MP470」と「iP2600」は継続販売され、2008年秋冬の主要ラインアップは全9モデルの構成となる。ドライバの対応OSはWindows XP/Vista、Mac OS X 10.3.9以降。

 モデルチェンジにおける最大の特徴は、新インクの採用だ。新型の染料インク(BCI-321/BC-311)を採用することで、全体の色域を広げており、特にレッドの領域(イエロー/レッド/マゼンタ)を拡大している。主力の写真用紙「キヤノン写真用紙・光沢ゴールド」と組み合わせた場合で約10%、新たに追加された最上位写真用紙「キヤノン写真用紙・光沢 プロ プラチナ」と組み合わせた場合で約30%の色域拡大を実現したという。ちなみに、文書印刷用の顔料ブラックインクは引き続き搭載される。

 キヤノンの染料インクと純正写真用紙の組み合わせによる写真の長期保存システム「ChromaLife 100」(クロマライフ100)についても「ChromaLife 100+」に強化された。キヤノン写真用紙・光沢ゴールドを使用した場合で、アルバム保存性は約100年から300年以上に延長されている。耐光性(フォトフレーム保存)は約40年、耐ガス性(混合ガス)は約20年をうたう。

グレーインクを採用したMP980のインクカートリッジ部。LED付きの各色独立カートリッジは健在だ。

 新インクの採用とともに、一部モデルのインク構成を変更したのもポイントだ。複合機最上位モデルの「MP980」は今回の新製品で唯一、染料グレーインクを採用。その代わりに前モデルの「MP970」が搭載していたフォトシアンとフォトマゼンタの薄いインクを排除し、染料のシアン/マゼンタ/イエロー/グレー/ブラックと顔料ブラックからなる全6色インク構成とした。

 グレーインクの効果としては、モノクロ写真印刷での粒状感を抑え、色かぶりせずに安定したグレーの階調を出せることが挙げられる。また、カラー写真印刷でも下地としてグレーインクを多く打ち込むことで、低彩度域の色再現性を左右するニュートラルなグレーの色調を安定させている。このグレーインクと色域を広げた新型の染料インクによって、総合的な印刷品質はインク数で勝るMP970を上回るという。

 そのほか、エントリークラスの複合機「MP540」と単機能プリンタ「iP3600」には、上位モデルと同じ染料ブラックインクが追加された。従来機では染料イエロー/マゼンタ/シアンの3色を混合して写真の暗部を表現していたため、やや黄色っぽくなる傾向にあったが、黒の締まりが向上している。

ロープロファイルのインクタンクで本体はさらに小さく

 本体の小型化も新モデル共通のトピックだ。前面トレイと後トレイの2系統給紙機構を受け継ぎながら、両面印刷用の給紙ユニットの小型化、スキャナ部とプリンタ部の配置見直し、インクタンクのロープロファイル化といった変更により、本体サイズをさらに小さく仕上げている(「MP480」のみ前面トレイがなく、後トレイとスキャナの配置適正化、カートリッジのロープロファイル化を行なった)。

 例えば、複合機上位2番目のモデル「MP630」と前モデルの「MP610」を比較した場合、横幅こそ変わらないが、奥行きは21ミリ、高さは12ミリ削減された。MP630の本体サイズは450×368×176ミリ、重量は約8.8キロだ。本体サイズに加えて、梱包箱を小型化することで、環境にも配慮している。

トレイと液晶を閉じた状態のMP630(写真=左)とMP610(写真=右)。奥行きと高さが短くなった

 一方、本体の小型化を優先したため、前面の給紙カセットにはL判やはがきをセットできなくなり、普通紙専用に変更された。また、ロープロファイルのインクタンクを採用したことで、インク搭載数が減ったMP980以外のモデルではインクコストがわずかに上昇するなど、トレードオフとなった部分もある。

 本体の基本的なデザインは、従来からのボックス型を継承しているが、今回はボディの角に見られる緩やかな曲線の仕上げにこだわったという。カラーはメタリックシルバーとピアノブラックを組み合わせている。複合機はシルバーベース、単機能プリンタはブラックベースのカラーリングだ。

 標準装備のネットワーク機能は従来機より進化した。昨年のラインアップでは最上位のMP970だけが100BASE-TXの有線LAN機能を搭載していたが、今年はMP980と「MP620」の2モデルが100BASE-TXの有線LANとIEEE801.11b/gの無線LANを備えている。

新型のインクタンクは背が低いロープロファイル仕様となった(写真=左)。顔料ブラックのインクタンクのみ大きめだ。MP480を除くモデルが搭載する前面の給紙カセットは、普通紙のみを150枚セットできる(写真=中央)。ホイール型ユーザーインタフェースの「イージースクロールホイール」を引き続き採用する(写真=右)。中央と右の写真はMP630だ

そのほかの各種機能もブラッシュアップ

 印刷機能に関しては、昨年の目玉だった「自動写真補正」機能を強化。従来はカード/カメラダイレクト印刷、フォトナビシートによる印刷、写真印刷統合ソフト「Easy-PhotoPrint EX」および入力統合ソフト「MP Navigator EX」からの印刷において、同機能が利用できたが、かんたん写真焼き増し、手書きナビ、フィルムプリントといった機能にも対応した。手書きナビは写真に手で書いた文字や図形を合成できる機能だ。また、カード/カメラダイレクト印刷や「Easy-PhotoPrint EX」では、自動補正機能で赤目補正が可能になった。

新モデルはカードスロットにメモリカードを装着すると、カード内の画像を自動的に液晶モニタに表示する。写真はMP980だ

 ダイレクトプリントやスキャンの使い勝手も向上した。メモリカードを装着するとカード内の画像を、デジカメとUSBケーブルで接続するとデジカメ内の画像を自動的に表示するようになったため、メインメニューから各機能を選ぶ手間が省かれ、ダイレクト印刷を行なうまでの作業が7ステップから4ステップに短縮された。

 スキャン機能では、原稿をセットしてスキャンボタンをクリックするだけで、原稿を自動判別し、原稿に適した設定でスキャンから保存までを行なう「おまかせスキャン」が新たに利用できる。本体に装着したUSBメモリやメモリカードにスキャンしたデータを直接保存できる機能も持つ。データの保存前には本体の液晶モニタでプレビューが可能で、PCと接続せずにスキャンが行えるようになった。

 手書きナビには、文字のフチや吹き出し部分をさまざまなカラーや模様で塗りつぶせる機能や、CD/DVD手書きナビシート利用時に元画像を薄く出力できる機能が追加されている。そのほか、リポート用紙や方眼紙、チェックリスト、五線譜、写真入りの各種カレンダー、13種類のサイズから選べる証明写真をPCいらずで印刷できるようになった。

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