以下、本発明に係る加熱調理器を、ビルトイン型の誘導加熱調理器に適用した場合の実施の形態を、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、図面に示す加熱調理器は、本発明の加熱調理器が適用される機器の一例を示すものであり、図面に示された加熱調理器によって本発明の適用機器が限定されるものではない。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これらは説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。また、以下の説明において「上流側」、「下流側」というときには、空気の流れにおける上流側、下流側をいうものとする。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器100が設置されたキッチンキャビネット200の斜視図である。図1に示すように、加熱調理器100は、キッチンキャビネット200に組み込まれて使用される。キッチンキャビネット200は、作業台として使用される平板状のキッチン天板を上面に有し、このキッチン天板の上に、加熱調理器100の天板2が露出している。キッチンキャビネット200には、加熱調理器100の下側の位置に、収納庫が設けられる場合もある。なお、本明細書において加熱調理器100の「前面」、キッチンキャビネット200の「前面」というときには、加熱調理器100又はキッチンキャビネット200のユーザと対向する面をいう。
加熱調理器100の前面には、後述する保管庫30の扉39が設けられている。扉39の左右それぞれには、前パネル6が設けられている。前パネル6は、加熱調理器100の前面の意匠性を向上させるための化粧パネルである。前パネル6の前面と扉39の前面とは、概ね同一面上に位置しており、両者の間に凹凸がないことで加熱調理器100の前面の美観を向上させている。
本実施の形態の加熱調理器100は、天板2の加熱口5に載置される調理容器及び調理容器内の食品を加熱する機能と、天板2での加熱に伴って発熱する部品を冷却する機能とを有している。さらに本実施の形態の加熱調理器100は、保管庫30内の温度制御を行う機能を有している。保管庫30内は、加熱又は冷却され、保管庫30に収容される食品などの保管物の温度管理が保管庫30にて行われる。以下、これらの機能を実現する具体的な構成を説明する。
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器100の斜視図である。加熱調理器100は、天板2と、天板2の下側に設けられた本体ケース3とを有する。天板2と本体ケース3とによって、加熱調理器100の外郭が構成されている。本実施の形態では、天板2と本体ケース3とを、筐体1と称する。
天板2は、鍋などの調理容器が載置される板状の部材であり、例えば耐熱ガラス製である。天板2には、加熱口5が設けられている。加熱口5は、天板2の上に載置される被加熱物の加熱領域である。本実施の形態では、2つの加熱口5が設けられた例を示すが、1つあるいは3つ以上の加熱口5が設けられていてもよい。
加熱調理器100の後部には、筐体1内からの排気を流出させる排気口9(図3参照)の上を覆う排気口カバー4が設けられている。排気口カバー4には、通風可能な開口が設けられている。排気口カバー4に設けられる開口は、例えば、排気口カバー4の幅と同じかこれよりも小さい幅のスリット状の開口である。
本体ケース3の前面及び左側の側面には、導入口7が設けられている。導入口7は、筐体1の内部と外部とを連通させるための開口である。導入口7を介して、筐体1内に空気が流入する。導入口7の少なくとも一部は、加熱調理器100の前後方向において中心よりも前側に配置されているのが好ましい。さらに好ましくは、導入口7のすべてが、加熱調理器100の前後方向において中心よりも前側に配置されているとよい。導入口7を筐体1の前側に配置することで、加熱調理器100の前部が対面する室内の常温の空気を、導入口7から筐体1内に導入しやすい。本実施の形態では、導入口7が複数の開口によって構成された例を示すが、導入口7の開口の数は図示のものに限定されない。
前パネル6と本体ケース3の前面との間には、隙間が設けられている。本体ケース3の前面には、前パネル6と対面する位置に、保管庫吸気口10が設けられている。保管庫吸気口10は、筐体1の内部と外部とを連通させる開口であり、本体ケース3の前側の壁を貫通している。保管庫吸気口10には、フィルター8が設けられている。フィルター8は、保管庫吸気口10を介して塵埃等が筐体1内に流入しないようにするために設けられている。フィルター8は、保管庫吸気口10に対して着脱自在であるとよい。
加熱調理器100には、ユーザからの操作入力を受け付ける操作部24と、情報を表示する表示部25とが設けられている。操作部24は、例えば、押しボタン、ダイヤルスイッチ、又は静電容量式タッチスイッチ等で構成される。表示部25は、液晶ディスプレイ又はLED等の視覚的に情報を報知する装置を有し、加熱調理器100の火力、タイマーの時間等の動作状態及び、ユーザが操作部24で入力するための選択肢、ユーザへの警告及び注意喚起の報知を行う。
図3は、実施の形態1に係る加熱調理器100の、天板2及び排気口カバー4が取り外された状態の斜視図である。図3では、扉39が引き出された状態を示している。本体ケース3の中には、副筐体11が設けられている。副筐体11は、本体ケース3内を上下に仕切る底板を有し、本体ケース3内の上部に収容空間を形成している。副筐体11内、すなわち副筐体11の上側には、加熱コイル12、冷却送風機13及び冷却ダクト14が設けられている。
加熱コイル12は、図2に示した天板2の上に載置される被加熱物を加熱する加熱装置の一例である。加熱コイル12に高周波電流が供給されると、加熱コイル12の周囲に高周波磁界が発生し、鍋等の調理容器が誘導加熱される。加熱コイル12は、図2に示した加熱口5の下に配置されている。加熱コイル12に代えて、あるいはこれに加えて、ラジエントヒーターなどの電気ヒーターを設けてもよい。また、本実施の形態では加熱装置として2つの加熱コイル12を設けた例を示すが、加熱装置の数は1つあるいは3つ以上であってもよい。加熱装置は、保管庫30の外部に配置される被加熱物を加熱するものであればよい。
冷却送風機13は、副筐体11内に配置される発熱部品に冷却風を送るための送風機である。冷却送風機13の冷却対象である発熱部品は、加熱コイル12と、図4に示す第1制御回路20、駆動素子21及びヒートシンク22とを含む。本実施の形態では2つの冷却送風機13を設けた例を示すが、冷却送風機13の数は1つあるいは3つ以上であってもよい。
冷却ダクト14は、冷却送風機13から送出された冷却風を、発熱部品に導く。冷却ダクト14には、加熱コイル12の下に開口する図示しない吹出口が設けられている。冷却送風機13から送出され冷却ダクト14内に流入した冷却風は、冷却ダクト14の吹出口から出て加熱コイル12の表面に衝突し、加熱コイル12を冷却する。
副筐体11の後部には、副筐体11内を前後に仕切る仕切板15が設けられている。仕切板15は、加熱コイル12よりも後ろであって、排気口9よりも前に配置されている。また本実施の形態の仕切板15は、副筐体11の底板から上へ概ね垂直に延び、屈曲して後に向かうほど上昇するように傾斜した形状を有する。仕切板15は、排気口9の下側に位置する排気風路16と、副筐体11の内部とを前後に仕切っている。
仕切板15には、第1開口17が設けられている。第1開口17は、排気風路16と副筐体11の内部とを連通させる。本実施の形態では、仕切板15に2つの第1開口17が設けられている。第1開口17は、加熱コイル12が配置された領域を後方へ延長した領域と重なる位置に設けられており、加熱コイル12を冷却した後の冷却風が、第1開口17を通って排気風路16に流入する。
排気口9は、筐体1内の空気を外部へ排出するための開口である。本実施の形態では、排気口9は、筐体1の上面において開口している。排気口9は、筐体1に形成されていればよいが、本実施の形態では天板2の枠の後部に排気口9が設けられている。
保管庫30内には、保管容器40が設けられている。本実施の形態では、保管容器40は、扉39に連結されている。扉39は、前側へ引き出し可能に構成されている。扉39が引き出されると、扉39とともに保管容器40が保管庫30の外へ出る。扉39及び保管容器40は、可動レール42aと連結されている。可動レール42aは、前後に延びるレールである。図3では示されていないが、扉39及び保管容器40の右側にも可動レール42aが設けられている。可動レール42aは、図8に示す固定レール42bに対して摺動可能に係合しており、可動レール42a及び固定レール42bによって扉39及び保管容器40が前後に移動する。なお、保管容器40を設けず、保管物を保管空間36に配置する構成であってもよい。また、本実施の形態の扉39は、前後に移動することで保管庫30を開閉する構成であるが、回動可能に支持された扉39を保管庫30に設けてもよい。
図4は、実施の形態1に係る副筐体11内の構造を説明する斜視図である。副筐体11の底の後部には、第2開口18が設けられている。
副筐体11内には、第1制御回路20と、駆動素子21と、ヒートシンク22とが設けられている。第1制御回路20は、図3に示した加熱コイル12を用いた被加熱物の加熱動作を制御する電気回路である。駆動素子21は、図3に示した加熱コイル12に高周波電流を供給するインバータ回路に含まれるスイッチング素子である。駆動素子21は、IGBT及びダイオードブリッジを含みうる。ヒートシンク22は、駆動素子21に熱的に接続されており、駆動素子21からの熱を放出する機能を有する。駆動素子21及びヒートシンク22の少なくとも一部は、図3に示した冷却ダクト14によって上から覆われている。本実施の形態では、冷却送風機13からの冷却風の流れ方向において、駆動素子21及びヒートシンク22の下流側に、第1制御回路20が配置されている。発熱量の大きい駆動素子21及びこれに接続されたヒートシンク22を、冷却風の流れにおいて第1制御回路20よりも上流側に配置することで、より温度の低い冷却風にて効率よく駆動素子21を冷却することができる。
図5は、実施の形態1に係る副筐体11の下側からの斜視図である。副筐体11の底には、導入口111が設けられている。導入口111は、副筐体11の内部と外部とを連通させる開口であり、副筐体11の底を貫通している。導入口111は、図4に示した冷却送風機13の吸込口に対向する位置に設けられている。図3に示した導入口7から吸い込まれた筐体1の外部の空気は、副筐体11の導入口111を介して、冷却送風機13に吸い込まれる。本実施の形態では、導入口111が複数の開口によって構成された例を示すが、導入口111の開口の数は図示のものに限定されない。
副筐体11には、第2開口18が設けられている。第2開口18は、副筐体11の底を貫通した穴である。本実施の形態では、副筐体11の底の後部の左右それぞれに、第2開口18が設けられている。第2開口18は、排気風路16と、排気風路16の下側に配置される後述するダクト50とを連通させる開口である。後述するダクト50と同数の第2開口18が設けられる。
図6は、実施の形態1に係る本体ケース3及び保管庫30の斜視図である。図7は、実施の形態1に係る保管庫30及びダクト50の斜視図である。図7は、図6から本体ケース3を除いた状態を示している。本体ケース3内には、ダクト50が設けられている。本実施の形態では、保管庫30の左右それぞれに、ダクト50が設けられている。本実施の形態の2つのダクト50は、基本的な構造が同じである。
ダクト50は、保管庫30の前後方向に沿う空気の流路を内部に有している。ダクト50の前部には入口51が設けられ、ダクト50の後部には上に向かって開口した出口52が設けられている。ダクト50の入口51は、前に向かって開口している。図6における本体ケース3の保管庫吸気口10の内側に、図7に示すダクト50の入口51が位置する。なお、図の煩雑化を防ぐため、保管庫吸気口10と入口51のいずれか一方のみを図示する場合がある。ダクト50の出口52は、図5で示した第2開口18と対向する位置に設けられている。本体ケース3内に図5に示した副筐体11が収容された状態において、ダクト50の出口52は、第2開口18に接続される。
図8は、実施の形態1に係る保管庫30及びダクト50の分解斜視図である。保管庫30の左右に設けられたダクト50は、基本的な構造は同じであるが、右側のダクト50は吸気管81が突出しているのに対し、左側のダクト50からは吸気管81が突出していない。ダクト50には、送風機60が一体的に設けられている。送風機60は、遠心ファン63を有する。本実施の形態では、ダクト50が、遠心ファン63のスクロールケーシングを兼ねている。ダクト50内に形成された空気の流路は、入口51から遠心ファン63に至るまでの部分が直線的であり、当該部分は保管庫30の前後方向に沿って延びている。
ダクト50には、熱移動ユニット70が設けられている。熱移動ユニット70は、保管庫30の内部と外部との間で熱を移動させるものである。本実施の形態の熱移動ユニット70は、第1部分71と、図10に示す第2部分72とを有する。第1部分71及び第2部分72は、アルミ、鉄、銅等の熱伝導率の高い材料で構成されている。第1部分71と第2部分72との間には、後述する図10に示すペルチェ素子73が設けられている。第1部分71の一部は、保管庫30の内壁に熱的に接続される。第1部分71は、取り付け部材74を介して、ダクト50の保管庫30側の壁に取り付けられている。取り付け部材74は、第1部分71をダクト50に固定するための部材であり、例えば合成樹脂で構成される。
遠心ファン63の上流側には、熱交換手段76が設けられている。ダクト50の入口51と遠心ファン63との間に、熱交換手段76が配置されている。熱交換手段76は、アルミ、鉄、銅等の熱伝導率の高い材料で構成された放熱板を有するヒートシンクである。本実施の形態の熱交換手段76は、空気の流路となる隙間を開けて設けられた複数の放熱板を有している。熱交換手段76は、図10に示す熱移動ユニット70の第2部分72と熱的に接続される。熱交換手段76は、ダクト50内を流れる空気と、熱移動ユニット70との間での熱交換を促進するための部材である。
左側のダクト50内において、遠心ファン63と熱交換手段76との間には、第2制御回路23が設けられている。第2制御回路23は、遠心ファン63及び熱移動ユニット70の動作を制御する電気回路である。左側のダクト50内には、送風機60の動作によって生じる気流の上流側から順に、熱交換手段76、第2制御回路23、及び遠心ファン63が配置される。本実施の形態では、第2制御回路23は左側のダクト50内に設けられているが、右側のダクト50内に第2制御回路23が設けられていてもよい。ダクト50内において、熱交換手段76の上流側には、図6及び図7に示したフィルター8が設置される。ダクト50の内面に、このフィルター8を保持するための構造として、例えばフィルター8の端部に係合する突起が設けられていてもよい。
保管庫30は、外壁37と内壁とからなる二重壁構造を有している。保管庫30の外郭を構成する外壁37の左右の側面には、熱移動ユニット収容部47が設けられている。本実施の形態の熱移動ユニット収容部47は、外壁37に形成された凹部である。この凹部に、熱移動ユニット70の第1部分71が嵌め込まれる。図8では、保管庫30の左側の外壁37に形成された熱移動ユニット収容部47のみが図示されているが、後述する図9に示すように右側の外壁37にもこれと同様の熱移動ユニット収容部47が形成されている。保管庫30の内壁は、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料で構成されているとよい。
保管庫30内に保管空間36を形成する内壁のうち、右側の側壁を、側壁33と称する。右側の側壁33には、固定レール42bが設けられている。固定レール42bは、前後方向に延びるレールであり、側壁33の下部に設けられている。図3に示した可動レール42aが、固定レール42b上を摺動する。図8には示されていないが、図10に示す左側の側壁32にも、固定レール42bが設けられている。
さらに本実施の形態では、保管空間36を形成する内壁の一部である、底35の下側に、補助加熱手段44が設けられている。図8では、補助加熱手段44の大まかな位置を破線で示している。補助加熱手段44は、保管庫30の保管空間36を加熱する加熱手段である。補助加熱手段44は、保管庫30の保管空間36を室温よりも高い温度にする際に使用される。補助加熱手段44は、例えば、抵抗発熱体を有するヒーターである。本実施の形態の補助加熱手段44は、底35の下に配置されており、保管空間36内において視認されない状態である。
図9は、実施の形態1に係る保管庫30、扉39、保管容器40及びダクト50の後ろ側からの分解斜視図である。右側のダクト50内には、減圧装置80が設けられている。減圧装置80は、保管庫30内を減圧するための装置であり、真空ポンプが主要な構成要素である。前述の図8では、減圧装置80から延びる吸気管81が図示されていた。減圧装置80は、右側のダクト50内の前後方向において熱交換手段76と遠心ファン63との間に設けられている。図8に示した左側のダクト50内における第2制御回路23の位置に相当する位置に、減圧装置80が設けられている。保管庫30の外壁37の右側の側面には、吸気管穴46が形成されている。吸気管穴46は、保管庫30の内部まで貫通している。図8に示した吸気管81が、吸気管穴46に挿入され、吸気管81の先端は保管庫30の内部と連通する。
扉39の後面には、容器支持部41が連結されている。容器支持部41は、保管容器40を下方から支持する部材である。扉39の開閉動作に伴って、扉39に連結された容器支持部41に支持された保管容器40が、保管庫30内に対して出し入れされる。容器支持部41は、本実施の形態では、枠状の部材であり、一対の可動レール42aの間に掛け渡されている。容器支持部41の概ね中央に設けられた開口には、保管容器40の底が嵌合される。
扉39の後面、すなわち保管庫30の内部と対向する面には、パッキン45が設けられている。パッキン45は、扉39と保管庫30の前面の開口の縁との間を塞ぐ部材であり、ゴム又はシリコンなどの弾性材料で構成される。パッキン45を設けることで、減圧装置80の作用によって保管空間36が負圧になった状態でも、外部の空気が扉39の周囲から保管庫30内に流入することを抑制できる。
図10は、実施の形態1に係る加熱調理器100の左右の縦断面模式図である。図10は、熱移動ユニット70を通る左右方向の縦断面を示しており、空気の流れを破線矢印で概念的に示している。保管庫30の保管空間36を形成する内壁のうち、左側の側壁32、右側の側壁33、天井34及び底35が図10では図示されている。保管庫30の外壁37と内壁との間には、断熱材38が充填されている。断熱材38は、発泡ウレタン又はガラスウールなどの熱伝導率の低い材料で構成されており、保管庫30の内外での熱伝導を抑制する。断熱材38を設けることで、熱移動ユニット70に依らない保管庫30の内外での熱移動を抑制することができる。
熱移動ユニット70は、第1部分71と第2部分72とに挟まれた位置にペルチェ素子73を有する。第1部分71及びペルチェ素子73は、断熱材38に囲まれている。ペルチェ素子73は、通電により一方の面から放熱し、他方の面から吸熱する素子である。ペルチェ素子73への通電方向によって、ペルチェ素子73の放熱面と吸熱面とが切り替わる。ペルチェ素子73の一方の面は第1部分71に熱的に接続され、ペルチェ素子73の他方の面は第2部分72に熱的に接続されている。ペルチェ素子73と第1部分71との接続面、及びペルチェ素子73と第2部分72との接続面には、熱伝導グリースが配置されているとよい。また、ペルチェ素子73と取り付け部材74との間に、断熱性能を有する例えばシリコン等の材料で構成された接着剤が充填されているとよい。
左側の熱移動ユニット70の第1部分71の、ペルチェ素子73とは反対側の面は、保管庫30の側壁32に熱的に接続されている。右側の熱移動ユニット70の第1部分71の、ペルチェ素子73とは反対側の面は、保管庫30の側壁33に熱的に接続されている。第1部分71と側壁32又は側壁33との間には、熱伝導グリースが設けられているとよい。第2部分72の、ペルチェ素子73とは反対側の面は、ダクト50内に配置された熱交換手段76に熱的に接続されている。図10に示されるように、右側の熱移動ユニット70と、左側の熱移動ユニット70とは、概ね左右対称に配置されている。
本実施の形態では、熱移動ユニット70の第1部分71の上端と下端との間に、保管空間36の上下方向の中心が位置している。このようにすることで、熱移動ユニット70によって保管庫30の内外で熱交換したときに、保管空間36の上部と下部との温度ムラを抑制することができる。
保管庫30の底35の下側には、補助加熱手段44が設けられている。本実施の形態の補助加熱手段44は、底35の左右方向の領域の概ね全体に渡って配置されている。なお、補助加熱手段44は、側壁32及び側壁33に接触するようにして断熱材38に埋設されていてもよい。
図10を参照して、副筐体11内の冷却に係る作用を説明する。冷却送風機13が動作すると、導入口7を介して本体ケース3内に空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、副筐体11の底に設けられた第2開口18を介して、冷却送風機13に吸い込まれ、冷却送風機13から冷却風として冷却ダクト14内へ送出される。冷却ダクト14内において、駆動素子21(図4参照)に取り付けられたヒートシンク22の周囲を冷却風が流れ、冷却風によってヒートシンク22及び駆動素子21が冷却される。冷却ダクト14から流出した冷却風は、副筐体11の右側の領域に配置された第1制御回路20の周囲を後方へ向かって流れる。この冷却風は、加熱コイル12の周囲を流れながら加熱コイル12を冷却する。加熱コイル12を冷却した冷却風は、図3に示した第1開口17を通って排気風路16へ流入し、排気口9を通って加熱調理器100の外へ流出する。
図11は、実施の形態1に係る加熱調理器100の前後の縦断面模式図である。図11は、保管庫30を通る前後方向の縦断面を示しており、減圧装置80及び熱移動ユニット70の第1部分71の配置を破線で示している。熱移動ユニット70の第1部分71は、保管空間36の前後方向の中心X1よりも前側に配置されている。前述のように、第1部分71は保管庫30の側壁33に熱的に接続されていて、第1部分71を介して保管空間36はその外部と熱交換される。保管空間36は、扉39に近い位置の方が遠い位置よりも室温の影響を受けやすい。このため、第1部分71を、保管空間36の前後方向の中心X1よりも前側に配置することで、室温に近づきやすい保管空間36の前側部分を所望の温度に維持しやすい。したがって、保管空間36における室温の影響による温度変化が抑制され、保管空間36の温度のバラつきを抑制することができる。
保管庫30には、保管空間36の空気温度を検出する第1温度センサ43が設けられている。第1温度センサ43は、本実施の形態では、側壁33に設けられている。第1温度センサ43は、接触式又は非接触式の温度センサである。
図12は、実施の形態1に係る加熱調理器100の前後の縦断面模式図である。図12は、第2制御回路23が収容されたダクト50の前後方向の縦断面を示しており、空気の流れを破線矢印で概念的に示している。ダクト50の形状を説明する。ダクト50を前後方向にみると、ダクト50の入口51から後方に向かって、ダクト50は直線的に延びている。この直線的に延びた部分に、熱交換手段76、第2制御回路23、及び送風機60が、前から後ろへこの順で配置されている。ダクト50の入口51には、フィルター8が挿入されている。フィルター8と前パネル6との間には、隙間が形成されている。この隙間は、図12に示すように前パネル6の上部及び下部にある。ダクト50の後部は、遠心ファン63のスクロールケーシングを構成している。ダクト50において、スクロールケーシングの巻き終わり部61の下流側は、直線的に後ろ上方に向かって延びる流路が形成されており、当該部分を直線部62と称する。送風機60の吹出口は、ダクト50の出口52と同じである。なお、送風機60の吹出口とダクト50の出口52とは、別の部材で構成されていてもよい。この場合、送風機60の吹出口は、排気口9とダクト50の出口52とを結ぶ直線上に配置されているとよい。具体的には、排気口9の開口面の延長線と、出口52の開口面の延長線と、が重なる領域に、送風機60の吹出口の少なくとも一部が配置されているとよい。
送風機60の吹出口であるダクト50の出口52は、副筐体11の底に形成された第2開口18に接続されている。第2開口18の上側には、排気口9及び排気口カバー4が配置されている。ダクト50の出口52は、排気口9と直線的に連通している。ここで、直線的に連通するとは、出口52の開口面の延長線上に、排気口9が位置していることをいう。本実施の形態では、排気口カバー4が取り外された状態の排気口9を平面視すると、排気口9の少なくとも一部が出口52と重なっている。上下方向における第2開口18と排気口9との間であって、前後方向における仕切板15と本体ケース3の後壁との間に、排気風路16が設けられている。ダクト50の出口52から流出した空気は、排気風路16を通って加熱調理器100の外へ流出する。
本実施の形態では、仕切板15が、前から後ろに向かって上昇するように傾斜している。また、本体ケース3の後壁のうち仕切板15と前後方向に対向する部分は、排気口9が形成された筐体1の上面に対して垂直な面(以下、単に面Pという)に対して概ね平行である。ここで、本実施の形態では、天板2が筐体1の上面を構成しており、加熱調理器100は天板2が水平面に平行になるように設置されるため、面Pは天板2に垂直な面であって、鉛直方向に延びる面であるといえる。本体ケース3及び仕切板15の上記構造により、排気風路16は、仕切板15の下から上に向かって、流路断面積が小さくなっている。
また、本実施の形態では、本体ケース3の後壁のうちの下部が、前から後ろに向かって上昇するように傾斜している。傾斜した部分を傾斜部3aと称する。本体ケース3の後壁のうちの下部にある傾斜部3aは、面Pに対して、傾斜している。このように本体ケース3の後壁の下部を傾斜させて傾斜部3aの下端部を上端部よりも前側に配置することで、キッチンに形成された開口に加熱調理器100を落とし込みやすくしている。さらに本実施の形態では、送風機60の直線部62の面Pに対する傾斜角度θが、本体ケース3の傾斜部3aの面Pに対する傾斜角度と同じである。また、直線部62の外面は、本体ケース3の後壁に接触あるいは近接している。このため、本体ケース3と直線部62との間には、隙間がないあるいはわずかな隙間があり、本体ケース3を収納スペースとして有効に活用することができる。したがって、遠心ファン63の羽根車の外形を大きくすることができ、そのようにすることで所望の送風量を得るための遠心ファン63の回転数を小さくすることができる。遠心ファン63の回転数を小さくすることで、遠心ファン63の騒音が抑制される。
このような構成において、送風機60の遠心ファン63が動作すると、前パネル6とダクト50との間の隙間から、ダクト50内に空気が吸い込まれる。この隙間は、加熱調理器100の前側に設けられていることから、室温の空気がダクト50内に吸い込まれる。ダクト50の入口51には、フィルター8が設けられているので、空気に混在している塵埃はフィルター8に捕捉され、ダクト50内には除塵後のきれいな空気が流入する。
ダクト50内に流入した空気は、熱交換手段76に接触し、強制対流熱伝達によって熱交換手段76と熱交換する。さらに、ダクト50内において熱交換手段76の下流にある第2制御回路23の発熱部品と空気とが熱交換する。第2制御回路23と熱交換した空気は、送風機60の遠心ファン63によって送出され、巻き終わり部61に連なる直線部62に導かれて出口52からダクト50の外へ流出する。直線部62は、上流から下流に向かって上昇しているため、直線部62によって空気が出口52へと圧力損失が少ない状態で導かれる。
ダクト50の出口52から出た空気は、排気風路16を通り、その後、排気口9を通って加熱調理器100の外へ流出する。仕切板15は、排気風路16の上流から下流に向かって排気風路16の流路断面積を小さくするように傾斜しているため、排気風路16を通過する空気は排気口9へ向かう成分が主流となり、副筐体11内へと拡散しにくい。したがって、排気風路16を流れる空気の副筐体11内への流入を抑制することができる。ダクト50を流れる空気によって熱交換手段76及び第2制御回路23を冷却した場合、高温化した空気が排気風路16を流れることになるため、この高温化した空気が副筐体11内に流入すると、副筐体11内の部材の高温化につながりうる。しかし、本実施の形態によれば、そのような不具合を抑制することができる。
図13は、実施の形態1に係る加熱調理器100の前後の縦断面模式図である。図13は、減圧装置80が収容されたダクト50の前後方向の縦断面を示しており、空気の流れを破線矢印で概念的に示している。ダクト50及び排気風路16の構造は、図12を参照して説明した通りである。
減圧装置80は、吸気管81と、排気管82とを備える。減圧装置80は、空気ポンプを有しており、吸気管81から空気を吸い込んで、吸い込んだ空気を排気管82から排出する。吸気管81の先端は、図11に示したように保管空間36に位置している。排気管82の先端は、ダクト50内に位置している。したがって、減圧装置80が動作すると、保管空間36の空気が吸気管81から減圧装置80に吸い込まれ、吸い込まれた空気が排気管82からダクト50内へと排出される。ダクト50内へと排出された空気は、送風機60の作用によってダクト50内を流れ、排気風路16へと向かう。送風機60が動作しているときには、ダクト50内は室内に対して負圧の状態となっている。この負圧状態のダクト50に排気管82の出口を設けることで、保管空間36を減圧するときの減圧装置80の負荷を軽減できる。減圧装置80の負荷を軽減することで、動作に伴う減圧装置80の騒音を抑制することができ、また減圧装置80の経年劣化を遅らせることができる。
吸気管81には、圧力センサ83が設けられている。圧力センサ83は、吸気管81内の圧力、すなわち保管空間36の圧力を検出する。減圧装置80の動作は、圧力センサ83によって検出された圧力に基づいて、制御される。
図14は、実施の形態1に係る加熱調理器100の機能ブロック図である。操作部24にユーザによる操作が加えられると、操作に対応した信号が第1制御回路20と第2制御回路23のいずれか又は両方に入力される。表示部25は、第1制御回路20及び第2制御回路23と電気的に接続されており、第1制御回路20及び第2制御回路23からの信号に基づいて表示を行う。第1温度センサ43は、第2制御回路23に電気的に接続されており、検出した温度に対応した信号を第2制御回路23に入力する。圧力センサ83は、第2制御回路23に電気的に接続されており、検出した圧力に対応した信号を第2制御回路23に入力する。
第1制御回路20は、駆動素子21及び冷却送風機13を制御する。第1制御回路20は、駆動素子21に対して駆動信号を出力する。駆動素子21は、入力された信号に応じた周波数の高周波電流を加熱コイル12に供給する。第1制御回路20は、駆動素子21を駆動しているときに、冷却送風機13を動作させる。冷却送風機13を動作させることにより、副筐体11内に冷却風が供給され、高温化する駆動素子21及び加熱コイル12が冷却される。第1制御回路20は、駆動素子21を停止させた後も冷却送風機13の動作を継続させてもよい。このようにすることで、副筐体11内及びこの上にある天板2の冷却を促進することができる。
第2制御回路23は、補助加熱手段44、熱移動ユニット70、送風機60、及び減圧装置80を制御する。第2制御回路23は、保管空間36と保管庫30の外部とで熱移動を行う旨の信号が操作部24から入力されると、熱移動ユニット70を動作させる。ここで、熱移動は、保管空間36を冷却するための熱移動と、保管空間36を加熱するための熱移動と、を含む。本実施の形態の熱移動ユニット70は、ペルチェ素子73を有している。第2制御回路23は、保管空間36を冷却する信号が入力されると、ペルチェ素子73の吸熱面が保管空間36側になる電流方向にて、ペルチェ素子73に通電させる。第2制御回路23は、保管空間36を加熱する信号が入力されると、ペルチェ素子73の放熱面が保管空間36側になる電流方向にて、ペルチェ素子73に通電させる。第2制御回路23は、第1温度センサ43から入力される保管空間36の温度の信号に基づいて、ペルチェ素子73の通電状態を制御する。
第2制御回路23は、保管空間36を加熱する旨の信号が操作部24から入力されると、補助加熱手段44を動作させて保管空間36を加熱する。補助加熱手段44による加熱量は、第1温度センサ43から入力される保管空間36の温度の信号に基づいて、制御される。
保管空間36を加熱する旨の信号が操作部24から入力された場合に、第2制御回路23は、熱移動ユニット70と補助加熱手段44のいずれか又は両方を動作させる。熱移動ユニット70を優先的に動作させ、保管空間36の温度が所望の温度に到達しない場合に、熱移動ユニット70に加えて補助加熱手段44を動作させるようにしてもよい。また、保管空間36の目標温度が比較的低い場合には熱移動ユニット70を動作させ、目標温度が比較的高い場合には、補助加熱手段44を動作させるようにしてもよい。また、保管空間36を加熱する場合には、補助加熱手段44を動作させて熱移動ユニット70を停止させてもよい。このように熱移動ユニット70を停止させて補助加熱手段44を動作させているときには、送風機60を停止させておくとよい。このようにすることで送風機60の騒音も無くなるため、騒音による不快感をユーザに与えることなく、保管空間36を加熱することができる。
第2制御回路23は、熱移動ユニット70を動作させているときに、送風機60を動作させる。このようにすることで、ペルチェ素子73に熱的に接続された第2部分72及び熱交換手段76(図10参照)の熱交換を促進し、これによって保管空間36とその外部との間での熱移動を促進することができる。
保管空間36を減圧する旨の信号が操作部24から入力された場合に、第2制御回路23は、減圧装置80を動作させる。第2制御回路23は、圧力センサ83から入力される保管空間36の圧力の値が、目標値になるように、減圧装置80を動作させる。減圧装置80は、単独で動作する場合もあるが、熱移動ユニット70、補助加熱手段44及び送風機60のいずれか一つ以上と同時に動作する場合もある。保管庫30には、扉39の開閉状態を検知する検知装置が設けられているとよい。この場合、第2制御回路23は、扉39が閉止状態であることを検知しているときに、減圧装置80の動作を開始させる。このようにすることで、扉39が開放状態で減圧装置80を動作させることによる無駄な電力消費を避けることができる。また、減圧装置80の動作中に、扉39が開かれたことが検知されると、第2制御回路23は、減圧装置80の動作を停止させる。
また、扉39の取っ手又は操作部24に、減圧装置80を停止させるためのスイッチが設けられていてもよい。ユーザは、減圧状態の保管空間36の扉39を開けるときに、まず、このスイッチを操作する。そうすると、第2制御回路23は、減圧装置80の動作を停止させ、その状態で吸気管81と排気管82とを連通させる。このようにすると、保管空間36に対して高圧状態にあるダクト50の排気管82から吸い込まれた空気が、吸気管81を介して保管空間36に流入し、保管空間36は常圧となる。これにより、ユーザは容易に扉39を開くことができる。
なお、駆動素子21及び冷却送風機13を制御する制御回路は、それぞれ異なる基板に実装されていてもよい。また、補助加熱手段44、熱移動ユニット70、送風機60及び減圧装置80を制御する制御回路は、それぞれ異なる基板に実装されていてもよい。
[保管庫30における機能]
以下、保管庫30における熱移動ユニット70、送風機60、補助加熱手段44及び減圧装置80の少なくともいずれかが動作することによって実現される機能を説明する。
(1)常圧での温度制御
保管空間36が常圧の状態で、以下に示す温度制御を行う。この機能の実現には、減圧装置80は不要である。
(1-1)ユーザにより指定された温度に制御
操作部24には、保管空間36の温度を設定する入力部が設けられている。保管空間36の温度が、操作部24に設定された温度になるように、熱移動ユニット70と補助加熱手段44のいずれか又は両方が制御される。保管空間36に対して設定可能な温度は、例えば、-3℃~70℃である。
(1-2)モードに対して定められた温度に制御
操作部24には、以下で示すようなモードを設定する入力部が設けられている。保管空間36の温度が、設定されたモードに対して予め定められた温度になるように、熱移動ユニット70と補助加熱手段44のいずれか又は両方が制御される。以下、モードとこれに対して定められる保管空間36の温度の例を示す。
(a)野菜:約3℃~約8℃
(b)冷蔵:約3℃~約5℃
(c)チルド:約0℃~約2℃
(d)微凍結:約-3℃~約-1℃
(e)プレーンヨーグルト:約40℃~約41℃
(f)カスピ海ヨーグルト:約27℃
(g)ケフィアヨーグルト:約25℃
(h)甘酒:約60℃
(i)塩麹又は醤油麹:約60℃
(j)味噌:約60℃
(k)納豆:約45℃
(l)酵母:約26℃~約30℃
(m)温泉卵又は低温調理:約65~約70℃
本実施の形態のように、ユーザが温度を設定できるようにすることで、保管空間36においてユーザの希望に合致した、食品の保存、醸成及び調理を行うことができる。また、予め温度が設定されたモードを操作部24にて設定できるようにすることで、ユーザは自ら温度設定を行うことなく、保管空間36において容易に食品の保存、醸成及び調理を行うことができる。また、複数のモードを連続して実行するための入力部が操作部24に設けられていてもよい。この場合、連続して実行されるモードとその順番が操作部24に入力され、この入力に基づいてモードが連続して実行される。例えば、プレーンヨーグルトモードが実行され、続けて、冷蔵モードが実行される。このようにすることで、保管庫30で醸成されたプレーンヨーグルトが、保管庫30にて冷蔵保存されるので、保管物であるプレーンヨーグルトの劣化が低減される。また、ユーザがモードを切り替える操作を行う必要がないので、ユーザの利便性が向上する。また、各モードの実行時間を設定する入力部が操作部24に設けられていてもよい。この場合、第2制御回路23は、内蔵されたタイマーによってモード開始からの経過時間を計測し、操作部24に設定された実行時間が経過すると実行中のモードを停止する。
(2)減圧状態での温度制御
保管空間36の温度と圧力の両方が制御される。
(2-1)ユーザにより指定された温度及び圧力に維持
操作部24には、保管空間36の圧力を設定する入力部と、保管空間36の温度を設定する入力部が設けられている。保管空間36の圧力が設定された圧力になり、かつ保管空間36の温度が設定された温度になるように、熱移動ユニット70及び補助加熱手段44のいずれか又は両方と、減圧装置80とが制御される。保管空間36に対して設定可能な温度は、例えば、-3℃~70℃である。保管空間36に対して設定可能な圧力は、例えば、大気圧~0.7気圧である。
(2-2)モードに対して定められた温度及び圧力に維持
操作部24には、以下で示すようなモードを設定する入力部が設けられている。保管空間36の温度及び圧力が、設定されたモードに対して予め定められた値になるように、熱移動ユニット70及び補助加熱手段44のいずれか又は両方と、減圧装置80とが制御される。以下、モードとこれに対して定められる温度の例を示す。圧力は、大気圧よりも低い値が定められているものとする。
(a)野菜:約3℃~約8℃
(b)冷蔵:約3℃~約5℃
(c)チルド:約0℃~約2℃
(d)微凍結:約-3℃~約-1℃
(e)果実酒:約3℃~約8℃
(f)減圧乾燥:約40℃~約60℃
(g)減圧調理:約60℃~約70℃
(h)減圧フライ:約70℃
減圧状態での上記(a)~(d)のモードは、常圧状態での上記(a)~(d)のモードと温度範囲は同じであるが、温度範囲は同じであっても保管空間36を減圧状態にすることで保管空間36に保管される食品に与えられる作用が異なる。すなわち、保管空間36が減圧状態であると、食品への調味料の浸透率が向上するので、食材に味をしみ込ませるための調理の下ごしらえの時間を短縮することができる。また、減圧状態に食品を置くと、食品中にある気泡が排出されるので、食品の組織が密になって調理後の食品の口当たりをなめらかにできる。また、保管空間36を減圧すると低酸素状態になるので、食品の酸化が抑制され、食品の鮮度低下と有効成分の減少とを、抑制することができる。また、保管空間36が扉39によって密閉されることで、食品の乾燥が抑制される。
減圧状態での(e)果実酒モードでは、ユーザは、果実が入れられた酒を保管空間36に保管することができる。減圧状態では、常圧状態よりも果実のエキスが酒に抽出される時間が短縮され、約1週間程度で果実のエキスが抽出される。なお、当該モードでは、保管空間36の温度を操作部24にてユーザが設定できるようにしてもよい。
上記(f)減圧乾燥モードでは、減圧装置80は、常時、あるいは間欠的に動作する。減圧状態に食品を置くことで、常圧状態よりも食品からの水蒸気の排出が促進される。このため、減圧状態では、常圧状態で乾燥食品を作る場合よりも低温にて、食品を乾燥させることができる。このような低温減圧乾燥により、食品の有効成分、色彩、及び香りの減退が少ない状態の乾燥食品が作られるので、ユーザは良好な食味及び食感の乾燥食品を得ることができる。
上記(g)減圧調理モードでは、減圧装置80は、常時、あるいは間欠的に動作する。減圧状態に食品を置くことで、常圧状態よりも食品への調味料の浸透率が向上するので、食品に味を染みこませるための下ごしらえの時間が短縮され、短時間で調理が可能となる。また、減圧状態で加熱料理することにより、食品の素材本来の風味、旨味、及び有効成分の減少が少ない状態に食品を保つことができる。なお、当該モードでは、保管空間36の温度を操作部24にてユーザが設定できるようにしてもよい。
上記(h)減圧フライモードでは、減圧装置80は、常時、あるいは間欠的に動作する。減圧状態で加熱調理することにより、食品の有効成分の減少、色彩の減退、及び色の褐変が少ない状態に食品を保つことができる。
以上のように本実施の形態の加熱調理器100は、排気口9を有する筐体1と、筐体1内に設けられた加熱装置の一例として加熱コイル12を有する。この加熱調理器100は、筐体1内に設けられ、保管空間36を形成する内壁を有する保管庫30と、前記保管庫30の前部に設けられ、保管庫30を開閉する扉39と、ダクト50とを有する。ダクト50は、保管庫30の前後方向の中心よりも扉39に近い位置に設けられた入口51と、排気口9と直線的に連通する出口52とを有する。ダクト50の入口51に連なる部分は、保管庫30の前後方向に沿って配置されている。また加熱調理器100は、送風機60を有する。本実施の形態の送風機60は、ダクト50の出口52と同じ位置に配置された吹出口を有し、ダクト50内に気流を生じさせる。また加熱調理器100は、ダクト50内に設けられた熱交換手段76と、熱移動ユニット70とを有している。熱移動ユニット70は、保管庫30の内壁に熱的に接続された第1部分71及び熱交換手段76と熱的に接続された第2部分72を有しており、保管空間36と保管空間36の外部との間で、熱を移動させる。このため、保管庫30の扉39に近い位置、すなわち、扉39を開閉するユーザがいる室温に近い空気が、入口51からダクト50内に導入される。また、ダクト50の入口51に連なる部分は、保管庫30の前後方向に沿って配置されており、ダクト50の出口52は、筐体1の排気口9と直線的に連通する。したがって、ダクト50内に導入された空気は、圧力損失が少ない状態で流れる。このため、ダクト50内の熱交換手段76の熱交換効率を高めることができ、これによって熱移動ユニット70の性能を高めることができるので、保管庫30と加熱コイル12とが同じ筐体1内に収容されていても、保管庫30内の温度を所望の温度に維持しやすい。
本実施の形態の保管庫30は、図9及び図10に示すように、前後に延びる左側の側壁32と右側の側壁33とを有している。ダクト50、送風機60、熱交換手段76及び熱移動ユニット70は、それぞれ2つ設けられており、一組が側壁32側に設けられ、他の一組が側壁33側に設けられている。このため、保管庫30の保管空間36は、左右両方において外部と熱交換できる。したがって、保管空間36の左右方向における温度ムラが軽減され、温度ムラが生じることによる保管物の劣化を軽減することができる。
本実施の形態の送風機60は、図12及び図13に示すように、ダクト50と一体に形成されたスクロールケーシングに収容された遠心ファン63を有する。スクロールケーシングは、巻き終わり部61から直線的に延びる側壁である直線部62を有する。直線部62は、鉛直方向に沿った面Pに対して傾斜している。また、筐体1の後壁には、鉛直方向に沿った面P対して傾斜した傾斜部3aが設けられている。傾斜部3aは、前から後ろに向かって上昇するように傾斜している。そして、直線部62の面Pに対する傾斜角度θは、傾斜部3aの面Pに対する傾斜角と同じである。また、直線部62と傾斜部3aとは、対面する位置に配置されている。このため、本体ケース3を収納スペースとして有効に活用することができる。したがって、遠心ファン63の羽根車の外形を大きくすることができ、そのようにすることで所望の送風量を得るための遠心ファン63の回転数を小さくすることができる。遠心ファン63の回転数を小さくすることで、遠心ファン63の騒音が抑制される。
また、図7及び図8に示すように、ダクト50の入口51は、保管庫30の扉39の側方に配置されている。ここで、本実施の形態の加熱調理器100は、図1に示すようにキッチンキャビネット200に組み込まれて使用される組み込み型のものであり、扉39は室内に面している。扉39の側方にダクト50の入口51を設けることで、ダクト50に流入する空気を室温に近づけることができる。したがって、ダクト50内にある熱交換手段76と空気とダクト50に流入する空気との熱交換効率を向上させることができる。
また、図9及び図12に示すように、ダクト50の入口51にはフィルター8が設けられ、ダクト50内には発熱部品を含む第2制御回路23が設けられている。そして、熱交換手段76は、ダクト50内における空気の流れ方向において、フィルター8の下流側かつ第2制御回路23の上流側に配置されている。本実施の形態では、この熱交換手段76が発熱部品よりも上流側に配置されているため、発熱部品が熱交換手段76における熱交換効率に影響を与えにくい。このため、熱交換手段76の熱交換効率は安定的に維持され、保管空間36の温度変動も抑制される。したがって、保管庫30内の保管物のヒートショックが減り、保管品質が向上する。また、第2制御回路23をダクト50内に配置したことで、第2制御回路23を冷却するための構成を別に設けることなく、第2制御回路23を冷却することができる。
また、本実施の形態では、保管庫30内を加熱する加熱手段として、補助加熱手段44を備えている。この補助加熱手段44は、熱移動ユニット70とは別に設けられており、熱移動ユニット70とは独立して動作する。このため、保管庫30内を広範囲の温度帯にすることができる。また、本実施の形態のように、熱移動ユニット70の熱源をペルチェ素子73、補助加熱手段44を抵抗式ヒーターとした場合、保管空間36を高温化するための消費電力は、補助加熱手段44の方が小さい。したがって、省エネルギーでの保管空間36の加熱が可能となる。また、本実施の形態の補助加熱手段44を動作させる場合には、送風機60を動作させる必要がない。このため、補助加熱手段44のみを動作させるときに送風機60を停止させることで、送風機60の動作に伴う騒音が発生せず、騒音による不快感をユーザに与えない。
本実施の形態では、保管空間36を大気圧よりも低い圧力に減圧する減圧装置80を備えている。このため、保管空間36の保管物を、減圧状態にて保存することができる。減圧された低酸素状態で保管することで、保管物の酸化を抑制することができ、かつ食品表面の菌又はカビ等の増加が抑制されて衛生性が向上する。
本実施の形態では、筐体1内において保管庫30よりも上に、天板2の上に配置される調理容器を誘導加熱する加熱コイル12を備えている。また、筐体1の本体ケース3の側方に向かって開口する導入口7が、本体ケース3に設けられている。導入口7の開口方向と、ダクト50の入口51の開口方向である前側とは異なる方向である。そして、導入口7から吸引した空気を加熱コイル12に冷却風として供給する冷却送風機13が設けられている。このように、保管庫30の熱移動ユニット70の熱移動性能に影響を与える熱交換手段76に送られる空気と、加熱コイル12を冷却する空気とは、異なる方向から吸い込まれる。したがって、熱交換手段76への空気の供給と加熱コイル12への空気の供給とが同時に行われる場合に、供給空気に関する影響を互いに与えにくい。したがって、保管庫30における保管温度の変動が抑制され、保管庫30における保管品質を向上させることができる。
本実施の形態では、加熱コイル12を冷却した後の冷却風が排気口9に向かって流れる流路である排気風路16に、ダクト50の出口52が接続されている。具体的には、ダクト50の出口52は、排気風路16の一部である第2開口18に接続されている。このため、ダクト50の出口52から出た空気は、排気風路16を流れる排気口9に向かう空気とともに排気口9へ向かって流れ、筐体1内においては排気風路16の外側へ拡散しにくい。したがって、ダクト50から出た空気が副筐体11内に拡散することによる、加熱コイル12の冷却効率の低下を避けることができる。
実施の形態2.
本実施の形態の加熱調理器100は、実施の形態1における補助加熱手段44に代えて、保管庫30内にマイクロ波を供給する装置を備えている。また、ダクト50の構造が、実施の形態1とは異なる。本実施の形態では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。相違点以外については、実施の形態1と同様の構成が本実施の形態において採用されうる。
図15は、実施の形態2に係る加熱調理器100の斜視図である。本実施の形態の加熱調理器100は、前パネル6の周囲の構造が実施の形態1と異なる。図15に示すように、前パネル6と本体ケース3との間において、上部及び側方には、実施の形態1の図2で示した保管庫吸気口10は設けられていない。本実施の形態では、前パネル6は本体ケース3の前面に対して実質的に隙間なく取り付けられており、前パネル6と本体ケース3との間は吸気口としては機能しない。なお、導入口7は、実施の形態1と同様に本体ケース3の前面及び側面に設けられている。
図16は、実施の形態2に係る加熱調理器100の下側からの斜視図である。本体ケース3の底は、平らではなく、段差が形成されている。本体ケース3の底の前後方向において、前部分及び後部分は、中央部分よりも上側に位置している。本体ケース3の底の前側部分のうち、上側に位置している部分を高部3b、下側に位置している部分を低部3c、高部3bと低部3cとを接続する部分を接続部3dと称する。本実施の形態では、接続部3dは、後ろから前に向かって上昇するように傾斜している。接続部3dと低部3cとによって、本体ケース3の底に下へ突出する凸形状が構成されているといえる。この凸形状の左右方向の長さは、本実施の形態では本体ケース3の左右方向の長さと同じであるが、本体ケース3の左右方向の長さよりも短くてもよい。
本実施の形態では、保管庫吸気口10が、本体ケース3の底の接続部3dに設けられている。接続部3dは、水平面に対して傾斜しているため、保管庫吸気口10の開口面もまた水平面に対して傾斜している。保管庫吸気口10は、加熱調理器100の前斜め下に向かって開口している。図15及び図16に示した導入口7は、左及び前に向かって開口しているのに対し、保管庫吸気口10は、前下に向かって開口している。このように、導入口7の開口方向と、保管庫吸気口10の開口方向とは、異なる。
図17は、実施の形態2に係る副筐体11の下側からの斜視図である。本実施の形態の副筐体11の底に設けられた第2開口18は、実施の形態1と配置が異なる。実施の形態1では2つの第2開口18が副筐体11の底に設けられていたが、本実施の形態では1つの第2開口18が副筐体11の底に設けられている。また、本実施の形態の第2開口18は、副筐体11の底の左右方向における概ね中央に設けられている。
図18は、実施の形態2に係る加熱調理器100の、天板2及び排気口カバー4が取り外された状態の斜視図である。図18では、扉39及び保管容器40が保管空間36から取り出された状態を示している。副筐体11の後部に設けられた仕切板15は、実施の形態1のように傾斜しておらず、副筐体11の底に対して概ね垂直に延びている。仕切板15に第1開口17が形成されている点は、実施の形態1と同じである。本実施の形態の第2開口18は、実施の形態1と同様に排気風路16内に位置している。第2開口18は、仕切板15において第1開口17が形成されていない部分と対応する位置に、設けられているとよい。図18に示す例では、2つの第1開口17の間に位置している仕切板15の後方に、第2開口18が設けられている。このような配置とすることで、第2開口18から排気風路16に流入した排気は、仕切板15の後面に沿って上に流れるので、排気風路16から副筐体11内への排気の拡散が抑制される。
保管容器40は、内部を前後に仕切る隔壁40aを有している。保管容器40において、隔壁40aの前側に形成される容器を前保管部40b、隔壁40aの後ろ側に形成される容器を後保管部40cと称する。
図19は、実施の形態2に係る加熱調理器100の本体ケース3から副筐体11が取り外された状態の斜視図である。保管庫30の後方には、ダクト50と送風機60とが設けられている。本実施の形態のダクト50は、実施の形態1とは異なり、保管庫30の後方に1つ設けられている。ダクト50の出口52は、上に向かって開口している。ダクト50の出口52は、図17及び図18で示した第2開口18に接続される。
図20は、実施の形態2に係る保管庫30及びこれに付属している部材の後側からの斜視図である。保管庫30の右側には、減圧装置80が設けられている。減圧装置80は、保管庫30内を減圧する装置であり、実施の形態1で説明したものと同様の機能を有している。
保管庫30の外壁37の左右の後部には、マイクロ波供給装置90が設けられている。マイクロ波供給装置90は、保管庫30内に供給するマイクロ波を発生させる装置である。マイクロ波供給装置90で発生させたマイクロ波は、保管庫30内の食品等の保管物に供給され、保管物を加熱する。本実施の形態のマイクロ波供給装置90は、半導体式発信器を有している。半導体式発信器は、例えばGaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ半導体を有し、2.45GHz程度の周波数のマイクロ波を発生させる。マグネトロンから発生するマイクロ波の周波数は、2.45±0.2GHz程度の範囲に分布するが、半導体式発信器から発生するマイクロ波の周波数は、2.45GHzに対してほとんど揺らぎのない安定した周波数である。また、半導体式発信器は、周波数を可変制御できる点において、マグネトロンと異なる。マイクロ波供給装置90に半導体式発信器を採用することで、発生するマイクロ波の位相を精密に制御することができる。このため、食品などの保管物にマイクロ波を供給することで、保管物の温度制御を精密に行うことができる。
本実施の形態では、2つのマイクロ波供給装置90が設けられている。マイクロ波供給装置90の数は、この例に限定されないが、複数のマイクロ波供給装置90を設けることで、保管庫30内に供給されるマイクロ波のムラを小さくすることができる。複数のマイクロ波供給装置90を個別に制御することで、複数のマイクロ波供給装置90から出力されるマイクロ波の周波数及び位相は、互いに異ならせることができる。
本実施の形態のダクト50の一部は、保管庫30の後部に設けられている。ダクト50の後部には、送風機60が設けられている。送風機60の吹出口は、ダクト50の出口52と同じである。
図21は、実施の形態2に係る保管庫30及びこれに付帯する部品の分解斜視図である。図21は、保管庫30の後方からの斜視図であり、ダクト50が取り外された状態を示している。保管庫30の後面には、熱交換手段76が配置されている。熱交換手段76は、実施の形態1と同様の機能をもつヒートシンクである。熱交換手段76は、図20で示したダクト50内に収容されている。
マイクロ波供給装置90には、マイクロ波供給装置90で発生したマイクロ波を保管庫30内に供給するアンテナ91が取り付けられている。アンテナ91は、保管庫30の左右に設けられている。
扉39の内面、すなわち扉39の後面には、電磁波遮蔽部材92が設けられている。電磁波遮蔽部材92は、保管庫30内に照射されたマイクロ波が扉39から外部へと伝搬するのを防ぐ部材である。電磁波遮蔽部材92は、例えばパンチングメタル及びチョーク構造体を含みうる。
さらに本実施の形態では、保管容器40の隔壁40a内に、電磁波遮蔽部材93が設けられている。隔壁40a内の電磁波遮蔽部材93は、後保管部40c側から前保管部40b側へのマイクロ波の伝搬を防ぐ部材である。また、アンテナ91の前後方向における位置は、保管庫30内に保管容器40が収容された状態での隔壁40aの位置よりも、後ろ側にある。このため、保管容器40が保管庫30内に収容された状態で、アンテナ91からマイクロ波が照射されると、隔壁40a内の電磁波遮蔽部材93に遮られて前保管部40bにはマイクロ波が届かない。このように、本実施の形態によれば、保管庫30内においてマイクロ波が供給される領域と供給されない領域とを区分けることができる。
保管庫30内には、減圧装置80から延びる吸気管81の先端が設けられている。減圧装置80が動作すると、吸気管81から保管庫30内の空気が減圧装置80によって吸引され、保管庫30内が大気圧よりも低い圧力まで減圧される。
保管庫30内には、第2温度センサ48が設けられている。第2温度センサ48は、赤外線式の温度センサである。第2温度センサ48は、保管庫30の天井に設けられており、保管庫30内に収容される保管物の表面温度を、非接触で検知する。第2温度センサ48が検出した温度に対応する信号は、マイクロ波供給装置90を制御する制御回路に入力され、マイクロ波供給装置90の制御に用いられる。
図22は、実施の形態2に係る加熱調理器100の前後の縦断面模式図である。図22は、保管庫30を通る前後方向の縦断面を示しており、アンテナ91、吸気管81及び第1温度センサ43を破線で示している。また、空気の流れを破線矢印で概念的に示している。本実施の形態のダクト50の一部は、保管庫30の下側に延びている。具体的に、ダクト50の入口51は、保管庫30の下側にある保管庫吸気口10と同じである。ダクト50のうち保管庫30の下側に配置された部分は、本体ケース3の底と保管庫30の下面とによって構成されている。ダクト50は、入口51から連なる部分が、保管庫30の前後方向に沿って直線的に後方へ延びている。ダクト50は、保管庫30の後方において下から上に延びる流路を有し、当該下から上へ延びる流路に熱交換手段76が配置されている。縦断面視において、ダクト50は、入口51から出口52に至る概ねL字状の流路を有している。
熱交換手段76の後方には、送風機60が設けられている。送風機60は、遠心ファン63を有する。遠心ファン63のスクロールケーシングのうち、吸込口64が形成されている面を第1面66、第1面66と遠心ファン63を介して対向する面を第2面67と称する。第1面66は、第2面67よりも前方に配置されている。第1面66及び第2面67は、面Pに対して傾斜している。具体的に、第1面66及び第2面67は、前から後ろに向かって上昇した傾斜面である。第1面66及び第2面67の面Pに対する傾斜角度を、傾斜角度θ2と称する。本実施の形態では、実施の形態1と同様に本体ケース3の後部に傾斜部3aが設けられている。傾斜部3aの面Pに対する傾斜角度を、傾斜角度θ1と称する。図22に示すように、第1面66及び第2面67の傾斜角度θ2は、本体ケース3の傾斜部3aの傾斜角度θ1よりも小さい。すなわち、第1面66及び第2面67は、傾斜部3aよりも面Pに近い角度で傾斜している。このため、送風機60の遠心ファン63に吸い込まれた空気は、より鉛直方向に近い向きで、送風機60の吹出口65と同じ位置にあるダクト50の出口52から流出する。出口52から鉛直方向に近い向きで流出した空気は、上方にある排気口9に向かって直線的に流れる。このように、送風機60の吹出口65から排気口9までの空気の流路が直線的であるため、圧力損失が低下して、送風機60の騒音を抑制することができる。
送風機60が動作すると、加熱調理器100の本体ケース3の底に形成された保管庫吸気口10を介して、加熱調理器100の前方の室温の空気が、本体ケース3内へ吸い込まれる。保管庫吸気口10はダクト50の入口51であり、本体ケース3内に流入した空気は、入口51からダクト50内に流入し、後方へ向かって流れる。保管庫30の後方において、空気は下から上へ向かって流れ、この過程において熱交換手段76と熱交換する。熱交換手段76と熱交換した後の空気は、吸込口64が形成されたスクロールケーシングの第1面66から遠心ファン63に吸い込まれ、上に向かって送出される。遠心ファン63から送出された空気は、ダクト50の出口52から排気風路16へ流入し、その後、排気口9を通って加熱調理器100の外へ流出する。
減圧装置80の吸気管81は、前後方向において保管容器40の前保管部40bと重なる位置に設けられている。吸気管81を、保管空間36の前寄りに設けることで、室温の影響を受けやすい保管空間36の前側の空気が、吸気管81から減圧装置80へ吸い込まれる。このため、室温によらず保管空間36の空気の温度変動が抑制される。
図23は、実施の形態2に係る加熱調理器100の左右の縦断面図である。図23は、減圧装置80を通る左右方向の縦断面を示しており、空気の流れを破線矢印で概念的に示している。冷却送風機13が動作すると、本体ケース3の左側の側面に設けられた導入口7から加熱調理器100の外部の空気が本体ケース3内へ吸い込まれる。本体ケース3内に吸い込まれた空気は、副筐体11の底に設けられた導入口111から副筐体11内の冷却送風機13に吸い込まれる。冷却送風機13に吸い込まれた空気は、駆動素子21を冷却する冷却風として、冷却送風機13から送出される。この冷却風は、実施の形態1で述べたように第1制御回路20及び加熱コイル12を冷却する。
減圧装置80の吸気管81は、保管庫30の外壁37と右側の側壁33との間にある断熱材38を貫通して、保管空間36に延びている。排気管82は、保管庫30の下に設けられたダクト50に連通している。減圧装置80が動作すると、保管空間36の空気が吸気管81から減圧装置80へと吸い込まれ、吸い込まれた空気は排気管82からダクト50へと送出される。ダクト50は、図22に示した送風機60が動作しているときには、負圧となっている。この負圧状態のダクト50に排気管82を接続することで、保管空間36を減圧するときの減圧装置80の負荷を軽減できる。減圧装置80の負荷を軽減することで、動作に伴う減圧装置80の騒音を抑制することができ、また減圧装置80の経年劣化を遅らせることができる。また、保管空間36の空気をダクト50に供給することで、ダクト50に配置された熱交換手段76(図22参照)の熱交換効率を高めることができる。
図24は、実施の形態2に係る加熱調理器100の前後方向の横断面図である。本実施の形態において熱移動ユニット70を構成する第1部分71、第2部分72及びペルチェ素子73は、保管庫30の後部に設けられている。具体的には、保管庫30の後壁31に、第1部分71が熱的に接続されている。また、ダクト50内に配置された熱交換手段76に、第2部分72が熱的に接続されている。ペルチェ素子73は、第1部分71と第2部分72とに前後に挟まれている。このように本実施の形態では、保管庫30の後部において、熱移動ユニット70が保管空間36と外部との間で熱移動させる。
本実施の形態の保管容器40には、内部を前後に仕切る隔壁40aが設けられている。保管容器40が保管空間36に収容された状態において、隔壁40aは、保管空間36を前後に仕切ることになる。隔壁40aは、保管空間36の前後での空気の流動を妨げるため、隔壁40aの前後の空間に温度差を付けることができる。前保管部40bは、室温に近い温度帯となり、後保管部40cは、熱移動ユニット70の第1部分71と近い温度となる。また、隔壁40aが、空気よりも熱伝導率の低い材料で構成されることで、隔壁40aを介した前保管部40bと後保管部40cとの間での熱移動も抑制される。このように、保管空間36に温度帯の異なる領域を形成することができるので、保管温度の異なる保管物を同時に保管庫30に保管することができ、ユーザの利便性を高めることができる。
図25は、実施の形態2に係る加熱調理器100の機能ブロック図である。第2温度センサ48は、第2制御回路23に電気的に接続されており、検出した温度に対応した信号を第2制御回路23に入力する。第2制御回路23は、第2温度センサ48からの信号に基づいて、マイクロ波供給装置90から出力するマイクロ波の周波数及び位相を制御する。なお、マイクロ波供給装置90、熱移動ユニット70、送風機60及び減圧装置80を制御する制御回路は、それぞれ異なる基板に実装されていてもよい。
[マイクロ波供給装置90による加熱]
マイクロ波供給装置90による保管庫30内の加熱動作について説明する。本実施の形態のマイクロ波供給装置90は、半導体式発振器を備えている。この半導体式発振器が発振するマイクロ波の周波数及び位相は、可変制御される。マイクロ波の周波数及び位相を変化させることにより、保管庫30内の電界強度の分布を制御することができる。これにより、保管物である食品によるマイクロ波の吸収率を高めることができ、また保管物におけるマイクロ波の吸収のムラが軽減されて保管物をより均一に加熱することができる。
このマイクロ波供給装置90と熱移動ユニット70とを同時に動作させることで、食品の熟成保管が可能となる。具体的には、保管空間36には、肉、魚、チーズ等の食品が保管物として収容される。そして、熱移動ユニット70によって、保管空間36の空気温度が-5℃~4℃程度に制御される。これにより、肉、魚、チーズ等の食品の表面が冷却され、食品の表面における菌及びカビの増殖が抑制され、食品の衛生性を確保しながら食品を保管することができる。これと併せて、マイクロ波供給装置90によって、肉、魚、チーズ等の食品の内部が加熱される。このように食品の内部を加熱することで、食品内部の温度が高まり、酵素等の熟成に寄与する物質が活性化され、短期間で食品が熟成されて食品の旨味を高めることができる。
さらに本実施の形態では、2台のマイクロ波供給装置90が設けられている。マイクロ波供給装置90は1台でもよいが、複数設けることで、保管庫30内の電界強度の分布の制御をより精密に行うことができる。すなわち、複数台のマイクロ波供給装置90から保管庫30内にマイクロ波を照射することで、共振部位の粗密をより細やかに変化させることができるため、食品の温度をより精密に制御することができる。
マイクロ波供給装置90により加熱される食品の温度は、赤外線センサである第2温度センサ48によって検出される。第2温度センサ48は、食品の表面温度を検出する。第2温度センサ48が検出する食品の表面温度に基づいて、マイクロ波供給装置90が供給するマイクロ波の周波数及び位相が制御される。赤外線センサは、単眼式であってもよいし、複眼式であってもよい。複眼式の赤外線センサの方がより精度よく保管物の温度を検出でき、また複眼の数が多いほど、より精度よく保管物の温度を検出できる。複眼式の赤外線センサを用いることで、食品の表面温度のムラを検出でき、この検出結果に基づいてマイクロ波供給装置90が制御されることで、食品の温度ムラを軽減できる。
第2温度センサ48によって食品の内部の温度を検出する際には、熱移動ユニット70の動作を一時的に停止させてもよい。例えば、熱移動ユニット70によって保管空間36を冷却しているときには、食品の表面温度は冷却された保管空間36の空気温度に近い値となるが、一時的に熱移動ユニット70の動作を停止させることで、食品の内部温度が表面温度に反映される。このため、熱移動ユニット70を一時的に停止させたときの第2温度センサ48の検出温度に基づいて、食品の内部の温度を検出することができる。また、熱移動ユニット70を停止させる前後での第2温度センサ48の検出温度の変化量に基づいて、食品の内部の温度を検出することもできる。
[保管庫30における機能]
実施の形態1で示した(1)常圧での温度制御及び(2)減圧状態での温度制御は、本実施の形態でも同様に実現される。本実施の形態ではさらに、以下の機能が実現される。
(1-2)モードに対して定められた温度に制御
(n)熟成促進:約-3℃~約4℃
ここで、保管空間36の温度は上記のとおりであるが、食品の内部温度は約7℃~15℃に制御される。この熟成促進モードでは、マイクロ波供給装置90にて食品の内部が加熱され、保管空間36は熱移動ユニット70にて温度制御される。
(2-2)モードに対して定められた温度及び圧力に維持
(i)減圧熟成促進:約-3℃~約4℃
ここで、保管空間36の温度は上記のとおりであるが、食品の内部温度は約7℃~15℃に制御される。この減圧熟成促進モードでは、マイクロ波供給装置90によって食品の内部が加熱され、保管空間36は熱移動ユニット70にて温度制御される。併せて、減圧装置80によって保管空間36が常圧よりも減圧された状態に維持される。減圧されて低酸素状態となっている保管空間36に食品を保存することで、食品表面の菌及びカビ等の増加が抑制され、より衛生的に食品を熟成させることができる。
以上のように本実施の形態の加熱調理器100は、ダクト50が、保管庫30の前後方向の中心よりも扉39に近い位置に設けられた入口51と、排気口9と直線的に連通する出口52とを有する。このダクト50の入口51に連なる部分は、保管庫30の底の下において保管庫30の前後方向に沿って延びている。保管空間36と保管空間36の外部との間で熱を移動させる熱移動ユニット70は、保管庫30の後壁31の後側に配置されており、第1部分71は後壁31に熱的に接続されている。送風機60の吸込口64が形成された第1面66は、第2部分72に熱的に接続された熱交換手段76に対向している。また送風機60は、ダクト50の出口52と同じ位置に配置された吹出口65を有する。このように本実施の形態では、ダクト50が、入口51から後方に向かって直線的に伸び、保管庫30の後部において熱交換手段76を収容し、この熱交換手段76には送風機60の吸込口64が対向配置されている。このため、送風機60が動作することにより、入口51から吸い込まれた空気が直線的に後方に向かって流れ、熱交換手段76を通って吸込口64から送風機60に吸い込まれる。ダクト50の流路は直線的であるので、圧力損失の増加が抑制され、送風機60の負荷が低下することによって送風機60の騒音が低減される。
遠心ファン63を収容した送風機60のスクロールケーシングは、吸込口64が設けられた第1面66と、遠心ファン63を挟んで第1面66と対向する第2面67を有する。筐体1の本体ケース3の後壁は、鉛直方向に対して傾斜した傾斜部3aを有し、第1面66及び第2面67は、傾斜部3aよりも鉛直に近い角度で鉛直方向に対して傾斜している。スクロールケーシングの吸込口64が設けられた第1面66が鉛直方向に近い向きで配置されていることにより、吹出口65からは鉛直方向に近い向きで空気が吹き出される。ダクト50の出口52と同じ位置にある吹出口65は、排気口9と直線的に連通しており、送風機60から排気口9に至る空気の流路の曲がりが小さい。このため、送風機60から排気口9に至る領域における圧力損失が低減され、送風機60の負荷が低下することによって送風機60の騒音が低減される。
本実施の形態では、保管容器40は、容器内を前後に仕切る隔壁40aを有する。保管庫30の後部に熱移動ユニット70が配置されているため、保管空間36の後部が熱移動ユニット70の第1部分71の温度に近くなるのに対し、扉39のある前部は室温に近くなる。この保管空間36に、隔壁40aによって前後に仕切られた保管容器40を設けることで、異なる温度帯の領域を保管空間36に形成することができる。したがって、保管物に適した保管温度帯が異なっている場合でも、それらを保管することができる。
また筐体1の本体ケース3の底は、低部3cと、低部3cよりも前側かつ高い位置にある高部3bと、低部3cと高部3bとを接続する接続部3dを有している。この接続部3dに、ダクト50の入口51と連通する保管庫吸気口10が設けられている。低部3cと低部3cよりも前にある高部3bとを接続する接続部3dに設けられた保管庫吸気口10は、前に向かって開口するため、熱がこもりやすいキッチンキャビネット200内の空気ではなく、加熱調理器100の前側から室温の空気を吸い込むことができる。加熱調理器100が組み込まれるキッチンキャビネット200の前側には、加熱調理器100の前側部分を収容するための開口が形成されているため、この開口から圧力損失の少ない状態で保管庫吸気口10へ空気を吸い込むことができる。
なお、実施の形態1及び実施の形態2では、ペルチェ素子73を備えた熱移動ユニット70を例示したが、熱移動ユニット70の具体的構成はこの例に限定されない。ヒートポンプを利用した装置を熱移動ユニット70として加熱調理器100に設けてもよい。また、実施の形態2に示したマイクロ波供給装置90に加えて、実施の形態1に示した補助加熱手段44を保管庫30に設けてもよい。また、実施の形態1及び実施の形態2では、ビルトイン型の加熱調理器100を例示したが、加熱調理器100は台に載置される据え置き型のものであってもよい。