JP7128000B2 - レーダ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、レーダ装置およびレーダ装置の制御方法に関する。
従来、物標を検出するレーダ装置として、周波数が連続的に変化するチャープ波を送信して物標との距離および相対速度を検出するFCM(Fast Chirp Modulation)方式のレーダ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2016-3873号公報
ところで、近年、車両周辺を広範囲に監視するために、複数のレーダ装置が設けられる場合がある。しかしながら、複数のレーダ装置を設けた場合、他のレーダ装置のチャープ波を誤って受信することによって自装置のチャープ波が干渉を起こすおそれがあり、かかる干渉を高精度に検出する点で改善の余地があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、チャープ波の干渉を高精度に検出することができるレーダ装置およびレーダ装置の制御方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るレーダ装置は、送信部と、第1処理部と、判定部とを備える。前記送信部は、周波数が連続的に変化するチャープ信号によって複数のチャープ波が繰り返される送信波を出力する。前記第1処理部は、物標による前記送信波の反射波に応じた受信信号と前記チャープ信号とから生成される前記チャープ波毎のビート信号に対して第1FFT処理を行う。前記判定部は、前記第1FFT処理の結果である周波数スペクトルのピーク状態を前記複数のチャープ波間で比較することで前記チャープ波の干渉の有無を判定する。
本発明によれば、チャープ波の干渉を高精度に検出することができる。
図1Aは、車両に搭載されたレーダ装置と物標との位置関係の一例を示す図である。 図1Bは、実施形態に係るレーダ装置の制御方法の概要を示す図である。 図2は、レーダ装置のブロック図である。 図3は、送信周波数と、受信周波数と、ビート周波数との関係の一例を示す図である。 図4は、一つのビート信号に対して距離FFT処理を行った結果を示す図である。 図5は、判定部の判定処理を示す図である。 図6は、第2処理部の処理内容を示す図である。 図7は、ピーク抽出部の処理内容を示す図である。 図8は、レーダ装置が実行する物標検出の処理手順を示すフローチャートである。 図9は、レーダ装置が実行する干渉判定の処理手順を示すフローチャートである。 図10は、変形例に係る送信波を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本願の開示するレーダ装置およびレーダ装置の制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
まず、図1Aおよび図1Bを用いて、実施形態に係るレーダ装置の制御方法の概要について説明する。図1Aは、車両に搭載されたレーダ装置と物標との位置関係の一例を示す図である。図1Bは、実施形態に係るレーダ装置の制御方法の概要を示す図である。
図1Aに示すように、実施形態に係るレーダシステムSは、車両MCの前端部に2つのレーダ装置1,100を備え、前方の物標P(例えば、他車両、歩行者等の移動物や、ガードレールなどの静止物等)を検出する。なお、以下では、自装置であるレーダ装置1に対して、レーダ装置100を他のレーダ装置100と記載する場合がある。また、図1では、レーダ装置1,100は、車両MCの前端部に設けられる場合を示したが、車両MCの側面や後端部に設けられてもよい。また、他のレーダ装置100は、1つに限定されるものではなく、複数であってもよい。
図1Aに示すレーダ装置1,100は、例えば、FCM(Fast Chirp Modulation)方式のレーダ装置である。FCM方式とは、周波数が連続的に変化する複数のチャープ波Ch1~Chn(図1B参照)が繰り返される送信波を出力して検出範囲内に存在する各物標Pとの距離および相対速度を検出する方式である。
具体的には、FCM方式は、チャープ波Ch1~Chnを生成するチャープ信号と物標Pによる送信波の反射波を受信して得られる受信信号とから生成されたチャープ波毎のビート信号に対して2次元高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)処理(以下、2次元FFT処理と記載する場合がある)を行って物標Pとの距離および相対速度を検出する。なお、2次元FFT処理は、距離FFT処理(第1FFT処理の一例)および速度FFT処理(第2FFT処理の一例)の2回のFFT処理を行うことである。
ところで、近年、図1Aに示すように、車両MCの周辺を広範囲に監視するために、車両MCに複数のレーダ装置1,100が設けられる傾向にあり、設置する数も増加傾向にある。
しかしながら、従来は、複数のレーダ装置を設けた場合、他のレーダ装置のチャープ波を誤って受信することによって自装置のチャープ波が干渉を起こすおそれがあり、かかる干渉を高精度に検出する点で改善の余地があった。また、自車両に1つのレーダ装置を設けた場合であっても、他車両に設けられたレーダ装置と干渉するおそれもある。
そこで、実施形態に係るレーダ装置1の制御方法では、2次元FFT処理における距離FFT処理の結果に基づいてチャープ波の干渉を検出する。
図1Bに示す例では、n個のチャープ波Ch1~Chn(以下、総称してチャープ波Chと記載する場合がある)を所定の間隔(数マイクロミリ秒)で繰り返される送信波SWを出力したとする。実施形態に係るレーダ装置1は、まず、送信波SWと、物標Pによる送信波SWの反射波とに基づいてビート信号を生成する。具体的には、実施形態に係るレーダ装置1は、反射波に応じた受信信号とチャープ波Chを生成するチャープ信号とからチャープ波Ch毎のビート信号を生成する。
そして、実施形態に係るレーダ装置1は、チャープ波毎のビート信号それぞれに対して距離FFT処理を行う。距離FFT処理の結果は、ビート信号の周波数スペクトルであり、ビート信号の周波数毎(後述する距離ビン毎)のパワー値(レベル)である。
図1Bでは、チャープ波Ch1~Chn(に対応するビート信号)それぞれにおいて周波数fr10(距離ビンfr10)にピークが出現しており、かかる距離ビンfr10に対応する距離に物標Pが存在することを示す。また、図1Bに示すように、送信波SWのうち、チャープ波Ch4は、他のレーダ装置100の干渉を受けて、距離ビンfr11,fr12にピークが出現していることとする。換言すれば、干渉を受けたチャープ波Ch4は、ピークの数や、ピークの位置等のピーク状態が他のチャープ波Chのピーク状態と異なっている。
このため、実施形態に係るレーダ装置1では、かかるピーク状態の違いに着目して干渉を検出する。具体的には、実施形態に係るレーダ装置1は、距離FFT処理の結果それぞれのピーク状態をチャープ波Ch1~Chn間で比較することでチャープ波Ch1~Chnの干渉の有無を判定する。
具体的には、実施形態に係るレーダ装置1は、複数のチャープ波Ch1~Chnのうち、他のチャープ波Chとはピークの数や、ピークの位置等のピーク状態が異なるチャープ波Ch4があった場合、かかるチャープ波Ch4が干渉を受けていると判定する。
このように、実施形態に係るレーダ装置1では、距離FFT処理の結果のピーク状態を比較することで、チャープ波Chの干渉を高精度に検出することができる。また、実施形態に係るレーダ装置1の制御方法によれば、車両MCに搭載されたレーダ装置100以外にも、例えば、他車両に搭載されたレーダ装置との干渉も高精度に検出することができる。
さらに、実施形態に係るレーダ装置1の制御方法を適用することで、他のレーダ装置1がFCM方式に限らず、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式等の他のレーダ方式であっても干渉を高精度に検出することができる。
なお、実施形態に係るレーダ装置1では、チャープ波Ch4に干渉があった場合、かかるチャープ波Ch4に対応する距離FFT処理の結果を所定値(例えば、ゼロ)に置き換えて速度FFT処理を行うが、かかる点については後述する。
また、実施形態に係るレーダ装置1では、チャープ波Ch4に干渉があったことを示す情報を、他のレーダ装置100に通知して、他のレーダ装置100のチャープ波Ch4に対応するチャープ波の使用を禁止させるが、かかる点についても後述する。
次に、図2を用いて実施形態に係るレーダ装置1の構成について説明する。図2は、レーダ装置1のブロック図である。図2に示すように、レーダ装置1は、車両制御装置2と、他のレーダ装置100に接続される。なお、図2では、レーダ装置1から他のレーダ装置100に接続される場合を示したが、例えば、レーダ装置1および他のレーダ装置100を統括的に制御する制御装置に接続されてもよい。
車両制御装置2は、レーダ装置1による物標の検出結果に基づいてPCS(Pre-crash Safety System)やAEB(Advanced Emergency Braking System)などの車両制御を行う。なお、レーダ装置1は、車載レーダ装置以外の各種用途(例えば、飛行機や船舶の監視等)に用いられてもよい。
レーダ装置1は、送信部10と、受信部20と、処理部30とを備える。送信部10は、信号生成部11と、発振器12と、送信アンテナ13とを備える。信号生成部11はノコギリ波状に電圧が変化する変調信号を生成し、発振器12へ供給する。発振器12は、信号生成部11で生成された変調信号に基づいてチャープ信号STを生成して、送信アンテナ13へ出力する。
送信アンテナ13は、発振器12から入力されるチャープ信号STを送信波SWへ変換し、かかる送信波SWを車両MCの外部へ出力する。送信アンテナ13が出力する送信波SWは、上記した複数のチャープ波Ch1~Chnが繰り返される波形である。送信アンテナ13から車両MCの前方に送信された送信波SWは、他車両などの物標Pで反射されて反射波となる。
受信部20は、アレーアンテナを形成する複数の受信アンテナ21a~21d、ミキサ22a~22dおよびA/D変換器23a~23dを備える。各受信アンテナ21は物標Pからの反射波を受信波RWとして受信し、かかる受信波RWを受信信号SRへ変換して受信アンテナ21毎に設けられたミキサ22へそれぞれ出力する。なお、図2に示す受信アンテナ21の数は、4つであるが3つ以下または5つ以上であってもよい。
各受信アンテナ21から出力された受信信号SRは、不図示の増幅器(例えば、ローノイズアンプ)で増幅された後にミキサ22へ入力される。ミキサ22は、チャープ信号STと受信信号SRとの一部をミキシングし不要な信号成分を除去してビート信号SBを生成し、A/D変換器23へ出力する。
これにより、チャープ信号STの周波数fST(以下、送信周波数fSTと記載する)と受信信号SRの周波数fSR(以下、受信周波数fSRと記載する)との差となるビート周波数fSB(=fST-fSR)を有するビート信号SBが生成される。ミキサ22で生成されたビート信号SBは、A/D変換器23でデジタルの信号へ変換された後に処理部30に出力される。
図3は、送信周波数fSTと、受信周波数fSRと、ビート周波数fSBとの関係の一例を示す図である。図3に示すように、ビート信号SBは、チャープ波Ch毎に生成される。なお、ここでは、1回目のチャープ波Ch1によって得られるビート信号SBを「B1」とし、2回目のチャープ波Ch2によって得られるビート信号SBを「B2」とし、n回目のチャープ波Chnによって得られるビート信号SBを「Bn」としている。
また、図3に示す例では、送信周波数fSTは、チャープ波Ch毎に、基準周波数f0から時間に伴って傾きθ(=(f1-f0)/Tm)で増加し、最大周波数f1に達すると基準周波数f0に短時間で戻るノコギリ波状である。なお、送信周波数fSTは、チャープ波毎に基準周波数f0から最大周波数f1へ短時間で到達し、かかる最大周波数f1から時間に伴って傾きθ(=(f0-f1)/Tm)で減少するノコギリ波状であってもよい。
図2の説明に戻り、処理部30について説明する。処理部30は、送信制御部31および信号処理部32を備える。信号処理部32は、第1処理部33、判定部34、第2処理部35、ピーク抽出部36、演算部37および出力部38を備える。
かかる処理部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート等を含むマイクロコンピュータであり、レーダ装置1全体を制御する。
かかるマイクロコンピュータのCPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、送信制御部31および信号処理部32として機能する。なお、送信制御部31および信号処理部32のうち少なくとも一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
送信制御部31は、送信部10の信号生成部11を制御し、信号生成部11からノコギリ状に電圧が変化する変調信号を発振器12へ出力させる。これにより、時間の経過に従って周波数が変化するチャープ信号STが発振器12から送信アンテナ13へ出力される。
信号処理部32は、各A/D変換器23から出力されるビート信号SBに対してそれぞれ2次元FFT処理(距離FFT処理および速度FFT処理)を行い、かかる2次元FFT処理の結果に基づいて物標Pの距離、相対速度および方位を演算する。また、信号処理部32は、距離FFT処理の結果を用いてチャープ波Chの干渉の有無を判定する。以下、信号処理部32の各部の処理について説明する。
信号処理部32の第1処理部33は、各A/D変換器23から出力されるビート信号SBそれぞれに対して距離FFT処理を行う。具体的には、第1処理部33は、ビート信号SB毎に各距離ビンfr(fr1~frm)について距離FFT処理を行う。ここで、図4を用いて、距離FFT処理の結果について具体的に説明する。
図4は、一つのビート信号SBに対して距離FFT処理を行った結果を示す図である。図4では、横軸を周波数(すなわち、距離ビン)とし、縦軸をパワーの大きさ(ピークの大きさ)としている。図4に示す例では、距離ビンfr10のみにピークが出現していることとする。
ここで、ビート信号SBの周波数は、物標Pとレーダ装置1との間の距離に比例して増減する。このため、第1処理部33は、ビート信号SBに対して距離FFT処理を行うことで、物標Pとの距離に対応する距離ビンfrに出現するピーク(パワーが所定値以上)を距離FFT処理の結果として取得する。
つまり、図4に示す例では、第1処理部33は、一つのビート信号SBにおいて、距離ビンfr10にピークが出現していることを示す情報を距離FFT処理の結果として取得する。そして、第1処理部33は、各ビート信号SBの距離FFT処理の結果を判定部34へ出力する。
図2に戻って判定部34について説明する。判定部34は、距離FFT処理の結果である周波数スペクトルのピーク状態を複数のチャープ波Ch間で比較することでチャープ波Chの干渉の有無を判定する。ここで、図5を用いて、判定部34の判定処理について具体的に説明する。
図5は、判定部34の判定処理を示す図である。図5では、複数のビート信号SB1~SBnの距離FFT処理の結果を時系列で並べている。なお、図5では、n個のチャープ波Ch1~Chnに対応するn個のビート信号B1~Bnから得られる周波数スペクトルを示している。なお、n個のビート信号B1~Bnすべてにおいて、距離ビンfr10にピークが出現している。また、4回目のチャープ波Ch4に対応するビート信号B4では、距離ビンfr10に加えて距離ビンfr11および距離ビンfr12にもピークが出現していることとする。
判定部34は、時系列に並んだ各ビート信号B1~Bnの周波数スペクトルそれぞれを比較してピーク状態が異なる周波数スペクトルがあった場合、干渉があると判定する。具体的には、判定部34は、ピーク状態として、ピークの数、ピークの位置(距離ビン)、ピークの大きさ(パワー)の少なくとも1つを比較することで干渉の有無を判定する。
図5に示す例では、ビート信号B4以外のビート信号SBの周波数スペクトルにおけるピークの数が1個であるのに対し、ビート信号B4の周波数スペクトルにおけるピークの数が3個と異なるため、判定部34は、ビート信号B4に対応するチャープ波Ch4に干渉があると判定する。
また、例えば、すべてのビート信号B1~Bnの周波数スペクトルにおけるピークの数が同じであった場合に、判定部34は、かかるピークの位置の違いに基づいて干渉の有無を判定する。つまり、判定部34は、ピークの位置が異なる周波数スペクトルがあった場合、かかる周波数スペクトルに対応するチャープ波Chに干渉があると判定する。
また、例えば、すべてのビート信号B1~Bnの周波数スペクトルにおいて、ピークの数およびピークの位置が同じであった場合、判定部34は、かかるピークのパワー(大きさ)の違いに基づいて干渉の有無を判定する。つまり、判定部34は、ピークのパワーが異なる周波数スペクトルがあった場合、かかる周波数スペクトルに対応するチャープ波Chに干渉があると判定する。
そして、判定部34は、すべてのビート信号B1~Bnの周波数スペクトルにおいて、ピークの数、ピークの位置およびピークの大きさが同じであった場合、チャープ波Chに干渉が無いと判定する。
このように、判定部34は、ピークの数、ピークの位置およびピークの大きさを比較して干渉判定を行うことで、干渉の有無を高精度に検出することができる。
なお、判定部34は、ピーク状態として、ピークの数、ピークの位置およびピークの大きさにより干渉判定したが、例えば、周波数スペクトル全体の波形形状を比較して干渉判定を行ってもよい。
図2に戻って第2処理部35について説明する。第2処理部35は、距離FFT処理の結果に対して速度FFT処理を行う。速度FFT処理とは、距離FFT処理の結果である周波数スペクトルの距離ビンfr毎に各速度ビンfvについてFFT処理を行うことである。速度FFT処理の結果として、物標Pの相対速度に対応する速度ビンfvにピークが出現することとなる。
具体的には、第2処理部35は、物標Pの相対速度がゼロでない場合に生じる受信信号SRのドップラ成分を利用する。より具体的には、第2処理部35は、各ビート信号SBの周波数スペクトルにおけるピークの位相の変化を検出する。ここで、図6を用いて、第2処理部35の処理内容について具体的に説明する。
図6は、第2処理部35の処理内容を示す図である。図6では、時間的に連続するビート信号B1~B8のFFT処理結果とビート信号B1~B8間のピークの位相変化の一例を示す。図6に示す例では、各ビート信号B1~B8の距離ビンfr10にピークがあり、かかるピークの位相が変化している。なお、図6に示すように、ビート信号B4は、距離ビンfr11および距離ビンfr12にピークがある、つまり、判定部34によってビート信号B4に対応するチャープ波Ch4に干渉があると判定されたとする。
ここで、仮に、判定部34によってチャープ波Chに干渉が無いと判定された場合について説明する。かかる場合には、物標Pとレーダ装置1との間の相対速度がゼロでない場合、ビート信号B1~B8間において同一物標Pに相当する距離ビンfr10のピークにドップラ周波数に応じた位相の変化が現われる。
第2処理部35は、距離FFT処理して得られる周波数スペクトルを時系列に並べて速度FFT処理を行うことで、ドップラ周波数に対する周波数ビンにピークが出現する周波数スペクトルを得る。
一方、第2処理部35は、判定部34によってチャープ波Ch4に干渉があると判定された場合、チャープ波Ch4に対応する距離FFT処理の結果を所定値に置き換えて速度FFT処理を行う。
例えば、図6に示す例では、第2処理部35は、ビート信号B4の周波数スペクトルにおけるピークの位相をゼロに置き換えて速度FFT処理を行う。なお、ピークの位相をゼロに置き換えて速度FFT処理を行った場合、ドップラ周波数に相当するピークが出現した周波数スペクトルを得られるが、ピークの位相をゼロにした影響でフロアノイズが上昇することとなる。後述するピーク抽出部36では、フロアノイズの上昇を加味して閾値を設定するが、かかる点については後述する。
つまり、第2処理部35は、干渉があったチャープ波Chのみ距離FFT処理の結果をゼロに置き換えることで、干渉による影響を最小限に抑えることができる。
なお、第2処理部35は、距離FFT処理の結果であるピークの位相をゼロに置き換えたが置き換える所定値はゼロに限定されるものではない。例えば、第2処理部35は、前後のチャープ波Ch(チャープ波Ch3およびチャープ波Ch5)の位相を平均化した値を置き換える所定値としてもよい。あるいは、前回のチャープ波Ch(チャープ波Ch3)の位相を置き換える所定値としてもよい。
図2に戻ってピーク抽出部36について説明する。ピーク抽出部36は、第2処理部35における速度FFT処理の結果である周波数スペクトルからパワーが閾値以上のピークを抽出する。かかる閾値は、判定部34の干渉判定の結果に基づいて決定される。ここで、図7を用いて、ピーク抽出部36における閾値の設定方法について説明する。
図7は、ピーク抽出部36の処理内容を示す図である。図7では、速度FFT処理の結果である周波数スペクトルの一例を示す。図7では、横軸に速度ビンを示し、縦軸にピークのパワーを示す。また、図7には、チャープ波Chに干渉が無かった場合のフロアノイズN0と、チャープ波Chに干渉が有った場合のフロアノイズNxを示している。また、図7に示す閾値Th1は、フロアノイズN0の場合の閾値を示す。
図7に示すように、速度FFT処理の結果である周波数スペクトルでは、チャープ波Chに干渉が有った場合のフロアノイズNxは、干渉が無かった場合のフロアノイズN0よりも上昇することとなる。具体的には、干渉が有ったチャープ波Chの数やかかるチャープ波Chを距離FFT処理した結果のピークの位相(本来得られるはずの位相)に応じた分だけフロアノイズNxが上昇する。
そこで、ピーク抽出部36は、判定部34によってチャープ波Chに干渉があると判定された場合、閾値Th1を補正する。具体的には、ピーク抽出部36は、干渉が有ったチャープ波Chの数や、かかるチャープ波Chを距離FFT処理した結果のピークの位相に基づいてフロアノイズNxを算出する。そして、ピーク抽出部36は、干渉が有った場合のフロアノイズNxと、干渉が無かった場合のフロアノイズN0との差分を算出し、かかる差分の値を閾値Th1に加算して新閾値Th1+(Nx-N0)とする。
これにより、フロアノイズNxによって上昇したノイズピークの誤抽出を防止できるため、ピーク抽出の精度を向上させることができる。
図2に戻って演算部37について説明する。演算部37は、ピーク抽出部36によって抽出されたピークに基づいて物標Pとの距離、相対速度および角度(方位)を演算する。
具体的には、演算部37は、ピーク抽出部36によって抽出されたピークの距離ビンおよび速度ビンの組み合わせに基づいて物標Pとの距離および相対速度を導出する。
また、演算部37は、所定の角度演算処理により物標Pの角度を推定する。具体的には、演算部37は、4つの受信アンテナ21a~21dの受信信号SRに基づく4つのビート信号SBの周波数スペクトルそれぞれの同一距離ビンのピークの位相の違いにより物標Pの角度を推定する。なお、同一距離ビンのピークの位相の違いにより、同一距離ビンに複数の物標Pが存在することが検出された場合、それら複数の物標Pそれぞれについて角度推定を行う。
なお、演算部37における角度の推定は、例えば、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)、DBF(Digital Beam Forming)、または、MUSIC(Multiple Signal Classification)などの所定の推定方式を用いて行われる。
出力部38は、車両制御装置2およびレーダ装置100に対して各種情報を出力する。例えば、出力部38は、検出した物標Pに関する情報(距離、相対速度および角度)を車両制御装置2へ出力する。
また、出力部38は、判定部34によってチャープ波Chに干渉があると判定された場合、かかるチャープ波Chに関する情報を含む干渉情報をレーダ装置100へ出力する。かかる干渉情報には、例えば、k回目のチャープ波Chに干渉が有ったことを示す情報が含まれる。
これにより、例えば、レーダ装置100は、干渉情報に基づいて、干渉があったk回目チャープ波Chと同じタイミングでレーダ装置100から出力されたチャープ波Chも干渉している可能性が高いとして、物標Pの検出処理に用いないようにすることができる。
なお、出力部38は、複数のレーダ装置1,100を統括的に制御している制御装置が別途設けられている場合、かかる制御装置へ干渉情報を出力することとしてもよい。
次に、図8および図9を用いて実施形態に係るレーダ装置1が実行する処理手順について説明する。図8は、レーダ装置1が実行する物標検出の処理手順を示すフローチャートである。図9は、レーダ装置1が実行する干渉判定の処理手順を示すフローチャートである。なお、図8および図9に示す処理手順は、処理部30によって繰り返し実行される。
まず、図8を用いて、レーダ装置1が実行する物標検出の処理手順について説明する。図8に示すように、送信部10は、n個のチャープ波Chを含む送信波SWを出力する(ステップS101)。
つづいて、受信部20は、物標Pによる送信波SWの反射波に応じた受信信号SRとチャープ信号STとからチャープ波Ch毎のn個のビート信号SBを生成する(ステップS102)。
つづいて、第1処理部33は、n個の各ビート信号SBに対して距離FFT処理を行う(ステップS103)。つづいて、判定部34は、距離FFT処理の結果である周波数スペクトルのピーク状態を複数のチャープ波Ch間で比較することでチャープ波Chの干渉の有無を判定する判定処理を行う(ステップS104)。なお、判定部34による判定処理の処理手順については、図9で詳細に説明する。
つづいて、第2処理部35は、判定部34によってチャープ波Chに干渉が有ったか否かを判定する(ステップS105)。第2処理部35は、干渉が無かった場合(ステップS105,No)、距離FFT処理の結果に対して速度FFT処理を行う(ステップS106)。
一方、第2処理部35は、チャープ波Chに干渉が有った場合(ステップS105,Yes)、干渉が有ったチャープ波Chに対応する距離FFT処理の結果を所定値(例えば、ゼロ)に置き換えて(ステップS107)、処理をステップS106へ移行する。
つづいて、ピーク抽出部36は、速度FFT処理の結果である周波数スペクトルからパワーが閾値以上のピークを抽出する(ステップS108)。かかる閾値は、干渉の有無に応じて補正された値が用いられる。
つづいて、演算部37は、ピーク抽出部36によって抽出されたピークに基づいて物標Pとの距離、相対速度およぶ角度を演算する(ステップS109)。つづいて、出力部38は、演算部37による演算結果である物標Pの情報や、干渉が有ったチャープ波Chに関する情報を含む干渉情報を出力し(ステップS110)、処理を終了する。
次に、図9を用いて、判定部34による判定処理について説明する。図9に示すように、判定部34は、まず、n個の距離FFT処理の結果である周波数スペクトラムのピーク状態をチャープ波Ch間で比較する(ステップS201)。
判定部34は、比較結果に基づいてピーク状態が異なる距離FFT処理の結果が有るか否かを判定する(ステップS202)。判定部34は、ピーク状態が異なる距離FFT処理の結果が有った場合(ステップS202,Yes)、かかる結果に対応するチャープ波Chに干渉があると判定し(ステップS203)、処理を終了する。
一方、判定部34は、ピーク状態が異なる距離FFT処理の結果が無かった場合(ステップS202,No)、干渉無しと判定し(ステップS204)、処理を終了する。
上述してきたように、実施形態に係るレーダ装置1は、送信部10と、第1処理部33と、判定部34とを備える。送信部10は、周波数が連続的に変化するチャープ信号によって複数のチャープ波Chが繰り返される送信波SWを出力する。第1処理部33は、物標Pによる送信波SWの反射波に応じた受信信号SRとチャープ信号STとから生成されるチャープ波Ch毎のビート信号SBに対して第1FFT処理を行う。判定部34は、第1FFT処理の結果である周波数スペクトルのピーク状態を複数のチャープ波Ch間で比較することでチャープ波Chの干渉の有無を判定する。これにより、チャープ波Chの干渉を高精度に検出することができる。
なお、上述した実施形態では、送信波SWの複数のチャープ波Chすべては、周波数が連続的に増加する(すなわち、アップチャープ)場合を示したが、例えば、周波数が連続的に減少する(すなわち、ダウンチャープ)チャープ波Chであってもよい。また、送信波SWの複数のチャープ波Chは、アップチャープとダウンチャープとが混在してもよい。かかる点について、図10を用いて説明する。
図10は、変形例に係る送信波SWを示す図である。図10に示すように、送信波SWは、アップチャープUPおよびダウンチャープDNのチャープ波Chがランダム繰り返されてもよい。
つまり、送信波SWをアップチャープUPおよびダウンチャープDNの任意の組み合わせにより構成する。これにより、例えば、他のレーダ装置100の送信波SWのチャープ波Chと周波数が重なりにくくなり、結果、干渉の発生を抑えることができる。
なお、アップチャープUPおよびダウンチャープDNが任意に組み合わされた場合、第1処理部33、判定部34、第2処理部35、ピーク抽出部36および演算部37は、アップチャープUPおよびダウンチャープDNそれぞれを別々に処理する。そして、演算部37は、アップチャープUPおよびダウンチャープDNそれぞれで算出された距離、相対速度および角度を平均化して、最終的な距離、相対速度および角度を算出する。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
1 レーダ装置
2 車両制御装置
10 送信部
11 信号生成部
12 発振器
13 送信アンテナ
20 受信部
21,21a~21d 受信アンテナ
22,22a~22d ミキサ
23,23a~23d A/D変換器
30 処理部
31 送信制御部
32 信号処理部
33 第1処理部
34 判定部
35 第2処理部
36 ピーク抽出部
37 演算部
38 出力部
100 レーダ装置
MC 車両
P 物標
S レーダシステム

Claims (4)

  1. 同一の周波数変化率で周波数が連続的に変化するチャープ信号によって複数のチャープ波が繰り返される送信波を出力する送信部と、
    物標による前記送信波の反射波に応じた受信信号と前記チャープ信号とから生成される前記チャープ波毎のビート信号に対して第1FFT処理を行う第1処理部と、
    前記第1FFT処理の結果である周波数スペクトルのピーク状態を前記複数のチャープ波間で比較することで前記チャープ波の干渉の有無を判定する判定部と、
    前記第1FFT処理の結果に対して第2FFT処理を行う第2処理部とを備え、
    前記第2処理部は、
    前記判定部によって前記チャープ波に前記干渉があると判定された場合、当該チャープ波に対応する前記第1FFT処理の結果を所定値に置き換えて前記第2FFT処理を行うこと
    を特徴とするレーダ装置。
  2. 前記第2FFT処理の結果である周波数スペクトルからピークの大きさが所定の閾値以上の前記ピークを抽出するピーク抽出部をさらに備え、
    前記ピーク抽出部は、
    前記判定部によって前記干渉があると判定された場合、補正した前記閾値に基づいて抽出処理を行うこと
    を特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
  3. 前記判定部は、
    前記ピーク状態として、ピークの数、ピークの位置およびピークの大きさの少なくとも1つを比較することで前記干渉の有無を判定すること
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
  4. 前記判定部によって前記チャープ波に前記干渉があると判定された場合、当該チャープ波に関する情報を含む干渉情報を他の装置へ出力する出力部をさらに備えること
    を特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載のレーダ装置。
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