JP7127998B2 - レーダ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、レーダ装置およびレーダ装置の制御方法に関する。
従来、物標を検出するレーダ装置として、周波数が連続的に変化する送信波を出力して物標との距離、相対速度および角度を検出するFCM(Fast Chirp Modulation)方式のレーダ装置が提案されている。
具体的には、レーダ装置は、送信波の物標による反射波を複数の受信アンテナにより受信して得られたビート信号それぞれに対して2次元高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)処理を行うことで、上記した距離、相対速度および角度を検出する(例えば、特許文献1参照)。
特開2016-3873号公報
しかしながら、従来の技術では、例えば、受信アンテナが複数であった場合、受信アンテナ毎に2次元FFT処理を行うため、処理量が嵩んでしまうおそれがあった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、処理量が嵩むことを防止できるレーダ装置およびレーダ装置の制御方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るレーダ装置は、受信部と、FFT処理部と、ピーク抽出部とを備える。前記受信部は、周波数が連続的に変化する送信波が物標によって反射された反射波を複数の受信アンテナで受信する。前記FFT処理部は、前記複数の受信アンテナのうち、任意の受信アンテナで受信した前記反射波に基づくビート信号に対して2次元FFT処理を行う場合に、2次元目のFFT処理を第1の範囲で行う。前記ピーク抽出部は、前記FFT処理部による処理結果である周波数スペクトルから前記物標に対応するピークを抽出する。また、前記FFT処理部は、前記任意の受信アンテナ以外の他の前記受信アンテナについて前記2次元FFT処理を行う場合、前記ピーク抽出部によって抽出された前記ピークの位置に基づき前記第1の範囲を限定した第2の範囲で前記2次元目のFFT処理を行う。
本発明によれば、処理量が嵩むことを防止することができる。
図1Aは、車両に搭載されたレーダ装置と物標との位置関係の一例を示す図である。 図1Bは、実施形態に係るレーダ装置の制御方法の概要を示す図である。 図2は、レーダ装置のブロック図である。 図3は、送信周波数と、受信周波数と、ビート周波数との関係の一例を示す図である。 図4は、ビート信号に対して距離FFT処理を行った結果を示す図である。 図5は、第2処理部の処理内容を示す図である。 図6は、2次元FFT処理における処理量を示す図である。 図7は、レーダ装置が実行する物標検出の処理手順を示すフローチャートである。 図8は、変形例に係るレーダ装置の制御方法を示す図である。 図9は、変形例に係る2次元FFT処理における処理量を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本願の開示するレーダ装置およびレーダ装置の制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
まず、図1Aおよび図1Bを用いて、実施形態に係るレーダ装置の制御方法の概要について説明する。図1Aは、車両に搭載されたレーダ装置と物標との位置関係の一例を示す図である。図1Bは、実施形態に係るレーダ装置の制御方法の概要を示す図である。
図1Aに示すように、実施形態に係るレーダ装置1は、車両MCの前端部に設けられるとともに、4つの受信アンテナ21a~21d(以下、受信アンテナ21と記載する場合がある)を備えていることとする。なお、受信アンテナ21a~21dの数は、複数であれば、3つ以下でも、5つ以上でもよい。また、レーダ装置1の搭載位置は、車両MCの前端部に限定されるものではなく、車両MCの側面や、後端部であってもよい。
図1Aに示すレーダ装置1は、例えば、FCM(Fast Chirp Modulation)方式のレーダ装置である。FCM方式とは、周波数が連続的に変化する複数のチャープ波が繰り返される送信波を出力して検出範囲内に存在する各物標Pとの距離および相対速度を検出する方式である。
具体的には、FCM方式は、送信波が物標Pによって反射された反射波を複数の受信アンテナ21a~21dによって受信し、受信した反射波と送信波とから生成されるビート信号に対して2次元高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)処理(以下、2次元FFT処理と記載する場合がある)を行って物標Pとの距離および相対速度を検出する。
なお、2次元FFT処理は、物標Pとの距離に対応する距離方向への距離FFT処理および物標Pの速度に対応する速度方向への速度FFT処理の2回のFFT処理を行うことである。
ここで、従来のレーダ装置は、予め定められた範囲内すべてにおいて距離FFT処理および速度FFT処理を行うため、物標情報(距離や相対速度)の算出に多くの計算が必要とする。また、複数の受信アンテナ毎に2次元FFT処理を行うとなると、その計算量はさらに膨大になるため、処理量が嵩むこととなる。このため、例えば、2次元FFT処理の処理時間が長くなると、物標情報の更新周期の短くするという要求を満たせなくなるおそれもある。
そこで、実施形態に係るレーダ装置1の制御方法では、複数の受信アンテナ21a~21dのうち、まず、任意の受信アンテナ21について2次元FFT処理を行い、その処理結果により他の受信アンテナ21における2次元FFT処理の範囲を限定する。
図1Bでは、2次元に配置された複数のマスを示しており、かかるマス毎に2次元FFT処理が行われる。具体的には、かかるマスは、送信波におけるチャープ波(あるいはビート信号)の数分だけ横方向に並べられ、物標Pとの距離に対応する距離ビン(周波数)の数分だけ縦方向に並べられている。
実施形態に係るレーダ装置1は、まず、受信アンテナ21aについて、チャープ波毎に生成されるビート信号B1~Bnに対して通常通りの2次元FFT処理を行う。図1Bに示す例では、まず、レーダ装置1は、1次元目として、ビート信号B1~Bn毎に距離FFT処理(図1Bに示す縦方向)を行う。具体的には、レーダ装置1は、すべてのビート信号B1~Bnに対して距離FFT処理を行う。図1Bの中段図(左図)では、距離FFT処理の結果、各ビート信号B1~Bnにおいて、距離ビンfr10にパワー値が所定値以上のピークが出現していることとする。
つづいて、実施形態に係るレーダ装置1は、2次元目のFFT処理として、距離ビンfr毎に速度FFT処理を行う。具体的には、レーダ装置1は、すべての距離ビンfrに対して速度FFT処理(図1Bに示す横方向)を行う。つまり、2次元目のFFT処理における範囲(第1の範囲)は、距離ビンfr1から距離ビンfrmとなる。なお、第1の範囲は、すべての距離ビンfr1~frmに限定されるものはなく、例えば、距離ビンfr1~frmのうち、前回の時間における物標Pのピーク位置の距離ビンfrのみを第1の範囲としてもよい。図1Bの下段図(左図)では、速度FFT処理の結果、速度ビンfv5にピークが出現していることとする。
そして、実施形態に係るレーダ装置1は、受信アンテナ21a以外の他の受信アンテナ21b~21dについて2次元FFT処理を行う場合、上記した第1の範囲を限定した第2の範囲で、2次元目のFFT処理を行う。具体的には、図1Bの中段図(右図)に示すように、レーダ装置1は、まず、ビート信号B1~Bnまでのすべての範囲(横方向)で、1次元目のFFT処理を行う。つまり、1次元目のFFT処理の範囲は、上記した受信アンテナ21aと同様の範囲とする。
そして、実施形態に係るレーダ装置1は、2次元目のFFT処理を行う際、受信アンテナ21aの2次元FFT処理の結果で抽出されたピークの位置に基づき範囲を限定する。
例えば、図1Bの下段図(右図)に示すように、実施形態に係るレーダ装置1は、距離ビンfr1から距離ビンfrmの範囲のうち、ピークの位置に対応する距離ビンfr10のみを第2の範囲として2次元目のFFT処理を行う。つまり、他の受信アンテナ21b~21dでは、第1の範囲よりも狭い第2の範囲で2次元目のFFT処理を行う。
なお、図1Bに示す例では、2次元目のFFT処理における第2の範囲を、ピークの位置である距離ビンfr10のみに限定して行う場合を示したが、例えば、距離ビンfr10を含む距離ビンfr9から距離ビンfr11までの範囲を第2の範囲としてもよい。つまり、距離ビンfr10を含んだ範囲で、かつ、距離ビンfr1から距離ビンfrmまでの第1の範囲を限定した範囲であればよい。
このように、受信アンテナ21aの2次元FFTの処理結果を用いて、他の受信アンテナ21b~21dについては、2次元目のFFT処理の範囲を限定することで、不要なFFT処理の計算を省くことができる。従って、実施形態に係るレーダ装置1によれば、2次元FFT処理における計算量を減らすことができるため、処理量が嵩むことを防止できる。なお、2次元FFT処理の計算低減量については、図6で詳細に後述する。
また、図1Bに示す例では、2次元FFT処理について、距離FFT処理を行った後、速度FFT処理を行ったが、処理順を入れ替えてもよい。つまり、速度FFT処理を行った後、距離FFT処理を行ってもよいが、かかる点については、図8および図9で後述する。
次に、図2を用いて実施形態に係るレーダ装置1の構成について説明する。図2は、レーダ装置1のブロック図である。図2に示すように、レーダ装置1は、車両制御装置2に接続される。
車両制御装置2は、レーダ装置1による物標Pの検出結果に基づいてPCS(Pre-crash Safety System)やAEB(Advanced Emergency Braking System)などの車両制御を行う。なお、レーダ装置1は、車載レーダ装置以外の各種用途(例えば、飛行機や船舶の監視等)に用いられてもよい。
レーダ装置1は、送信部10と、受信部20と、処理部30とを備える。送信部10は、信号生成部11と、発振器12と、送信アンテナ13とを備える。信号生成部11はノコギリ波状に電圧が変化する変調信号を生成し、発振器12へ供給する。発振器12は、信号生成部11で生成された変調信号に基づいてチャープ信号STを生成して、送信アンテナ13へ出力する。
送信アンテナ13は、発振器12から入力されるチャープ信号STを送信波SWへ変換し、かかる送信波SWを車両MCの外部へ出力する。送信アンテナ13が出力する送信波SWは、複数のチャープ波が繰り返される波形である。送信アンテナ13から車両MCの前方に送信された送信波SWは、物標Pで反射されて反射波となる。
受信部20は、アレーアンテナを形成する複数の受信アンテナ21a~21d、ミキサ22a~22dおよびA/D変換器23a~23dを備える。各受信アンテナ21は物標Pからの反射波を受信波RWとして受信し、かかる受信波RWを受信信号SRへ変換して受信アンテナ21毎に設けられたミキサ22へそれぞれ出力する。なお、図2に示す受信アンテナ21の数は、4つであるが3つ以下または5つ以上であってもよい。
各受信アンテナ21から出力された受信信号SRは、不図示の増幅器(例えば、ローノイズアンプ)で増幅された後にミキサ22へ入力される。ミキサ22は、チャープ信号STと受信信号SRとの一部をミキシングし不要な信号成分を除去してビート信号SBを生成し、A/D変換器23へ出力する。
これにより、チャープ信号STの周波数fST(以下、送信周波数fSTと記載する)と受信信号SRの周波数fSR(以下、受信周波数fSRと記載する)との差となるビート周波数fSB(=fST-fSR)を有するビート信号SBが生成される。ミキサ22で生成されたビート信号SBは、A/D変換器23でデジタルの信号へ変換された後に処理部30に出力される。
図3は、送信周波数fSTと、受信周波数fSRと、ビート周波数fSBとの関係の一例を示す図である。図3に示すように、ビート信号SBは、チャープ波毎に生成される。なお、ここでは、1回目のチャープ波によって得られるビート信号SBを「B1」とし、2回目のチャープ波によって得られるビート信号SBを「B2」とし、n回目のチャープ波によって得られるビート信号SBを「Bn」としている。
また、図3に示す例では、送信周波数fSTは、チャープ波毎に、基準周波数f0から時間に伴って傾きθ(=(f1-f0)/Tm)で増加し、最大周波数f1に達すると基準周波数f0に短時間で戻るノコギリ波状(いわゆるアップチャープ)である。なお、送信周波数fSTは、チャープ波毎に基準周波数f0から最大周波数f1へ短時間で到達し、かかる最大周波数f1から時間に伴って傾きθ(=(f0-f1)/Tm)で減少するノコギリ波状(いわゆるダウンチャープ)であってもよい。
図2の説明に戻り、処理部30について説明する。処理部30は、送信制御部31および信号処理部32を備える。信号処理部32は、第1処理部33、第2処理部34、ピーク抽出部35、演算部36および出力部37を備える。
かかる処理部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート等を含むマイクロコンピュータであり、レーダ装置1全体を制御する。
かかるマイクロコンピュータのCPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、送信制御部31および信号処理部32として機能する。なお、送信制御部31および信号処理部32のうち少なくとも一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
送信制御部31は、送信部10の信号生成部11を制御し、信号生成部11からノコギリ状に電圧が変化する変調信号を発振器12へ出力させる。これにより、時間の経過に従って周波数が変化するチャープ信号STが発振器12から送信アンテナ13へ出力される。
信号処理部32は、各A/D変換器23から出力されるビート信号SBに対してそれぞれ2次元FFT処理(距離FFT処理および速度FFT処理)を行い、かかる2次元FFT処理の結果に基づいて物標Pの距離、相対速度(縦方向への相対速度および横方向への相対速度)および方位を演算する。以下、信号処理部32の各部の処理について説明する。
信号処理部32の第1処理部33(FFT処理部の一例)は、各A/D変換器23から出力されるビート信号SBそれぞれに対して距離FFT処理を行うことで受信アンテナ21毎に周波数スペクトルを生成する。具体的には、第1処理部33は、ビート信号SB毎に各距離ビンfr(fr1~frm)について距離FFT処理を行う。ここで、図4を用いて、距離FFT処理の結果について具体的に説明する。
図4は、ビート信号SBに対して距離FFT処理を行った結果を示す図である。図4では、ビート信号B5に対する距離FFT処理の結果である周波数スペクトルを示す。図4に示す周波数スペクトルでは、横軸を周波数(すなわち、距離ビン)とし、縦軸をパワーの大きさ(ピークの大きさ)としている。図4に示す例では、距離ビンfr10のみにピークが出現していることとする。
ここで、ビート信号SBの周波数は、物標Pとレーダ装置1との間の距離に比例して増減する。このため、第1処理部33は、ビート信号SBに対して距離FFT処理を行うことで、物標Pとの距離に対応する距離ビンfrに出現するピーク(パワーが所定値以上)を距離FFT処理の結果として取得する。
つまり、図4に示す例では、第1処理部33は、一つのビート信号B5において、距離ビンfr10にピークが出現していることを示す情報を距離FFT処理の結果として取得する。
なお、第1処理部33は、4つの受信アンテナ21a~21dからビート信号SBを受け取った場合、4つの受信アンテナ21a~21dのビート信号SBに対して距離FFT処理を行ってもよく、あるいは、受信アンテナ21aのビート信号SBに対してのみ距離FFT処理を行ってもよい。受信アンテナ21aのビート信号SBに対してのみ距離FFT処理を行う場合、他の3つの受信アンテナ21b~21dについては、後述のピーク抽出部35の抽出結果を受けてから距離FFT処理を行う。
第1処理部33は、距離FFT処理の結果である周波数スペクトルを第2処理部34へ出力する。
第2処理部34は、第1処理部33における距離FFT処理の結果に対して速度FFT処理を行う。速度FFT処理とは、距離FFT処理の結果である周波数スペクトルの距離ビンfr毎に各速度ビンfvについて2回目のFFT処理を行うことである。これにより、速度FFT処理の結果として、物標Pの相対速度に対応する速度ビンfvにピークが出現することとなる。
具体的には、第2処理部34は、物標Pの相対速度がゼロでない場合に生じる受信信号SRのドップラ成分を利用する。より具体的には、第2処理部34は、ビート信号SBの周波数スペクトルにおけるピークの位相の変化を検出する。ここで、図5を用いて、第2処理部34の処理内容について具体的に説明する。
図5は、第2処理部34の処理内容を示す図である。図5では、複数の受信アンテナ21のうち、任意の1つの受信アンテナ21の周波数スペクトルを時系列に並べて示している。また、図5では、時間的に連続するビート信号B1~B8の距離FFT処理の結果とビート信号B1~B8間のピークの位相変化の一例を示す。図5に示す例では、各ビート信号B1~B8の距離ビンfr10にピークがあり、かかるピークの位相が変化している。
ここで、物標Pとレーダ装置1との間の相対速度がゼロでない場合、ビート信号B1~B8間において同一物標Pに相当する距離ビンfr10のピークにドップラ周波数に応じた位相の変化が現われる。
第2処理部34は、距離FFT処理を行って得られる周波数スペクトルを時系列に並べて速度FFT処理を行うことで、ドップラ周波数に対する周波数ビン(速度ビン)にピークが出現する周波数スペクトルを得る。
また、図5に示すように、第2処理部34は、受信アンテナ21aについては、距離ビンfr1から距離ビンfrmまでの全範囲において、距離ビンfr毎に速度FFT処理を行う。そして、第2処理部34は、他の3つの受信アンテナ21b~21dについては、後述のピーク抽出部35によって抽出されたピークの位置に基づいて速度FFT処理を行う範囲を限定する。
例えば、図5に示すように、第2処理部34は、ピーク抽出部35によって距離ビンfr10にピークが抽出された場合、距離ビンfr10に限定して速度FFT処理を行う。つまり、第2処理部34は、ピーク抽出部35によって抽出されたピークの距離ビンfr10以外の距離ビンfrについては速度FFT処理を行わない。これにより、2次元FFT処理における処理量を最小限にすることができる。
図2に戻ってピーク抽出部35について説明する。ピーク抽出部35は、第2処理部34における速度FFT処理の結果である周波数スペクトルからパワーが所定の閾値以上のピークを抽出する。かかる閾値は、予め定められた固定値であってもよく、動的に変化させてもよい。
ピーク抽出部35は、抽出したピークが受信アンテナ21aに対応する周波数スペクトルのピークであった場合、かかるピークに関する情報を第2処理部34へ出力する。また、ピーク抽出部35は、複数の受信アンテナ21a~21dすべてのピーク抽出結果において、同じ位置にピークが出現していることが確認できた場合に、かかるピークに関する情報を演算部36へ出力する。
なお、ピーク抽出部35は、例えば、すべてのピーク抽出結果のうち少なくとも1つにおいて、同じ位置にピークが出現していない場合、演算部36への出力を禁止してもよい。これにより、信頼性の低いピークを除くことができるため、物標Pの誤検出を防止することができる。
演算部36は、ピーク抽出部35によって抽出されたピークに基づいて物標Pとの距離、相対速度および角度(方位)を演算する。
具体的には、演算部36は、ピーク抽出部35によって抽出されたピークの距離ビンfrおよび速度ビンfvの組み合わせに基づいて物標Pとの距離および相対速度を導出する。
また、演算部36は、所定の角度演算処理により物標Pが存在する角度を推定する。具体的には、演算部36は、4つの受信アンテナ21a~21dの受信信号SRに基づく4つのビート信号SBの周波数スペクトルそれぞれの同一距離ビンfrのピークの位相の違いにより物標Pの角度を推定する。なお、同一距離ビンfrのピークの位相の違いにより、同一距離ビンに複数の物標Pが存在することが検出された場合、それら複数の物標Pそれぞれについて角度推定を行う。
なお、演算部36における角度の推定は、例えば、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)、DBF(Digital Beam Forming)、または、MUSIC(Multiple Signal Classification)などの所定の推定方式を用いて行われる。
出力部37は、車両制御装置2に対して各種情報を出力する。例えば、出力部37は、検出した物標Pに関する物標情報を車両制御装置2へ出力する。物標情報には、物標Pの距離、相対速度および角度が含まれる。
ここで、図6を用いて、2次元FFT処理における処理量について説明する。図6は、2次元FFT処理における処理量を示す図である。図6に示す「1通常FCM」とは、距離FFT処理および速度FFT処理をすべての範囲で行った場合の処理量を示し、「2改良FCM」は、2次元目である速度FFT処理について、限定した範囲(第2の範囲)で行った場合の処理量を示す。
図6では、距離FFTビン数(距離ビンfr1~frm)は、1024個、チャープ数(ビート信号SBの数)は、64個であり、ピーク抽出部35によって抽出されたピークの数は、10個であり、受信アンテナ21の数は、4つであるとする。また、図6に示す「複素数乗算回数」および「複素数加減算回数」は、各FFT処理におけるバタフライ演算の際の複素数の乗算回数および加減算回数を示す。具体的には、距離FFTについては、複素数乗算回数をα、距離FFTビン数をP、チャープ数をNとした場合、α=P/2×LOG(P,2)×Nで表され、複素数加減算回数をβとした場合、β=P×LOG(P,2)×Nで表される。また、速度FFT処理については、複素数乗算回数をα、チャープ数をP、距離FFTビン数をNとした場合、α=P/2×LOG(P,2)×Nで表され、複素数加減算回数をβとした場合、β=P×LOG(P,2)×Nで表される。
図6に示すように、「1通常FCM」および「2改良FCM」を比べると、第1処理部33で行われる距離FFT処理の処理量(図中のC、D)は、同じである。また、第2処理部34で行われる速度FFT処理における受信アンテナ21の1ch分の処理量(図中のE、F)も同じである。
一方で、第2処理部34で行われる速度FFT処理における他の受信アンテナ21の3ch分については、「2改良FCM」(G/100×3ch)が「1通常FCM」(G×3ch)よりも処理量が少ない。これは、3chの受信アンテナ21については、ピークに対応する距離ビンfrのみ速度FFT処理を行うためである。
これにより、図6に示すように、「2改良FCM」は、「1通常FCM」の処理量の略7割(72%)程度に抑えることができる。なお、図6に示す、「距離FFTビン数」、「チャープ数」、「ピーク数」および「受信アンテナ数」は、一例であって、任意の値が設定されてよい。
次に、図7を用いて実施形態に係るレーダ装置1が実行する処理手順について説明する。図7は、レーダ装置1が実行する物標検出の処理手順を示すフローチャートである。なお、図7に示す処理手順は、レーダ装置1によって繰り返し実行される。
図7に示すように、まず、送信部10は、n個のチャープ波を含む送信波SWを出力する(ステップS101)。つづいて、受信部20は、物標Pによる送信波SWの反射波に応じた受信信号SRとチャープ信号STとからn個のビート信号SBを生成する(ステップS102)。
つづいて、第1処理部33は、n個の各ビート信号SBに対して距離FFT処理を行う(ステップS103)。つづいて、第2処理部34は、複数の受信アンテナ21のうち、任意の一の受信アンテナ21の距離FFT処理の結果に対して速度FFT処理を行う(ステップS104)。
つづいて、ピーク抽出部35は、速度FFT処理の結果である周波数スペクトルからパワーが所定の閾値以上のピークを抽出する(ステップ105)。つづいて、第2処理部34は、他の受信アンテナ21について、ピーク抽出部35で抽出されたピークの位置のみで速度FFT処理を行う(ステップS106)。
つづいて、演算部36は、ピーク抽出部35によって抽出されたピークに基づいて物標Pとの距離、相対速度および角度を演算する演算処理を行う(ステップS107)。つづいて、出力部37は、演算部36によって演算された距離、相対速度および角度を含む物標情報を車両制御装置2へ出力し(ステップS108)、処理を終了する。
上述してきたように、実施形態に係るレーダ装置1は、受信部20と、FFT処理部(例えば、第1処理部33および第2処理部34)と、ピーク抽出部35とを備える。受信部20は、周波数が連続的に変化する送信波が物標Pによって反射された反射波を複数の受信アンテナ21で受信する。FFT処理部は、複数の受信アンテナ21のうち、任意の受信アンテナ21で受信した反射波に基づくビート信号SBに対して2次元FFT処理を行う場合に、2次元目のFFT処理を第1の範囲で行う。ピーク抽出部35は、FFT処理部による処理結果である周波数スペクトルから物標Pに対応するピークを抽出する。また、FFT処理部は、任意の受信アンテナ21以外の他の受信アンテナ21について2次元FFT処理を行う場合、ピーク抽出部35によって抽出されたピークの位置に基づき第1の範囲を限定した第2の範囲で2次元目のFFT処理を行う。これにより、処理量が嵩むことを防止できる。
なお、上述した実施形態では、ビート信号SBに対して距離FFT処理を行った後、速度FFT処理を行ったが、2次元FFT処理の処理順が逆であってもよい。つまり、レーダ装置1は、ビート信号SBに対して速度FFT処理を行った後、距離FFT処理を行ってもよい。なお、処理順が入れ替わっても2次元FFT処理後に得られるピークの数や、ピークの位置は変わらない。ここで、図8を用いて、2次元FFT処理の処理順を入れ替えた場合について説明する。
図8は、変形例に係るレーダ装置1の制御方法を示す図である。図8に示すように、レーダ装置1は、すべての受信アンテナ21a~21dについて2次元FFT処理の処理順を入れ替えてよい。具体的には、まず、第2処理部34は、受信アンテナ21aにおけるビート信号SBに対してすべて距離ビンfr1~frmの範囲で、距離ビンfr毎に速度FFT処理を行う。この段階では、FFT処理の結果として得られる周波数スペクトルには、速度ビンfvを特定するピークは得られない。
つづいて、第1処理部33は、第2処理部34によって生成された周波数スペクトルに対してすべてのビート信号B1~Bnの範囲で、ビート信号SB毎に距離FFT処理を行う。この結果、特定の距離ビンfr10および速度ビンfv5において、物標Pに対応するピークが得られる。つまり、上記した実施形態では、2次元目のFFT処理が速度FFT処理であったのに対し、変形例では、2次元目のFFT処理が距離FFT処理となる。すなわち、変形例では、距離FFT処理の範囲であるすべてのビート信号B1~Bnの範囲が第1の範囲となる。
つづいて、第2処理部34は、他の受信アンテナ21b~21dにおけるビート信号SBに対してすべて距離ビンfr1~frmの範囲で、距離ビンfr毎に速度FFT処理を行う。
つづいて、第1処理部33は、第2処理部34によって生成された周波数スペクトルに対して第1の範囲を限定した第2の範囲で距離FFT処理を行う。図8に示す例では、第1処理部33は、抽出されたピークの速度ビンfv5のみを第2の範囲として距離FFT処理を行う。これにより、2次元FFT処理の処理順を入れ替えた場合であっても処理量が嵩むことを防止することができる。
なお、他の受信アンテナ21b~21dにおける2次元FFT処理の処理順ついては、受信アンテナ21aで抽出されたピークの数に基づいていずれの処理順を採用するかを決定してもよい。かかる点について、図9を用いて説明する。
図9は、変形例に係る2次元FFT処理における処理量を示す図である。図9に示す「「1通常FCM」および「2改良FCM」は、距離FFT処理後、速度FFT処理を行う処理順である。「3改良FCM」は、速度FFT処理後、距離FFT処理を行う処理順である。また、図9では、ピーク抽出部35によって抽出されたピークの数が10個の場合と、60個の場合とを示している。
図9に示すように、ピーク数が10個の場合では、「3改良FCM」が最も処理量が少ない。一方で、ピーク数が60個の場合では、「2改良FCM」が最も処理量が少ない。これは、「2回目FFT処理(他3ch分)」の処理量に起因している。
具体的には、ピーク数の増加に対する処理量の増加が「2改良FCM」よりも「3改良FCM」のほうが多いためである。
つまり、ピーク数が所定数未満であれば、「3改良FCM」が「2改良FCM」よりも処理量が少ないが、ピーク数がかかる所定数に近づくにつれて「2改良FCM」および「3改良FCM」の処理量の差が小さくなる。
そして、ピーク数が所定数以上の場合、「3改良FCM」が「2改良FCM」よりも処理量が多くなる。つまり、処理量が逆転する。
換言すれば、第1処理部33および第2処理部34は、ピーク抽出部35によって抽出されたピーク数が所定数未満である場合、「3改良FCM」の処理順で2次元FFT処理を行う。
一方、第1処理部33および第2処理部34は、ピーク抽出部35によって抽出されたピーク数が所定数以上である場合、「2改良FCM」の処理順で2次元FFT処理を行う。
このように、第1処理部33および第2処理部34は、ピークの数が所定数以上か否かにより2次元FFT処理の処理順を決定することで、常に最小限の処理量に抑えることができる。
なお、上記した所定数は、例えば、図9に示す「距離FFTビン数」、「チャープ数」および「受信アンテナ数」に基づいて決定される。
また、図9では、「距離FFTビン数」が1024個、「チャープ数」が64個の場合の2次元FFT処理の処理量を示したが、例えば、「距離FFTビン数」が64個、「チャープ数」が1024個の場合、図9に示す処理量が逆となる。
すなわち、「距離FFTビン数」が64個、「チャープ数」が1024個の場合、ピーク数が10個の場合においては、「2改良FCM」が最も処理量が少なくなり、一方、ピーク数が60個の場合においては、「3改良FCM」が最も処理量が少なくなる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
1 レーダ装置
2 車両制御装置
10 送信部
11 信号生成部
12 発振器
13 送信アンテナ
20 受信部
21,21a~21d 受信アンテナ
22,22a~22d ミキサ
23,23a~23d A/D変換器
30 処理部
31 送信制御部
32 信号処理部
33 第1処理部
34 第2処理部
35 ピーク抽出部
36 演算部
37 出力部
100 レーダ装置
MC 車両
P 物標

Claims (2)

  1. 周波数が連続的に変化する送信波が物標によって反射された反射波を複数の受信アンテナで受信する受信部と、
    前記複数の受信アンテナについて、前記複数の受信アンテナで受信した前記反射波に基づくビート信号に対して、2次元FFT処理における1次元目のFFT処理を行う1次元目FFT処理部と、
    前記複数の受信アンテナのうち、任意の受信アンテナで受信した前記反射波に基づくビート信号に対して前記2次元FFT処理における2次元目のFFT処理を第1の範囲の周波数で行う任意2次元目FFT処理部と、
    前記任意2次元目FFT処理部による処理結果である周波数スペクトルから前記物標に対応するピークを抽出するピーク抽出部と、
    前記任意の受信アンテナ以外の他の前記受信アンテナについて、前記ピーク抽出部によって抽出された前記ピークの位置に基づき前記第1の範囲を限定した第2の範囲の周波数で前記2次元目のFFT処理を行う他2次元目FFT処理部と
    を備え、
    前記2次元FFT処理は、前記物標との距離に対応する距離方向への第1処理と前記物標の相対速度に対応する速度方向への第2処理との処理順が入替可能な処理であって、
    前記1次元目FFT処理部および前記他2次元目FFT処理部は、
    前記他の受信アンテナについて前記2次元FFT処理を行う場合、前記ピーク抽出部によって抽出された前記ピークの数に基づいて前記処理順を決定すること
    特徴とするレーダ装置。
  2. 前記他2次元目FFT処理部は、
    前記ピークの位置のみを前記第2の範囲として前記2次元目のFFT処理を行うこと
    を特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
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