JP5483330B2 - クロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物 - Google Patents

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Description

本発明はクロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物に関する。
クロスヘッド型ディーゼル機関にはシリンダーとピストン間を潤滑するシリンダー油と、その他の部位の潤滑と冷却を司るシステム油が使用されている。シリンダー油はシリンダーとピストン(ピストンリング)間の潤滑のために必要な適正な粘度と、ピストン、ピストンリングの運動が適正に行われるために必要な清浄性を保つ機能が求められる。さらにこの機関は、その経済性から高硫黄燃料が通常使用されるため、燃焼により生成した硫酸等の酸性成分によるシリンダー腐食の問題を抱えている。この問題を防ぐため、シリンダー油には生成する硫酸等の酸性成分を中和し、腐食を防止する機能も必要である。
一方、システム油は、通常のディーゼルエンジン油とは異なり燃焼ガスと接触することはなく、タンクに貯蔵され、循環ポンプにより、軸受部等に供給されて潤滑・冷却を行う潤滑油で、シリンダー油と異なって長期間にわたって使用されるため、適正な粘度を長期間維持することが求められる(例えば、特許文献1)。ところが、舶用クロスヘッド型機関においては、シリンダー油のドリップ油が混入することによりシステム油の粘度が上昇するという問題があり、粘度上昇を如何に抑制するかが長年の課題となっていた。特に、最近の環境問題の高まりにより、粘度上昇に伴う軸受部での摩擦損失の増大による燃費の悪化や、ピストン冷却面における熱交換の効率の低下を防ぐことが重要視されるようになってきた。
特開2002−275491号公報
本発明は、粘度の上昇を抑制することにより、燃費の悪化を防止することのできるクロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のポリマーを添加した潤滑油組成物が、ドリップ油による粘度上昇とポリマーの熱分解による粘度低下とをバランスさせることができ、クロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物として有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、せん断安定性は優れているが、熱により分解しやすい特性がある、オレフィン共重合体を潤滑油基油に配合することにより、ピストン冷却面でポリマーが分解してシステム油の粘度を低下させ、シリンダードリップ油混合による粘度上昇を相殺し、燃費の悪化を抑制することができる。
すなわち、本発明は、鉱油および/または合成油を基油とし、(A)エチレン・α−オレフィン共重合体またはその水素化物を2〜15質量%含有して成る、塩基価が4〜20mgKOH/g、100℃の動粘度が7.5〜12.5mm/sであることを特徴とするクロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物に関する。
また本発明は、更に、(B)金属系清浄剤、(C)ジアルキルジチオリン酸亜鉛、(D)防錆剤および(E)無灰分散剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする前記記載のクロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物に関する。
また本発明は、基油の100℃の動粘度が3.5〜9.3mm/sであることを特徴とする前記記載のクロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物に関する。
本発明のクロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物を用いることにより、システム油の粘度の上昇が抑制され、結果として燃費の悪化を防止することができる。
以下、本発明について詳述する。
本発明のクロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物(以下、本発明の潤滑油組成物という。)において用いる潤滑油基油には特に制限はなく、鉱油、合成油またはこれらの混合物を使用することができる。
鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される潤滑油基油等を例示することができる。
合成油系基油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリα−オレフィン又はその水素化物;重量平均分子量8,000以下のエチレンと炭素数3〜30のα−オレフィンとの共重合体;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;マレイン酸ジブチル等のジカルボン酸類と炭素数2〜30のα−オレフィンとの共重合体;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等を例示することができる。
本発明の潤滑油組成物において用いる潤滑油基油としては、鉱油系基油または合成油系基油をそれぞれ1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよいし、また鉱油系基油の1種又は2種以上と合成油系基油の1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
本発明に係る潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは9.3mm/s以下、より好ましくは8.5mm/s以下、さらに好ましくは8.0mm/s以下である。一方、当該100℃における動粘度は、好ましくは3.5mm/s以上、より好ましくは3.8mm/s以上、さらに好ましくは4.0mm/s以上である。ここでいう100℃における動粘度とは、ASTM D−445に規定される100℃での動粘度を示す。潤滑油基油の100℃の動粘度が9.3mm/sを超える場合には、粘度低下が少ないため、シリンダードリップ油混入時の粘度上昇抑制効果が認められないおそれがあり、3.5mm/s未満の場合は、粘度低下が大きすぎるため、軸受における油膜形成能が低下し、焼付きが発生するおそれがある。
また、本発明に係る潤滑油基油の40℃における動粘度は特に制限されないが、好ましくは150mm/s以下、より好ましくは120mm/s以下、さらに好ましくは90mm/s以下である。一方、当該40℃における動粘度は、好ましくは15mm/s以上、より好ましくは20mm/s以上、さらに好ましくは25mm/s以上である。潤滑油基油の40℃の動粘度が200mm/sを超える場合には、粘度低下が少ないため、シリンダードリップ油混入時の粘度上昇抑制効果が認められないおそれがあり、50mm/s未満の場合は、粘度低下が大きすぎるため、軸受における油膜形成能が低下し、焼付きが発生するおそれがある。
本発明に係る潤滑油基油の粘度指数は85以上であることが好ましく、より好ましくは90以上、更に好ましくは95以上である。粘度指数の上限については特に制限はなく、ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油も使用することができる。
なお、本発明でいう粘度指数とは、JIS K 2283−1993に準拠して測定された粘度指数を意味する。
本発明の潤滑油組成物は、(A)エチレン・α−オレフィン共重合体またはその水素化物を必須成分として含有する。
(A)エチレン・α−オレフィン共重合体またはその水素化物は、エチレンとα−オレフィンの共重合体またはその共重合体を水素化した化合物である。α−オレフィンとしては具体的にプロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が使用される。エチレン−α−オレフィン共重合体は、炭化水素のみからなるいわゆる非分散型のほか、共重合体に窒素含有化合物等の極性化合物を反応させた、いわゆる分散型エチレン−α−オレフィン共重合体も使用することができる。これらの中では、エチレン−プロピレン共重合体を使用することが最も好ましい。
本発明において(A)成分として使用するエチレン・α−オレフィン共重合体またはその水素化物の重量平均分子量(M)は、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは20,000以上であり、さらに好ましくは50,000以上である。また、500,000以下であることが好ましく、より好ましくは400,000以下であり、さらに好ましくは300,000以下である。重量平均分子量が10,000未満の場合には、粘度調整効果を十分に発揮できないおそれがあるだけでなく、コストが上昇するおそれがあり、重量平均分子量が500,000を超える場合にはせん断安定性が悪いため同様に粘度調整効果を発揮できないおそれがある。
本発明で使用する(A)エチレン・α−オレフィン共重合体またはその水素化物のPSSI(パーマネントシアスタビリティインデックス)は、好ましくは1〜75、より好ましくは3〜50、さらに好ましくは5〜30、特に好ましくは10〜28である。PSSIが75を超える場合にはせん断安定性が悪いため、システム油に添加した場合の粘度調整効果を発揮できないおそれがある。また、PSSIが1未満の場合には同様に粘度調整効果を発揮できないおそれがある。
なお、ここでいう「PSSI」とは、ASTM D 6022−01(Standard Practice for Calculation of Permanent Shear Stability Index)に準拠し、ASTM D 6278−02(Test Metohd for Shear Stability of Polymer Containing Fluids Using a European Diesel Injector Apparatus)により測定されたデータに基づき計算されたポリマーの永久せん断安定性指数(Permanent Shear Stability Index)を意味する。
本発明の潤滑油組成物中における(A)成分の含有量は、組成物全量基準で、2〜15質量%であり、好ましくは3〜12質量%、さらに好ましくは4〜10質量%である。含有量が2質量%未満の場合には、粘度調整効果を十分に発揮できないおそれがあり、また含有量が15質量%を超える場合にはハンドリング性が悪化し潤滑油製造作業に悪影響を及ぼすおそれがあるうえ、ポリマーの劣化により堆積物が生成し清浄性が悪化するおそれがある。
なお、エチレン・α−オレフィン共重合体またはその水素化物は、通常10〜90質量%の鉱油で希釈された状態で提供される。
本発明の潤滑油組成物においては、更に、(B)金属系清浄剤、(C)ジアルキルジチオリン酸亜鉛、(D)防錆剤および(E)無灰分散剤から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
(B)金属系清浄剤としては、フェネート系清浄剤、スルホネート系清浄剤、サリチレート系清浄剤、カルボキシレート系清浄剤およびホスホネート系清浄剤から選ばれる1種以上の金属系清浄剤を使用することができる。
フェネート系金属清浄剤は、例えば、下記式(1)〜(4)で示される構造のアルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応物のアルカリ土類金属塩、又はその(過)塩基性塩を含有するフェネート系金属清浄剤である。
上記アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、バリウム、カルシウムが挙げられ、マグネシウム又はカルシウムが好ましく、カルシウムが特に好ましい。
Figure 0005483330
上記一般式(1)〜(3)中、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖又は分枝のアルキル基を示す。炭素数が4より短いと潤滑油基油に対する溶解性に劣るおそれがあり、炭素数が30より長いと製造が難しく、また耐熱性に劣るおそれがある。R〜Rの具体例としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等が挙げられ、これらは直鎖でも分枝でもよい。これらはまた1級アルキル基、2級アルキル基又は3級アルキル基でもよい。
、M及びMは、それぞれアルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及び/又はマグネシウムを示し、x、y、zはそれぞれ独立に1〜3の整数を示し、mは0、1又は2、nは0又は1を示す。
スルホネート系清浄剤としては、分子量300以上、好ましくは400〜700のアルキル芳香族化合物をスルフォン化することによって得られるアルキル芳香族スルフォン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、及び/又はその(過)塩基性塩を用いることができる。また、アルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、バリウム、カルシウム等が挙げられ、マグネシウム及び/又はカルシウムが好ましく、カルシウムが特に好ましく用いられる。
上記アルキル芳香族スルフォン酸としては、具体的にはいわゆる石油スルフォン酸や合成スルフォン酸等が挙げられる。ここでいう石油スルフォン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルフォン化したものやホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルフォン酸としては、例えば洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルフォン化したもの、あるいはジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルフォン化したもの等が用いられる。またこれらアルキル芳香族化合物をスルフォン化する際のスルフォン化剤としては特に制限はないが、通常、発煙硫酸や無水硫酸が用いられる。
サリチレート系清浄剤としては、炭素数1〜19の炭化水素基を1つ有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリチレート及び/又はその(過)塩基性塩、炭素数20〜40の炭化水素基を1つ有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリチレート及び/又はその(過)塩基性塩、炭素数1〜40の炭化水素基を2つ又はそれ以上有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリチレート及び/又はその(過)塩基性塩(これら炭化水素基は同一でも異なっていても良い)等が挙げられる。これらの中では、低温流動性に優れる点で、炭素数8〜19の炭化水素基を1つ有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリチレート及び/又はその(過)塩基性塩を用いることが望ましい。また、アルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、バリウム、カルシウム等が挙げられ、マグネシウム及び/又はカルシウムが好ましく、カルシウムが特に好ましく用いられる。
本発明において用いる(B)成分の金属系清浄剤の塩基価は、50〜500mgKOH/gの範囲であることが好ましく、100〜450mgKOH/gの範囲であることがより好ましく、150〜350mgKOH/gの範囲であることが更に好ましい。金属系清浄剤の塩基価が50mgKOH/g未満の場合には、酸中和性が不十分なため腐食摩耗が増大するおそれがあり、500mgKOH/gを超える場合には溶解性に問題を生ずるおそれがある。
なお、ここでいう塩基価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
(B)金属系清浄剤の金属比に特に制限はないが、下限は1以上、好ましくは2以上、特に好ましくは2.5以上、上限は好ましくは20以下、より好ましくは15以下、特に好ましくは10以下のものを使用することが望ましい。
なお、ここでいう金属比とは、(B)金属系清浄剤における金属元素の価数×金属元素含有量(モル%)/せっけん基含有量(モル%)で表され、金属元素とは、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、せっけん基とはフェノール基を意味する。
本発明の組成物において、(B)金属系清浄剤を使用する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.5〜15質量%、好ましくは1〜12質量%、特に好ましくは1.5〜10質量%である。
本発明の潤滑油組成物においては、下記一般式(4)で表される(C)ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含有することが好ましい。
Figure 0005483330
式(4)中、R、R、R及びRは同一でも、異なっていてもよく、それぞれ個別に、炭素数1〜30のアルキル基または炭素数7〜30のアルキルアリール基であり、アルキル基は、直鎖でも分枝でもよく、また第1級であっても第2級であってもよい。
なお、(C)成分のジチオリン酸亜鉛の製造方法としては従来の任意の方法が採用可能であって、特に制限されない。例えば、前記R、R、R及びRに対応するアルキル基を持つアルコールを五硫化二リンと反応させてジチオリン酸をつくり、これを酸化亜鉛で中和させることにより合成することができる。
本発明の潤滑油組成物において、(C)ジチオリン酸亜鉛を使用する場合、その含有量は、組成物全量基準で、リン元素含有量として0.005〜0.12質量%が好ましい。より好ましくは0.01〜0.10質量%、さらに好ましくは0.02〜0.08質量%である。0.005質量%未満ではシステム油として必要な極圧性、ギヤ特性を得ることができず、0.12質量%を超える場合には軸受やスタッフィングボックスのシールリングやオイルスレーバリングを腐食させるおそれがある。
本発明の潤滑油組成物においては、(D)防錆剤を含有することが好ましい。防錆剤としては、例えば、スルホン酸塩(ナトリウム、カルシウムあるいはバリウム等の塩)、コハク酸誘導体、脂肪酸エステルやソルビタン酸エステル等の有機酸エステル、カルボン酸塩(ステアリン酸やナフテン酸等のナトリウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛等の塩)、ソルビタンモノエステルやペンタエリスリトールモノエステル等の多価アルコール部分エステル、酸化パラフィン(酸化ワックス)、カルボン酸、リン酸エステル等が挙げられるが、スルホネートが好ましい。
本発明の潤滑油組成物において、(D)防錆剤を使用する場合、その含有量は、組成物全量基準で、0.005〜5質量%が好ましい。
本発明の潤滑油組成物においては、(E)無灰分散剤を含有することが好ましい。
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤が使用でき、例えば、炭素数40〜400、好ましくは60〜350の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミンまたはこれらの変性品等が挙げられる。
アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンとのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
これらの中では、下式で示すコハク酸イミドまたはそのホウ素変性品が好ましい。
Figure 0005483330
式(5)中、Rは炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、hは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。一方、式(6)中、R及びRは、それぞれ個別に炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、特に好ましくはポリブテニル基である。またiは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示す。
本発明の潤滑油組成物において、無灰分散剤を使用する場合、その含有量は、組成物全量基準で、1〜8質量%が好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、上記構成に加え、その性能を更に向上させるため又は他に要求される性能を付加するために、その目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤をさらに添加することができる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、極圧剤、腐食防止剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、および消泡剤等の添加剤を挙げることができる。
酸化防止剤としては、DBPC、ビスフェノール、ヒンダードフェノール等のフェノール系酸化防止剤、ジフェニルアミン、N−フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物において、酸化防止剤を使用する場合、その含有量は、組成物全量基準で、0.05〜5質量%が好ましい。
極圧剤としては、潤滑油に用いられる任意の極圧剤・摩耗防止剤が使用できる。例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物において、極圧剤を使用する場合、その含有量は、組成物全量基準で、0.05〜5質量%が好ましい。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマー等が使用できる。
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が100〜100,000mm/sのシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール、アルミニウムステアレート、オレイン酸カリウム、N−ジアルキル−アリルアミンニトロアミノアルカノール、イソアミルオクチルホスフェートの芳香族アミン塩、アルキルアルキレンジホスフェート、チオエーテルの金属誘導体、ジスルフィドの金属誘導体、脂肪族炭化水素のフッ素化合物、トリエチルシラン、ジクロロシラン、アルキルフェニルポリエチレングリコールエーテルスルフィド、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ通常0.005〜5質量%、金属不活性化剤では通常0.005〜1質量%、消泡剤では通常0.0005〜1質量%の範囲から選ばれる。
なお、本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は7.5mm/s以上であることが必要であり、好ましくは9.3mm/s以上、より好ましくは10mm/s以上である。また本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は15.0mm/s以下であることが必要であり、好ましくは14.5mm/s以下、より好ましくは12.5mm/s以下である。100℃における動粘度が7.5mm/s未満の場合には、油膜形成能が不足し、軸受の焼付きを起こすおそれがある。また15.0mm/sを超える場合には、ピストン冷却面の冷却が不足し、ピストンの焼損を起こすおそれがあるほか、摩擦損失の増大により燃費を悪化させるおそれがある。
また、本発明の潤滑油組成物の塩基価は4〜20mgKOH/gであることが必要であり、下限は好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは5.5mgKOH/g以上であり、上限は好ましくは15mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下である。塩基価が4mgKOH/g未満の場合には、清浄性が不足するおそれがあり、塩基価が20mgKOH/gを超える場合には、混入した夾雑物を清浄機において除去しにくくなるおそれがある。
本発明の潤滑油組成物は、クロスヘッド型ディーゼル機関用システム油としてだけでなく、トランクピストン型ディーゼル機関を始め、二輪車用、四輪車用、発電用、コジェネレーション用等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等にも好適に使用できる。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(実施例1〜9、比較例1〜3)
表1に示す本発明の潤滑油組成物(実施例1〜9)、比較用の潤滑油組成物(比較例1〜3)をそれぞれ調製した。得られた組成物について、ホットチューブ試験を実施し、その結果を同じく表1に示した。なお、実施例1〜7および比較例1、3については添加剤を加えた状態での組成物の100℃における動粘度が11.5mm/sとなるよう、ポリマー化合物の添加量および基油の配合割合を調整した。
(基油)
基油A:100ニュートラル(動粘度@100℃:4.42mm/s)
基油B:250ニュートラル(動粘度@100℃:7.12mm/s)
基油C:500ニュートラル(動粘度@100℃:10.8mm/s)
基油D:150ブライトストック(動粘度@100℃:31.7mm/s)
(添加剤)
(1)ポリマー化合物
A−1:エチレン・プロピレン共重合体(PSSI=25)
PMA:ポリメタクリレート(PSSI=5)
(2)ポリマー化合物以外の添加剤
B−1:金属系清浄剤(過塩基性カルシウムフェネート:塩基価255mgKOH/g、Ca分9.25質量%)
B−2:金属系清浄剤(過塩基性カルシウムサリシレート:塩基価170mgKOH/g、Ca分6.2質量%)
ジアルキルジチオリン酸亜鉛:第1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛(アルキル=2−エチルヘキシル、P分7.4質量%)
防錆剤:中性カルシウムスルホネート(塩基価20mgKOH/g、Ca分2.35質量%)
無灰分散剤:アルケニルコハク酸イミド(ビスタイプ、窒素含量:1質量%)
その他添加剤(流動点降下剤、消泡剤、酸化防止剤、極圧剤等)
(ホットチューブ試験)
JPI−5S−55−99に準拠して実施した。試験温度を250℃とし、各ガラスチューブより流出するオイルを回収して、その粘度をCannon社製自動キャピラリー粘度計(CACV)により測定する。6種の試料油につき、次の2つのケースについて試験を行った。
A)新油100%
B)新油85%に、VLCC(中東〜日本)に搭載されたクロスヘッド型ディーゼル機関より採取したシリンダードリップ油15質量%を混合したもの。シリンダードリップ油の性状は、動粘度(100℃):28.1mm/s、酸価:7.5mgKOH/g、塩基価(過塩素酸法):24.1mgKOH/g、ペンタン不溶分(A法):6.0質量%である。
Figure 0005483330
表1の結果から明らかなように、本発明の潤滑油組成物は、新油100%で試験した場合には粘度変化において比較油と差はないが、シリンダードリップ油を混合した場合には、粘度増加が比較油に比べて小さいことが分かる。
本発明の潤滑油組成物は、シリンダードリップ油が混入しても粘度の増加が少ないため、省燃費性に優れており、クロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物として特に優れた効果を発揮する。

Claims (3)

  1. 鉱油および/または合成油を基油とし、(A)エチレン・α−オレフィン共重合体またはその水素化物を2〜15質量%含有して成る、塩基価が4〜20mgKOH/g、100℃の動粘度が7.5〜12.5mm/sであることを特徴とするクロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物。
  2. 更に、(B)金属系清浄剤、(C)ジアルキルジチオリン酸亜鉛、(D)防錆剤および(E)無灰分散剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載のクロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物。
  3. 基油の100℃の動粘度が3.5〜9.3mm/sであることを特徴とする請求項1または2に記載のクロスヘッド型ディーゼル機関用システム潤滑油組成物。
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