JP5025144B2 - 内燃機関用潤滑油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関用潤滑油組成物に関し、詳しくは遠心清浄機等の浄油装置を備えた内燃機関に使用される潤滑油組成物に関し、さらに詳しくは該装置における加水分解安定性に優れるとともに初期の性能(高温清浄性能や摩耗防止性能)を維持できる内燃機関用潤滑油組成物に関する。
内燃機関用潤滑油には、金属系清浄剤や摩耗防止剤兼酸化防止剤としてジチオリン酸亜鉛等が用いられ、近年の船舶用エンジン油においてもこれらの添加剤が配合されてきた(例えば特許文献1〜7)。
一方、内燃機関には潤滑油劣化によるスラッジ、摩耗粉あるいは水分等の不純物の除去を目的として遠心清浄機や各種フィルタ、ストレーナー等の浄油装置を備えたものがあり、中でも、船舶用2ストローククロスヘッド型機関、船舶用又はコジェネレーション発電用4ストローク中速トランクピストン機関等の大型内燃機関においては、遠心清浄機等の浄油装置を備えているものがある。このような遠心清浄機等の浄油装置は、その浄油条件が緩い場合、スラッジ、摩耗粉あるいは水分等の不純物の除去が不十分となるため、その浄油条件が厳しいほど好ましい。しかし、遠心清浄機等の浄油装置においては、潤滑油中の添加剤及び水が高温で接触して加水分解が起こりやすく、あるいは添加剤同士の相互作用により沈殿が生成しやすく、そのため潤滑油の初期性能(例えば摩耗防止性能、高温清浄性能等)を早期に低下させることがある。なお、本発明者らの検討によると、この現象は潤滑油中にジチオリン酸亜鉛を含み、ある程度多量のフェネート系清浄剤により初期の高温清浄性能を高めている場合に顕著であることが判明している。
従って、遠心清浄機等の浄油装置を備えた内燃機関においては、潤滑油添加剤の組み合わせを最適化することで、潤滑油の初期性能、特に高温清浄性能を長期に渡り維持できる潤滑油が求められている。
特開2000−192069号公報 特開2002−167593号公報 特開2002−003880号公報 特表2002−515933号公報 特表2002−501974号公報 特表2002−500262号公報 特開2002−241780号公報
本発明の課題は、以上のような事情に鑑み、遠心清浄機等の浄油装置を備えた内燃機関用において、潤滑油添加剤の組み合わせを最適化することで、初期の潤滑油性能、特に高温清浄性能を長期に渡り維持できる、加水分解安定性に優れた内燃機関用潤滑油組成物、特に船舶用又は発電用内燃機関に好適な内燃機関用潤滑油組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のリン含有酸の金属塩を含有する内燃機関用潤滑油組成物が上記課題を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、鉱油及び/又は合成油からなる潤滑油基油に、(A)ジアルキルリン酸亜鉛及び(B)金属系清浄剤を含有し、組成物の100℃の動粘度が9.316.3mm/s、塩基価が60mgKOH/gであり、浄油装置を備えた4ストローク中速トランクピストン機関に使用されることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物にある。
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、遠心清浄機等の浄油装置を備えた内燃機関において、該浄油装置における加水分解及び添加剤の沈殿等による潤滑油の初期性能、特に高温清浄性能の低下を抑制することができる。従って、該内燃機関を長期に渡り良好に運転させることができ、メインテナンスインターバルの延長と廃油の削減が可能となる。従って、特に該浄油装置を備えた船舶用およびコ・ジェネレーション発電用4サイクル中速トランクピストン機関用エンジン油(クランクケース油)として好適に用いられるものである。
以下、本発明について詳述する。
本発明の内燃機関用潤滑油組成物(以下、単に潤滑油組成物ともいう。)における潤滑油基油については特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油及び/又は合成系基油が使用できる。
鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるGTLWAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される潤滑油基油等が例示できる。
鉱油系基油の全芳香族分は、特に制限はないが、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。全芳香族分は0質量%でも良いが、添加剤の溶解性の点で1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。基油の全芳香族分が40質量%を越える場合は、酸化安定性が劣るため好ましくない。
なお、上記全芳香族分とは、ASTM D2549に準拠して測定した芳香族留分(aromatic fraction)含有量を意味する。通常この芳香族留分には、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンの他、アントラセン、フェナントレン、これらのアルキル化物、ベンゼン環が四環以上縮合した化合物、及びピリジン類、キノリン類、フェノール類、ナフトール類等のヘテロ芳香族を有する化合物等が含まれる。
また、鉱油系基油中の硫黄分は、特に制限はないが、1質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがさらに好ましい。硫黄分は0質量%でも良いが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。鉱油系基油の硫黄分をある程度含むことにより、添加剤の溶解性を十分に高めることができる。
合成系基油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリα−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;マレイン酸ジブチル等のジカルボン酸類と炭素数2〜30のα−オレフィンとの共重合体;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
本発明では、潤滑油基油として、鉱油系基油、合成系基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の潤滑油の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油系基油、1種以上の合成系基油、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油との混合油等を挙げることができる。
潤滑油基油の動粘度は特に制限はないが、100℃での動粘度は、4〜50mm/sであることが好ましく、より好ましくは、6〜40mm/s、特に好ましくは8〜35mm/sである。潤滑油基油の100℃での動粘度が50mm/sを越える場合は、低温粘度特性が悪化し、一方、その動粘度が4mm/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなるため、それぞれ好ましくない。
本発明の潤滑油組成物において、潤滑油基油としては、100℃での動粘度が4〜17mm/s未満及び/又は100℃での動粘度が17〜50mm/sの潤滑油基油を含有することが好ましい。100℃における動粘度が4〜17mm/s未満の潤滑油基油としては、例えば、SAE10〜40等の鉱油系基油や合成系基油が挙げられ、その動粘度は、5.6mm/s以上、より好ましくは9.3mm/s以上であり、好ましくは14mm/s以下、より好ましくは12.5mm/s以下である。また、100℃における動粘度が17〜50mm/sの潤滑油基油としては、例えば、SAE50、ブライトストック等の鉱油系基油や合成系基油が挙げられ、その動粘度は、好ましくは20mm/s以上、より好ましくは25mm/sであり、好ましくは40mm/s以下、より好ましくは35mm/s以下である。
本発明においては、100℃での動粘度が4〜17mm/s未満の潤滑油基油を主成分、例えば、基油全量基準で50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有させ、必要に応じて100℃での動粘度が17〜50mm/sの潤滑油基油を配合することができる。
潤滑油基油の粘度指数は特に制限はないが、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるようにその値は好ましくは80以上であり、より好ましくは90以上であり、更に好ましくは95以上である。粘度指数の上限については特に制限はなく、ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油のような135〜180程度のものや、コンプレックスエステル系基油やHVI−PAO系基油のような150〜250程度のものも使用することができるが、添加剤の溶解性や貯蔵安定性の点で120以下であることが好ましく、110以下であることが望ましい。
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、(A)硫黄を含有しないリン含有酸の金属塩を含有する。硫黄を含有しないリン含有酸の金属塩としては、特に制限はないが、例えば、一般式(a)又は(b)で表される硫黄を含有しないリン含有酸と、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等の金属塩基との金属塩を例示することができる。
Figure 0005025144
[式中、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、pは0又は1を示す。]
Figure 0005025144
[式中、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、qは0又は1を示す。]
上記一般式(a)、(b)中、R〜Rで表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、1級アルキル基でも、2級アルキル基でも、3級アルキル基であってもよい)を挙げることができる。
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
上記アリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
上記R〜Rで表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
一般式(a)で表される硫黄を含有しないリン含有酸としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸ジエステル;及びこれらの混合物などが挙げられる。ここで「ヒドロカルビル」は上記炭素数1〜30の炭化水素基置換を意味する(以下同様)。
一般式(b)で表される硫黄を含有しないリン含有酸としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸ジエステル;及びこれらの混合物などが挙げられる。
また、一般式(a)又は(b)で表される硫黄を含有しないリン含有酸の金属塩は、一般式(a)又は(b)で表される硫黄を含有しないリン含有酸に、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等の金属塩基を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和することにより得ることができる。
上記金属塩基における金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、モリブデン、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、モリブデン及び亜鉛が好ましく、亜鉛が特に好ましい。
なお、上記リン化合物の金属塩は、金属の価数あるいはリン化合物のOH基の数に応じてその構造が異なり、したがって、リン化合物の金属塩の構造については何ら限定されない。例えば、酸化亜鉛1molとリン酸ジエステル(OH基が1つの化合物)2molを反応させた場合、下記式(c)で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
Figure 0005025144
[式中、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。]
また、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸モノエステル(OH基が2つの化合物)1molとを反応させた場合、下記式(d)で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
Figure 0005025144
[式中、Rは水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。]
本発明において、上記硫黄を含有しないリン含有酸の金属塩は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明にかかる硫黄を含有しないリン含有酸の金属塩としては、より好ましい具体例としては、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する亜リン酸ジエステルの亜鉛塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を1個有するリン酸のモノエステルの亜鉛塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有するリン酸のジエステルの亜鉛塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を1個有する(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸の亜鉛塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸モノエステルの亜鉛塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を1個有する(ヒドロカルビル)ホスホン酸の亜鉛塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する(ヒドロカルビル)ホスホン酸モノエステルの亜鉛塩が挙げられ、炭素数3〜18のアルキル基、好ましくは炭素数4〜12のアルキル基を有するリン酸モノエステル及び/又はリン酸ジエステルの亜鉛塩がより好ましく、炭素数3〜18のアルキル基、好ましくは炭素数4〜12のアルキル基を有するリン酸ジエステルの亜鉛塩が特に好ましい。
本発明の内燃機関用潤滑油組成物において、上記(A)成分の含有量は、組成物全量を基準として、リン元素換算で、通常0.001〜0.2質量%であるが、好ましくは0.01〜0.1質量%、より好ましくは0.03〜0.08質量%である。上記(A)成分のリン元素換算での含有量が0.001質量%未満の場合は、摩耗防止性が不十分となる傾向にあり、0.2質量%を超えても添加量に見合うだけの効果が得られず、また、溶解性が不十分となることがある。
本発明の潤滑油組成物は、(B)金属系清浄剤を含有する。
金属系清浄剤としては、特に制限はなく、公知のアルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート系清浄剤、アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネート系清浄剤、アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ナフテネート系清浄剤、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート系清浄剤及びこれらの2種以上の混合物(コンプレックスタイプも含む)等が挙げられる。
ここでいうアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属であることが好ましく、カルシウム又はマグネシウムであることが特に好ましい。なお、これら金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択することができる。
なお、上記金属系清浄剤には、中性の金属系清浄剤だけでなく、(過)塩基性金属系清浄剤も含まれるが、本発明においては、炭酸カルシウム及び/又はホウ酸カルシウムを有する(過)塩基性金属系清浄剤であることが好ましい。
金属系清浄剤の塩基価は、特に制限はないが、通常0〜500mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは150〜450mgKOH/g、特に好ましくは200〜400mgKOH/gである。なお、ここでいう塩基価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する(以下同じ)。
なお、炭酸カルシウムを有する(過)塩基性カルシウムフェネート系清浄剤とジチオリン酸亜鉛とを併用すると、遠心清浄機において最も沈殿を生成しやすく、高温清浄性能がより短期間で低下することとなるため、本発明の潤滑油組成物によれば、炭酸カルシウムを有する(過)塩基性カルシウムフェネート系清浄剤を使用した場合に、高温清浄性能を維持する効果がより顕著に達成される。
本発明において、金属系清浄剤の含有量は特に制限はないが、組成物全量基準で、通常、1〜30質量%であり、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは7〜20質量%であるが、金属換算量としての含有量は、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.3〜2質量%、さらに好ましくは0.5〜1質量%である。
また、金属系清浄剤に起因する組成物の塩基価は、好ましくは3〜100mgKOH/g、より好ましくは6〜80mgKOH/g、さらに好ましくは9〜60mgKOH/gである。
本発明の潤滑油組成物は、上記構成により遠心清浄機等の浄油装置を備えた内燃機関における加水分解安定性に優れ、潤滑油の高温清浄性能や摩耗防止性能等の潤滑油の初期性能を長期間安定的に保持することができるが、更にその性能を向上させるために、又は、その他の目的に応じて、本発明の潤滑油組成物には、潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、無灰分散剤、酸化防止剤、上記以外の摩耗防止剤(又は極圧剤)、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、及び着色剤等の添加剤等を挙げることができる。
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤を用いることができるが、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体が挙げられる。ここでいう含窒素化合物としては、例えば、コハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン、マンニッヒ塩基等が挙げられ、その誘導体としては、これら含窒素化合物にホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素化合物、(チオ)リン酸、(チオ)リン酸塩等のリン化合物、有機酸、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等を作用させた誘導体等が挙げられる。本発明においては、これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。本発明において、無灰分散剤を配合する場合の含有量は、特に制限はないが、通常組成物全量基準で0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜4質量%、さらに好ましくは1〜3質量%である。無灰分散剤の含有量が上記未満の場合硫酸中和速度が十分でない傾向にあり、また、上記範囲を超える場合、含有量に見合う効果が得られないばかりか、ピストンリング溝の清浄性が悪化する傾向にある。
なお、本発明における無灰分散剤としては、高温清浄性の点からモノタイプ及び/又はビスタイプのコハク酸イミド系無灰分散剤、特にビスタイプのコハク酸イミド系無灰分散剤が好ましく、また、コハク酸イミド系無灰分散剤としては、ホウ素を含有していても、含有していなくても良いが、耐焼付き性の点でホウ素を含有しているものであることが好ましく、アスファルテンを含有する高硫黄燃料を使用する場合においてもスラッジ分散性、高温清浄性能の維持性及び経済性に優れる点で、ホウ素を含有しない無灰分散剤を使用することがより好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤等あるいは金属系酸化防止剤が挙げられる。これらの中では高温清浄性能の維持性の点でアミン系酸化防止剤が好ましい。
これらの含有量は、組成物全量基準で、通常0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜2質量%である。
上記以外の摩耗防止剤(又は極圧剤)としては、潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤が使用できる。例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物において、これらの摩耗防止剤(又は極圧剤)を使用する場合、その含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準で、通常0.01〜5質量%である。
摩擦調整剤としては、脂肪酸エステル系、脂肪族アミン系、脂肪酸アミド系等の無灰摩擦調整剤、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。これらの含有量は、組成物全量基準で、通常0.01〜5質量%である。
粘度指数向上剤としては、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤、オレフィン共重合体系粘度指数向上剤、スチレン−ジエン共重合体系粘度指数向上剤、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体系粘度指数向上剤又はポリアルキルスチレン系粘度指数向上剤等が挙げられる。これら粘度指数向上剤の重量平均分子量は、通常800〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000である。また、粘度指数向上剤の含有量は、組成物全量基準で通常0.1〜20質量%である。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、又はイミダゾール系化合物等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステル等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリシレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール、アルミニウムステアレート、オレイン酸カリウム、N−ジアルキル−アリルアミンニトロアミノアルカノール、イソアミルオクチルホスフェートの芳香族アミン塩、アルキルアルキレンジホスフェート、チオエーテルの金属誘導体、ジスルフィドの金属誘導体、脂肪族炭化水素のフッ素化合物、トリエチルシラン、ジクロロシラン、アルキルフェニルポリエチレングリコールエーテルスルフィド、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ通常0.005〜5質量%、金属不活性化剤では通常0.005〜1質量%、消泡剤では通常0.0005〜1質量%の範囲から選ばれる。
本発明の潤滑油組成物は、遠心清浄機等の浄油装置を備えた内燃機関用潤滑油組成物として有用であり、船舶用又は発電用4ストローク中速トランクピストン機関用クランクケース油として好適に使用することができる。
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、船舶用又は発電用4ストローク中速トランクピストン機関用クランクケース油の場合は、好ましくは9.3〜16.3mm/sである。ここでいう100℃における動粘度とは、ASTM D−445に規定される100℃での動粘度を示す。
なお、本発明の潤滑油組成物を船舶用又は発電用4ストローク中速トランクピストン機関用クランクケース油として使用する場合、上述の粘度指数向上剤は、高温清浄性能及び摩耗防止性能を高め、長期間これを維持しやすい点で、その含有量は4質量%以下、好ましくは2質量%以下の少量とするか、本質的に含有しないことが好ましい。
本発明の潤滑油組成物の塩基価は、アスファルテンを含有する高硫黄燃料を使用する場合に対しても優れた高温清浄性と酸中和性能を付加するためには特に好ましくは9〜60mgKOH/gである。
したがって、本発明の潤滑油組成物が船舶用又は発電用4ストローク中速トランクピストン機関用クランクケース油である場合、その塩基価(過塩素酸法)は9〜60mgKOH/gである。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(実施例1、比較例1)
表1に示す組成の本発明の潤滑油組成物(実施例1)及び比較用の潤滑油組成物(比較例1)をそれぞれ調製した。得られた組成物について、新油及び加水分解試験油について動粘度、塩基価(塩酸法及び過塩素酸法)、元素分析及び高温清浄性の評価を行い、その結果を表1に併記した。なお、ここで使用した潤滑油基油は、SAE30のグループI基油に、添加剤を処方した状態で、組成物の100℃における動粘度を11.5mm/sとなるよう調整した。
(加水分解試験)
試験油に水を10質量%混合し、93.5℃、24時間の条件で、ASTM D 2619に準拠する加水分解試験を行った。
なお、加水分解試験油の評価は加水分解試験後に遠心分離機で20,000G、1時間遠心分離を行い、スラッジ、水分及び沈殿物を除去した上澄み液を用いた。
(高温清浄性)
ホットチューブ試験(JPI−5S−55−99準拠)を行い、新油及び加水分解試験油について、310℃、16時間後の高温清浄性を評価した(評点:最低0、最高10)。
Figure 0005025144
表1から明らかな通り、本発明にかかる内燃機関用潤滑油組成物(実施例1)は、比較例1の組成物と比べ、加水分解試験後においても塩基価、高温清浄性を維持することが可能であることがわかる。これは加水分解試験後においても組成物中のCa、P量が低下しにくく、潤滑油中の添加剤が加水分解に対し安定であり、沈殿やスラッジ等を生成しにくいためと考えられる。

Claims (3)

  1. 鉱油及び/又は合成油からなる潤滑油基油に、(A)ジアルキルリン酸亜鉛及び(B)金属系清浄剤を含有し、組成物の100℃の動粘度が9.316.3mm/s、塩基価が60mgKOH/gであり、浄油装置を備えた4ストローク中速トランクピストン機関に使用されることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
  2. (A)成分の含有量が、組成物全量基準として、リン元素換算で、0.03〜0.08質量%であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
  3. (B)成分の含有量が、組成物全量基準で、0.3〜2質量%であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
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