JP5352646B2 - 高圧ポンプ - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に用いられる高圧ポンプに関する。
従来、内燃機関の燃料供給系統に燃料を供給する高圧ポンプが知られている。燃料タンクから汲み上げられる燃料は、高圧ポンプのシリンダ孔内でプランジャの下降により加圧室に吸入され、プランジャの上昇により調量され加圧される。
ところで、こうした高圧ポンプを組み立てる過程や、組み立てた高圧ポンプをエンジンに搭載する過程においては、シリンダ孔内に挿入したプランジャがそのシリンダ孔から落下しないようにする必要がある。
特許文献1に記載の燃料高圧ポンプや特許文献2に記載の燃料ポンプ装置においても、プランジャのシリンダ孔からの落下を防止する措置が採られている。例えば特許文献1には、先行してケーシング28内に挿入されたピストン36の段部48が、ケーシング28に固定されているストッパエレメント60のストッパ78と協働する旨が記載されている(特許文献1の請求項1及び図2を参照)。
また、特許文献2には、プランジャ12の外向運動の範囲が舌片17と係合する円環23の形の受け台により制限され、それにより、搬送および関連のエンジンへの装置の組み立ての間中、プランジャ12が孔11から落下するのを防止する旨が記載されている(特許文献2の段落[0010]並びに図1及び図2を参照)。
特表2008−525713号公報 特開平4−231673号公報
ところで、特許文献1に記載の燃料高圧ポンプにおいては、その図2から明らかなように、ピストン36の直径の大きい領域44と直径の小さい領域46との境界の環状の段48が、ストッパエレメント60のストッパ78に当接する際には、ピストンブッシュ34の内壁面と摺動するピストン36の直径の大きい領域44の外周壁面、即ち摺動面の一部が、ピストンブッシュ34から露出した状態になる。
このため、ピストン36の段48がストッパ78に当接する際に、ピストン36の露出した摺動面に打痕が生じ、この打痕によってピストン36の摺動面が変形する恐れがあった。また、ピストン36の露出した摺動面に異物などが付着するおそれがあった。いずれの場合においても、ピストン36の摺動不良という問題が生じる。
また、特許文献2に記載の燃料ポンプ装置においては、その図1及び図2から明らかなように、プランジャ12の外向運動の範囲を制限する円環23の形の受け台は、孔11を形成している本体部分10から離れた位置に設けられており、この円環23の受け台にプランジャ12が当接する際には、孔11の内壁面と摺動するプランジャ12の外周壁面の一部が、孔11から露出した状態になる。
このため、この特許文献2に記載の燃料ポンプ装置においても、上記の特許文献1に記載の燃料高圧ポンプの場合と同様に、プランジャ12の露出した摺動面における打痕や異物付着などに起因するプランジャ12の摺動不良という問題が生じる。
更に、この特許文献2に記載の燃料ポンプ装置においては、プランジャ12の孔11からの落下を防止するストッパ構成の体格が非常に大きいことや、この燃料ポンプ装置の用途に規定されることではあるが、プランジャ12の下端側に燃料領域を設けた場合のエンジンオイル領域との分離が考慮されていないストッパ構成となっているなどの問題もあった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、高圧ポンプを組み立てる過程や組み立てた高圧ポンプをエンジンに搭載する過程や組み立て後の高圧ポンプの作動中において、プランジャの摺動面に打痕や異物付着などが生じないように保護した状態で、プランジャのシリンダ孔からの落下や摺動不良を防止する高圧ポンプを提供することを目的とする。
請求項1に係る発明によると、シリンダ形成部材には、シリンダ孔、及びこのシリンダ孔に連通する加圧室が形成されている。このシリンダ孔内を軸方向に往復移動するプランジャは、シリンダ孔の内壁面に沿って摺動する摺動面を有し、シリンダ孔内の往復移動により加圧室内に燃料を吸入し加圧する。
シリンダ形成部材の加圧室と反対側のシリンダ端部を含み加圧室と反対側に突出するシリンダ孔形成部には、プランジャストッパが着脱可能に取り付けられている。このプランジャストッパは、プランジャの所定の位置に形成された段付き部と協働し、プランジャの摺動面をシリンダ孔の内壁面に接触させた状態で、プランジャの移動を規制する。
このように請求項1に係る高圧ポンプは、シリンダ孔形成部(具体的にはシリンダ端部の近傍)に取り付けられたプランジャストッパが、プランジャの所定の位置に形成された段付き部と協働してプランジャのシリンダ孔内での移動を規制する。このことにより、プランジャストッパは、高圧ポンプの組み立て後の作動中において、プランジャがシリンダ孔内での往復移動する際の、特に上死点から下死点に向かって下降する際のストッパの機能を果たす。また、高圧ポンプを組み立てる過程や組み立てた高圧ポンプをエンジンに搭載する過程においても、プランジャがシリンダ孔から落下するのを防止するストッパの機能を果たす。
また、プランジャストッパがシリンダ形成部材のシリンダ孔形成部に着脱可能に取り付けられていることにより、特に高圧ポンプの組み立て過程やエンジン搭載過程における取り扱い上の利便性が高くなる。
しかも、このプランジャストッパは、プランジャの摺動面をシリンダ孔の内壁面に接触させた状態でプランジャの移動を規制することにより、高圧ポンプの組み立て後の作動中におけるプランジャのシリンダ孔内での往復移動の際や、高圧ポンプの組み立て過程やエンジン搭載過程におけるプランジャのシリンダ孔からの落下を防止する際に、プランジャの摺動面は打痕や異物付着などが生じないように保護された状態が保持される。
ランジャは、端部が加圧室に臨み摺動面を有する大径部と、大径部から加圧室と反対側に延伸し大径部よりも外径の小さい小径部と、大径部と小径部との境界をなす第1段付き部と、を有している。そして、この第1段付き部が、プランジャストッパと協働する段付き部となる。
また、プランジャストッパは、プランジャのシリンダ孔内での移動に伴って段付き部が当接するストッパ部を有している。ストッパ部は、シリンダ孔の軸方向において、シリンダ形成部材のシリンダ端部と同じ位置に位置しているか、或いは、シリンダ形成部材のシリンダ端部から加圧室側寄りの位置に位置している。
このようにプランジャの大径部と小径部との境界をなす第1段付き部が、段付き部としてプランジャストッパと協働し、プランジャの摺動面をシリンダ孔の内壁面に接触させた状態で、プランジャの移動を規制することができる。
また、プランジャストッパのストッパ部のシリンダ孔の軸方向における位置が、シリンダ形成部材のシリンダ端部と同じ位置にあるか、或いは、シリンダ形成部材のシリンダ端部から加圧室側寄りの位置にあることにより、プランジャの第1段付き部がプランジャストッパのストッパ部に当接する際であっても、プランジャの大径部の摺動面全体がシリンダ孔の内壁面に接触している状態となる。よって、プランジャの摺動面をより確実に保護することができる。
さらに、シリンダ形成部材のシリンダ孔形成部は、外壁面に外リセスが形成され、この外リセスにプランジャストッパが係止されて取り付けられている。
このようにシリンダ形成部材のシリンダ孔形成部の外壁面に形成された外リセスにプランジャストッパが係合されて取り付けられていることにより、プランジャストッパの外リセスへの係止、及びその係止の解除による取り外しが可能になる。即ち、プランジャストッパのシリンダ形成部材への着脱が可能になる。
請求項に係る発明によると、シリンダ形成部材が、高圧ポンプの外郭をなすポンプボディと連続的な一体をなしている。
即ち、シリンダ形成部材とポンプボディとが連続的な一体となっている、いわゆるシリンダ一体型ポンプボディを用いる場合であっても、シリンダ形成部材がポンプボディと異なる、いわゆる別体シリンダの場合であっても、請求項に係る高圧ポンプの発明は適用される。
本発明の第1実施形態による高圧ポンプを示す概略断面図である。 (a)は図1の高圧ポンプのプランジャ部にプランジャストッパが取り付けられている状態を示す断面図であり、(b)はそのプランジャストッパを示す斜視図である。 本発明の第1実施形態の変形例による高圧ポンプのプランジャ部にプランジャストッパが取り付けられている状態を示す断面図である。 (a)は本発明の参考形態による高圧ポンプのプランジャ部にプランジャストッパが取り付けられている状態を示す断面図であり、(b)はそのプランジャストッパを示す斜視図である。 本発明の第3実施形態による高圧ポンプのプランジャ部拡大図である。 本発明の第3実施形態の基本例によるプランジャストッパを構成する(a)第2リング、(b)第1リングの斜視図である。 本発明の第3実施形態の基本例によるプランジャストッパを示す(a)斜視図、(b)(a)のb−b断面図である。 本発明の第3実施形態の第1変形例によるプランジャストッパを示す(a)斜視図、(b)(a)のb−b断面図である。 本発明の第3実施形態の第2変形例によるプランジャストッパを示す(a)斜視図、(b)(a)のb−b断面図である。 本発明の第3実施形態の第3変形例によるプランジャストッパを示す(a)斜視図、(b)(a)のb−b断面図である。 本発明の第3実施形態の第4変形例によるプランジャストッパを示す(a)斜視図、(b)(a)のb−b断面図である。 本発明の第3実施形態の第5変形例によるプランジャストッパを示す(a)斜視図、(b)(a)のb−b断面図である。 本発明の第4実施形態の基本例によるプランジャストッパを示す(a)斜視図、(b)(a)のb−b断面図である。 本発明の第4実施形態の変形例によるプランジャストッパを示す(a)斜視図、(b)(a)のb−b断面図である。 本発明の第5実施形態による高圧ポンプのプランジャ部にプランジャストッパが取り付けられている状態を示す断面図である。 本発明の第6実施形態による高圧ポンプを示す概略断面図である。
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による高圧ポンプを図1に示し、そのプランジャ部にプランジャストッパが取り付けられている状態を図2(a)に示し、そのプランジャストッパを図2(b)に示す。
先ず、本実施形態による高圧ポンプ1について、図1を用いて説明する。
高圧ポンプ1は、内燃機関に燃料を供給する燃料供給系統に設けられる。燃料タンクから汲み上げられた燃料は、高圧ポンプ1により加圧され、デリバリパイプに蓄圧される。そしてデリバリパイプに接続するインジェクタから内燃機関の各気筒に噴射供給される。
また、高圧ポンプ1は、ポンプボディ10、プランジャ部20、ダンパ室40、吸入弁部50、電磁駆動部60、吐出弁部70などを有している。尚、本実施形態では、ポンプボディ10は、特許請求の範囲に記載の「シリンダ形成部材」に相当する。
(a)ポンプボディ10及びプランジャ部20について説明する。
ポンプボディ10には、円筒状のシリンダ孔11と、このシリンダ孔11に連通する加圧室12とが一体として形成されている。シリンダ孔形成部14は、ポンプボディ10のダンパ室40と反対側に突出する筒状部分であって、加圧室12と反対側のシリンダ端部141を含む。シリンダ孔形成部14の周囲には、シールエレメント25のプランジャスプリング28を係止する部分が収容される凹部13が略円環状に形成されている。
このシリンダ孔形成部14の凹部13側の壁面である外壁面142には、外リセス15が円周状に形成されている。
プランジャ部20は、プランジャ21、プランジャストッパ23、燃料シール部材24、シールエレメント25、プランジャスプリング28等から構成される。
プランジャ21は、シリンダ孔11に収容され、その中心軸方向に往復移動可能に保持されている。また、プランジャ21は、一方の端部が加圧室12に臨み、シリンダ孔11を構成する内壁に沿って摺動する大径部211と、この大径部211よりも外径が小さく、大径部211から加圧室12側と反対側に延伸する小径部213とを有している。そして、これら大径部211及び小径部213は同軸形状をなし、その境界には段付き部214が形成されている。また、プランジャ21の小径部213側の端部には、スプリング座27が設けられている。そして、プランジャ21の小径部213の周囲に、プランジャストッパ23が配設されている。
次に、プランジャストッパ23、及び、プランジャストッパ23がプランジャ21の小径部213の周囲に配設されている状態について図2(a)、(b)を用いて説明する。
プランジャストッパ23は、その断面が略凹形状をなし、その底面部231の中央に、プランジャ21の小径部213を通すための挿通穴239が開口されている。そして、この挿通穴239の端面は、所定の間隙をもって小径部213の外周壁面に相対している。尚、この間隙は、後で説明する可変容積室30と筒状通路31とを連通させるためのものである。
プランジャストッパ23の底面部231の加圧室12側に向き合う面は、その中央側においてプランジャ21の段付き部214に相対しており、また、その外周側においてポンプボディ10のシリンダ孔形成部14のシリンダ端部141に当接する。そして、このプランジャ21の段付き部214に相対する面が、プランジャ21の段付き部214に対するストッパ部232となる。
プランジャストッパ23の略凹形状の外壁部233は、中央側に折れ曲がっており、その折れ曲がり部234が、シリンダ孔形成部14の外リセス15に係止するようになっている。また、プランジャストッパ23の略凹形状の外壁部233には、4箇所に切り欠き部235が形成され、折れ曲がり部234を含む外壁部233が4つに分離されている。このため、4つに分離された外壁部233は多少ながら変形可能な自由度が与えられ、外壁部233の折れ曲がり部234を外リセス15に係止させたり、その係止を解除して取り外したりすることが可能となっている。
こうしてプランジャストッパ23は、その折れ曲がり部234をシリンダ孔形成部14の外リセス15に着脱可能に係止してポンプボディ10に固定される一方、シリンダ孔形成部14のシリンダ端部141に当接する位置においてストッパ部232をプランジャ21の段付き部214に相対させる。このため、プランジャ21がシリンダ孔11内を移動する場合には、その段付き部214がプランジャストッパ23のストッパ部232に当接することによりプランジャ21の移動が規制される。そして、プランジャ21の段付き部214がストッパ部232に当接する際でも、大径部211の摺動面は、その全部がシリンダ孔11の内壁面に接触した状態であり、シリンダ孔11からはみ出して露出状態になることはない。
プランジャストッパ23よりもスプリング座27側の小径部213の周囲には、燃料シール部材24が小径部213の周囲を囲んで装着されている。この燃料シール部材24は、小径部213の外周面に摺動可能に接触する内周側のテフロン(登録商標)リング241と外周側のOリング242(第3実施形態の図5参照)とからなり、小径部213の周囲の燃料油膜の厚さを規制し、プランジャ21の摺動によるエンジンへの燃料のリークを抑制するものである。
また、小径部213の周囲には、シールエレメント25が装着されている。このシールエレメント25は、略円環形状をなしており、その一部が燃料シール部材24の加圧室12側の端部、スプリング座27側の端部、及び外周側の端部に当接している。また、シールエレメント25の他の一部は、ポンプボディ10に形成された略円環状の凹部13に嵌め込まれ、例えば溶接により固定されている。こうしてシールエレメント25は、燃料シール部材24を固定するホルダの機能を果たしている。
また、シールエレメント25のスプリング座27側の端部には、オイルシール26が小径部213の周囲を囲んで装着されている。このオイルシール26は、小径部213の外周面に摺動可能に接触しており、小径部213の周囲のオイル油膜の厚さを規制し、プランジャ21の摺動によるオイルのリークを抑制するものである。
プランジャ21の下部には、スプリング座27が結合されている。このスプリング座27には、プランジャスプリング28の一方の端部が係止されている。このプランジャスプリング28の他方の端部は、ポンプボディ10に固定されているシールエレメント25の所定の端面に係止されている。即ち、シールエレメント25は、プランジャスプリング28の係止部材としても機能する。
シールエレメント25とスプリング座27とに両端部を係止されたプランジャスプリング28は、プランジャ21の戻しバネとして機能し、プランジャ21を図示しないタペットに付勢する。そして、プランジャ21は、このプランジャスプリング28の戻しバネ機能により、タペットを介してカムシャフトのカムに当接することで、シリンダ孔11内をその軸方向に往復移動する。このプランジャ21の往復移動により、加圧室12の容積が変化することで燃料が吸入され、加圧される。
小径部213の外壁面、プランジャ21の段付き部214およびシリンダ孔11の内壁面に囲まれる略円環状の空間により、可変容積室30が形成される(図2の破線参照)。即ち、可変容積室30は、小径部213を略円環状に取り巻いて形成される。可変容積室30は、プランジャ21の往復移動に伴い、大径部211と小径部213との断面積差にプランジャ21の移動距離を乗じた容積が変化する。
また、シールエレメント25とポンプボディ10との間には、互いに連通する筒状通路31及び環状通路32が形成される。また、ポンプボディ10には、環状通路32に連通する戻し通路33が形成される。そして、可変容積室30は、これらの筒状通路31、環状通路32、及び戻し通路33を経由して、ダンパ室40に連通する。
(b)ダンパ室40について説明する。
ダンパ室40は、凹部41、カバー42、ダンパユニット43などから構成される。
ポンプボディ10には、シリンダ孔11の反対側に、シリンダ孔11側に凹む凹部41が設けられている。この凹部41には、内部を外気から遮断するための有底筒状のカバー42が被せられている。
ダンパ室40には、ダンパユニット43が配設されている。ダンパユニット43は、2枚の金属ダイアフラム441、442を接合してなるパルセーションダンパ44と、凹部41の底部に配置される底側支持部45と、カバー42側に配置される蓋側支持部46とで構成される。
パルセーションダンパ44は、2枚の金属ダイアフラム441、442の内部に所定圧の気体が密封されている。そして、2枚の金属ダイアフラム441、442がダンパ室40の圧力変化に応じて弾性変形することで、ダンパ室40の燃圧脈動を低減する。
ダンパ室40の凹部41の底部には、底側支持部45に合わせた窪み47が形成されている。この窪み47により、底側支持部45が位置決めされる。また、この窪み47には、図示はしないが、燃料入口(インレット)の開口部が形成されているため、低圧ポンプからの燃料が、底側支持部45の径方向内側の領域へ供給される。即ち、ダンパ室40には、燃料入口を通じて燃料タンクの燃料が供給される。
蓋側支持部46の上方には、波ばね48が配置されている。これにより、カバー42をポンプボディ10に取り付けた状態で、波ばね48が蓋側支持部46を底側支持部45側へ押圧する。その結果、パルセーションダンパ44は、その周縁部を蓋側支持部46と底側支持部45とによって周方向に均等な力で挟持され固定される。
(c)吸入弁部50について説明する。
吸入弁部50は、供給通路52、弁ボディ53、シート部54、吸入弁55などから構成される。
ポンプボディ10には、シリンダ孔11の中心軸と略垂直に筒部51が設けられ、この筒部51の内部は燃料の供給通路52となっている。また、この筒部51の内側には弁ボディ53が収容され、係止部材によって固定されている。この弁ボディ53の内側には、凹テーパ状の円周面を有するシート部54が形成されており、このシート部54と相対して吸入弁55が配置されている。そして、この吸入弁55は、弁ボディ53の底部に設けられた孔の内壁に案内されて往復移動するものであり、吸入弁55がシート部54から離座することで供給通路52を開放し、吸入弁55がシート部54に着座することで供給通路52を閉塞する。
尚、弁ボディ53の内壁にはストッパ56が固定されており、このストッパ56が吸入弁55の開弁方向(図1の右方向)への移動を規制する。また、このストッパ56の内側と吸入弁55の端面との間には第1スプリング57が設けられており、この第1スプリング57が吸入弁55を閉弁方向(図1の左方向)へ付勢する。
また、ストッパ56には、ストッパ56の軸に対して傾斜する傾斜通路58が周方向に複数形成されている。供給通路52を通って供給されてきた燃料は、この傾斜通路58を通って加圧室12に吸入される。また、供給通路52は、加圧側通路59を介してダンパ室40に連通している。
(d)電磁駆動部60について説明する。
電磁駆動部60は、コネクタ61、固定コア62、可動コア63、フランジ64などから構成される。
コネクタ61は、コイル611及び端子612を有し、端子612を通じてコイル611に通電されることにより磁界を発生するようになっている。固定コア62は磁性材料で作られ、コイル611の内側に収容されている。可動コア63は磁性材料で作られ、固定コア62と対向して配置されている。そして可動コア63は、フランジ64の内側に軸方向に往復移動可能に収容されている。
フランジ64は、磁性材料で作られ、ポンプボディ10の筒部51に取り付けられている。また、このフランジ64は、コネクタ61等をポンプボディ10に保持すると共に、筒部51の端部を塞いでいる。そして、このフランジ64の中央に設けられた孔の内壁には、筒状のガイド筒65が取り付けられている。非磁性材料で作られた筒部材66は、固定コア62とフランジ64との間の磁気的な短絡を防止する。
また、ニードル67は略円筒状に形成され、ガイド筒65の内壁に案内されて往復移動する。このニードル67は、一方の端部が可動コア63に固定され、他方の端部が吸入弁55の電磁駆動部60側の端面に当接可能である。
固定コア62と可動コア63との間には、第2スプリング68が設けられている。この第2スプリング68は、第1スプリング57が吸入弁55を閉弁方向に付勢する力よりも強い力で、可動コア63を開弁方向へ付勢している。
コイル611に通電していないとき、可動コア63と固定コア62とは、第2スプリング68の弾性力により互いに離れている。これにより、可動コア63と一体のニードル67が吸入弁55側へ移動し、ニードル67の端面が吸入弁55を押圧することで吸入弁55が開弁する。
(e)吐出弁部70について説明する。
吐出弁部70は、吐出通路71、吐出弁装置80などから構成されている。
ポンプボディ10には、シリンダ孔11の中心軸と略垂直に吐出通路71が形成されている。この吐出通路71は、一方で加圧室12に連通し、他方で燃料出口72に連通している。そして、この吐出通路71には、吐出弁装置80が組み付けられている。
吐出弁装置80は、吐出弁部材82、スプリング83、アジャスティングパイプ84などから構成される。
吐出弁部材82は、ポンプボディ10の弁座85に相対して収容されている。
吐出弁部材82の燃料出口72側には、付勢部材としてのスプリング83が収容されている。このスプリング83は、その一方の端部が吐出弁部材82の第2端面に当接している。また、このスプリング83の燃料出口72側に、円筒状のアジャスティングパイプ84が収容されている。このアジャスティングパイプ84は、支持部材として、スプリング83の他方の端部を係止している。
こうして、吐出弁部材82、スプリング83、及びアジャスティングパイプ84を有し、アジャスティングパイプ84に端部を係止されたスプリング83の付勢力により吐出弁部材82が付勢されている吐出弁装置80が、吐出弁部70に組み付けられている。
このように吐出弁部70に組み付けられた吐出弁装置80は、次のように作動する。
プランジャ21がシリンダ孔11内を上昇するにつれ、加圧室12の燃料の圧力が上昇する。そして、吐出弁装置80の吐出弁部材82よりも加圧室12側(上流側)の燃料から吐出弁部材82が受ける力が、スプリング83の弾性力と吐出弁部材82より燃料出口72側(下流側)の燃料から受ける力との和よりも大きくなると、吐出弁部材82はポンプボディ10の弁座85から離座する。即ち、吐出弁装置80は開弁状態となる。これにより、加圧室12で加圧された高圧燃料は、吐出通路71を通って燃料出口72に吐出される。
他方、プランジャ21がシリンダ孔11内を下降するにつれて加圧室12の燃料の圧力が低下する。そして、上流側の燃料から吐出弁部材82が受ける力が、スプリング83の弾性力と下流側の燃料から受ける力との和と同等もしくは小さくなると、吐出弁部材82はポンプボディ10の弁座85に着座する。即ち、吐出弁装置80は閉弁状態となる。これにより、吐出弁部材82より下流側の燃料が上流側の加圧室12へ逆流することが防止される。
このようにして、吐出弁部70に組み付けられた吐出弁装置80は、加圧室12から燃料出口72に向かって吐出される高圧燃料に対する逆止弁として機能する。
次に、高圧ポンプ1の作動について説明する。
(1)吸入行程
カムシャフトの回転により、プランジャ21がシリンダ孔11内を上死点から下死点に向かって下降すると、加圧室12の容積が増加し、加圧室12内の燃料が減圧される。このとき、吐出弁部70においては、吐出弁装置80の吐出弁部材82が弁座85に着座して、吐出通路71を閉塞する。また、吸入弁部50においては、加圧室12と供給通路52との差圧により、吸入弁55が第1スプリング57の付勢力に抗して図1の右方向に移動して、開弁状態となる。このとき、電磁駆動部60のコイル611への通電は停止されているので、可動コア63及びこの可動コア63と一体のニードル67は第2スプリング68の付勢力により図1の右方向に移動する。従って、ニードル67と吸入弁55とが当接して、吸入弁55は開弁状態を維持する。これにより、供給通路52から加圧室12に燃料が吸入される。
吸入行程では、プランジャ21の下降により、可変容積室30の容積が減少する。従って、可変容積室30の燃料は、筒状通路31、環状通路32、及び戻し通路33を経由して、ダンパ室40へ送り出される。
ここで、大径部211と可変容積室30の断面積比は概ね1:0.6である。従って、加圧室12の容積の増加分と可変容積室30の容積の減少分の比も1:0.6となる。このため、加圧室12が吸入する燃料の約60%が可変容積室30から供給され、残りの約40%が燃料入口から吸入される。これにより、加圧室12への燃料の吸入効率が向上する。
(2)調量行程
カムシャフトの回転により、プランジャ21がシリンダ孔11内を下死点から上死点に向かって上昇すると、加圧室12の容積が減少する。このとき、所定の時期まではコイル611への通電が停止されているので、第2スプリング68の付勢力によりニードル67と吸入弁55は図1の右方向に位置する。これにより、供給通路52は開放した状態が維持される。このため、加圧室12に一度吸入された低圧燃料が供給通路52へ戻される。従って、加圧室12の圧力は上昇しない。
調量行程では、プランジャ21の上昇により、可変容積室30の容積が増大する。従って、ダンパ室40の燃料は、戻し通路33、環状通路32、及び筒状通路31を経由し、可変容積室30へ流入する。
このとき、加圧室12がダンパ室40側へ排出する低圧燃料の容積の約60%が、ダンパ室40から可変容積室30に吸入される。これにより、燃圧脈動の約60%が低減される。
(3)加圧行程
プランジャ21がシリンダ孔11内を下死点から上死点に向かって上昇する途中の所定の時刻に、コイル611へ通電される。するとコイル611に発生する磁界により、固定コア62と可動コア63との間に磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力が第2スプリング68の弾性力と第1スプリング57の弾性力との差より大きくなると、可動コア63とニードル67は固定コア62側(図1の左方向)へ移動する。これにより、吸入弁55に対するニードル67の押圧力が解除される。吸入弁55は、第1スプリング57の弾性力、及び加圧室12からダンパ室40側へ排出される低圧燃料の流れによって生ずる力により、シート部54側へ移動する。従って、吸入弁55はシート部54に着座し、供給通路52が閉塞される。
吸入弁55がシート部54に着座した時から、加圧室12の燃料圧力は、プランジャ21の上死点に向かう上昇と共に高くなる。吐出弁部70において、上流側の燃料圧力が吐出弁装置80の吐出弁部材82に作用する力が、吐出弁部材82の下流側の燃料圧力が吐出弁部材82に作用する力及びスプリング83の付勢力の和よりも大きくなると、吐出弁部材82が開弁する。これにより、加圧室12で加圧された高圧燃料は吐出通路71を経由して燃料出口72から吐出される。
尚、加圧行程の途中でコイル611への通電が停止される。加圧室12の燃料圧力が吸入弁55に作用する力は、第2スプリング68の付勢力より大きいので、吸入弁55は閉弁状態を維持する。
高圧ポンプ1は、(1)吸入行程、(2)調量行程、(3)加圧行程を繰り返し、内燃機関に必要な量の燃料を加圧して吐出する。
コイル611へ通電するタイミングを早くすれば、調量行程の時間が短くなると共に、加圧行程の時間が長くなる。これにより、加圧室12から供給通路52へ戻される燃料が少なくなり、吐出通路71から吐出される燃料が多くなる。一方、コイル611へ通電するタイミングを遅くすれば、調量行程の時間が長くなると共に、吐出行程の時間が短くなる。これにより、加圧室12から供給通路52へ戻される燃料が多くなり、吐出通路71から吐出される燃料が少なくなる。
このように、コイル611へ通電するタイミングを制御することで、高圧ポンプ1から吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御する。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態において、プランジャストッパ23は、その折れ曲がり部234をシリンダ孔形成部14の外リセス15に着脱可能に係止してポンプボディ10に固定される一方、そのストッパ部232をプランジャ21の段付き部214に相対させている。
このため、プランジャストッパ23のストッパ部232は、高圧ポンプ1の組み立て後に、プランジャ21がシリンダ孔11内を往復移動する際のストッパ機能を果たすことは勿論、高圧ポンプ1を組み立てる過程や組み立てた高圧ポンプ1をエンジンに搭載する過程においても、プランジャ21がシリンダ孔11から落下するのを防止するストッパ機能を果たす。
しかも、プランジャストッパ23のストッパ部232のシリンダ孔11の軸方向における位置が、シリンダ孔形成部14のシリンダ端部141と同じ位置であることにより、シリンダ孔11内のプランジャ21の移動により段付き部214がストッパ部232に当接する際でも、大径部211の摺動面はその全部がシリンダ孔11の内壁面に接触した状態となり、シリンダ孔11からはみ出して露出状態になることはない。従って、プランジャ21の摺動面は、打痕や異物付着などが生じないように保護された状態が保持される。
即ち、高圧ポンプ1の作動中において、プランジャの摺動面に打痕や異物付着などが生じないように保護し、プランジャの摺動不良を防止することができる。また、高圧ポンプ1の組み立て過程やエンジン搭載過程においても、プランジャ21の摺動面を打痕や異物付着などが生じないように保護した状態で、プランジャ21のシリンダ孔11からの落下を防止することができる。
(第1実施形態の変形例)
上記の構成では、プランジャストッパ23のストッパ部232のシリンダ孔11の軸方向における位置を、シリンダ孔形成部14のシリンダ端部141と同じ位置にしているが、プランジャストッパ23のストッパ部232の位置を、シリンダ孔形成部14のシリンダ端部141から加圧室12側寄りにしても、同様の作用効果を奏することができる。
例えば図3に示すように、変形例のプランジャストッパ23Aは、底面部231の中央寄りに、加圧室12側に突出する凸部を形成し、その凸部のプランジャ21の段付き部214に相対する面がストッパ部232aを形成する。そのため、ストッパ部232aは、底面部231の外周側のシリンダ孔形成部14のシリンダ端部141に当接する面よりも加圧室12側寄りに位置することとなる。
参考形態)
参考形態による高圧ポンプのポンプボディにプランジャストッパが取り付けられている状態を図4(a)に示し、そのプランジャストッパを図4(b)に示す。
下複数の実施形態及び参考形態において、上記第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。なお、本明細書には、「第2実施形態」は存在しない。
参考形態による高圧ポンプ2のポンプボディ10のシリンダ孔11の内壁面、即ちシリンダ孔形成部14の内壁面14には、内リセス16が円周状に形成されている。
プランジャストッパ29は、その断面が略円形をなし、所定のフレキシビリティを有する紐状の部材であり、円周状の内リセス16内に係合されている。また、内リセス16内に係合されているプランジャストッパ29は、その一部が内リセス16からシリンダ孔11の中心軸側にはみ出している。そして、この内リセス16からはみ出しているプランジャストッパ29の円周面であって、加圧室12側に向き、プランジャ21の段付き部214に相対する円周面が、プランジャ21の段付き部214に対するストッパ部292となる。
尚、プランジャストッパ29は、所定のフレキシビリティを有する紐状の部材であることから、変形が可能であるため、内リセス16内に係合したり、係合を解除して取り外したりすることが可能となっている。
次に、本参考形態の作用効果について説明する。
参考形態において、プランジャストッパ29は、内リセス16に着脱可能に係合されてポンプボディ10に固定される一方、シリンダ孔形成部14のシリンダ端部141から加圧室12側に寄った位置において、ストッパ部292をプランジャ21の段付き部214に相対させている。
このため、上記第1実施形態の場合と同様に、シリンダ孔11内のプランジャ21の移動により段付き部214がストッパ部292に当接する際でも、大径部211の摺動面はその全部がシリンダ孔11の内壁面に接触した状態となり、シリンダ孔11からはみ出して露出状態になることはない。
こうして、プランジャ21の摺動面を打痕や異物付着などが生じないように保護された状態において、高圧ポンプ2の作動中におけるプランジャ21の摺動不良を防止することができ、高圧ポンプ2の組み立て過程やエンジン搭載過程におけるプランジャ21のシリンダ孔11からの落下を防止することができる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による高圧ポンプ3のプランジャ部拡大図を図5に示す。また、第3実施形態の基本例によるプランジャストッパを構成する第1リングおよび第2リング、並びに、当該プランジャストッパを図6、図7に示す。
図5に示すように、第3実施形態のプランジャストッパ34は、第1実施形態のプランジャストッパ23と同様、シリンダ孔形成部14の外壁面142に固定される。ただし、第1実施形態のプランジャストッパ23は、折れ曲がり部234が外壁面142の外リセス15に係止されて外壁面142に固定されるのに対し、第3実施形態のプランジャストッパ34は、複数の係合部351が有する径内方向への弾性力によって、シリンダ孔形成部14の外壁面142に押圧され、外壁面142を抱きかかえるように固定される。
プランジャストッパ34は、図6に示す第1リング35および第2リング36から構成される。本実施形態では、第1リング35および第2リング36は、いずれもステンレス鋼等の金属をプレス加工することにより形成される。
第1リング35は、比較的板厚の薄いバネ鋼板等の板材で形成され、本体350の略中央に、プランジャ21の小径部213が挿通可能な挿通穴359が、軸Zを中心として形成される。
また、本体350の外縁には、周方向に略等間隔に3つの係合部351が設けられる。係合部351は、本体350の基面358に対し略直交方向(図の上方)に向かって曲げられる。より詳しくは、3つの係合部351の上端部寄りの径内面に形成されるフィット部352による仮想直径がシリンダ孔形成部14の外壁面142の直径よりもやや小さくなるように、係合部351は、基面358に対する直交方向よりやや径内方向に傾いて曲げられる。これにより、プランジャストッパ34がシリンダ孔形成部14に取り付けられたとき、3つの係合部351は径内方向への弾性力を有する。
なお、3つの係合部351を周方向に均等に配置すれば、最小の個数でバランスよく係合させることができる。しかし他の実施形態では、係合部の数や配置はこれに限らない。
係合部351の曲げ方向の中間部には、径内方向に突出する突起354が形成される。突起354は、第1リング35と第2リング36とを組み合わせたとき、第2リング36の本体360に係合して、第1リング35と第2リング36との離脱を防止する。このとき、係合部351の根元部353が第2リング36の本体360の外壁面に対向する。
第2リング36は、比較的板厚の厚い板材で形成される。本体360の略中央には、第1リング35の挿通穴359に対応し、プランジャ21の小径部213が挿通可能な挿通穴369が形成される。第1リング35と第2リング36とを組み合わせたとき、第2リング36の本体360の下面362が、第1リング35の基面358に当接する。第2リング36の本体360は比較的厚肉であるため、プランジャストッパ34の剛性を高め、燃料圧力による変形等を防止することができる。
本体360の外縁には、第1リング35の係合部351の位置に対応する3箇所の切り欠き部367が設けられる。第1リング35と第2リング36とを組み合わせたとき、係合部351が切り欠き部367に係合することで、係合部351は、第2リング36の外径の内側に配置される。このため、第2リング36の外径をシールエレメント25の内径に対応させ、スペースを有効に使用することができる(図5参照)。また、第1リング35と第2リング36とが回り止めされる。
また、本体360には、周方向の切り欠き部367同士の間に、図の上方に突出する3つの凸部363が設けられる。3つの凸部363の上面364の高さは略同一であり、上面364がシリンダ端部141に突き当てられることで、シリンダ孔形成部14に対するプランジャストッパ34の軸方向の位置決めがされる。
周方向の凸部363同士の間の空間は、連通路366を形成する。連通路366の高さは、本体360の上面361と、凸部363の上面364との高さの差に相当する。連通路366は、プランジャストッパ34の径内方向の可変容積室30と径外方向の筒状通路31とを連通する。
凸部363の内壁365を結ぶ仮想円の内径は、プランジャ21の大径部211の直径よりわずかに大きく形成されており、プランジャ21の大径部211を案内可能である。また、3つの凸部363の内壁365を結ぶ仮想円と挿通穴369との間に、環状のストッパ部368が形成される。ストッパ部368は、本体360の上面361に対し、図の下方、すなわち凸部363と反対側に段差として形成される。ストッパ部368は、プランジャ21の下降時、段付き部214が当接してプランジャ21の移動を規制する。
このため、プランジャストッパ34のストッパ部368は、高圧ポンプ3の組み立て後に、プランジャ21がシリンダ孔11内を往復移動する際のストッパ機能を果たすことは勿論、高圧ポンプ3を組み立てる過程や組み立てた高圧ポンプ3をエンジンに搭載する過程においても、プランジャ21がシリンダ孔11から落下するのを防止するストッパ機能を果たす。
本実施形態では、プランジャ21の下降時、大径部211の周方向の連通路366に対応する部分に、連通路366を経由して燃料が接触するため、摺動部の一部が露出しているようにも思われる。しかし、少なくとも、高圧ポンプ3の組み立て後の作動中におけるプランジャ21のシリンダ孔11内での往復移動の際や、高圧ポンプ3の組み立て過程やエンジン搭載過程におけるプランジャ21のシリンダ孔11からの落下を防止する際に、プランジャ21の摺動面は、打痕等が生じないように保護された状態が保持される。
また、本実施形態では、係合部351を有する第1リング35と、凸部363を揺する第2リング36とを組み合わせてプランジャストッパ34を構成する。これにより、弾性が要求される第1リング35と、剛性が要求される第2リング36とを、それぞれプレス加工に適した板厚の材料で形成することができる。したがって、製造効率を向上させ、トータルの製造コストを低減することができる。
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態の第1〜第5変形例を、図8〜図12を参照して説明する。これらの変形例は、上記基本例に対し、第1リングと第2リングとを係合させ、且つ離脱を防止する構成が異なる。具体的には、第1リングにおいて、上記基本例の突起354に代えて補助爪等が採用される。なお、第1〜第3実施例については、第2リング36は、基本例の第2リング36と実質的に同一である。
図8に示すように、第3実施形態の第1変形例のプランジャストッパ34Aは、第1リング35Aの係合部351aに窓部355aが形成され、窓部355a内に補助爪356aが設けられる。補助爪356aは、フィット部352を形成する主爪部分とは独立して、係合部351aの根元部353側から上方に曲げられる。補助爪356aは、径内方向に向かって弾性力を有し、第2リング36の本体360の上面361または切り欠き部367の側面を押さえ、第1リング35Aからの離脱を防止する。
図9に示すように、第3実施形態の第2変形例のプランジャストッパ34Bは、第1リング35Bの係合部351bに窓部355bが形成され、窓部355b内に補助爪356bが設けられる。補助爪356bは、フィット部352を形成する主爪部分とは独立して、窓部355bの上端から径内側の斜め下方に曲げられる。補助爪356bは、第2リング36の本体360の上面361を押さえ、第1リング35Bからの離脱を防止する。
図10に示すように、第3実施形態の第3変形例のプランジャストッパ34Cは、第1リング35Cの係合部351cに窓部355cが形成され、窓部355c内に補助爪356cが設けられる。補助爪356cは、フィット部352を形成する主爪部分とは独立して、係合部351cの根元部353側から上方に、次いで径内方向に鈎形に曲げられる。補助爪356cは、第2リング36の本体360の上面361を押さえ、第1リング35Cからの離脱を防止する。
次に図11に示すように、第3実施形態の第4変形例のプランジャストッパ34Dは、第1リング35Dの係合部351dとは別の補助爪357dが、係合部351dの周方向に隣接して設けられる。補助爪357dは、本体350の基面358から上方に曲げられる。第2リング36Dは、基本例の第2リング36に対し、切り欠き部367dの周方向の長さが長く形成される。補助爪357dは、径内方向に向かって弾性力を有し、第2リング36Dの本体360の上面361または切り欠き部367dの側面を押さえ、第1リング35Dからの離脱を防止する。
また図12に示すように、第3実施形態の第6変形例のプランジャストッパ34Eは、第1リング35Eの係合部351eとは別の補助爪357eが、係合部351e同士の周方向の間に設けられる。補助爪357eは、本体350の基面358から上方に曲げられる。第2リング36Eは、基本例の第2リング36と同様、本体360の凸部363e同士の間に係合部351e用の切り欠き部367が3箇所設けられる他、凸部363eに、補助爪357e用の切り欠き部367eが3箇所設けられる。補助爪357eは、径内方向に向かって弾性力を有し、第2リング36Eの切り欠き部367eの側面を押さえ、第1リング35Eからの離脱を防止する。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態によるプランジャストッパを図13に示す。第4実施形態の基本例のプランジャストッパ37は、第3実施形態のプランジャストッパ34等と同様、複数の係合部371が有する径内方向への弾性力によって、シリンダ孔形成部14に外リセスを形成する必要なく、外壁面142を抱きかかえるように固定される。
図13に示すように、第4実施形態のプランジャストッパ37は、ステンレス鋼等の金属をプレス加工することにより、一部品で構成される。
プランジャストッパ37は、第3実施形態の第1リング35の材料に相当する比較的板厚の薄いバネ鋼板等で形成され、本体370の略中央に、プランジャ21の小径部213が挿通可能な挿通穴379が、軸Zを中心として形成される。
また、本体370の外縁に周方向に略等間隔に3つの係合部371が設けられること、係合部371は本体370の基面377に対し略直交方向(図の上方)に向かって曲げられること、及び、係合部371の上端部寄りの径内面に形成されるフィット部372がシリンダ孔形成部14の外壁面142に当接することは、第3実施形態と同様である。
一方、第3実施形態とは異なり、プランジャストッパ37では、3つの凸部373が曲げ加工で本体370と一体に形成される。3つの凸部373の上面374の高さは略同一であり、上面374がシリンダ端部141に突き当てられることで、シリンダ孔形成部14に対するプランジャストッパ37の軸方向の位置決めがされる。
周方向の凸部373同士の間の空間は、連通路376を形成する。連通路376の高さは、本体370の基面377と、凸部373の上面374との高さの差に相当する。
また、特に図13に示す基本例では、凸部373の内壁375より径内側の基面377は、ストッパ部を兼ねる。
第4実施形態は、2つの部品を組み合わせてプランジャストッパ34を構成する第3実施形態に比べ、凸部やストッパ部の剛性を高めるという点では不利であるものの、一部品でプランジャストッパ37を構成するため、部品点数を低減することができる。したがって、製造コストを低減することができる。
(第4実施形態の変形例)
図14に示す第4実施形態の変形例のプランジャストッパ37Aは、基本例に対し凸部373aの構成のみが異なる。すなわち凸部373aは、内壁375がさらに畳み込まれるように曲げられて、ストッパ部378が形成される。
これにより、基本例に比べ、ストッパ部378の剛性を向上させることができる。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態による高圧ポンプのプランジャ部にプランジャストッパが取り付けられている状態を図15に示す。
本実施形態による高圧ポンプ5のプランジャ部20Aについて、図15を用いて説明する。尚、プランジャ部20以外の部分は、上記第1実施形態の図1に示す高圧ポンプ1と同じ構成を有しているため、その説明を省略する。
プランジャ部20Aには、プランジャ21A、プランジャストッパ38、燃料シール部材24、シールエレメント25A、プランジャスプリング28、可変容積室30などから構成される。
プランジャ21Aは、一方の端部が加圧室12に臨み、シリンダ孔11を構成する内壁に沿って摺動する大径部211aと、この大径部211aよりも外径が小さく、大径部211aから加圧室12側と反対側に延伸する中径部212aと、この中径部212aよりも外径が小さく、中径部212aから加圧室12側と反対側に延伸する小径部213aとを有している。そして、これら大径部211a、中径部212a、及び小径部213aは同軸形状をなし、大径部211aと中径部212aとの境界には第1段付き部214aが形成され、中径部212aと小径部213aとの境界には第2段付き部214bが形成されている。
プランジャ21Aの中径部212aの周囲には、プランジャ21Aの摺動によるエンジンへの燃料のリークを抑制するための燃料シール部材24が装着されている。また、同じく小径部213aの周囲には、シールエレメント25Aが装着されている。このシールエレメント25Aは、その全体が略円環形状をなしており、その一部が燃料シール部材24の加圧室12側の端部、及び外周側の端部に当接している。また、シールエレメント25Aの他の一部は、ポンプボディ10に形成された略円環状の凹部13に嵌め込まれ、例えば溶接により固定されている。
燃料シール部材24よりも加圧室12と反対側の中径部212a及び小径部213aの周囲には、プランジャストッパ38が略円環状に配設されている。このプランジャストッパ38の内壁面側には、プランジャ21Aの第2段付き部214bに相対する端面が形成されており、この端面がプランジャ21Aの第2段付き部214bに対するストッパ部382となる。
ここで、このプランジャストッパ38のストッパ部382とシリンダ孔形成部14のシリンダ端部141との距離L1は、プランジャ21Aの中径部212aの軸方向の長さL2、即ちプランジャ21Aの第1段付き部214aと第2段付き部214bとの距離L2と等しくなっている。
また、プランジャストッパ38の外周壁面は、シールエレメント25Aに連結されている。即ち、プランジャストッパ38は、シールエレメント25Aを介してポンプボディ10に固定されている。また、プランジャストッパ38の加圧室12側の端部は、燃料シール部材24の加圧室12と反対側の端部22に当接している。こうしてプランジャストッパ38は、シールエレメント25Aと一体となって燃料シール部材24を固定するホルダの機能も果たしている。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態において、プランジャストッパ38は、シールエレメント25Aを介してポンプボディ10に固定される一方、ストッパ部382をプランジャ21Aの第2段付き部214bに相対させている。しかも、プランジャストッパ38のストッパ部382とシリンダ孔形成部14のシリンダ端部141との距離L1は、第1段付き部214aと第2段付き部214bとの距離L2、即ちプランジャ21Aの中径部212aの軸方向の長さL2と等しくなっている。
このため、上記第1実施形態の場合と同様に、シリンダ孔11内のプランジャ21Aの移動により第2段付き部214bがストッパ部382に当接する際でも、大径部211aの摺動面はその全部がシリンダ孔11の内壁面に接触した状態となり、シリンダ孔11からはみ出して露出状態になることはない。こうして、プランジャ21Aの摺動面を打痕や異物付着などが生じないように保護された状態において、高圧ポンプ2の作動中におけるプランジャ21Aの摺動不良や、高圧ポンプ2の組み立て過程やエンジン搭載過程におけるプランジャ21Aのシリンダ孔11からの落下を防止することができる。
また、プランジャ21Aの第1段付き部214aとプランジャストッパ38のストッパ部382との間に燃料シール部材24が介在していることにより、このストッパ部382は、可変容積室30等の燃料領域から完全に分離される。このため、プランジャ21Aの第1段付き部214aがプランジャストッパ38のストッパ部382に当接する際に僅かな異物が発生しても、その異物が大径部211aの摺動面とシリンダ孔11の内壁面と間に侵入することを排除する。従って、高圧ポンプ2の作動中におけるプランジャ21Aの摺動不良を防止することができる。
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態による高圧ポンプを図16に示す
先ず、本実施形態による高圧ポンプ6について、図16を用いて説明する。
高圧ポンプ6は、シリンダ孔がポンプボディ10とは別の部材で形成されているシリンダ別体型の高圧ポンプである。即ち、シリンダ形成部材90は、ポンプボディ10と連結しているものの、ポンプボディ10とは別体をなす部材である。そして、このシリンダ形成部材90には、円筒状のシリンダ孔91及びこのシリンダ孔91に連通する加圧室92が一体として形成されている。
シリンダ形成部材90の加圧室92と反対側の端部近傍の外壁面には、外リセス93が円周状に形成されている。そして、上記第1実施形態の場合と同様に、シリンダ形成部材90の加圧室92と反対側の端部近傍に、上記第1実施形態のプランジャストッパ23と実質的に同一の構造を有するプランジャストッパ23が取り付けられている。
即ち、プランジャストッパ23は、その折れ曲がり部234がシリンダ形成部材90の外リセス93に着脱可能に係止してポンプボディ10に固定されている。また、プランジャストッパ23のストッパ部232は、シリンダ形成部材90の加圧室92側と反対側の端部の位置においてプランジャ21の段付き部214に相対している。
このため、上記第1実施形態の場合と同様に、プランジャ21がシリンダ孔91内を移動し、その段付き部214がプランジャストッパ23のストッパ部232に当接する際でも、大径部211の摺動面はその全部がシリンダ孔91の内壁面に接した状態であり、シリンダ孔91からはみ出して露出状態になることはない。こうして、プランジャ21の摺動面を打痕や異物付着などが生じないように保護する状態が保持される。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
上記第1実施形態の高圧ポンプ1がシリンダ一体型ポンプボディを用いているのに対して、本実施形態の高圧ポンプ6はポンプボディ10とシリンダ形成部材90とが別体であるシリンダ別体型ポンプボディを用いている。また、上記第1実施形態における外リセス15がポンプボディ10のシリンダ孔形成部14の凹部13側の壁面に形成されているのに対して、本実施形態においては外リセス93がシリンダ形成部材90の外壁部に形成されている点で異なる。
しかし、本実施形態は、このような上記第1実施形態との相違点があるにも拘らず、プランジャストッパ23のストッパ部232のシリンダ孔91の軸方向における位置が、シリンダ形成部材90の端部と同じ位置であることにより、上記第1実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。換言すれば、プランジャストッパ23は、シリンダ一体型ポンプボディを用いる高圧ポンプ1にも、シリンダ別体型ポンプボディを用いる高圧ポンプ6にも好適に使用できるという汎用性を有する。
(他の実施形態)
記第3、第4実施形態では、プランジャストッパ34、37の係合部351、371等は径内方向への弾性力を有しているため、シリンダ孔形成部14の外壁面142に外リセスを形成しなくても、弾性力によって押圧されることにより外壁面142に係合することができる。しかし、シリンダ孔形成部14の外壁面142に外リセスを形成し、この外リセスに係合部が係合するようにしてもよい。
また、上記第5実施形態では、プランジャストッパ38のストッパ部382とシリンダ孔形成部14のシリンダ端部141との距離L1を、第1段付き部214aと第2段付き部214bとの距離L2、即ちプランジャ21Aの中径部212aの軸方向の長さL2と等しくしているが、上記の距離L1を上記の長さL2より短くしても、同様の作用効果を奏することができる。この場合、プランジャストッパ38の取り付け位置を変更するか、プランジャ21Aの形状を変更することにより、容易に実現可能である。
また、上記第6実施形態では、ポンプボディ10とは別体をなすシリンダ形成部材90に上記第1実施形態のプランジャストッパ23と実質的に同一の構造のプランジャストッパを取り付ける場合について述べているが、このシリンダ形成部材90に上記第〜第5実施形態のプランジャストッ34、37、38と実質的に同一の構造のプランジャストッパを取り付けることも可能である。
3、5、6 ・・・高圧ポンプ
10 ・・・ポンプボディ(シリンダ形成部材)
11、91 ・・・シリンダ孔
12、92 ・・・加圧室
13 ・・・凹部
14 ・・・シリンダ孔形成部
141 ・・・シリンダ端部
142 ・・・外壁面
5、93 ・・・外リセス(第1、第6実施形態)
0、20A ・・・プランジャ部
21、21A ・・・プランジャ
211、211a ・・・大径部
212a ・・・中径部
213、213a ・・・小径部
214 ・・・段付き部
214a ・・・第1段付き部(第5実施形態)
214b ・・・第2段付き部(第5実施形態)
23、23A ・・・プランジャストッパ(第1実施形態)
231 ・・・底面部
232、232a ・・・ストッパ部
233 ・・・外壁部
234 ・・・折れ曲がり部
24 ・・・燃料シール部材
25、25A ・・・シールエレメント
4、34A〜34E、37 ・・・プランジャストッパ(第3、第4実施形態)
35、35A〜35E ・・・第1リング
351、351a〜351e、371 ・・・係合部
36、36D、36E ・・・第2リング
363、363e、373、373a ・・・凸部
366、376 ・・・連通路
367 ・・・切り欠き部
368、377、378・・・ストッパ部
38 ・・・プランジャストッパ(第5実施形態)
382 ・・・ストッパ部
0 ・・・シリンダ形成部材(第6実施形態)

Claims (2)

  1. シリンダ孔、及び前記シリンダ孔に連通する加圧室を有するシリンダ形成部材と、
    前記シリンダ孔の内壁面に沿って摺動する摺動面を有し、前記シリンダ孔内を軸方向に往復移動することにより前記加圧室内に燃料を吸入し加圧するプランジャと、
    前記シリンダ形成部材の前記加圧室と反対側のシリンダ端部を含み前記加圧室と反対側に突出する筒状のシリンダ孔形成部に着脱可能に取り付けられ、前記プランジャの所定の位置に形成された段付き部と協働し、前記プランジャの前記摺動面を前記シリンダ孔の内壁面に接触させた状態で前記プランジャの移動を規制するプランジャストッパと、
    を備え、
    前記プランジャは、端部が前記加圧室に臨み前記摺動面を有する大径部と、前記大径部から前記加圧室と反対側に延伸し前記大径部よりも外径の小さい小径部と、前記大径部と前記小径部との境界をなす第1段付き部と、を有し、前記第1段付き部が、前記プランジャストッパと協働する前記段付き部をなし、
    前記プランジャストッパは、前記シリンダ孔の軸方向において、前記シリンダ形成部材の前記シリンダ端部と同じ位置又は前記シリンダ端部から前記加圧室側寄りの位置にあり前記プランジャの前記シリンダ孔内での移動に伴って前記段付き部が当接するストッパ部を有し、
    前記シリンダ形成部材の前記シリンダ孔形成部は、外壁面に外リセスが形成され、
    前記プランジャストッパは、前記外リセスに係止して取り付けられていることを特徴とする高圧ポンプ。
  2. 請求項に記載の高圧ポンプであって、
    前記シリンダ形成部材が、当該高圧ポンプの外郭をなすポンプボディと連続的な一体をなしていることを特徴とする高圧ポンプ。
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