JP5297138B2 - ランキンサイクル発電のタービン用潤滑油及び作動流体組成物 - Google Patents

ランキンサイクル発電のタービン用潤滑油及び作動流体組成物 Download PDF

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Description

本発明はランキンサイクル発電のタービン用潤滑油及び作動流体組成物に関する。
鉄鋼、石油、化学、紙パルプ、窯業などの分野においては、工場排熱、ガスタービン又はエンジン等の原動機からの排熱などを有効利用することが、省エネルギー・炭酸ガス排出削減の観点から検討されている。その一環として、200℃以下の排ガス又は80℃の排水などの低温廃熱を回収して発電に利用する、いわゆるランキンサイクル発電が開発され、あるいは実用化されつつある。
ランキンサイクルの廃熱回収発電システムにおける作動媒体としては、水−アンモニア系、塩素含有ハロゲン化炭化水素、非塩素系ハロゲン化炭化水素、炭化水素などがある。これらの作動媒体のうち、水−アンモニア系は毒性や腐食性の点で問題があり、また、塩素含有ハロゲン化炭化水素はオゾン層破壊の問題があるため、非塩素系ハロゲン化炭化水素の使用が検討されている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
特開平2−272086号公報
本発明は、ランキンサイクル発電の作動媒体として用いられる非塩素系ハロゲン化炭化水素に対して良好な相溶性を示し、且つ、潤滑性および熱安定性に優れるタービン用潤滑油、並びにその潤滑油を用いた作動流体組成物を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、炭素数5〜10の鎖状若しくは環状の脂肪族二塩基酸と炭素数1〜15の1価アルコールとの二塩基酸エステル、ジオール若しくは水酸基を3〜20個有するポリオールと炭素数6〜20の脂肪酸とのエステル、又は、一般式(15)で表されるポリビニルエーテルからなる含酸素油を含有し、HFC−32及びHFC−125から選ばれる少なくとも1種の作動媒体と共に用いられることを特徴とするランキンサイクル発電のタービン用潤滑油(以下、「本発明の潤滑油」という。)を提供する。
また、本発明は、上記本発明の潤滑油と、HFC−32及びHFC−125から選ばれる少なくとも1種の作動媒体と、を含有することを特徴とするランキンサイクル発電のタービン用作動流体組成物(以下、「本発明の作動流体組成物」という。)を提供する。
本発明の潤滑油及び作動流体組成物は低温排熱回収発電装置に好ましく用いられる。
本発明によれば、ランキンサイクル発電の作動媒体として用いられる非塩素系ハロゲン化炭化水素に対して良好な相溶性を示し、且つ、潤滑性および熱安定性に優れるタービン用潤滑油、並びにその潤滑油を用いた作動流体組成物が提供される。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明のランキンサイクル発電のタービン用潤滑油は、含酸素油を含有し、炭素数1〜2のフッ化炭化水素及び炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素から選ばれる少なくとも1種の作動媒体と共に用いられる。
本発明において用いられる含酸素油としては、(1)エステル、(2)ポリアルキレングリコール、(3)ポリビニルエーテルなどが挙げられる。本発明で用いられる含酸素油は天然物又は合成物のいずれであってもよい。例えば、エステルは、動植物由来の油脂から抽出されるものであってもよく、合成エステルであってもよい。
(1)エステルとしては、例えば、(1−1)芳香族エステル、(1−2)二塩基酸エステル、(1−3)ポリオールエステル、(1−4)コンプレックスエステル、(1−5)炭酸エステル及びこれらの混合物等が例示される。
(1−1)芳香族エステルとしては、1〜6価、好ましくは1〜4価、より好ましくは1〜3価の芳香族カルボン酸と、炭素数1〜18、好ましくは1〜12の脂肪族アルコールとのエステル等が挙げられる。
1〜6価の芳香族カルボン酸としては、具体的には、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、炭素数1〜18の脂肪族アルコールとしては、直鎖状のものでも分枝状のものであってもよく、具体的には、メタノール、エタノール、直鎖状又は分枝状のプロパノール、直鎖状又は分枝状のブタノール、直鎖状又は分枝状のペンタノール、直鎖状又は分枝状のヘキサノール、直鎖状又は分枝状のヘプタノール、直鎖状又は分枝状のオクタノール、直鎖状又は分枝状のノナノール、直鎖状又は分枝状のデカノール、直鎖状又は分枝状のウンデカノール、直鎖状又は分枝状のドデカノール、直鎖状又は分枝状のトリデカノール、直鎖状又は分枝状のテトラデカノール、直鎖状又は分枝状のペンタデカノール、直鎖状又は分枝状のヘキサデカノール、直鎖状又は分枝状のヘプタデカノール、直鎖状又は分枝状のオクタデカノール及びこれらの混合物等が挙げられる。
上記の芳香族カルボン酸と脂肪族アルコールとを用いて得られる芳香族エステルとしては、具体的には、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシル、フタル酸ジトリデシル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリノニル、トリメリット酸トリデシル、トリメリット酸トリドデシル、トリメリット酸トリトリデシル等が挙げられる。なお、当然のことながら、2価以上の芳香族カルボン酸を用いた場合、1種の脂肪族アルコールからなる単純エステルであってもよいし、2種以上の脂肪族アルコールからなる複合エステルであってもよい。
(1−2)二塩基酸エステルとしては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の炭素数5〜10の鎖状若しくは環状の脂肪族二塩基酸と、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール等の直鎖又は分枝の炭素数1〜15の1価アルコールとのエステル及びこれらの混合物が好ましく用いられ、より具体的には、ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ2−エチルヘキシルセバケート、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と炭素数4〜9の1価アルコールとのジエステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸と炭素数4〜9の1価アルコールとのジエステル及びこれらの混合物等が挙げられる。
(1−3)ポリオールエステルとしては、ジオールあるいは水酸基を3〜20個有するポリオールと、炭素数6〜20の脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。ここで、ジオールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2ーメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。ポリオールとしては、具体的には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜20量体)、1,3,5ーペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等の糖類及びこれらの部分エーテル化物、並びにメチルグルコシド(配糖体)並びにが挙げられる。これらの中でもポリオールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)等のヒンダードアルコールが好ましい。
ポリオールエステルに用いられる脂肪酸において、その炭素数は特に制限されないが、通常、炭素数1〜24のものが用いられる。
炭素数1〜24の脂肪酸の中でも、潤滑性の点から炭素数3以上のものが好ましく、炭素数4以上のものがより好ましく、炭素数5以上のものがさらに好ましく、炭素数10以上のものが特に好ましい。
また、作動媒体との相溶性の点から、炭素数18以下のものが好ましく、炭素数12以下のものがより好ましく、炭素数9以下のものがさらに好ましい。
また、かかる脂肪酸は直鎖状脂肪酸、分枝状脂肪酸のいずれであってもよいが、潤滑性の点からは直鎖状脂肪酸が好ましく、加水分解安定性の点からは分枝状脂肪酸が好ましい。
さらに、かかる脂肪酸は飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。
脂肪酸としては、具体的には、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸等が挙げられ、これらの脂肪酸は直鎖状脂肪酸、分枝状脂肪酸のいずれであってもよく、さらにはα炭素原子が4級炭素原子である脂肪酸(ネオ酸)であってもよい。
これらの中でも、吉草酸(n−ペンタン酸)、カプロン酸(n−ヘキサン酸)、エナント酸(n−ヘプタン酸)、カプリル酸(n−オクタン酸)、ペラルゴン酸(n−ノナン酸)、カプリン酸(n−デカン酸)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)、イソペンタン酸(3−メチルブタン酸)、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸が好ましく用いられる。
なお、本発明にかかるポリオールエステルは、2個以上のエステル基を有する限りにおいて、ポリオールが有する水酸基のうちの一部がエステル化されずに残っている部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、さらには部分エステルと完全エステルの混合物であってもよいが、完全エステルであることが好ましい。
(1−4)コンプレックスエステルとは、脂肪酸及び二塩基酸と、1価アルコール及びポリオールとのエステルのことであり、脂肪酸、二塩基酸、1価アルコール、ポリオールとしては、上記二塩基酸エステル及びポリオールエステルの説明において例示された脂肪酸、二塩基酸、1価アルコール及びポリオールが使用できる。
(1−5)炭酸エステルとは、分子内に下記式(1)で表される炭酸エステル結合を有する化合物である。なお、式(1)で表される炭酸エステル結合の個数は一分子当たり1個でもよく2個以上でもよい。
Figure 0005297138
炭酸エステルを構成するアルコールとしては、上記二塩基酸エステル及びポリオールエステルの説明において例示された1価アルコール、ポリオール等、並びにポリグリコールやポリオールにポリグリコールを付加させたものを使用することができる。
また、炭酸と脂肪酸及び/又は二塩基酸とから得られる化合物を使用してもよい。
また、当然のことながら、エステルを用いる場合は、単一の構造の化合物を単独で用いてもよく、構造の異なる化合物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらには、二塩基酸エステルの中でも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸エステルは、作動媒体との相溶性及び熱・加水分解安定性の点からより好ましい。
本発明において好ましく用いられる二塩基酸エステルの具体例としては、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール及びノナノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の1価アルコールと、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の二塩基酸とから得られる二塩基酸エステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。
本発明にかかる二塩基酸エステルにおいては、潤滑油組成物の低温特性や作動媒体との相溶性が向上する傾向にあることから、当該二塩基酸エステルを構成する1価アルコールが2種以上であることが好ましい。
なお、2種以上の1価アルコールから構成される二塩基酸エステルとは、二塩基酸と1種のアルコールとのエステルの2種以上の混合物、並びに二塩基酸と2種以上の混合アルコールとのエステルを包含するものである。
また、ポリオールエステルの中でも、より加水分解安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)等のヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン及びペンタエリスリトールのエステルがさらに好ましく、作動媒体との相溶性及び加水分解安定性に特に優れることからペンタエリスリトールのエステルが最も好ましい。
本発明において好ましく用いられるポリオールエステルの具体例としては、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン及びペンタエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールとから得られるジエステル、トリエステル、テトラエステル及びこれらの混合物が挙げられる。
本発明にかかるポリオールエステルにおいては、潤滑油の低温特性や作動媒体との相溶性が向上する傾向にあることから、ポリオールエステルを構成する脂肪酸が2種以上であることが好ましい。
なお、2種以上の脂肪酸で構成されるポリオールエステルとは、ポリオールと1種の脂肪酸とのエステルの2種以上の混合物、並びにポリオールと2種以上の混合脂肪酸とのエステルを包含するものである。
また、炭酸エステルの中でも、下記一般式(2)で表される構造を有するものが好ましい。
(XO)−B−[O−(AO)−CO−O−(AO)−Y (2)
[式(2)中、Xは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は下記一般式(3):
−(OA (3)
(式(3)中、Yは水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、eは1〜50の整数を示す)
で表される基を表し、A及びAは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Yは水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、Bは水酸基3〜20個を有する化合物の残基を表し、aは1〜20、bは0〜19で且つa+bが3〜20となる整数を表し、cは0〜50の整数を表し、dは1〜50の整数を表す。]
上記一般式(2)において、Xは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は上記式(3)で表される基を表す。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。
また、当該アルキル基は直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。
炭素数1〜24のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝ペンチル基、直鎖又は分枝ヘキシル基、直鎖又は分枝ヘプチル基、直鎖又は分枝オクチル基、直鎖又は分枝ノニル基、直鎖又は分枝デシル基、直鎖又は分枝ウンデシル基、直鎖又は分枝ドデシル基、直鎖又は分枝トリデシル基、直鎖又は分枝テトラデシル基、直鎖又は分枝ペンタデシル基、直鎖又は分枝ヘキサデシル基、直鎖又は分枝ヘプタデシル基、直鎖又は分枝オクタデシル基、直鎖又は分枝ノナデシル基、直鎖又は分枝イコシル基、直鎖又は分枝ヘンイコシル基、直鎖又は分枝ドコシル基、直鎖又は分枝トリコシル基、直鎖又は分枝テトラコシル基等が挙げられる。
また、シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
上記一般式(2)においてAで表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基等が挙げられる。
上記一般式(2)におけるYは、水素原子、アルキル基又はシクロアルキルキル基を表す。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。また、当該アルキル基は直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。
炭素数1〜24のアルキル基としては、上記Xの説明において例示されたアルキル基が挙げられる。
また、シクロアルキル基としては、具体的には例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
で表される基の中でも、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基又はiso−ドデシル基のうちのいずれかであることがより好ましい。また、eは1〜50の整数を表す。
また、Xで表される基としては、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は上記一般式(3)で表される基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基、iso−ドデシル基又は一般式(3)で表される基のうちのいずれかであることがより好ましい。
Bを残基とし3〜20個の水酸基を有する化合物としては、具体的には、前述のポリオールが挙げられる。
また、A及びAは同一でも異なっていても良く、それぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を表す。当該アルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基等が挙げられる。
また、Yは、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。
また、当該アルキル基は直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。
炭素数1〜24のアルキル基としては、具体的には、Xの説明において例示されたアルキル基が挙げられる。
また、シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
これらの中でもYで表される基としては、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基又はiso−ドデシル基のうちのいずれかであることがより好ましい。
上記一般式(2)及び(3)において、c、d及びeはポリオキシアルキレン鎖の重合度を表すが、分子中のポリオキシアルキレン鎖は同一でも異なっていてもよい。
また、上記一般式(2)で表される炭酸エステルが複数の異なるポリオキシアルキレン鎖を有する場合、オキシアルキレン基の重合形式に特に制限はなく、ランダム共重合していてもブロック共重合していてもよい。
本発明に用いられる炭酸エステルの製造法は任意であるが、例えば、ポリオール化合物にアルキレンオキサイドを付加せしめてポリアルキレングリコールポリオールエーテルを製造し、これとクロロフォーメートとを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、あるいは金属ナトリウム等のアルカリの存在下、0〜30℃で反応せしめることにより得られる。
あるいはポリアルキレングリコールポリオールエーテルに、炭酸ジエステル、ホスゲン等の炭酸の供給源を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド又は金属ナトリウム等のアルカリの存在下、80〜150℃で反応せしめることにより得られる。この後、必要に応じて遊離の水酸基をエーテル化せしめる。
上記の原料より得られた生成物を精製して副生成物や未反応物を除去してもよいが、少量の副生成物や未反応物は、本発明の潤滑油の優れた性能を損なわない限り、存在していても支障はない。
本発明において炭酸エステルを用いる場合は、単一の構造の化合物を単独で用いてもよく、構造の異なる化合物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明にかかる炭酸エステルの分子量は特に限定されるものではないが、所定の動粘度を確保する点から、数平均分子量が200〜4000のものが好ましく使用され、数平均分子量が300〜3000のものがより好ましく使用される。
さらに、本発明にかかる炭酸エステルの動粘度は、100℃において好ましくは2〜150mm/s、より好ましくは4〜100mm/sである。
本発明の潤滑油に使用される(2)ポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
−〔(OR−OR (4)
[式(4)中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基又は水酸基を2〜8個有する化合物の残基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアシル基を表し、fは1〜80の整数を表し、gは1〜8の整数を表す。]
上記一般式(4)において、R、Rで表されるアルキル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、直鎖状又は分枝状のブチル基、直鎖状又は分枝状のペンチル基、直鎖状又は分枝状のヘキシル基、直鎖状又は分枝状のヘプチル基、直鎖状又は分枝状のオクチル基、直鎖状又は分枝状のノニル基、直鎖状又は分枝状のデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
このアルキル基の炭素数が10を超えると作動媒体との相溶性が低下する傾向にある。好ましいアルキル基の炭素数は1〜6である。
また、R、Rで表されるアシル基のアルキル基部分は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アシル基のアルキル基部分の具体例としては、上記アルキル基の具体例として例示されたアルキル基のうち炭素数1〜9のものが挙げられる。
このアシル基の炭素数が10を超えると作動媒体との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。好ましいアシル基の炭素数は2〜6である。
、Rで表される基が、ともにアルキル基である場合、あるいはともにアシル基である場合、R、Rで表される基は同一でも異なっていてもよい。
さらにgが2以上の場合は、同一分子中の複数のR、Rで表される基は同一でも異なっていてもよい。
で表される基が水酸基を2〜8個有する化合物の残基である場合、この化合物は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。水酸基を2個有する化合物としては、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2ーメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
また、水酸基を3〜8個有する化合物としては、具体的には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜6量体)、1,3,5ーペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等の糖類、並びにこれらの部分エーテル化物、及びメチルグルコシド(配糖体)等が挙げられる。
上記一般式(4)で表されるポリオキシアルキレングリコールの中でも、R、Rのうちの少なくとも1つがアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であることが好ましく、特にメチル基であることが作動媒体との相溶性の点から好ましい。
さらには、熱・化学安定性の点から、RとRとの双方がアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であることが好ましく、とりわけ双方がメチル基であることが好ましい。
また、製造容易性及びコストの点から、R又はRのいずれか一方がアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であり、他方が水素原子であることが好ましく、とりわけ一方がメチル基であり、他方が水素原子であることが好ましい。
上記一般式(4)中のRは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、このようなアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、ORで表される繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。同一分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよく、また、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよい。
上記一般式(4)で表されるポリオキシアルキレングリコールの中でも、作動媒体との相溶性及び粘度−温度特性の観点からは、オキシエチレン基(EO)とオキシプロピレン基(PO)とを含む共重合体が好ましく、このような場合、焼付荷重、粘度−温度特性の点から、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との総和に占めるオキシエチレン基の割合(EO/(PO+EO))が0.1〜0.8の範囲にあることが好ましく、0.3〜0.6の範囲にあることがより好ましい。
また、吸湿性や熱・酸化安定性の点ではEO/(PO+EO)の値が0〜0.5の範囲にあることが好ましく、0〜0.2の範囲にあることがより好ましく、0(すなわちプロピレンオキサイド単独重合体)であることが最も好ましい。
上記一般式(4)中のfは1〜80の整数、gは1〜8の整数である。例えばRがアルキル基又はアシル基である場合、gは1である。
また、Rが水酸基を2〜8個有する化合物の残基である場合、gは当該化合物が有する水酸基の数となる。
また、fとgとの積(f×g)については特に制限されないが、前記した冷凍機用潤滑油としての要求性能をバランスよく満たすためには、f×gの平均値が6〜80となるようにすることが好ましい。
上記ポリオキシアルキレングリコールの中でも、下記一般式(5)で表されるポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテル、並びに下記一般式(6)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテルが経済性及び前述の効果の点で好適であり、また、下記一般式(7)で表されるポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル、さらには下記一般式(8)で表されるポリオキシプロピレングリコールモノメチルエーテル、下記一般式(9)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールモノメチルエーテル、下記一般式(10)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル、下記一般式(11)で表されるポリオキシプロピレングリコールジアセテートが、経済性等の点で好適である。
CHO−(CO)−CH (5)
(式中、hは6〜80の数を表す。)
CHO−(CO)−(CO)−CH (6)
(式中、i及びjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6〜80となる数を表す。)
O−(CO)−H (7)
(式中、kは6〜80の数を示す。)
CHO−(CO)−H (8)
(式中、lは6〜80の数を表す。)
CHO−(CO)−(CO)−H (9)
(式中、m及びnはそれぞれ1以上であり且つmとnとの合計が6〜80となる数を表す。)
O−(CO)−(CO)−H (10)
(式中、m及びnはそれぞれ1以上であり且つmとnとの合計が6〜80となる数を表す。)
CHCOO−(CO)−COCH (11)
(式中、lは6〜80の数を表す。)
また、本発明においては、上記ポリオキシアルキレングリコールとして、一般式(12)で表される構成単位を少なくとも1個有するポリオキシアルキレングリコール誘導体を使用することができる。
Figure 0005297138

[式(12)中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基又は下記一般式(13):
Figure 0005297138

(式(13)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基又は炭素数2〜20のアルコキシアルキル基を表し、R10は炭素数2〜5のアルキレン基、アルキル基を置換基として有する総炭素数2〜5の置換アルキレン基又はアルコキシアルキル基を置換基として有する総炭素数4〜10の置換アルキレン基を表し、rは0〜20の整数を表し、R13は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表す)で表される基を表し、R〜R11の少なくとも1つが一般式(13)で表される基である。]
上記一般式(12)中、R〜Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基又は上記一般式(13)で表される基を表すが、炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基又はアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又はアルキルアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基等があげられる。これらの1価の炭化水素基の中でも、炭素数6以下の1価の炭化水素基、特に炭素数3以下のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
また、上記一般式(13)において、R及びRはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基又は炭素数2〜20のアルコキシアルキル基を表すが、これらの中でも炭素数3以下のアルキル基又は炭素数6以下のアルコキシアルキル基が好ましい。炭素数3以下のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
また、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基としては、具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、sec−ブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、ペントキシメチル基(すべての異性体を含む)、メトキシエチル基(すべての異性体を含む)、エトキシエチル基(すべての異性体を含む)、プロポキシエチル基(すべての異性体を含む)、ブトキシエチル基(すべての異性体を含む)、メトキシプロピル基(すべての異性体を含む)、エトキシプロピル基(すべての異性体を含む)、プロポキシプロピル基(すべての異性体を含む)、メトキシブチル基(すべての異性体を含む)、エトキシブチル基(すべての異性体を含む)、メトキシペンチル基(すべての異性体を含む)等が挙げられる。
上記一般式(13)中、R10は炭素数2〜5のアルキレン基、アルキル基を置換基として有する総炭素数2〜5の置換アルキレン基又はアルコキシアルキル基を置換基として有する総炭素数4〜10の置換アルキレン基、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基及び総炭素数6以下の置換エチレン基を表す。
炭素数2〜4のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
また、総炭素数6以下の置換エチレン基としては、具体的には1−(メトキシメチル)エチレン基、2−(メトキシメチル)エチレン基、1−(メトキシエチル)エチレン基、2−(メトキシエチル)エチレン基、1−(エトキシメチル)エチレン基、2−(エトキシメチル)エチレン基、1−メトキシメチル−2−メチルエチレン基、1,1−ビス(メトキシメチル)エチレン基、2,2−ビス(メトキシメチル)エチレン基、1,2−ビス(メトキシメチル)エチレン基、1−メチル−2−メトキシメチルエチレン基、1−メトキシメチル−2−メチルエチレン基、1−エチル−2−メトキシメチルエチレン基、1−メトキシメチル−2−エチルエチレン基、1−メチル−2−エトキシメチルエチレン基、1−エトキシメチル−2−メチルエチレン基、1−メチル−2−メトキシエチルエチレン基、1−メトキシエチル−2−メチルエチレン基等が挙げられる。
上記一般式(13)中、R11は炭素数の1〜10の1価の炭化水素基を表すが、当該炭化水素基としては、具体的には、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数2〜10の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基又はアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又はアルキルアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数6以下の1価の炭化水素基が好ましく、特に炭素数3以下のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
上記一般式(12)中、R〜Rのうち少なくとも1つは上記一般式(13)で表される基である。特に、R又はRはのいずれか一つが上記一般式(13)で表される基であり、且つR又はRの残りの一つ及びR、Rがそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であることが好ましい。
本発明において好ましく用いられる、上記一般式(12)で表される構成単位を有するポリオキシアルキレングリコールは、一般式(12)で表される構成単位のみからなる単独重合体;一般式(12)で表され且つ構造の異なる2種以上の構成単位からなる共重合体、並びに一般式(12)で表される構成単位と他の構成単位、例えば下記一般式(14)で表される構成単位からなる共重合体の三種類に大別することができる。上記単独重合体の好適例は、一般式(12)で表される構成単位Aを1〜200個有するとともに、末端基がそれぞれ水酸基、炭素数1〜10のアシルオキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基あるいはアリーロキシ基からなるものを挙げることができる。
Figure 0005297138

[式(14)中、R12〜R15は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。]
一方、共重合体の好適例は、一般式(12)で表される二種類の構成単位A、Bをそれぞれ1〜200個有するか、あるいは一般式(12)で表される構成単位Aを1〜200個と一般式(12)で表される構成単位Cを1〜200個有するとともに、末端基がそれぞれ水酸基、炭素数1〜10のアシルオキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基あるいはアリーロキシ基からなるものを挙げることができる。
これらの共重合体は、構成単位Aと構成単位B(あるいは構成単位C)との交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合体あるいは構成単位Aの主鎖に構成単位Bがグラフト結合したグラフト共重合体のいずれの重合形式であってもよい。
また、本発明において用いられる(3)ポリビニルエーテルとしては、例えば下記一般式(15)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系化合物が挙げられる。
Figure 0005297138

[式(15)中、R16〜R18は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R19は炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R20は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、sはその平均値が0〜10の数を表し、R16〜R20は構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよく、また一般式(15)で表される構成単位が複数のR19Oを有するとき、複数のR19Oは同一でも異なっていてもよい。]
また、上記一般式(15)で表される構成単位と、下記一般式(16)で表される構成単位とを有するブロック共重合体又はランダム共重合体からなるポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
Figure 0005297138

[式(16)中、R21〜R24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R21〜R24は構成単位毎に同一でも異なっていてもよい。]
上記一般式(15)中のR16〜R18はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基(好ましくは1〜4の炭化水素基)を表し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。かかる炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基等のアリールアルキル基、等が挙げられるが、R15〜R18としては水素原子が好ましい。
一方、上記一般式(15)中のR19は、炭素数1〜10(好ましくは2〜10)の2価の炭化水素基又は炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表す。炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、フェニルエチレン基、1,2−プロピレン基、2−フェニル−1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種ヘプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基等の2価の脂肪族鎖式炭化水素基;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素に2個の結合部位を有する脂環式炭化水素基;各種フェニレン基、各種メチルフェニレン基、各種エチルフェニレン基、各種ジメチルフェニレン基、各種ナフチレン基等の2価の芳香族炭化水素基;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等のアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分にそれぞれ1価の結合部位を有するアルキル芳香族炭化水素基;キシレン、ジエチルベンゼン等のポリアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に結合部位を有するアルキル芳香族炭化水素基、等が挙げられる。これらの中でも炭素数2〜4の脂肪族鎖式炭化水素基が特に好ましい。
また、炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基の具体例としては、メトキシメチレン基、メトキシエチレン基、メトキシメチルエチレン基、1,1−ビスメトキシメチルエチレン基、1,2−ビスメトキシメチルエチレン基、エトキシメチルエチレン基、(2−メトキシエトキシ)メチルエチレン基、(1−メチル−2−メトキシ)メチルエチレン基等を好ましく挙げることができる。なお、上記一般式(15)中のsはR19Oの繰り返し数を表し、その平均値が0〜10、好ましくは0〜5の範囲の数である。同一の構成単位内にR19Oが複数ある場合には、複数のR19Oは同一でも異なっていてもよい。
さらに、上記一般式(15)におけるR20は炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基を表すが、かかる炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種プロピルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基、各種プロピルフェニル基、各種トリメチルフェニル基、各種ブチルフェニル基、各種ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基、各種フェニルプロピル基、各種フェニルブチル基等のアリールアルキル基、等が挙げられる。なお、R22〜R26は構成単位毎に同一であっても異なっていてもよい。
本発明にかかる(3)ポリビニルエーテルが上記一般式(15)で表される構成単位のみからなる単独重合体である場合、その炭素/酸素原子数比は4.2〜7.0の範囲にあるものが好ましい。
当該原子数比が4.2未満であると吸湿性が過剰に高くなり、また、7.0を超えると作動媒体との相溶性が低下する傾向にある。
上記一般式(16)において、R21〜R24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、上記一般式(15)中のR20の説明において例示された炭化水素基が挙げられる。
なお、R21〜R24は構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。
本発明にかかるポリビニルエーテルが一般式(15)で表される構成単位と一般式(16)で表される構成単位とを有するブロック共重合体又はランダム共重合体である場合、その炭素/酸素原子数比は4.2〜7.0の範囲にあることが好ましい。
当該原子数比が4.2未満であると吸湿性が過剰に高くなり、また、7.0を超えると作動媒体との相溶性が低下する傾向にある。
さらに本発明においては、上記一般式(15)で表される構成単位のみからなる単独重合体と、上記一般式(15)で表される構成単位と上記一般式(16)で表される構成単位とからなるブロック共重合体又はランダム共重合体と、の混合物も使用することができる。これらの単独重合体及び共重合体は、それぞれ対応するビニルエーテル系モノマーの重合、及び対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーと対応するビニルエーテル系モノマーとの共重合により製造することができる。
本発明に用いられるポリビニルエーテルとしては、その末端構造のうちの一方が、下記一般式(17)又は(18)で表されるものであり、且つ他方が下記一般式(19)又は(20)で表される構造を有するもの;及びその末端の一方が、上記一般式(17)又は(18)で表され、且つ他方が下記一般式(21)で表される構造を有するものが好ましい。
Figure 0005297138

[式(17)中、R25〜R27は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R28は炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R29は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、tはその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(17)で表される末端構造が複数のR28Oを有するとき、複数のR28Oはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
Figure 0005297138

[式(18)中、R30〜R33は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
Figure 0005297138

[式(19)中、R34〜R36は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R37は炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R38は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、tはその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(19)で表される末端構造が複数のR37Oを有するとき、複数のR37Oはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
Figure 0005297138

[式(20)中、R39〜R42は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
Figure 0005297138

[式(21)中、R43〜R45は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。]
このようなポリビニルエーテルの中でも、次に挙げるものが特に好適である。
(1)末端の一方が一般式(17)又は(18)で表され、他方が一般式(19)又は(20)で表される構造を有しており、一般式(15)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(2)一般式(15)で表される構成単位のみを有するものであって、その末端の一方が一般式(17)で表され、他方が一般式(18)で表される構造を有しており、一般式(15)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(3)末端の一方が一般式(17)又は(18)で表され、他方が一般式(19)で表される構造を有しており、一般式(15)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(4)一般式(15)で表される構成単位のみを有するものであって、その末端の一方が一般式(17)で表され、他方が一般式(20)で表される構造を有しており、一般式(15)におけるR16〜R18がいずれも水素原子であり、sが0〜4の数であり、R19が炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つR20が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
また、本発明においては、上記一般式(15)で表される構成単位を有し、その末端の一方が一般式(17)で表され、かつ他方が下記一般式(22)で表される構造を有するポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
Figure 0005297138

[式(22)中、R46〜R48は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R49及びR51は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜10の2価の炭化水素基を表し、R50及びR52は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜10の炭化水素基を表し、u及びvは同一でも異なっていてもよく、それぞれその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(22)で表される末端構造が複数のR49O又はR51Oを有するとき、複数のR49O又はR51Oは同一であっても異なっていてもよい。]
さらに、本発明においては、下記一般式(23)又は(24)で表される構成単位からなり、かつ重量平均分子量が300〜5,000であって、末端の一方が下記一般式(25)又は(26)で表される構造を有するアルキルビニルエーテルの単独重合物又は共重合物からなるポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
Figure 0005297138

[式(23)中、R53は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
Figure 0005297138

[式(24)中、R54は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
Figure 0005297138

[式(25)中、R55は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R56は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
Figure 0005297138

[式(26)中、R57は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
本発明においては、含酸素油より選ばれる1種のみを単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を組み合わせて用いても良い。
本発明の潤滑油(本発明の作動流体組成物に含まれる潤滑油を包含する。)は、上記の含酸素油のみからなるものであってもよいが、その各種性能を更に改善する目的で、以下に示す各種添加剤を更に含有することができる。
本発明の潤滑油においては、その熱・加水分解安定性及び摩擦特性をさらに改良するために、(A)エポキシ化合物を配合することが好ましい。
エポキシ化合物の好ましい例としては、下記(A1)〜(A8)に示す化合物が挙げられる。
(A1)フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物
(A2)アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物
(A3)グリシジルエステル型エポキシ化合物
(A4)アリルオキシラン化合物
(A5)アルキルオキシラン化合物
(A6)脂環式エポキシ化合物
(A7)エポキシ化脂肪酸モノエステル
(A8)エポキシ化植物油。
(A1)フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテル又はアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。
本発明でいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル等が好ましいものとして例示できる。
(A2)アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル等が例示できる。
(A3)グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジル−tert−ブチルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が例示できる。
(A4)アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレン等が例示できる。
(A5)アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサン等が例示できる。
(A6)脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3‘−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1‘−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサン等が例示できる。
(A7)エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコール又はフェノール、アルキルフェノールとのエステル等が例示できる。
特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニル及びブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
(A8)エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物等が例示できる。
(A)エポキシ化合物としては、上記(A1)〜(A8)成分のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、より熱・加水分解安定性及び摩擦特性を向上させることができることから、(A1)フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、(A3)グリシジルエステル型エポキシ化合物、(A6)脂環式エポキシ化合物、(A7)エポキシ化脂肪酸モノエステルが好ましく、(A3)グリシジルエステル型エポキシ化合物、(A6)脂環式エポキシ化合物がより好ましい。
本発明の潤滑油が(A)エポキシ化合物を含有する場合、その含有量は特に制限されないが、潤滑油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、好ましくは0.1〜5.0質量%、より好ましくは0.2〜2.0質量%である。
また、本発明の潤滑油においては、耐摩耗性を更に向上できる点から、リン系添加剤を更に含有してもよい。
(B)リン系添加剤としては、下記(B1)〜(B6)からなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物が好ましい。これらのリン化合物は、リン酸、チオリン酸又は亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
(B1)リン酸エステル、
(B2)酸性リン酸エステル、
(B3)チオリン酸エステル、
(B4)酸性リン酸エステルのアミン塩、
(B5)塩素化リン酸エステル及び
(B6)亜リン酸エステル。
(B1)リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等;
(B2)酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等;
(B3)チオリン酸エステルとしては、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート等、;
(B4)酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩等;
(B5)塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート等;
(B6)亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等、が挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
本発明の潤滑油における(B)リン系添加剤の含有量は、潤滑油全量基準で、0.01〜5質量%以下であることが好ましい。より具体的には、高水準の耐摩耗性が得られる点から、リン系添加剤の添加量は、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。また、含有量をこれ以上多くしても、含有量に見合う摩耗低減効果が得られず、却って安定性の低下又は腐食摩耗の発生の原因となり得ることから、リン系添加剤の含有量は、5質量%以下とするが、好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
また、本発明の潤滑油は、(C)ベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体をさらに含有することが好ましい。ベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体を含有せしめることで、耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果をより高めることができる。
ベンゾトリアゾール誘導体としては、アルキルベンゾトリアゾールや、(アルキル)アミノアルキルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
アルキルベンゾトリアゾールとしては、例えば、メチルベンゾトリアゾール(トリルトリアゾール)、ジメチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、エチルメチルベンゾトリアゾール、ジエチルベンゾトリアゾール又はこれらの混合物等が挙げられる。
(アルキル)アミノベンゾトリアゾールとしては、特に酸化防止性に優れるという点から、ジアルキルアミノアルキルベンゾトリアゾールやジアルキルアミノアルキルトリルトリアゾール又はこれらの混合物等が好ましく用いられる。
これらのアルキル基の炭素数は1〜12の直鎖又は分枝のアルキル基が好ましい。
本発明の潤滑油における(C)ベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体の含有量は任意であるが、潤滑油全量基準で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上である。0.001質量%未満の場合には、ベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体の含有による耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果が不十分となるおそれがある。また、ベンゾトリアゾール及び/又はその誘導体の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。1.0質量%を超える場合は、含有量に見合うだけの耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果が得られず経済的に不利となるおそれがある。
また、本発明の潤滑油は(D)油性剤を更に含有してもよい。(D)油性剤としては、(D1)エステル油性剤、(D2)1価アルコール油性剤、(D3)カルボン酸油性剤、(D4)エーテル油性剤、(D5)含窒素油性剤などが挙げられる。
(D1)エステル油性剤は、天然物(通常は動植物などに由来する天然油脂に含まれるもの)であっても合成物であってもよい。
本発明では、得られる潤滑油の安定性やエステル成分の均一性などの点から、(D1)エステル油性剤として合成エステルを用いることが好ましい。
(D1)エステル油性剤としての合成エステルは、アルコールとカルボン酸とを反応させることにより得られる。アルコールとしては、1価アルコールでも多価アルコールでもよい。また、カルボン酸としては、一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。
(D1)エステル油性剤を構成する1価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。
また、(D1)エステル油性剤を構成する多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。
また、(D1)エステル油性剤を構成する酸のうち、一塩基酸としては、通常炭素数2〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。
また、塩基酸としては、二塩基酸、トリメリット酸等が挙げられるが、作動媒体雰囲気下及び低温下での析出防止性の点から、二塩基酸であることが好ましい。
二塩基酸は鎖状二塩基酸、環状二塩基酸のいずれであってもよい。また、鎖状二塩基酸の場合、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。
鎖状二塩基酸としては、炭素数2〜16の鎖状二塩基酸が好ましい。
(D1)エステル油性剤を構成する酸としては、上述したように一塩基酸であっても多塩基酸であってもよいが、耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果がより優れる点から、一塩基酸が好ましい。
また、エステル油性剤におけるアルコールと酸との組み合わせは任意であって特に制限されない。
(D2)1価アルコール油性剤としては、上記(D1)エステル油性剤の説明において述べた1価アルコールが挙げられる。
1価アルコール油性剤の合計炭素数は、摩擦特性及び摩耗特性の向上の点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が最も好ましい。
また、合計炭素数が大き過ぎると作動媒体雰囲気下で析出しやすくなる恐れがあることから、合計炭素数は20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が最も好ましい。
(D3)カルボン酸油性剤としては、一塩基酸でも多塩基酸でもよい。
このようなカルボン酸としては、例えば、(D1)エステル油性剤の説明において述べた一塩基酸及び多塩基酸が挙げられ、中でも、摩擦特性及び摩耗特性の向上の点から一塩基酸が好ましい。
また、カルボン酸油性剤の合計炭素数は、摩擦特性及び摩耗特性の向上の点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が最も好ましい。また、カルボン酸油性剤の合計炭素数が大き過ぎると作動媒体雰囲気下で析出しやすくなる恐れがあることから、合計炭素数は20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が最も好ましい。
(D4)エーテル油性剤としては、3〜6価の脂肪族多価アルコールのエーテル化物、3〜6価の脂肪族多価アルコールの二分子縮合物又は三分子縮合物のエーテル化物などが挙げられ、中でもグリセリンのジフェニルオクチルトリエーテル、トリメチロールプロパンのジ(メチルオキシイソプロピレン)ドデシルトリエーテル、ペンタエリスリトールのテトラヘキシルエーテル、ソルビトールのヘキサプロピルエーテル、ジグリセリンのジメチルジオクチルテトラエーテル、トリグリセリンのテトラ(メチルオキシイソプロピレン)デシルペンタエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサプロピルエーテル、トリペンタエリスリトールのペンタメチルオクチルヘキサエーテルが好ましく用いられる。
(D5)含窒素油性剤としては、(D5−1)アミン、(D5−2)アミンのカルボン酸塩及び(D5−3)アミドなどが挙げられる。
(D5−1)アミンとしては、(D5−1−1)モノアミン、(D5−1−2)ポリアミン、(D5−1−3)アルカノールアミン等が挙げられる。
(D5−1−1)モノアミンとしては、炭素数C1〜C23のアルキル基を有するアルキルアミン、炭素数C2〜C23のアルケニル基を有するモノアミン、芳香族置換アルキルアミン、炭素数C5〜C14のアルキル基を有するアルキルシクロアルキルアミン、等が挙げられる。また、このモノアミンには牛脂アミン等に代表されるような、油脂から誘導されるモノアミンも含まれる。
上記モノアミンの中でも、摩擦特性の点から、アルキルアミン及びアルケニルアミンが好ましく、モノアミンがより好ましい。
(D5−1−2)ポリアミンとしては、アミン基2〜6を有するN−アルキルまたはN−アルケニルアルキレンポリアミン等が挙げられる。また、ポリアミンには牛脂ポリアミン等に代表されるような、油脂から誘導されるポリアミンも含まれる。
(D5−1−3)アルカノールアミンとしては、炭素数C1〜C16のアルカノールを有するアルカノールアミン、および炭素数C1〜C4のアルキル基と炭素数C1〜C16のアルカノールを有する(ジ)アルキルアルカノールアミンまたはアルキル(ジ)アルカノールアミンが好ましい。
上記のアミンの中でも、摩擦特性の点から、モノアミン及びアルカノールアミンが好ましく、アルカノールアミンがより好ましい。
(D5−2)アミンのカルボン酸塩としては、上記のモノアミン、ポリアミン又はアルカノールアミンのカルボン酸塩が挙げられる。
(D5−2)アミンのカルボン酸を構成するアミンとしては、モノアミン又はアルカノールアミンが好ましく、モノアミンがより好ましい。更に、モノアミンの中でも、アルキルアミンが特に好ましい。
また、(D5−2)アミンのカルボン酸塩を構成するカルボン酸は、一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよい。
(D5−2)アミンのカルボン酸塩を構成するカルボン酸のうち、一塩基酸としては、通常炭素数2〜24の脂肪酸、より好ましくは炭素数8〜18の脂肪酸が用いられる。
脂肪酸は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、摩擦特性の点からは直鎖脂肪酸が好ましい。
また、脂肪酸は飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、安定性の点からは飽和脂肪酸が好ましい。
また、(D5−2)アミンのカルボン酸塩を構成する多塩基酸としては、二塩基酸、トリメリット酸等が挙げられるが、摩擦特性の点から、二塩基酸であることが好ましい。二塩基酸は鎖状二塩基酸、環状二塩基酸のいずれであってもよい。
また、鎖状二塩基酸の場合、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。これらの中でも、摩擦特性及び安定性の点から、鎖状二塩基酸が好ましく、炭素数2〜16の鎖状二塩基酸がより好ましい。
上述したカルボン酸の中でも、摩擦特性の点から、一塩基酸が好ましい。
(D5−2)アミンのカルボン酸塩の炭素数は特に制限されないが、摩擦特性の点から、アミンとカルボン酸との総炭素数が8〜60であることが好ましく、10〜50であることが好ましく、12〜40であることが更に好ましい。
(D5−3)アミドとしては、下記一般式(27)で表される構造を有するアミドが好ましい。
64−CONH−R65 (27)
[式(27)中、R64はアルキル基又はアルケニル基を示す。R64は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30アルケニル基を表わす。]
上記一般式(27)において、R64は、炭素数2〜23のアルキル基又は炭素数2〜23アルケニル基であることが好ましく、炭素数5〜18のアルキル基又は炭素数5〜18のアルケニル基であることがより好ましい。
また、上記一般式(27)において、R65は水素原子、アルカノール基、アルキル基又はアルケニル基を示すが、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
65がアルキル基である場合、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基が特に好ましい。
また、上記一般式(27)で表されるアミドにおいて、摩擦特性の点から、R64及びR65の総炭素数は3〜36であることが好ましく、11〜18であることが特に好ましい。
本発明においては、上記の含窒素油性剤の中でも、より高水準の摩擦特性が得られる点から、(D5−1)アミン及び(D5−3)アミドが好ましく、(D5−1)アミンがより好ましい。更に、(D5−1)アミンの中でも、モノアミン及びアルカノールアミンが好ましく、アルカノールアミンがより好ましい。
本発明の潤滑油においては、(D1)エステル油性剤、(D2)1価アルコール油性剤、(D3)カルボン酸油性剤、(D4)エーテル油性剤及び(D5)含窒素油性剤のうちの1種を単独で用いてもよく、又、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの油性剤の中でも、摩擦特性、摩耗特性、析出防止性、及び安定性を高水準でバランスよく達成できる点から、(D1)エステル油性剤が好ましい。(D1)エステル油性剤は、耐摩耗性及び摩擦特性を高水準で達成可能であるだけでなく、(D2)1価アルコール油性剤や(D4)エーテル油性剤よりも析出防止性に優れており、また、(D3)カルボン酸油性剤よりも安定性に優れている。
本発明の潤滑油における(D)油性剤の含有量は任意であるが、耐摩耗性及び摩擦特性の向上効果に優れる点から、組成物全量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。また、当該含有量は、作動媒体雰囲気下及び低温下での析出防止性、並びに潤滑油組成物の熱・酸化安定性により優れる点から、組成物全量を基準として、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
さらに、本発明における潤滑油に対して、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来公知の潤滑油添加剤、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛等の摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、シリコーン系等の消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等の添加剤を単独で、又は数種類組み合わせて配合することも可能である。
これらの添加剤の合計配合量は特に制限されないが、潤滑油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
さらに、本発明の潤滑油の水分含有量は特に限定されないが、潤滑油組成物全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。
特に潤滑油の熱・加水分解安定性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
さらにまた、本発明の潤滑油の酸価は特に限定されないが、ランキンサイクルシステムに用いられている金属への腐食を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。
なお、本発明でいう酸価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」に準拠して測定した値[mgKOH/g]を意味する。
さらにまた、本発明の潤滑油の灰分は特に限定されないが、本発明の潤滑油の熱・加水分解安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。
なお、本発明において、灰分とは、JIS K 2272「原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した値[ppm]を意味する。
上記構成を有する本発明の潤滑油、並びに当該潤滑油を含有する本発明の作動流体組成物を用いることによって、ランキンサイクルシステム内において、作動媒体と潤滑油との相溶性が良いことから凝縮器や蒸発器の熱交換表面への潤滑油の付着が少なく熱交換の効率が良好となる。また、ランキンサイクル発電システムにおける膨張タービン等の摺動部分の摩擦係数を十分に低下することができ、運転時のエネルギー損失を十分に削減することができることから、高水準の発電効率を達成する上で非常に有用である。
本発明の作動流体組成物は、本発明の潤滑油と、炭素数1〜2のフッ化炭化水素及び炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素から選ばれる少なくとも1種の作動媒体とを含有する。ランキンサイクル発電システムに導入された本発明の作動流体組成物は、通常、当該システム内において本発明の潤滑油と上記作動媒体との混合物として存在している。
炭素数1〜2のフッ化炭化水素としては、具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの作動媒体は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
炭素数3〜5の不飽和フッ化炭化水素としては、フルオロプロペンが好ましいものとして用いられ、具体的には例えば、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)、および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)のいずれかの1種または2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFO−1225ye、HFO−1234zeおよびHFO−1234yfから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
本発明の作動流体組成物において、本発明の潤滑油と上記作動媒体との配合割合は特に制限されないが、作動媒体100質量部に対して潤滑油が1〜500質量部であることが好ましく、2〜400質量部であることがより好ましい。
なお、本発明の潤滑油及び作動流体組成物は、ランキンサイクル発電用システムに好適に用いられるものであるが、ランキンサイクル発電以外の用途、例えばカリーナサイクル発電にも好適に使用することができる。また、サイクル構成機器のうち発電用タービンは、膨張タービンに制限されず、ねじ形膨張機あるいは往復動式の原動機を備えるサイクルにも好適に使用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1〜8、比較例1〜4]
実施例1〜8及び比較例1〜4においては、それぞれ以下に示す基油を用いて表1、2に示す組成を有する潤滑油を調製した。
(基油)
基油1:ペンタエリスリトールと2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸の等モル混合物とのテトラエステル(40℃における動粘度:68.5mm/s、流動点:−45℃)
基油2:1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と2−エチルヘキサノールとのジエステル(40℃における動粘度:15mm/s、流動点:−45℃)
基油3:ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:1000、40℃における動粘度:50mm/s、100℃における動粘度:10mm/s、流動点:−45℃)
基油4:ビニルエチルエーテルとビニルイソブチルエーテルとのランダム共重合体(ビニルエチルエーテルとビニルイソブチルエーテルとのモル比:7/1、数平均分子量:900、40℃における動粘度:68.5mm/s、100℃における動粘度:8mm/s、流動点:−45℃)
基油5:ナフテン系鉱油(40℃における動粘度:56.6mm/s、流動点:−3
0℃)
基油6:直鎖型アルキルベンゼン(40℃における動粘度27mm/s、流動点−45℃以下)
次に、実施例1〜8及び比較例1〜4の各潤滑油について以下の評価試験を実施した。なお、以下の試験においては、潤滑油と、下記R1又はR2に示す作動媒体とを、表1〜2に示すように組み合わせた。
(作動媒体)
R1:HFC−134a
R2:R410A
[作動媒体との相溶性試験]
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して、作動媒体4.5gに対して各試料油を0.5g配合し、作動媒体と試料油が10℃において相互に溶解しあっているか、分離または白濁しているかを観察した。得られた結果を表1、2に示す。
[潤滑性試験]
ASTM D 2670“FALEX WEAR TEST”に準拠して、試料油の温度100℃の条件下で、慣らし運転を150lb荷重の下に1分間行った後に、作動媒体10L/hを吹き込みながら、250lb荷重の下に2時間試験機を運転した。試験後のテストジャーナル(ピン)の摩耗量を測定し、各試料油の潤滑性を評価した。得られた結果を表1、2に示す。
[熱安定性試験]
オートクレーブ中に試料油90gと作動媒体10gと触媒(鉄、銅、アルミの各線)を封入し、175℃に加熱して1週間保持した。1週間後の試料油の酸価を測定し、熱安定性を評価した。得られた結果を表1、2に示す。
Figure 0005297138
Figure 0005297138
表1、2に示した結果から明らかなように、実施例1〜8の潤滑油は、HFC−134aまたはR410Aと共に用いた場合に、潤滑性、作動媒体相溶性、熱安定性の全ての性能がバランスよく優れていることがわかる。

Claims (4)

  1. 炭素数5〜10の鎖状若しくは環状の脂肪族二塩基酸と炭素数1〜15の1価アルコールとの二塩基酸エステル、ジオール若しくは水酸基を3〜20個有するポリオールと炭素数6〜20の脂肪酸とのエステル、又は、一般式(15)で表されるポリビニルエーテルからなる含酸素油を含有し、HFC−32及びHFC−125から選ばれる少なくとも1種の作動媒体と共に用いられることを特徴とするランキンサイクル発電のタービン用潤滑油。
    Figure 0005297138

    [式(15)中、R 16 〜R 18 は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R 19 は炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R 20 は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、sはその平均値が0〜10の数を表し、R 16 〜R 20 は構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよく、また一般式(15)で表される構成単位が複数のR 19 Oを有するとき、複数のR 19 Oは同一でも異なっていてもよい。]
  2. 低温排熱回収発電装置に用いられることを特徴とする、請求項に記載の潤滑油。
  3. 請求項に記載の潤滑油と、
    HFC−32及びHFC−125から選ばれる少なくとも1種の作動媒体と、
    を含有することを特徴とするランキンサイクル発電のタービン用作動流体組成物。
  4. 低温排熱回収発電装置に用いられることを特徴とする請求項に記載の作動流体組成物。
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