JP4863742B2 - 二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物 - Google Patents

二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物 Download PDF

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Description

本発明は冷凍機油組成物に関し、詳しくは二酸化炭素(炭酸ガス、CO)冷媒用として有用な冷凍機油組成物に関する。
近年のオゾン層破壊の問題から、従来冷凍機器の冷媒として使用されてきたCFC(クロロフルオロカーボン)およびHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が規制の対象となり、これらに代わってHFC(ハイドロフルオロカーボン)が冷媒として使用されつつある。しかしながら、このようなHFC冷媒においても、地球温暖化係数が高いなどの問題があり、これらのフロン系冷媒に代わる代替冷媒として、アンモニア、プロパン、イソブタン等あるいは二酸化炭素等の自然冷媒が考えられている。これらの中でも、二酸化炭素は毒性や可燃性の危険性が低いため有望視され、その用途としては自動車用エアーコンディショナー(カーエアコン)や給湯器が検討されている。
しかし、二酸化炭素は、冷凍機油の基材として用いられる鉱油、アルキルベンゼン、あるいはポリアルキレングリコール(PAG)類との相溶性が悪く、油戻り性の問題が指摘されている。そのため、例えば下記特許文献1に開示されているように、二酸化炭素冷媒用として、潤滑性、冷媒相溶性、安定性、電気絶縁性などに優れているとして、芳香族エステル、二塩基酸エステルおよびポリオールエステル(POE)などのエステル系基油を用いた冷凍機油が提案されている。
特開2000−104084号公報
しかし、エステル系基油を用いた冷凍機油の場合、二酸化炭素に対する相溶性は良好であるが、二酸化炭素の溶解による冷凍機油の粘度低下が大きく、冷凍機器の潤滑に必要な粘度を十分に保持することができない。
なお、冷凍機油の潤滑性を維持する方法としては、基油の粘度を高くして油膜厚さを保持することが考えられるが、この方法では、高粘度基油を使用することによるハンドリング性の低下や攪拌効率の低下などが問題となる。
また、冷凍機器の摩耗を防ぐ方法としては、トリクレジルホスフェート(TCP)などのリン酸エステル系添加剤を冷凍機油に添加することが考えられる。しかし、リン酸エステル系添加剤の添加はエステル系冷凍機油の安定性の低下の原因となり、冷凍機器の信頼性を向上させるための根本的な解決策とはなり得ない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素冷媒と共に用いた場合に、安定性に優れ、かつ基油の粘度を増加せずとも十分な潤滑性を示す冷凍機油組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、二酸化炭素冷媒用冷凍機油にチオリン酸エステルを含有せしめることによって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物は、所定の潤滑油基油と、チオリン酸エステルとを含有することを特緻とする。
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物において、上記潤滑油基油はエステルであることが好ましい。
また、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物は、上記潤滑油基油として、ジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルを、組成物全量基準で50質量%以上含有することが好ましい。
また、上記ジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルにおいては、構成脂肪酸に占める分岐脂肪酸の割合が25mol%以上であることが好ましい。
また、上記ジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルにおいては、構成脂肪酸に占める2−エチルへキサン酸および3,5,5−トリメチルへキサン酸の含有割合の合計が75mol%以上であることが好ましい。
また、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物は、エポキシ化合物をさらに含有することが好ましい。
また、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物は、チオリン酸エステル以外のリン系添加剤をさらに含有することが好ましい。
以上の通り、本発明によれば、二酸化炭素冷媒と共に用いた場合に、安定性に優れ、かつ基油の粘度を増加せずとも十分な潤滑性を示す冷凍機油組成物を提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明において用いられる潤滑油基油としては、含酸素系合成油、あるいは含酸素系合成油を主成分とし、副成分として炭化水素油を含有する混合基油が好ましく用いられる。含酸素系合成油としては、エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ケトンおよびポリフェニルエーテル等が挙げられ、中でもエステルが好ましい。また、炭化水素油としては、アルキルベンゼン、オレフィン重合体およびナフタレン化合物、アルキルベンゼン、鉱油等が挙げられる。
本発明において好ましく用いられるエステルとしては、例えば、ポリオールエステル、炭酸エステル、芳香族エステル、二塩基酸エステル、コンプレックスエステルおよびこれらの混合物等が例示される。
ポリオールエステルとしては、ジオールあるいは水酸基を3〜20個有するポリオールと、炭素数6〜20の脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。
ここで、ジオールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−へプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3一プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
また、ポリオールとしては、具体的には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜20量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルポース、セロビオース、マルトース、イツマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフイノース、ゲンチアノース、メレジトース等の糖類およびこれらの部分エーテル化物、並びにメチルグルコシド(配糖体)が挙げられる。これらの中でもポリオールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)等のヒンダードアルコールが好ましい。
また、ポリオールエステルを構成する脂肪酸の炭素数は特に制限されないが、通常、炭素数1〜24の脂肪酸が用いられる。炭素数1〜24の脂肪酸の中でも、潤滑性の点から炭素数3以上の脂肪酸が好ましく、炭素数4以上の脂肪酸がより好ましく、炭素数5以上の脂肪酸がさらに好ましく、炭素数10以上の脂肪酸が特に好ましい。また、冷媒との相溶性の点から、炭素数18以下の脂肪酸が好ましく、炭素数12以下の脂肪酸がより好ましく、炭素数9以下の脂肪酸がさらに好ましい。
また、ポリオールエステルを構成する脂肪酸は直鎖状脂肪酸または分枝状脂肪酸のいずれであってもよいが、潤滑性の点からは直鎖状脂肪酸が好ましく、加水分解安定性の点からは分枝状脂肪酸が好ましい。さらに、かかる脂肪酸は蝕和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。
ポリオールを構成する脂肪酸としては、具体的には、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、へキサデカン酸、へプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸等が挙げられ、これらの脂肪酸は直鎖状脂肪酸、分枝状脂肪酸のいずれであってもよく、さらにはα炭素原子が4級炭素原子である脂肪酸(ネオ酸)であってもよい。これらの中でも、青草酸(n−ペンタン酸)、カプロン酸(n−へキサン酸)、エナント酸(n−へプタン酸)、カプリル酸(n−オクタン酸)、ペラルゴン酸(n−ノナン酸)、カプリン酸(n−デカン酸)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)、イソペンタン酸(3−メチルブタン酸)、2一メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸および3,5,5−トリメチルへキサン酸が好ましく用いられる。
なお、本発明にかかるポリオールエステルは、2個以上のエステル基を有する限りにおいて、ポリオールが有する水酸基のうちの一部がエステル化されずに残っている部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、さらには部分エステルと完全エステルの混合物であってもよいが、完全エステルであることが好ましい。
また、当然のことながら、ポリオールエステルを用いる場合は、単一の構造の化合物を単独で用いてもよく、構造の異なる化合物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、炭酸エステルとは、分子内に下記式(1)で表される炭酸エステル結合を有する化合物である。なお、上記式(1)で表される炭酸エステル結合の個数は一分子当たり1個でもよく2個以上でもよい。
−O−CO−O− (1)
炭酸エステルを構成するアルコールとしては、1価アルコール、ポリオール並びにポリグリコールやポリオールにポリグリコールを付加させたものを使用することができる。また、炭酸と脂肪酸および/または二塩基酸とから得られる化合物を使用してもよい。
また、当然のことながら、炭酸エステルを用いる場合は、単一の構造の化合物を単独で用いてもよく、構造の異なる化合物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、芳香族エステルとしては、1〜6価、好ましくは1〜4価、より好ましくは1〜3価の芳香族カルボン酸と、炭素数1〜18、好ましくは1〜12の脂肪族アルコールとのエステル等が挙げられる。1〜6価の芳香族カルボン酸としては、具体的には、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの混合物等が挙げられる。また、炭素数1〜18の脂肪族アルコールとしては、直鎖状のものでも分枝状のものであってもよく、具体的には、メタノール、エタノール、直鎖状または分枝状のプロパノール、直鎖状または分枝状のブタノール、直鎖状または分枝状のペンタノール、直鎖状または分枝状のヘキサノール、直鎖状または分枝状のへプタノール、直鎖状または分枝状のオクタノール、直鎖状または分枝状のノナノール、直鎖状または分枝状のデカノール、直鎖状または分枝状のウンデカノール、直鎖状または分杖状のドデカノール、直鎖状または分枝状のトリデカノール、直鎖状または分枝状のテトラデカノール、直鎖状または分枝状のペンタデカノール、直鎖状または分枝状のへキサデカノール、直鎖状または分枝状のヘプタデカノール、直鎖状または分枝状のオクタデカノールおよびこれらの混合物等が挙げられる。
上記の芳香族カルボン酸と脂肪族アルコールとを用いて得られる芳香族エステルとしては、具体的には、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシル、フタル酸ジトリデシル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ(2−エチルへキシル)、トリメリット酸トリノニル、トリメリット酸トリデシル、トリメリット酸トリドデシル、トリメリット酸トリトリデシル等が挙げられる。なお、当然のことながら、2価以上の芳香族カルボン酸を用いた場合、1種の脂肪族アルコールからなる単純エステルであってもよいし、2種以上の脂肪族アルコールからなる複合エステルであってもよい。
また、当然のことながら、芳香族エステルを用いる場合は、単一の構造の化合物を単独で用いてもよく、構造の異なる化合物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、二塩基酸エステルとしては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スべリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,2−シクロへキサンジカルボン酸、4一シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸等の炭素数5〜10の鎖状若しくは環状の脂肪族二塩基酸と、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、へプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール等の直鎖または分枝の炭素数1〜15の1価アルコールとのエステルおよびこれらの混合物が好ましく用いられ、より具体的には、ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ2−エチルヘキシルセバケート、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸と炭素数4〜9の1価アルコールとのジエステル、4−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸と炭素数4〜9の1価アルコールとのジエステルおよびこれらの混合物等が挙げられる。
また、当然のことながら、二塩基酸エステルを用いる場合は、単一の構造の化合物を単独で用いてもよく、構造の異なる化合物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のエステルの中でも、冷媒との相溶性に優れることから、ポリオールエステル、炭酸エステルおよび二塩基酸エステルが好ましく、適度な相溶性が得られる点からポリオールエステルがさらに好ましい。
さらには、ポリオールエステルの中でも、より加水分解安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)等のヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトールのエステルがさらに好ましく、冷媒との適度な相溶性および加水分解安定性に特に優れることからジ−(ペンタエリスリトール)のエステルが最も好ましい。
本発明において好ましく用いられるポリオールエステルの具体例としては、青草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルへキサン酸および3,5,5−トリメチルへキサン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールと、から得られるジエステル、トリエステル、テトラエステルおよびこれらの混合物が挙げられる。
さらに、これらの中でも、カプリル酸(n−オクタン酸)、ペラルゴン酸(n−ノナン酸)、2−エチルヘキサン酸、および3,5,5−トリメチルへキサン酸から成る群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸と、ジ−(ペンタエリスリトール)とのエステルがより好ましく用いられる。
より具体的には、ジ−(ペンタエリスリトール)と、下記(A1)〜(A4)のうちのいずれかの酸とのエステルが例示される。なお、(A1)〜(A4)における脂肪酸の混合比はモル比である。
(A1)2−エチルへキサン酸と3,5,5−トリメチルへキサン酸との混合酸(混合比:2−エチルへキサン酸/3,5,5−トリメチルへキサン酸=1/1)
(A2)カプリル酸(n−オクタン酸)と2−エチルヘキサン酸とペラルゴン酸(n−ノナン酸)と3,5,5−トリメチルへキサン酸との混合酸(混合比:カプリル酸/2−エチルヘキサン酸/ペラルゴン酸/3,5,5−トリメチルへキサン酸=1/4/1/4)混合物
(A3)カプリル酸(n−オクタン酸)と3,5,5−トリメチルへキサン酸との混合酸(混合比:カプリル酸/3,5,5−トリメチルへキサン酸=1/4)
(A4)ペラルゴン酸(n−ノナン酸)と3,5,5−トリメチルへキサン酸との混合酸(混合比:ペラルゴン酸/3,5,5−トリメチルへキサン酸=1/4)。
かかるエステルは、冷媒が溶解した状態での潤滑性の観点から、分子量は大きいほうが好ましく、冷媒との相溶性の観点からは分子量は小さいほうが好ましい。また、エステルを構成する脂肪酸は、潤滑性の観点からは直鎖状脂肪酸が好ましく、一方、加水分解安定性および冷媒溶解性の観点からは分岐状脂肪酸が好ましい。
したがって、冷凍機油組成物として、ジ−(ペンタエリスリトール)と脂肪酸とのエステルを、組成物全量基準で50質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましい。また、ジ−(ペンタエリスリトール)と脂肪酸とのエステルにおいて、構成脂肪酸に占める分岐脂肪酸の割合が25mol%以上あることが好ましく、50mol%以上あることがより好ましい。
さらに、ジ−(ペンタエリスリトール)と脂肪酸とのエステルにおいて、構成脂肪酸に占める2−エチルへキサン酸および3,5,5−トリメチルへキサン酸の含有割合の合計が75mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい。
本発明で用いられるポリオールエステルにおいては、冷凍機油組成物の低温特性や冷媒との相溶性が向上する傾向にあることから、ポリオールエステルを構成する脂肪酸が2種以上であることが好ましい。なお、2種以上の脂肪酸で構成されるポリオールエステルとは、ポリオールと1種の脂肪酸とのエステルの2種以上の混合物、並びにポリオールと2種以上の混合脂肪酸とのエステルを包含するものである。
また、本発明で用いられるポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
−〔(OR−OR (2)
[式(2)中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基または水酸基を2〜8個有する化合物の残基を表し、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアシル基を表し、aは1〜80の整数を表し、bは1〜8の整数を表す。]
上記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレングリコールの中でも、冷媒相溶性および粘度−温度特性の観点からは、オキシエチレン基(EO)とオキシプロピレン基(PO)とを含む共重合体が好ましく、このような場合、焼付荷重、粘度−温度特性の点から、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との総和に占めるオキシエチレン基の割合(EO/(PO+EO))が0.1〜0.8の範囲にあることが好ましく、0.3〜0.6の範囲にあることがより好ましい。
また、吸湿性や熱酸化安定性の点ではEO/(PO+EO)の値が0〜0.5の範囲にあることが好ましく、0〜0.2の範囲にあることがより好ましく、0(すなわちプロピレンオキサイド単独重合体)であることが最も好ましい。
また、aとbとの積(a×b)については特に制限されないが、前記した冷凍機用潤滑油としての要求性能をバランスよく満たすためには、a×bの平均値が6〜80となるようにすることが好ましい。
また、本発明で用いられるポリビニルエーテルとしては、例えば下記一般式(3)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系化合物が挙げられる。
Figure 0004863742

[式(3)中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基または炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、cはその平均値が0〜10の数を表し、R〜Rは構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよく、また一般式(3)で表される構成単位が複数のROを有するとき、複数のROは同一でも異なっていてもよい。]
また、上記一般式(3)で表される構成単位と、下記一般式(4)で表される構成単位とを有するブロック共重合体またはランダム共重合体からなるポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
Figure 0004863742

[式(4)中、R〜R12は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R〜R12は構成単位毎に同一でも異なっていてもよい。]
本発明で用いられるポリビニルエーテルとしては、その末端のうちの一方が、下記
一般式(5)または(6)で表されるものであり、且つ他方が下記一般式(7)または(8)で表される構造を有するもの;および、その末端のうちの一方が、上記一般式(5)または(6)で表され、且つ他方が下記一般式(9)で表される構造を有するものが好ましい。
Figure 0004863742

[式(5)中、R13〜R15は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R16は炭素数1〜10の2価の炭化水素基または炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R17は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、dはその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(5)で表される末端構造が複数のR160を有するとき、複数のR160はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
Figure 0004863742

[式(6)中、R18〜R19は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
Figure 0004863742

[式(7)中、R22〜R24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R25は炭素数1〜10の2価の炭化水素基または炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を表し、R26は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、eはその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(7)で表される末端構造が複数のR250を有するとき、複数のR250はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
Figure 0004863742

[式(8)中、R27〜R30は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。]
Figure 0004863742

[式(9)中、R31〜R32は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表す。]
このようなポリビニルエーテルの中でも、次に挙げるものが特に好適である。
(1)末端の一方が一般式(5)または(6)で表され、他方が一般式(7)または(8)で表される構造を有しており、一般式(3)におけるR〜Rがいずれも水素原子であり、cが0〜4の数であり、Rが炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つRが炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(2)一般式(3)で表される構成単位のみを有するものであって、その末端の一方が一般式(5)で表され、他方が一般式(6)で表される構造を有しており、一般式(3)におけるR〜Rがいずれも水素原子であり、cが0〜4の数であり、Rが炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つRが炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(3)末端の一方が一般式(5)または(6)で表され、他方が一般式(7)で表される構造を有しており、一般式(3)におけるR〜Rがいずれも水素原子であり、cが0〜4の数であり、Rが炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つRが炭素数1〜20の炭化水素基であるもの;
(4)一般式(3)で表される構成単位のみを有するものであって、その末端の一方が一般式(5)で表され、他方が一般式(8)で表される構造を有しており、一般式(3)におけるR〜Rがいずれも水素原子であり、cが0〜4の数であり、Rが炭素数2〜4の2価の炭化水素基であり、且つRが炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
また、本発明においては、上記一般式(3)で表される構成単位を有し、その末端の一方が一般式(5)で表され、かつ他方が下記一般式(10)で表される構造を有するポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
Figure 0004863742

[式(10)中、R34〜R36は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R37およびR39は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜10の2価の炭化水素基を表し、R38およびR40は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜10の炭化水素基を表し、fおよびgは同一でも異なっていてもよく、それぞれその平均値が0〜10の数を表し、上記一般式(10)で表される末端構造が複数のR370またはR390を有するとき、複数のR370またはR390は同一であっても異なっていてもよい]
さらに、本発明においては、下記一般式(11)または(12)で表される構成単位からなり、かつ重量平均分子量が300〜5,000であって、末端の一方が下記一般式(13)または(14)で表される構造を有するアルキルビニルエーテルの単独重合物または共重合物からなるポリビニルエーテル系化合物も使用することができる。
Figure 0004863742

[式(11)中、R53は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
Figure 0004863742

[式(12)中、R42は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
Figure 0004863742

[式(13)中、R43は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R44は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
Figure 0004863742

[式(14)中、R45は炭素数1〜8の炭化水素基を示す]
また、本発明で用いられるアルキルベンゼンとしては、特に限定されないが、冷媒に対する相溶性に優れる点から、炭素数1〜40のアルキル基を1〜4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が1〜40であるものが好ましく、炭素数1〜30のアルキル基を1〜4個有し、かっアルキル基の合計炭素数が3〜30であるものがより好ましい。
アルキルベンゼンが有する炭素数1〜40のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、直鎖状または分枝状のブチル基、直鎖状または分枝状のペンチル基、直鎖状または分枝状のへキシル基、直鎖状または分枝状のへプチル基、直鎖状または分枝状のオクチル基、直鎖状または分枝状のノニル基、直鎖状または分枝状のデシル基、直鎖状または分枝状のウンデシル基、直鎖状または分枝状のドデシル基、直鎖状または分枝状のトリデシル基、直鎖状または分枝状のテトラデシル基、直鎖状または分枝状のペンタデシル基、直鎖状または分枝状のヘキサデシル基、直鎖状または分枝状のへプタデシル基、直鎖状または分枝状のオクタデシル基、直鎖状または分枝状のノナデシル基、直鎖状または分枝状のイコシル基、直鎖状または分枝状のへンイコシル基、直鎖状または分枝状のドコシル基、直鎖状または分枝状のトリコシル基、直鎖状または分枝状のテトラコシル基、直鎖状または分枝状のペンタコシル基、直鎖状または分枝状のヘキサコシル基、直鎖状または分枝状のへプタコシル基、直鎖状または分枝状のオクタコシル基、直鎖状または分枝状のノナコシル基、直鎖状または分枝状のトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のヘントリアコンチル基、直鎖状または分枝状のドトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のトリトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のテトラトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のペンタトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のへキサトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のへプタトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のオクタトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のノナトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のテトラコンチル基(すべての異性体を含む)等が挙げられる。
上記のアルキル基は直鎖状、分枝状のいずれであってもよいが、冷媒循環システムに使用される有機材料との適合性の点では直鎖状アルキル基が好ましい。一方、冷媒相溶性、熱安定性、潤滑性等の点から分枝状アルキル基が好ましく、特に入手可能性の点から、プロピレン、ブテン、イソブチレンなどのオレフィンのオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基がより好ましい。
なお、アルキルベンゼンを用いる場合は、単一の構造の化合物を単独で用いてもよく、構造の異なる化合物の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アルキルベンゼンの製造方法は任意であり、何ら限定されるものでないが、例えば以下に示す合成法によって製造できる。
原料となる芳香族化合物としては、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、ジエチルベンゼンおよびこれらの混合物等が用いられる。またアルキル化剤として、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン等の低級モノオレフィン(好ましくはプロピレン)の重合によって得られる炭素数6〜40の直鎖状または分枝状のオレフイン;ワックス、重質油、石油留分、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱分解によって得られる炭素数6〜40の直鎖状または分枝状のオレフィン;灯油、軽油等の石油留分からn−パラフィンを分離し、これを触媒によりオレフィン化することによって得られる炭素数9〜40の直鎖状オレフィン、並びにこれらの混合物等を使用することができる。
また、上記の芳香族化合物とアルキル化剤とを反応させる際には、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のフリーデルクラフツ型触媒、硫酸、リン酸、ケイタングステン酸、フッ化水素酸、活性白土等の酸性触媒等の従来より公知のアルキル化触媒を用いることができる。
また、本発明で用いられる鉱油としては、例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油またはナフテン基系原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理の1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られるパラフィン系鉱油またはナフテン系鉱油が挙げられる。
これらの鉱油の中でも、熱安定性により優れる点から、高度に精製された鉱油(以下、「高度精製鉱油」という)を用いることが好ましい。高度精製鉱油の具体例としては、パラフィン基系原油、中間基系原油またはナフテン基系原油を常圧蒸留するかあるいは常圧蒸留の残注油を減圧蒸留して得られる留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油;精製後さらに深脱ロウ処理することによって得られる深脱ろう油;水素化処理によって得られる水添処理油、等が挙げられる。
なお、上記の精製工程における精製法は特に制限されず、従来公知の方法を使用することができるが、例えば、(a)水素化処理、(b)脱ろう処理(溶剤脱ろうまたは水添脱ろう)、(c)溶剤抽出処理、(d)アルカリ洗浄または硫酸洗浄処理、(e)白土処理のうちのいずれかの処理を単独で、あるいは2つ以上を適宜の順序で組み合わせて行う方法が挙げられる。また、上記処理(a)〜(e)のうちのいずれかの処理を複数段に分けて繰り返し行うことも有効である。より具体的には、(i)留出油を水素化処理する方法、または水素化処理した後、アルカリ洗浄または硫酸洗浄処理を行う方法;(ii)留出油を水素化処理した後、脱ロウ処理する方法;(iii)留出油を溶剤抽出処理した後、水素化処理する方法;(iv)留出油に二段あるいは三段の水素化処理を行う、またはその後にアルカリ洗浄または硫酸洗浄処理する方法;(V)上述した処理(i)〜(iv)の後、再度脱ろう処理して深脱ろう油とする方法、等が挙げられる。
上記の精製方法により得られる高度精製鉱油の中でも、ナフテン系鉱油および深脱ろう処理することにより得られる鉱油が、低温流動性、低温時でのワックス析出がない等の点から好適である。この深脱ろう処理は、通常、苛酷な条件下での溶剤脱ろう処理法やゼオライト触媒を用いた接触脱ろう処理法などによって行われる。
また、かかる高度精製鉱油の非芳香族不飽和分(不飽和度)は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。非芳香族不飽和分が10質量%を超えると、スラッジが発生しやすくなり、その結果、冷媒循環システムを構成するキヤビラリー等の膨張機構が閉塞しやすくなる傾向にある。
本発明においては、上述した合成油および炭化水素油からなる群より選ばれる1種のみを単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を組み合わせて用いても良い。本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物を、二酸化炭素冷媒を使用する冷蔵庫や空調機器等の密閉型圧縮機に使用する場合には、エステル、アルキルベンゼン、ポリビニルエーテルが好ましい。その中でも、チオリン酸エステルの添加効果がより高いことから、ポリオールエステルが好ましく、ジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルが最も好ましい。また、カーエアコンや給湯機等の開放型圧縮機に使用する場合には、上述の合成油の中でも、ポリオールエステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、エステルポリビニルエーテルが好ましい。その中でも、チオリン酸エステルの添加効果がより高いことから、ポリオールエステルが好ましく、なかでもジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルが最も好ましい。
また、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物に含まれるチオリン酸エステル(「ホスフォロチオネート」ともいう。)としては、下記一般式(15)で表される化合物が好ましく用いられる。
Figure 0004863742
一般式(15)中、R46、R47およびR48は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜24の炭化水素基を示す。R46〜R48で示される炭素数1〜24の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、へプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジェチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、メチルエチルシクロへキシル基、ジェチルシクロへキシル基、メチルシクロへプチル基、ジメチルシクロへプチル基、メチルエチルシクロへプチル基、ジェチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、へキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、へプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分岐状でもよく、また二重結合の位置も任意である)が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、へキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)が挙げられる。
アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルへキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
上記R46、R47およびR48で示される炭素数1〜24の炭化水素基は、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基であることが好ましく、炭素数4〜18のアルキル基、炭素数7〜24のアルキルアリール基、フェニル基がより好ましい。
一般式(15)で表されるチオリン酸エステルとしては、具体的には、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリへキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリへキサデシルホスフォロチオネート、トリへプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(−n−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフォロチオネート等、が挙げられる。より具体的には、トリフェニルホスフォロチオネート(TPPT)、トリクレジルホスフォロチオネート(TCPT)、トリキシレニルホスフォロチオネート(TXPT)、クレジルジフェニルホスフォロチオネート(CPPT)が好ましく用いられる。さらに好ましくはトリフェニルホスフォロチオネート(TPPT)が使用される。また、これらの混合物も使用できる。
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物におけるチオリン酸エステルの含有量は、組成物全量基準で、0.01〜5質量%以下であることが好ましい。チオリン酸エステルの含有量を上記範囲内とすることで、冷凍機油組成物の耐磨耗性および安定性(特に熱・酸化安定性)をさらに向上させることができる。より具体的には、高水準の耐摩耗性が得られる点から、チオリン酸エステルの含有量は、組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。また、含有量をこれ以上多くしても、含有量に見合う摩耗低減効果が得られず、却って安定性の低下または腐食摩耗の発生の原因となり得ることから、チオリン酸エステルの含有量は、組成物全量基準で、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
また、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物においては、上記チオリン酸エステル以外のリン系添加剤(以下、「リン系添加剤」という)をさらに含有してもよい。リン系添加剤としては、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物が好ましい。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリへキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等;酸性リン酸エステルとしては、モノプチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノへプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシツドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノへキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジプチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジへキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジへキサデシルアシッドホスフェート、ジへプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルナシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等;酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、へプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミシ、ジェチルアミン、ジプロピルアミン、ジプチルアミン、ジペンチルアミン、ジへキシルアミン、ジへプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン∴トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリプチルアミン、トリペンチルアミン、トリへキシルアミン、トリへプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩等;
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート等;亜リン酸エステルとしては、ジプチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジへキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリプチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリへプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等、が挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物がリン系添加剤を含有する場合、リン系添加剤の含有量は、組成物全量基準で、0.01〜5質量%以下であることが好ましい。リン系添加剤の含有量を上記範囲内とすることで、耐摩粋性および安定性(特に熱・酸化安定性)をさらに向上させることができる。より具体的には、高水準の耐摩粗性が得られる点から、リン系添加剤の添加量は、組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。また、含有量をこれ以上多くしても、含有量に見合う摩耗低減効果が得られず、却って安定性の低下または腐食磨耗の発生の原因となり得ることから、リン系添加剤の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
また、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物は、ベンゾトリアゾールおよび/またはその誘導体をさらに含有することが好ましい。ベンゾトリアゾールおよび/またはその誘導体を含有せしめることで、耐磨耗性および摩擦特性の向上効果をより高めることができる。
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物におけるベンゾトリアゾールおよび/またはその誘導体の含有量は任意であるが、組成物全量基準で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上である。0.001質量%未満の場合には、ベンゾトリアゾールおよび/またはその誘導体の含有による耐摩粋性および摩擦特性の向上効果が不十分となるおそれがある。また、ベンゾトリアゾールおよび/またはその誘導件の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。1.0質量%を超える場合は、含有量に見合うだけの耐摩耗性および摩擦特性の向上効果が得られず経済的に不利となるおそれがある。
また、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物においては、その熱・加水分解安定性および摩擦特性をさらに改良するために、エポキシ化合物を配合することが好ましい。エポキシ化合物の好ましい例としては、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化植物油が挙げられる。
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、へキシルフェニルグリシジルエーテル、へプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル等が好ましいものとして例示できる。
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエ−テル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルへキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル等が例示できる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物の中でも、好ましいものとしては、具体的には例えば、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルべンゾエート、グリシジル−tert−ブチルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が例示できる。
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレン等が例示できる。
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキジブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシへキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシへキサデカン、1,2−エポキシへプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサン等が例示できる。
脂環式エポキシ化合物としては、エポキシ基を構成する炭素原子が直接脂環式環を構成している化合物が挙げられる。具体的には、1,2−エポキシシクロへキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロへキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3‘−[7]オキサビシクロ[4.1.0]へプタン、4−(1‘−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサン等が例示できる。
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステル等が例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロへキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物等が例示できる。
エポキシ化合物としては、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、より熱・加水分解安定性および摩擦特性を向上させることができることから、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルが好ましく、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物がより好ましい。
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物がエポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、組成物全量基準で、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜2.0質量%であることがより好ましい。
またさらに、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物は油性剤をさらに含有してもよい。油性剤の好ましい例としては、1価アルコール油性剤、カルボン酸油性剤などが挙げられる。
1価アルコール油性剤としては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。炭素数1〜24の1価アルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状または分岐状のプロパノール、直鎖状または分岐状のブタノール、直鎖状または分岐状のペンタノール、直鎖状または分岐状のヘキサノール、直鎖状または分岐状のヘプタノール、直鎖状または分岐状のオクタノール、直鎖状または分岐状のノナノール、直鎖状または分岐状のデカノール、直鎖状または分岐状のウンデカノール、直鎖状または分岐状のドデカノール、直鎖状または分岐状のトリデカノール、直鎖状または分岐状のテトラデカノール、直鎖状または分岐状のペンタデカノール、直鎖状または分岐状のヘキサデカノール、直鎖状または分岐状のヘプタデカノール、直鎖状または分岐状のオクタデカノール、直鎖状または分岐状のノナデカノール、直鎖状または分岐状のイコサノール、直鎖状または分岐状のへンイコサノール、直鎖状または分岐状のトリコサノール、直鎖状または分岐状のテトラコサノールおよびこれらの混合物等が挙げられる。
1価アルコール油性剤の炭素数は、摩擦特性および摩耗特性の向上の点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が特に好ましい。また、炭素数が大き過ぎると冷媒雰囲気下で析出しやすくなるおそれがあることから、炭素数は20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が特に好ましい。
カルボン酸油性剤としては、一塩基酸でも多塩基酸でもよい。このようなカルボン酸としては、例えば、エステル油性剤の説明において例示された一塩基酸および多塩基酸が挙げられる。これらの中では、摩擦特性および摩耗特性の向上の点から一塩基酸が好ましい。
カルボン酸油性剤の炭素数は、摩擦特性および磨耗特性の向上の点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が特に好ましい。また、カルボン酸油性剤の炭素数が大き過ぎると冷媒雰囲気下で析出しやすくなる恐れがあることから、炭素数は20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が特に好ましい。
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物においては、油性剤として、1価アルコール油性剤およびカルボン酸油性剤のうちの1種を単独で用いてもよく、又、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物が油性剤を含有する場合、油性剤の含有量は任意であるが、耐摩耗性および摩擦特性の向上効果に優れる点から、組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。また、当該含有量は、冷媒雰囲気下および低温下での析出防止性、並びに冷凍機油組成物の熱・酸化安定性により優れる点から、組成物全量を基準として、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
さらに、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物は、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来公知の冷凍機油添加剤をさらに含有してもよい。かかる添加剤としては、例えば、ジ−tert−ブチル−P−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−P−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛等の摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、シリコーン系等の消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で、または数種類組み合わせて配合することが可能である。これらの添加剤の含有量は特に制限されないが、添加剤の合計量が、組成物全量基準で、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物の体積抵抗率は特に限定されないが、1.0×10Ω・cm以上であることが好ましい。特に、密閉型冷凍機に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、ここでいう体積抵抗率とは、JIS C 2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値[Ω・cm]を意味する。
さらに、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油組成物全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、油の熱・加水分解安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
さらにまた、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物の酸価は特に限定されないが、冷凍機または配管に用いられている金属への腐食を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、ここでいう酸価とは、JIS K 2501「石油製品および潤滑油一中和価試験方法」に準拠して測定した値[mgKOH/g]を意味する。
さらにまた、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物の灰分は特に限定されないが、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物の熱・加水分解安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JIS K 2272「原油および石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した値[ppm]を意味する。
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物は、二酸化炭素冷媒と共に用いられる場合にその優れた効果を発揮するものであるが、使用される冷媒は、二酸化炭素冷媒単独であってもよく、あるいは二酸化炭素冷媒と他の冷媒との混合冷媒であってもよい。他の冷媒としては、HFC冷媒、バーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル等の非フッ素含有エーテル系冷媒およびアンモニア,炭化水素等の自然系冷媒などが挙げられる。
以下、実施例および比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1〜18、参考例19〜24、比較例1〜11]
実施例1〜18、参考例19〜24および比較例1〜11においては、それぞれ以下に示す潤滑油基油及び添加剤を用いて表1〜6に示す組成を有する冷凍機油組成物を調製した。
(潤滑油基油)
基油1:ジペンタエリスリトールと2−エチルヘキサン酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合酸(混合比:2−エチルヘキサン酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸=1/1(モル比))とのエステル(40℃における動粘度:220mm/s)
基油2:ジペンタエリスリトールとカプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸および3,5,5−トリメチルへキサン酸の混合酸(混合比:カプリル酸/2−エチルヘキサン酸/ペラルゴン酸/3,5,5−トリメチルへキサン酸=1/4/1/4(モル比))とのエステル(40℃における動粘度:180mm/s)
基油3:ジペンタエリスリトールとカプリル酸および3,5,5−トリメチルへキサン酸の混合酸(混合比:カプリル酸/3,5,5−トリメチルへキサン酸=1/4(モル比))とのエステル(40℃における動粘度:320mm/s)
基油4:ジペンタエリスリトールとペラルゴン酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合酸(混合比:ペラルゴン酸/3,5,5−トリメチルへキサン酸=1/4(モル比))とのエステル(40℃における動粘度:400mm/s)
基油5:ペンタエリスリトールと2−エチルヘキサン酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合酸(混合比:2−エチルヘキサン酸/3,5,5−トリメチルヘキサン酸=1/1(モル比))とのエステル(40℃における動粘度:68mm/s)
基油6:ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(数平均分子量:1300、40℃における動粘度:100mm/s)
基油7:エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルとの共重合体(エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル=9/1(モル比)、40℃における動粘度:68mm/s)
基油8:分岐型アルキルベンゼン(40℃における動粘度:68mm/s)
基油9:ナフテン系鉱油(40℃における動粘度:56mm/s)
(添加剤)
添加剤1:トリフェニルホスフォロチオネート
添加剤2:グリシジル−2,2’−ジメチルオクタノエート
添加剤3:トリクレジルホスフェート
添加剤4:ブチルステアレート。
次に、実施例1〜24および比較例1〜11の冷凍機油組成物について以下の試験を実施した。
(潤滑性試験)
ASTM D 2670“FALEX WEAR TEST”に準拠して、試料油の温度100℃の条件下で、慣らし運転を150lb荷重の下に1分間行った後に、二酸化炭素冷媒10L/hを吹き込みながら、250lb荷重の下に2時間試験機を運転した。試験後のテストジャーナル(ピン)の摩耗量を測定し、各試料油の潤滑性を評価した。得られた結果を表1〜6に示す。
(熱安定性試験)
オートクレーブ中に試料油90gと二酸化炭素冷媒10gと触媒(鉄、銅、アルミの各線)を封入し、175℃に加熱して1週間保持した。1週間後の試料油の酸価を測定し、熱安定性を評価した。得られた結果を表1〜6に示す。
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Claims (5)

  1. 滑油基油と、チオリン酸エステルとを含有し、
    前記潤滑油基油として、ジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルを、組成物全量基準で50質量%以上含有することを特とする二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物。
  2. 前記ジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルにおいて、構成脂肪酸に占める分岐脂肪酸の割合が25mol%以上であることを特徴とする、請求項に記載の二酸化炭素用冷凍機油組成物。
  3. 前記ジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルにおいて、構成脂肪酸に占める2−エチルへキサン酸および3,5,5−トリメチルへキサン酸の含有割合の合計が75mol%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物。
  4. エポキシ化合物をさらに含有することを特徴とする、請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物。
  5. 前記チオリン酸エステル以外のリン系添加剤をさらに含有することを特徴とする、請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の二酸化炭素冷媒用冷凍機油組成物。
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