JP4258453B2 - 内燃機関の吸気制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、油圧式の可変バルブタイミング機構によって吸気弁のバルブタイミングを可変制御可能な内燃機関の吸気制御装置に関し、詳しくは、油圧不足により可変バルブタイミング機構が有効に動作できない内燃機関の始動時における有効吸気期間の制御技術に関する。
従来、クランク軸に対するカム軸の位相角を変化させることで吸気弁のバルブタイミングを可変制御する油圧式の可変バルブタイミング機構が知られている。図6は、従来の可変バルブタイミング機構の油圧システムの概略構成を示す図である。可変バルブタイミング機構は、クランク軸に対するカム軸(吸気側カム軸)の位相角を変化させるための油圧アクチュエータ50を備えている。油圧アクチュエータ50は、クランク軸に同期して回転するハウジング52と、ハウジング52内に配置されカム軸に同期して回転するロータ54を備えている。ハウジング52の内部には油室56,58が形成されており、この油室56,58はロータ54によって第1油室56と第2油室58に区画されている。
油圧アクチュエータ50は、油室56,58へ作動油が供給されてハウジング52に対するロータ54の回転角が変化することにより作動する。第1油室56へ作動油が供給されるときには、油圧アクチュエータ50はクランク軸に対するカム軸の位相角を進角側に変化させるように作動し、第2油室58へ作動油が供給されるときにはクランク軸に対するカム軸の位相角を遅角側に変化させるように作動する。このとき、作動油が供給されない側の油室からは、作動油が供給される側の油室の拡大に伴い内部の作動油が押し出され、押し出された作動油はオイルタンク64に回収されるようになっている。
油圧アクチュエータ50に供給される作動油は、内燃機関70により駆動されるオイルポンプ60から圧送される。オイルポンプ60と油圧アクチュエータ50との間にはオイルコントロールバルブ62が設けられている。オイルコントロールバルブ62は、作動油の供給先及び作動油の回収先を第1油室56と第2油室58とで切り換える方向切換弁であると同時に、その開度の制御によって作動油の供給量を調整できる流量調整弁でもある。クランク軸に対するカム軸の位相角の進角量は第1油室56への作動油の供給量によって制御することができ、同様に、遅角量は第2油室58への作動油の供給量によって制御することができる。
内燃機関70の停止時には、可変バルブタイミング機構は最進角位置或いは最遅角位置の何れかの位置で停止するよう制御され、次回の始動時には、最進角位置或いは最遅角位置の何れかの位置からのスタートとなる。しかし、油圧アクチュエータ50に作動油を供給するオイルポンプ60は内燃機関70からの駆動力の供給を受けて油圧を発生させるため、内燃機関70の始動時、オイルポンプ60が駆動されて油圧が上昇するまでの間は、可変バルブタイミング機構は油圧の不足により要求通りの動作を実現することができない。このため、油圧が上昇するまでの間は可変バルブタイミング機構を作動させることができず、吸気弁のバルブタイミングは最進角或いは最遅角されたままとなる。
吸気弁のバルブタイミングには、内燃機関の運転状態に応じて好適なタイミングが存在しており、内燃機関を始動させる場合にも好適なタイミングが存在している。実際のバルブタイミングがこの好適なタイミングから大きくずれていると内燃機関の始動性の低下を招いてしまう。例えば、内燃機関の始動時にバルブタイミングが最進角されている場合には、バルブオーバーラップ期間が長くなることにより内部EGR量が増大するため、燃焼の悪化によって始動性を低下させることになる。また、内燃機関の始動時にバルブタイミングが最遅角されている場合には、吸気弁の閉弁タイミングが吸気下死点を大きく超えることにより燃焼室から吸気通路への混合気の吹き戻しが増大するため、充填効率の低下によるトルク不足によって始動性を低下させることになる。
この問題を解決するため、特許文献1に記載された可変バルブタイミング機構は、始動時における位置決め手段としてロータにロックピンを備えるとともにハウジングに係止穴を備えている。内燃機関の始動時にはロックピンを係止穴に係止させることで、ハウジングに対するロータの回転位置を最進位置と最遅角位置を除く中間領域にて位置決めし、これによりクランク軸に対するカム軸の位相角を調整して始動に適した所望のバルブタイミングを得られるようにしている。
特開平11−182214号公報 特開2000−170507号公報 特開2000−234533号公報 特開2002−161721号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、ロックピンを係止穴に確実に係止させるための複雑な機構が必要になってしまう。また、始動性に優れたバルブタイミングは始動時の内燃機関の状態(内燃機関の温度等)によって異なるが、特許文献1に記載された技術では、始動時のバルブタイミングはロックピンと係止穴の位置で決まるタイミングに固定されている。このため、内燃機関の始動時の状態に応じた最適なバルブタイミングが実現されるとは限らない。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、複雑な機構を用いることなく内燃機関の始動に適した吸気制御を実現し、内燃機関の始動性を向上させることを可能にした、内燃機関の吸気制御装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の吸気制御装置であって、
吸気弁のバルブタイミングを可変制御し、内燃機関の始動時には前記吸気弁のバルブタイミングを最遅角させた位置から作動する油圧式の可変バルブタイミング機構と、
各気筒の吸気通路に設けられ前記吸気通路を開閉する吸気制御弁と、
前記内燃機関の始動時、前記吸気弁の閉弁タイミングよりも進角側で前記吸気制御弁を閉弁することにより前記吸気制御弁の閉弁タイミングによって有効吸気期間の終了タイミングを制御する制御手段と、
を備えることを特徴としている。
第2の発明は、第1の発明において、前記制御手段は、前記内燃機関の始動時に前記内燃機関の温度に関連するパラメータを取得し、前記パラメータの値に応じて前記吸気制御弁の閉弁タイミングを制御することを特徴としている。
また、第3の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の吸気制御装置であって、
吸気弁のバルブタイミングを可変制御し、内燃機関の始動時には前記吸気弁のバルブタイミングを最進角させた位置から作動する油圧式の可変バルブタイミング機構と、
各気筒の吸気通路に設けられ前記吸気通路を開閉する吸気制御弁と、
前記内燃機関の始動時、前記吸気弁の開弁タイミングよりも遅角側で前記吸気制御弁を開弁することにより前記吸気制御弁の開弁タイミングによって有効吸気期間の開始タイミングを制御する制御手段と、
を備えることを特徴としている。
第4の発明は、第3の発明において、前記制御手段は、前記内燃機関の始動時に前記内燃機関の温度に関連するパラメータを取得し、前記パラメータの値に応じて前記吸気制御弁の開弁タイミングを制御することを特徴としている。
第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記制御手段は、前記吸気制御弁を吸気上死点後に開弁することを特徴としている。
また、第6の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の吸気制御装置であって、
吸気弁のバルブタイミングを可変制御する油圧式の可変バルブタイミング機構と、
各気筒の吸気通路に設けられ前記吸気通路を開閉する吸気制御弁と、
前記可変バルブタイミング機構の停止位置を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて前記吸気制御弁の開弁タイミング或いは閉弁タイミングを制御することにより有効吸気期間の開始タイミング或いは終了タイミングを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、内燃機関の始動時、前記判定手段により前記可変バルブタイミング機構が前記吸気弁のバルブタイミングを最遅角させた位置で停止していると判定された場合には、前記吸気弁の閉弁タイミングよりも進角側で前記吸気制御弁を閉弁することにより、前記吸気制御弁の閉弁タイミングによって有効吸気期間の終了タイミングを制御し、
前記判定手段により前記可変バルブタイミング機構が前記吸気弁のバルブタイミングを最進角させた位置で停止していると判定された場合には、前記吸気弁の開弁タイミングよりも遅角側で前記吸気制御弁を開弁することにより、前記吸気制御弁の開弁タイミングによって有効吸気期間の開始タイミングを制御することを特徴としている。
油圧式の可変バルブタイミング機構が吸気弁のバルブタイミングを最遅角させた位置から作動する場合、内燃機関の始動により油圧が上昇して可変バルブタイミング機構が動作可能になるまでは、吸気弁の閉弁タイミングが吸気下死点を超えているために燃焼室から吸気通路への混合気の吹き戻しが大きくなる。しかし、第1の発明によれば、吸気弁の閉弁タイミングよりも進角側で吸気制御弁を閉弁し、吸気制御弁の閉弁タイミングによって有効吸気期間、つまり、吸気通路と燃焼室とが実質的に連通している期間の終了タイミングを制御することで、燃焼室から吸気通路への吹き戻しを抑制して必要トルクを確実に出すことができ、内燃機関の始動性を向上させることができる。
なお、内燃機関は、その温度が高いほど、内部のフリクションが小さくなり噴射された燃料の霧化も良くなるために発生トルクは大きくなる。したがって、機関温度が低い場合に合わせて吸入空気量を設定すると、機関温度が高い場合には発生トルクが過大になってトルクショックが発生してしまう。逆に、機関温度が高い場合に合わせて吸入空気量を設定すると、機関温度が低い場合には発生トルクが不足して始動性を損ねてしまう。しかし、第2の発明によれば、吸気制御弁の閉弁タイミングによって吸入空気量を機関温度に応じて制御することができるので、機関温度によらず良好な始動を実現することができる。
また、油圧式の可変バルブタイミング機構が吸気弁のバルブタイミングを最進角させた位置から作動する場合、内燃機関の始動により油圧が上昇して可変バルブタイミング機構が動作可能になるまでは、バルブオーバーラップ期間が長くなることで内部EGR量が過大になり燃焼が悪化する。しかし、第3の発明によれば、吸気弁の開弁タイミングよりも遅角側で吸気制御弁を開弁し、吸気制御弁の開弁タイミングによって有効吸気期間の開始タイミングを制御することで、バルブオーバーラップ期間を短縮して内部EGR量を抑制することができ、燃焼の改善によって内燃機関の始動性を向上させることができる。
なお、内燃機関の始動時の燃焼性は内燃機関の温度状態によって異なる。第4の発明によれば、吸気制御弁の開弁タイミングによって内部EGR量を機関温度に応じて制御することができるので、機関温度によらず良好な始動を実現することができる。
内燃機関の始動性は燃料と新気のミキシングが良好なほど向上する。第5の発明によれば、吸気制御弁は吸気上死点後に開弁されるので、燃焼室内が負圧の状態で吸気が開始されることになり、混合気の燃焼室内への流入速度が上昇する。その結果、燃料と新気のミキシングが促進されて燃焼が改善し、内燃機関の始動性はさらに向上する。
また、第6の発明によれば、内燃機関の停止時における可変バルブタイミング機構の停止位置が最進角位置と最遅角位置の何れか一方に定まっていない場合でも、内燃機関の始動時には可変バルブタイミング機構の停止位置が判定される。そして、可変バルブタイミング機構が最遅角位置で停止している場合には、吸気弁の閉弁タイミングよりも進角側で吸気制御弁を閉弁し、吸気制御弁の閉弁タイミングによって有効吸気期間の終了タイミングを制御することで、燃焼室から吸気通路への混合気の吹き戻しが抑制される。また、可変バルブタイミング機構が最進角位置で停止している場合には、吸気弁の開弁タイミングよりも遅角側で吸気制御弁を開弁し、吸気制御弁の開弁タイミングによって有効吸気期間の開始タイミングを制御することで、バルブオーバーラップ期間の調整により内部EGR量が最適化される。これにより、可変バルブタイミング機構の停止位置によらず良好な始動を実現することができる。
以下、図1乃至図5を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態としての吸気制御装置が適用された内燃機関システムの構成を説明するための図である。本実施形態にかかる内燃機関2は火花点火式の4ストロークエンジンであり、図示していないが複数の気筒を有している。内燃機関2のクランク軸14の近傍には、所定のクランク角位置で信号を出力するクランク角センサ32が取り付けられている。また、図示しないウォータジャケットには、冷却水の水温を測定する水温センサ38が取り付けられている。
各気筒の燃焼室12には吸気ポート4aと排気ポート6aが接続されている。燃焼室12と吸気ポート4aとの接続部にはその連通状態を制御する吸気弁8が設けられ、燃焼室12と排気ポート6aとの接続部にはその連通状態を制御する排気弁10が設けられている。吸気弁8及び排気弁10は、ともにクランク軸14によって駆動されるカム軸からの駆動力の入力を受けて開閉動作する。特に、吸気弁8のカム軸には、吸気弁8のバルブタイミングを油圧によって可変制御することができる油圧式の可変バルブタイミング機構(VVT)26が設けられている。可変バルブタイミング機構26の構造としては、例えば、前掲の図6に示す構造を用いることができる。また、本実施形態にかかる可変バルブタイミング機構26には、その停止位置(ハウジングに対するロータの停止位置)を検出する停止位置センサ36が設けられている。
吸気ポート4aには吸気管4が接続され、排気ポート6aには排気管6が接続されている。吸気管4は吸気ポート4aとともに吸気通路を形成している。吸気管4の上流端にはエアクリーナ16が備えられ、エアクリーナ16の直ぐ下流部分には吸入空気流量(新気の流量)を測定するエアフローメータ34が配置されている。さらに、エアフローメータ34の下流には電子制御式のスロットル弁20が配置されている。吸気管4のスロットル弁20の下流には圧力変動の平滑化等の機能を有するサージタンク18が形成されている。吸気管4は、サージタンク18を分岐点として各気筒の燃焼室12に吸入空気を分配するための複数のインテークマニホールド4bに枝分れしており、各インテークマニホールド4bは、それぞれ対応する吸気ポート4aに接続されている。各吸気ポート4aには、その上流側から順に吸気制御弁22と燃料噴射弁24が取り付けられている。
吸気制御弁22は、吸気ポート4a内の吸入空気の流通を遮断・開放するバルブであり、電磁駆動式のアクチュエータによって開閉駆動される。本実施形態にかかる吸気制御弁22は、吸気ポート4aを全開にする開位置と全閉にする閉位置の何れかの位置に選択的に駆動されるようになっている。吸気制御弁22のアクチュエータは、吸気制御弁22を開位置から閉位置まで駆動した後に再び開位置に戻す動作、或いは、閉位置から開位置まで駆動した後に再び閉位置に戻す動作をクランク角度で720°CA内に行うことができる。内燃機関2の運転中に吸気制御弁22を作動させることにより、吸気弁8のバルブタイミングによって決まる吸気ポート4aから燃焼室12内への混合気の吸気期間を調整することができる。吸気制御弁22が開弁している場合は、吸気弁8のバルブタイミング通りに燃焼室12内へ混合気が吸入されるが、吸気制御弁22が閉弁している場合は、吸気弁8のバルブタイミングにかかわらず吸気は行われない。つまり、吸気弁8と吸気制御弁22がともに開弁している期間が、吸気ポート4aと燃焼室12とが実質的に連通状態となる期間、すなわち、有効吸気期間となる。
上記のように、本実施形態にかかる内燃機関2は、有効吸気期間を制御する手段として吸気弁8のバルブタイミングを制御する可変バルブタイミング機構26とともに吸気制御弁22を備えている。これにより、内燃機関2の始動時、油圧不足によって可変バルブタイミング機構26を有効に作動させることができない状況では、吸気制御弁22によって有効吸気期間を制御することができる。なお、始動時における有効吸気期間の制御は、ECU(Electronic Control Unit)30による吸気制御弁22の制御によって実現される。ECU30は内燃機関2の運転を総合的に制御するための制御装置であり、上述したクランク角センサ32,エアフローメータ34,回転位置センサ36,水温センサ38等の各種センサから検出信号の供給を受けると共に、予め定められた制御プログラムに従い、スロットル弁20,吸気制御弁22,燃料噴射弁24,可変バルブタイミング機構26等の各種装置に対して駆動信号を供給している。
図2及び図3は、内燃機関2の始動時における吸気制御弁22の動作を示す説明図である。図2及び図3では、クランク角に対する吸気制御弁22の開度の変化が吸気弁8のリフト量の変化と合わせて示されている。内燃機関2の停止時には、可変バルブタイミング機構26はECU30によって最進角位置或いは最遅角位置の何れかの位置で停止するよう制御されている。したがって、始動時における吸気弁8のバルブタイミングは、図2に示すように最遅角されているか、或いは、図3に示すように最進角されている。可変バルブタイミング機構26の停止位置は、停止位置センサ36からの検出信号により判定することができる。
内燃機関2の始動時、可変バルブタイミング機構26が最遅角位置で停止している場合、つまり、図2に示すように吸気弁8のバルブタイミングが最遅角されている場合には、吸気弁8の閉弁タイミングは吸気BDC(下死点)を大きく超えて圧縮行程の中期付近に位置している。これは、吸気弁8を駆動するカム軸のカムプロフィールが高回転高負荷時において理想的な吸気特性を得られるように設計されているためである。このような閉弁タイミングで内燃機関2を始動させようとしても、燃焼室12から吸気ポート4aへの混合気の吹き戻しが大きいために充填効率が低下し、トルク不足によってうまく始動させることができない可能性がある。
そこで、ECU30は、停止位置センサ36からの検出信号から可変バルブタイミング機構26が最遅角位置で停止していると判定した場合には、吸気弁8の閉弁タイミングよりも進角側で吸気制御弁22を閉弁する。好ましくは、吸気制御弁22の閉弁タイミングを吸気BDC付近に設定する。これにより、吸気ポート4aと燃焼室12との連通は吸気BDC付近で遮断されることになり、燃焼室12から吸気ポート4aへの混合気の吹き戻しが抑制されて内燃機関2の始動性が向上する。この場合、吸気弁8の開弁タイミングから吸気制御弁22の閉弁タイミングまでが有効吸気期間となる。また、図2中に斜線で示す部分は、吸気制御弁22の開度によって補正された吸気弁8の実質的なリフト量に相当している。吸気制御弁22の開弁タイミングは、吸気弁8の開弁タイミングよりも早く、且つ、前回サイクルの吸気弁8の閉弁タイミングよりも遅くなっていればよい。
また、この場合、ECU30は、水温センサ38により検出される内燃機関2の水温に応じて吸気制御弁22の閉弁タイミングを調整する。具体的には、水温が高いほど閉弁タイミングを吸気BDCから遠く設定し(進角側でも遅角側でもよい)、燃焼室12内への混合気の吸入量を減少させる。閉弁タイミングを吸気BDCよりも進角側に設定すれば、吸気ポート4aと燃焼室12との連通が早く閉じられた分、混合気の吸入量は減少することになる。閉弁タイミングを吸気BDCよりも遅角側に設定すれば、吸気ポート4aへの吹き戻しによってやはり混合気の吸入量は減少することになる。内燃機関2は、その温度が高いほど、内部のフリクションが小さくなり噴射された燃料の霧化も良くなるために発生トルクは大きくなる。このため、高温時の吸気制御弁22の閉弁タイミングを低温時と同じ設定にしておくと、発生トルクが過大になってトルクショックが発生してしまう。そこで、上記のように水温で代表される機関温度が高いほど混合気の吸入量を減少させるように吸気制御弁22の閉弁タイミングを制御することで、機関温度によらず常に良好な始動を実現することが可能になる。
一方、内燃機関2の始動時、可変バルブタイミング機構26が最進角位置で停止している場合、つまり、図3に示すように吸気弁8のバルブタイミングが最進角されている場合には、吸気弁8の開弁タイミングは吸気TDC(上死点)を大きく超えて排気行程の中期付近に位置している。これは、吸気弁8を駆動する吸気カムのカムプロフィールは高回転高負荷において理想の吸気特性を得られるように設計されているためである。このような開弁タイミングで内燃機関2を始動させようとしても、排気弁10とのバルブオーバーラップ期間が長くなることによって内部EGR量が増大し、燃焼の悪化によってうまく始動させることができない可能性がある。
そこで、ECU30は、停止位置センサ36からの検出信号から可変バルブタイミング機構26が最進角位置で停止していると判定した場合には、吸気弁8の開弁タイミングよりも遅角側で吸気制御弁22を開弁する。これにより、吸気ポート4aと燃焼室12との連通は吸気弁8の開弁後も吸気制御弁22が開弁するまでは遮断されることになり、内部EGR量の抑制により燃焼が改善されて内燃機関2の始動性が向上する。この場合、吸気制御弁22の開弁タイミングから吸気弁8の閉弁タイミングまでが有効吸気期間となる。また、図3中に斜線で示す部分は、吸気制御弁22の開度によって補正された吸気弁8の実質的なリフト量に相当している。吸気制御弁22の閉弁タイミングは、吸気弁8の閉弁タイミングよりも遅く、且つ、次回サイクルの吸気弁8の開弁タイミングよりも早くなっていればよい。
吸気制御弁22の開弁タイミングは、好ましくは吸気TDC後、より好ましくは10〜30°CA程度に設定する。吸気制御弁22の開弁タイミングは、吸気弁8の開弁タイミングよりも遅角側でさえあれば、吸気TDC前であっても内部EGR量の抑制効果を得ることができる。しかし、上記のように吸気TDC後、特に10〜30°CAに吸気制御弁22を開弁することで、始動性の向上に寄与するさらなる効果を得ることができる。吸気TDC後まで吸気制御弁22が閉弁されることで燃焼室12内は負圧になっており、この状態で吸気を開始することで混合気の燃焼室12内への流入速度が上昇し、燃料と新気のミキシングが促進されて燃焼がさらに改善されるのである。
また、この場合、ECU30は、水温センサ38により検出される内燃機関2の水温に応じて吸気制御弁22の開弁タイミングを調整する。始動時における内燃機関2の燃焼性は内燃機関2の温度状態によって異なるので、水温で代表される機関温度に応じて吸気制御弁22の開弁タイミングを調整して内部EGR量を制御することで、機関温度によらず常に良好な始動を実現することが可能になる。
次に、上記の吸気制御弁22の動作を実現するためにECU30によって実行される処理について説明する。ECU30による処理は、IG(イグニッション)がオンになったときの処理と、IGのオン後、可変バルブタイミング機構26が作動可能になるまでの処理に大きく分けられる。
まず、内燃機関2を始動させるべくドライバのキー操作によりIGがオンになったときには、ECU30は図4に示すルーチンを実行する。図4は、IGのオンによりECU30により実行されるルーチンのフローチャートである。このルーチンの最初のステップ100では、内燃機関2の始動後、目標回転数(ここでは目標アイドル回転数)に到達させるのに必要な空気量を水温等の情報に基づいて算出する。次に、停止位置センサ36からの検出信号から可変バルブタイミング機構26の停止位置を判定する(ステップ102)。
吸気制御弁22の開閉弁タイミングは、可変バルブタイミング機構26の停止位置、必要空気量、水温等をパラメータとしてあらかじめ実験的に求められており、マップに記憶されている。ステップ104では、ステップ100で算出された必要空気量、ステップ102で判定された可変バルブタイミング機構26の停止位置等、各パラメータの値に応じた開閉弁タイミングがマップから算出される。
次のステップ106では、ECU30は、ステップ102で判定された可変バルブタイミング機構26の停止位置に応じた初期位置まで吸気制御弁22を動作させる。可変バルブタイミング機構26が最遅角位置で停止している場合には、図2に示すように吸気弁8の開弁タイミングにおいて吸気制御弁22は開弁している必要があるので、吸気制御弁22の初期位置は全開位置となる。可変バルブタイミング機構26が最進角位置で停止している場合には、図3に示すように吸気弁8の開弁タイミングにおいて吸気制御弁22は閉弁している必要があるので、吸気制御弁22の初期位置は全閉位置となる。なお、この段階ではクランク軸14が回転していないため、クランク角センサ32からの信号に基づいて行われる気筒判別は完了していない。このため、ECU30は全気筒の吸気制御弁22を初期位置まで動作させる。
IGのオンによりクランキングが開始された後は、ECU30は図5に示すルーチンを実行する。図5は、IGのオン後、可変バルブタイミング機構26が動作可能になるまでにECU30により実行されるルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、所定のクランク角ごとに実行される。まず、ステップ110では、ECU30は可変バルブタイミング機構26が動作可能になったか否かを判定する。例えば、可変バルブタイミング機構26においてオイルポンプから油圧アクチュエータに供給される油圧を測定し、油圧の大きさが所定の作動範囲に入っていれば可変バルブタイミング機構26は動作可能と判定する。
ステップ110の判定で可変バルブタイミング機構26が動作可能になるまでは、ECU30はステップ112以降の処理を実行する。ステップ112では、吸気制御弁22の開弁タイミングが到来したか否か判定する。開弁タイミングが到来したときには、吸気制御弁22を開動作させる(ステップ114)。開弁タイミングになっていない場合には、吸気制御弁22の閉弁タイミングが到来したか否か判定する(ステップ116)。判定により閉弁タイミングが到来したときには、吸気制御弁22を閉動作させる(ステップ118)。
現在のクランク角が開弁タイミングでも閉弁タイミングにも該当しない場合、ECU30は所定の計算タイミングが到来したか否か判定する(ステップ120)。計算タイミングは吸気制御弁22の動作時期に掛かってなければよく、例えば、排気BDCを計算タイミングに設定することもできる。計算タイミングではIGのオン時に計算された目標回転数に応じた必要空気量が再計算され(ステップ122)、再計算された必要空気量に基づいて吸気制御弁22の開閉弁タイミングも再計算される(ステップ124)。次回の開弁タイミングの到来判定(ステップ112)と閉弁タイミングの到来判定(ステップ116)は、再計算された開閉弁タイミングを基準にして行われる。
上記のステップ112乃至124の処理は、気筒判別が完了するまでの間は全気筒の吸気制御弁22を対象として実行される。気筒判別の完了後は気筒毎に吸気制御弁22の開閉弁タイミングが算出され、気筒毎に吸気制御弁22の開動作及び閉動作が実行される。やがて、内燃機関2の始動によりオイルポンプが駆動され、油圧が上昇して可変バルブタイミング機構26が動作可能になったときには、ステップ110の判定結果がYesとなって本ルーチンは終了する。本ルーチンの終了後は、ECU30は、可変バルブタイミング機構26と吸気制御弁22を協働させることにより、内燃機関2の運転状態に応じて有効吸気期間を制御する。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、次のように変形して実施してもよい。
上記実施の形態では、吸気制御弁22としてオン/オフ弁が用いられているが、段階的に或いは連続的に開度を制御することができる弁を用いてもよい。開度制御可能な弁を用いる場合には、内燃機関2の始動性をより向上させるべく次のような制御を行うこともできる。図2に示すように吸気弁8の開弁タイミング前に吸気制御弁22を開弁しておく場合には、吸気弁8の開弁タイミングにおいて吸気制御弁22の開度を微小な開度にしておく。また、図3に示すように吸気弁8の開弁タイミング後に吸気制御弁22を開弁する場合には、いきなり全開にするのではなく微小に開弁する。このように吸気制御弁22を微小な開度で開弁することで、空気の流路が狭まって吸気流速が上昇する。その結果、燃料と新気のミキシングが促進されて燃焼が改善し、内燃機関2の始動性が向上する。なお、吸気制御弁22を微小に開くときの開度や期間は、水温に応じて設定してもよい。機関温度が低いほど燃焼が悪化しやすく燃料と新気のミキシングが求められるからである。所定期間の経過後は、全開或いは必要空気量に応じた開度まで吸気制御弁22を開く。その際の具体的な開度の制御方法としては、少しずつ段階的に開度を上げていってもよく、連続的に開度を上げていってもよい。或いは、微小な中間開度から全開或いは必要空気量に応じた開度までステップ的に開度を上げてもよい。
また、上記実施の形態では、内燃機関2の温度を代表するパラメータとして水温を用いているが、油温、運転時間等、機関温度に関連するパラメータであれば、水温には限定されない。
また、上記実施の形態では、可変バルブタイミング機構26の停止位置を判定するための停止位置センサ36を備えているが、内燃機関2の始動時における可変バルブタイミング機構26の停止位置が常に一定である場合、つまり、内燃機関2の停止時には必ず一定の停止位置に可変バルブタイミング機構26が制御されるようになっている場合には、停止位置センサ36は省略してもよい。
また、図6に示す可変バルブタイミング機構は本発明に適用可能な可変バルブタイミング機構の一例にすぎない。油圧式であるならば、他の構造の可変バルブタイミング機構を用いることもできる。
また、上記実施の形態では、吸気制御弁22とは別にスロットル弁20を備えているが、吸気制御弁22が開度制御が可能であって、且つ、閉弁時に十分な気密性が確保されるならば、スロットル弁20を廃止して吸気制御弁22にスロットル弁20の機能を持たせるようにしてもよい。
本発明の実施の形態としての吸気制御装置が適用された内燃機関システムの概略構成を示す図である。 内燃機関の始動時、可変バルブタイミング機構が最遅角位置で停止している場合の吸気制御弁の動作を示す説明図である。 内燃機関の始動時、可変バルブタイミング機構が最進角位置で停止している場合の吸気制御弁の動作を示す説明図である。 IGのオンに伴ってECUにより実行されるルーチンのフローチャートである。 IGのオン後、可変バルブタイミング機構が動作可能になるまでにECUにより実行されるルーチンのフローチャートである。 従来の可変バルブタイミング機構の油圧システムの概略構成を示す図である。
符号の説明
2 内燃機関
4 吸気管
4a 吸気ポート
6 排気管
8 吸気弁
10 排気弁
12 燃焼室
14 クランク軸
20 スロットル弁
22 吸気制御弁
24 燃料噴射弁
26 可変バルブタイミング機構
30 ECU
32 クランク角センサ
36 停止位置センサ
38 水温センサ

Claims (4)

  1. 吸気弁のバルブタイミングを可変制御し、内燃機関の始動時には前記吸気弁のバルブタイミングを最進角させた位置から作動する油圧式の可変バルブタイミング機構と、
    各気筒の吸気通路に設けられ前記吸気通路を開閉する吸気制御弁と、
    前記内燃機関の始動時、前記可変バルブタイミング機構の作動により前記吸気弁のバルブタイミングを最進角位置から変更することが可能になるまでの間、最進角されている前記吸気弁の開弁タイミングよりも遅角側で前記吸気制御弁を開弁することにより前記吸気制御弁の開弁タイミングによって有効吸気期間の開始タイミングを制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記内燃機関の始動時に前記内燃機関の温度に関連するパラメータを取得し、前記パラメータの値に応じて前記吸気制御弁の開弁タイミングを制御することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の吸気制御装置。
  3. 前記制御手段は、前記吸気制御弁を吸気上死点後に開弁することを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の吸気制御装置。
  4. 吸気弁のバルブタイミングを可変制御する油圧式の可変バルブタイミング機構と、
    各気筒の吸気通路に設けられ前記吸気通路を開閉する吸気制御弁と、
    前記可変バルブタイミング機構の停止位置を判定する判定手段と、
    前記判定手段の判定結果に応じて前記吸気制御弁の開弁タイミング或いは閉弁タイミングを制御することにより有効吸気期間の開始タイミング或いは終了タイミングを制御する制御手段とを備え、
    前記制御手段は、内燃機関の始動時、前記判定手段により前記可変バルブタイミング機構が前記吸気弁のバルブタイミングを最遅角させた位置で停止していると判定された場合には、前記吸気弁の閉弁タイミングよりも進角側で前記吸気制御弁を閉弁することにより、前記吸気制御弁の閉弁タイミングによって有効吸気期間の終了タイミングを制御し、
    前記判定手段により前記可変バルブタイミング機構が前記吸気弁のバルブタイミングを最進角させた位置で停止していると判定された場合には、前記吸気弁の開弁タイミングよりも遅角側で前記吸気制御弁を開弁することにより、前記吸気制御弁の開弁タイミングによって有効吸気期間の開始タイミングを制御することを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
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