JP4048601B2 - 液圧歯車ポンプまたはモータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フロントカバー前面に開口する吸込ポートを有した液圧歯車ポンプ又はモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
ピストンポンプ等の他の回転機関に連結され、吸込ポートをこのようなピストンポンプと共通にする等の目的で、カバーフロント前面に開口させるようにした液圧歯車ポンプまたはモータが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この種の歯車ポンプ又はモータにおいては、軸受部や、他の回転機関との連結部において作動液による潤滑が不十分になる場合があり、このことが摩耗等の原因となって、耐久性や効率の向上を阻んでいた。例えば、軸受部において、従来通常使用されている円筒状のブッシュは、ギヤ軸との間に形成される微小隙間に作動液が流入して潤滑を行う構造であるため、潤滑性をそれ以上向上させることができなかった。その上、この流入した作動液を循環させるような流通経路を殊更に設けていないため、この潤滑用の作動液は、例えば中実のギヤ軸を有するものにおいて反フロントカバー側のギヤ軸端面付近に滞留し、高温となったり劣化が早く進んだりして、潤滑に悪影響を及ぼす場合があった。
【0004】
一方、連結部においては、従来作動液は導入されておらず、エアー溜りとなり、この連結部においてフレッティング摩耗を引き起こす場合があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような点を解消するために、本発明は、ブッシュに溝を設けて、作動液をブッシュの内面とギヤ軸の外面との間に流入しやすくするとともに、この溝を利用して潤滑用の作動液を強制的に循環させる作動液循環経路を設けることにより、潤滑性を向上させ、許容軸受荷重を大きくすることを第1の目的としている。また、他の回転機関との連結部に作動液を流入させることにより、この連結部分におけるフレッティング等の摩耗を減少させることを第2の目的としている。
【0006】
すなわち、請求項1の発明に係る歯車ポンプは、前記第1の目的を達成すべく、フロントカバー前面に開口する吸込ポートを有し、ギヤ軸の軸受にリング形状のブッシュを利用しているものであって、前記ブッシュの内面に溝を設けるとともに、該溝を利用して、ギヤ側面から漏洩した作動液が各ブッシュを通って前記吸込ポートに戻るための作動液循環経路を内部に形成し、さらに前記溝を設ける部位を、ギヤ軸からのラジアル荷重を受圧する部位の反対側に設定したことを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、ブッシュに溝が設けられているので、ブッシュとギヤ軸との隙間に確実に潤滑油が供給され潤滑性が向上する。さらにその結果、許容軸受荷重が増大するという効果も奏する。また、この溝を利用した作動液循環経路が負圧となる吸込ポートに最終的に連通するので、潤滑用の作動液は強制的に循環させられ滞留することがなくなる。したがって、作動液の劣化を遅延させることができるだけでなく、循環する作動液に放熱作用を営ませることも可能になる。加えて、溝を設ける部位を、ギヤ軸からのラジアル荷重を受圧する部位の反対側に設定しているので、ブッシュの軸支持能力を低減させないようにすることができる。
【0008】
このような構成による効果が顕著となる歯車ポンプモータとしては、中実のギヤ軸を有するものが挙げられる。なぜならば、このようなものにおいて従来の構成であれば、作動液は、ギヤ軸端面付近に滞留しやすいからである。具体的には、ギヤ軸同士をスプライン等で結合させる関係上、ギヤ軸に貫通孔を設けることが難しい2連以上の多連式のものに適用してその効果が顕著となる。
【0009】
具体的な作動液循環経路の実施態様としては、ドライブギヤにおける反フロントカバー側のギヤ軸をブッシュを介して支持する軸受穴と、対応するドリブンギヤにおける反フロントカバー側のギヤ軸をブッシュを介して支持する軸受穴とを連通する第1連通流路を設け、ドリブンギヤの軸心に沿って軸貫通孔を設け、ドリブンギヤにおけるフロントカバー側のギヤ軸をブッシュを介して支持する軸受穴を吸込ポートに連通する第2連通流路を設け、ギヤ側面から漏洩する作動液の一部が、ブッシュ、第1連通流路、軸貫通孔、第2連通流路を通って吸込ポートへ戻るように構成したものが挙げられる。
【0010】
一方、請求項2の発明に係る歯車ポンプまたはモータは、前記第2の目的を達成すべく、フロントカバー前面に開口する吸込ポートを有したものであって、駆動軸と他の回転機関とを連結するためにフロントカバーに設けられた連結部に、前記吸込ポートを連通させる潤滑用流路を、軸受孔と吸込ポートとの間の壁の一部分を欠如させることにより設けたことを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、従来何ら潤滑が行われずエアー溜りとなっていたこの連結部に、請求項1に係る発明同様、吸込ポートの負圧を利用して、作動液を強制的に供給することができるようになり、連結部における潤滑性の向上とフレッティング等の摩耗を有効に防止することができるようになる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。
図1、図2、図3は、本実施例の歯車ポンプ100を示し、それぞれ正面図、側断面図、背面図である。この歯車ポンプ100は、作動液に油を用いる2連式のもので、第1ドライブギヤ11及び第1ドリブンギヤ12から構成される第1ポンプモータ部1と、第2ドライブギヤ21及びこの第2ドライブギヤ21に噛合う第2ドリブンギヤ22から構成される第2ポンプモータ部2と、これらドライブギヤ11、12及びドリブンギヤ21、22を収容するとともに回動自在に支持するケーシング3とを具備する。しかして、このケーシング3は、フロントカバー31とリアボディ32と、フロントカバー31及びリアボディ32間に配設されるメインボディ33とから構成されている。
【0013】
第1ドライブギヤ11はそのギヤ軸111が中実のものでフロントカバー31側に配設される一端部11aには、他の回転機関と接続するためのスプライン溝sp1が形成してある。また、他端部11bには、第2ドライブギヤ21と連結するためのスプライン溝sp2が形成してある。第1ドリブンギヤ12は、第1ドライブギヤ11に噛合うもので、そのギヤ軸121には軸心に沿って貫通孔53が貫通させてある。第2ドライブギヤ21は、そのギヤ軸211の一端部21aにおいて前記第1ドライブギヤ11の他端部11bとスプライン結合し、第1ドライブギヤ11と連動するものである。しかして、そのギヤ軸211には、軸心に沿って貫通孔213が形成されている。第2ドリブンギヤ22は第2ドライブギヤ21に噛合うもので、そのギヤ軸221には軸心に沿って貫通孔52が貫通させてある。
【0014】
フロントカバー31には、前記第1ドライブギヤ11及び第1ドリブンギヤ12におけるギヤ軸111、121の一端部11a、12aをそれぞれブッシュ4を介して回動自在に支持する軸受穴311、312が設けてある。このうち第1ドライブギヤ11に対応する軸受穴311は、フロントカバー31の前面31aにも開口し、ギヤ軸111の一端部11aに形成されたスプライン溝sp1が外部に露出するように構成されている。さらに、第1ポンプモータ部1及び第2ポンプモータ部2に共通する作動油の吸込ポート6がこのフロントカバー31の前面31aに開口させてある。
【0015】
メインボディ33には、第1ドライブギヤ11及び第1ドリブンギヤ12のギヤ部112、122を収容し、ポンプモータ作用を営ませるギヤ収容室331と、このギヤ収容室331の底面からメインボディ33の後面33bに貫通し、ブッシュ4を介してこれら第1ドライブギヤ11及び第1ドリブンギヤ12におけるギヤ軸111、121の他端部11b、12bをそれぞれ回動自在に支持する軸受孔332、333が設けられている。これら軸受孔332、333は、後半部において、第2ドライブギヤ21及び第2ドリブンギヤ22におけるギヤ軸211、221の一端部21a、22aを前述同様ブッシュ4を介して回動自在に支持している。
【0016】
リアボディ32には、第2ドライブギヤ21及び第2ドリブンギヤ22のギヤ部212、222を収容し、ポンプモータ作用を営ませる第2ギヤ収容室321と、この第2ギヤ収容室321の底面32aに設けられ、ブッシュ4を介してこれら第2ドライブギヤ21及び第2ドリブンギヤ22におけるギヤ軸211、221の他端部21b、22bを回動自在にそれぞれ支持する軸受穴322、323が設けられている。
【0017】
なお、図2中符号7は、側板を示しており、符号71は3の字状に形成された周知のガスケットを示している。
しかして本実施例では、図4に示すように前記ブッシュ4の内面4aに溝41を設けるとともに、該溝41を利用して、ギヤ部側面から漏洩した作動液が各ブッシュ4を通って前記吸込ポート6に戻るための作動液循環経路5を形成している。
【0018】
この溝41は、図4、図5に示すように、各ブッシュ4の内面4aにおいて、ギヤ軸111、121、211、221からのラジアル荷重を受圧する部位の反対側であって、なおかつ前記ガスケット71にその開口端面が接触しない部位に設けるようにしている。さらに、本実施例では溝41の深さを、その設けられた部分のブッシュ4の厚みが、設けられてない部分の厚みと大きく変わらない程度となるように設定している。
【0019】
作動液循環経路5は、図2に示すように、リアボディ32に設けられた前記軸受穴322と軸受穴323とを連通する第1連通流路51と、第1、第2ドリブンギヤ12、22にそれぞれ形成した前記貫通孔53、52と、フロントカバー31に設けられた第1ドリブンギヤ12のギヤ軸121を支持する軸受穴312を吸込ポート6に連通する第2連通流路54とから少なくとも構成するようにしている。第1連通流路51は、図2、図4、図6に示すように、前記軸受穴322、323の内側面にそれぞれ設けた側面溝511と、第2ギヤ収容室321の底面32aに設けられ、側面溝511の前記底面32aへの開口端部同士を連通させる端面溝512とから構成したものである。
【0020】
このように構成した本実施例の歯車ポンプ100において、軸受潤滑に係る作動液の作用を以下に説明する。例えば、この歯車ポンプ100がポンプ作用を営み、各ギヤ11、12、21、22が回転している間は、側板7等を通って作動液が内部に漏洩し、この漏洩した作動液が各ブッシュ4とギヤ軸111、121、211、221との間の潤滑を行う。この際、ブッシュ4に溝41が設けられているので、各ブッシュ4とギヤ軸111、121、211、221との隙間に確実に潤滑油が供給され潤滑性が向上する。さらにその結果、許容軸受荷重が増大するという効果も奏する。またこの溝4aは、ギヤ軸111、121、211、221の支持に寄与しない部分に設けられているので、ブッシュ4によるの軸支持能力が低減することを防止している。
【0021】
一方、第2ドライブギヤ21を枢支するブッシュ4や、第1ドライブギヤ11のギヤ軸111の他端部11bを枢支するブッシュを通過した作動油は、第1ドライブギヤ11のギヤ軸111が中実であるため、そのほとんどが図7中矢印A、Bに示すようにスプライン結合部等を通過し、ギヤ軸211の他端部21bを枢支する軸受穴322に流入する。しかして、この軸受穴322には、他方の軸受穴323に連通する第1連通流路51が設けられているので、この作動油は、この第1連通流路51を通じて他方の軸受穴323に流れ込み(同図中矢印Cに示す)、ここからさらに矢印Dに示すように、ギヤ軸221の貫通孔52、ギヤ軸122の貫通孔53、第2連通流路54を通って同図には図示されない吸込ポート6に戻ることになる。もちろん、前記以外のブッシュ4を通過した作動油も同図中矢印E、F、G等に示すような経路で吸込ポート6に戻ることになる。このように潤滑用の作動油は、吸込ポート6に負圧が発生することから、滞留することなく強制的に循環する。したがって、作動油に放熱作用を営ませることができるだけでなく、その劣化を遅延させることにもなる。
【0022】
このように本実施例によれば、作動液の潤滑と循環を好適に行わせることができるので、ブッシュ4の許容軸受荷重が増大するだけでなく、ひいては製品の耐久性向上にも寄与させることができるようになる。
一方、本実施例では、図8、図9に示すように、他の油圧回転機関であるピストンポンプPPの後面PPbとフロントカバー前面31aとを密着させ、吸込ポート6を共有させるとともに軸同士を連結できるように構成している。
【0023】
この軸同士の連結部8は、スプライン溝sp1を有するギヤ軸111の一端部11aと、同じくスプライン溝sp3を有するピストンポンプPPのドライブ軸PP1の一端部PPaとを、これらスプライン溝sp1、sp3に嵌合するカップリング81を介して連結してなるものである。しかして、このカップリング81は、フロントカバー31の前面側から軸受孔311に嵌まり込むカラー状の取付インロー82によって位置決めされるようにしている。
【0024】
そして、本実施例では、図10に示すように、軸受孔311と吸込ポート6とを連通する潤滑用流路9を設け、吸込ポート6から前記連結部8に作動油が流入するように構成している。具体的にこの潤滑用流路6は、軸受孔311と吸込ポート6との間の、壁の一部分を欠如させることにより形成している。
このようなものであれば、従来何ら潤滑が行われずエアー溜りとなっていたこの連結部8に、吸込ポート6の負圧を利用して、作動油を強制的に供給することができるようになり、連結部8における潤滑性の向上とフレッティング等の摩耗を有効に防止することができるようになる。
【0025】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されるものではない。例えば、適用される歯車ポンプは2連のものに限られず、単連のものでも、あるいは3連以上のものでも構わない。また、溝は1つのブッシュに複数本設けてもよいし、この溝を利用した作動液循環経路も実施例に限られるものではない。潤滑用流路も連結部に作動油が流入するように構成されてあればよい。更に言えば、作動液循環経路と潤滑用流路とを両方、同一歯車ポンプに設けなければならないものではなく、必要に応じていずれか一方のみを備えた構成にしても構わない。もちろん歯車モータに本発明を適用して同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【0026】
この他、本発明は上述した図示例に限られず本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0027】
【発明の効果】
本発明に係る歯車ポンプまたはモータは、以上のような構成であるから、効率や耐久性の向上を図ることが可能になる。
特に、請求項1に係る発明によれば、ブッシュに設けられた溝によって、ブッシュとギヤ軸との隙間に確実に潤滑油が供給され潤滑性が向上する。さらにその結果、許容軸受荷重が増大するという効果も奏する。さらに、この溝を利用した作動液循環経路が負圧となる吸込ポートに最終的に連通するので、潤滑用の作動液は強制的に循環させられ滞留することがなくなる。したがって、作動液の劣化を遅延させることができるだけでなく、循環する作動液に放熱作用を営ませることも可能になる。加えて、溝を設ける部位を、ギヤ軸からのラジアル荷重を受圧する部位の反対側に設定しているので、ブッシュの軸支持能力を低減させないようにすることができる。
【0028】
また、請求項2に係る発明によれば、駆動軸と他の回転機関とを連結するためにフロントカバーに設けられた連結部に、吸込ポートを連通させる潤滑用流路を設けているので、従来何ら潤滑が行われずエアー溜りとなっていたこの連結部に、吸込ポートの負圧を利用して、作動液を強制的に供給することができるようになり、連結部における潤滑性の向上とフレッティング等の摩耗を有効に防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における歯車ポンプモータの正面図。
【図2】同実施例における歯車ポンプモータの側断面図。
【図3】同実施例における歯車ポンプモータの背面図。
【図4】図2におけるX−X線断面図。
【図5】同実施例のブッシュを示す正面図。
【図6】同実施例におけるリアボディを主に示す部分斜視図。
【図7】同実施例の作動液の循環経路を示す経路説明図。
【図8】同実施例においてのピストンポンプを取り付けた状態を示す全体側面図。
【図9】同実施例における連結部を示す部分側断面図。
【図10】図1におけるY−Y線部分断面図。
【符号の説明】
100…液圧歯車ポンプまたはモータ
111、121、211、221…ギヤ軸
31…フロントカバー
31a…フロントカバー前面
4…ブッシュ
4a…内面
41…溝
5…作動液循環経路
6…吸込ポート
8…連結部
9…潤滑用流路

Claims (2)

  1. フロントカバー前面に開口する吸込ポートを有し、ギヤ軸の軸受に円筒形状のブッシュを利用している液圧歯車ポンプであって、前記ブッシュの内面に溝を設けるとともに、該溝を利用して、ギヤ側面から漏洩した作動液が各ブッシュを通って前記吸込ポートに戻るための作動液循環経路を内部に形成し、さらに前記溝を設ける部位を、ギヤ軸からのラジアル荷重を受圧する部位の反対側に設定したことを特徴とする液圧歯車ポンプ。
  2. フロントカバー前面に開口する吸込ポートを有した液圧歯車ポンプ又はモータであって、前記吸込ポートから作動液を駆動軸と他の回転機関との連結部に流入させる潤滑用流路を、軸受孔と吸込ポートとの間の壁の一部分を欠如させることにより設けたことを特徴とする液圧歯車ポンプまたはモータ。
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