JP3563955B2 - ハーフミラーを有した観察系及び該ハーフミラーの製造方法 - Google Patents

ハーフミラーを有した観察系及び該ハーフミラーの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶画像等の表示手段に表示した映像情報と外景の画像情報の双方とハーフミラーを介して同一視野で観察する例えばヘッドマウントディスプレーやビデオカメラ等の撮影装置に好適なハーフミラーを有した観察系及び該ハーフミラーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、互いに異なった方向に表示されている画像情報を同一視野で同時に観察する観察系には、光束を複数に分割する為のハーフミラー面が用いられている。例えば、液晶画像等の表示手段に表示した画像情報と外景の画像情報の双方を同一視野で観察するヘッドマウントディスプレーやビデオカメラ等の撮影装置に搭載する観察系の光学系には液晶画像を観察者の目に向かって反射する一方で、外界画像を透過させる為にハーフミラーを備えている。このようなハーフミラーとしては、誘電体材料からなる高屈折率膜と低屈折率膜を交互に積層した誘電体多層膜や、金属膜を誘電体膜でサンドイッチした金属ハーフミラー等が多く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の誘電体多層膜や金属膜より成るハーフミラーの製造技術によれば、誘電体多層膜では、広い可視光域で比較的高い反射率を得るために膜の層数を多くする必要があった。一般に膜の層数を多くすると製造が難しくなり、又、製造コストが上昇するうえに誘電体多層膜の偏向特性や、分光特性の平坦性が低下するという問題点が生じてくる。
【0004】
又、金属膜では、偏向特性や分光特性の平坦性は比較的良いものの、光を吸収する現象があり、透過光と反射光への光量の分割による光学特性の効率が低下するという問題点があった。
【0005】
このように、従来のハーフミラー面の製造技術では、光学特性と製造方法の双方において満足できるハーフミラーを得ることが難しかった。
【0006】
本発明は、広い可視光域で平坦な分光特性と、光の吸収の少ない優れた光学特性を有し、製造工程が簡単なハーフミラーを有した観察系及び該ハーフミラーの製造方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の観察系は、表示手段で表示された可視域の映像情報を基板上にハーフミラーを形成してなる観察光学系を用いて観察者の眼球に導光して該映像情報の像を観察する観察系であって、該ハーフミラーはクロム膜と該クロム膜に積層された銀膜とからなる金属膜と複数の誘電体膜から成っていることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項の発明において、前記クロムの膜厚が、0.1〜10nmの範囲からなることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記誘電体膜の材料が、SiO,SiO2 ,MgF2 ,Al2 O3 ,ZrO2 ,TiO2 ,Ta2O5 ,ZnSおよびこれらの混合物の中から選定されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項の発明において、前記観察光学系はプリズム体より成る光学素子とシースルー用のプリズム体とを有し、該光学素子は前記表示手段からの光束を入射させる入射面、該入射面からの光束を一部に全反射面を利用した前面、そして、該前面からの光束を該前面側へ反射させる反射面とを有しており、該プリズム体は外景の画像情報からの光束を入射させる入射面と、該光学素子の反射面と略同形状の出射面とを有しており、該光学素子の反射面と該プリズム体の出射面とは対向しており、前記ハーフミラーは該光学素子の反射面又は該プリズム体の出射面に設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記外景の画像情報からの光束を前記プリズム体の入射面より入射させ、該プリズム体の出射面より出射させた後、前記光学素子の反射面と前面を介して観察者側に導光していることを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記光学素子と前記プリズム体は接合されていることを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明は、請求項4、5又は6の発明において、前記光学素子の前面は、球面又は非球面又はトーリック面より成っていることを特徴としている。
【0014】
請求項8の発明は、請求項4、5、6又は7の発明において、前記光学素子の反射面は球面又は非球面又はトーリック面より成っていることを特徴としている。
【0015】
請求項9の発明のハーフミラーの製造方法は、表示手段で表示された可視域の映像情報を観察者の眼球に導光して該映像情報を観察する為に用いられるハーフミラーを製造する際、基板面上にクロム膜と該クロム膜に積層された銀膜とからなる金属膜を成膜する工程と誘電体膜を成膜する工程とを有し、各工程中に該基板を無加熱として製造することを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は本発明のハーフミラーを用いた観察系の実施形態1の光路を示す要部断面図である。
【0018】
図中、5は観察者、3は表示手段であり、液晶表示素子等から成り、可視域の映像情報を表示している。表示手段3は、例えばCD−ROMやビデオカメラ等の映像情報供給手段(不図示)からの信号に基づいて映像情報を表示している。
【0019】
Pは観察光学系であり、プリズム体より成る拡大用の光学素子1とシースルー用のプリズム体2とを有している。光学素子1は平面、又は球面より成る入射面1a、平面、球面又はトーリック非球面より成る一部に全反射を利用した前面1b、そして平面、球面又はトーリック面より成る反射面1cより成っている。
【0020】
プリズム体2は外景の画像情報からの光束を入射させる平面、球面又はトーリック面より成る入射面2aと光学素子1の反射面1cと同形状の平面、球面又はトーリック面より成る出射面2bとを有している。
【0021】
光学素子1の反射面1c又はプリズム体2の出射面2bはハーフミラー面となっている。本実施形態では反射面1cをハーフミラー面としている。ハーフミラー面は基板面上に複数の金属膜と複数の誘電体膜からなっている。4は外景の画像情報である。6は光軸(中心軸)であり、これは眼球5aの光軸と一致している。表示手段3から眼球5aに至る光路中の各要素で、表示手段3で表示した映像情報の虚像を観察している。
【0022】
光学素子1とプリズム体2はアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂等のプラスチック樹脂材料によって一体成形している。本実施形態では表示手段3で表示された映像情報に基づく光束(可視光束)を光学素子1にその入射面1aより導入している。そして光学素子1の前面1bで全反射させた後に、ハーフミラー面1cで反射集光して前面1bを通過させて観察者5の眼球5aに導光している。
【0023】
又、外景の画像情報4をプリズム体2の入射面2aと出射面2b、光学素子1のハーフミラー面1c、そして前面1bを介して観察している。このとき、プリズム体2の入射面2aの曲率を適切に設定することにより、外景の画像情報4と表示手段3の映像情報の虚像とを空間的に重畳して双方を同一視野で同一視度として観察するようにしている。
【0024】
尚、光学素子1の反射面1cをハーフミラー面としたが、反射面1cを透過面としプリズム体2の出射面2bをハーフミラー面としても良い。
【0025】
本実施形態におけるハーフミラーは基板面上に複数の金属膜と複数の誘電体膜より構成している。そして複数の金属膜が、クロムと銀からなり、このときのクロム膜厚が0.1〜10nmの範囲内となるようにしている。このときのクロムと銀の2層からなる金属膜のクロム膜は、基板または基板に成膜された誘電体膜に対する銀膜の結合力(付着性)を強化すると共に欠陥のない銀膜を成膜するのに役立つものであり、これによって、極めて優れた光学特性を有するハーフミラーを得ている。
【0026】
又、誘電体膜の材料が、SiO,SiO ,MgF ,Al ,ZrO ,TiO ,Ta ,ZnSおよびこれらの混合物の中から選定している。
【0027】
そしてハーフミラーを製造するときには基板面上に複数層を成膜する工程と誘電体膜を成膜する工程を有し、各工程中において基板を無加熱としている。
【0028】
図2は図1のハーフミラー面1c(2b)の膜構成を示す模式的断面図である。本実施形態のハーフミラー面の膜構成は、アクリル樹脂(プラスチック)からなる基体10の表面にまず2層から成る誘電体膜のSiO 膜11、ZrO 膜12と、その上に2層から成る金属膜のCr膜13、Ag膜14と、その上に3層から成る誘電体膜のAl 膜15、ZrO 膜16、SiO 膜17を順次設けた全体として7層の膜構成より成っている。
【0029】
次に本実施形態における各層のこの他の構成及びそれらの特徴について説明する。
【0030】
第1層11はプラスチックの基板10との密着性が良く、熱膨張や吸湿膨張による変形を緩和できる珪素酸化物のSiOやSiO 膜が適用可能である。
【0031】
第2層12は屈折率が高く、吸収の少ないZrO やTiO を主成分とした膜で、膜厚により選択的にAg膜の内面反射を減少させられ、分光特性を平坦化している。
【0032】
第3層13のCr膜は上部(第4層)のAg膜の付着性を高め、欠陥の少ないAg膜を形成させる働きを有するもので、膜厚は0.1〜10nmの範囲が好ましい。膜厚0.1nm以下では効果が少なく、また膜厚の増加とともにCr固有の吸収が増大する。そこで、本実施形態では光学式と水晶式の膜厚計を併用して、極めて高精度の膜厚制御を行っている。
【0033】
第4層14のAg膜は膜厚により反射光量と透過光量の分割比率を容易に変えられ、ハーフミラーとしての膜厚は10nm〜40nm範囲としている。
【0034】
第5層15のAl 膜はAg膜との付着性が強く、緻密な膜質で大気中等の水分の進入を低減し、第6層16のZrO を主成分とした膜は膜厚により分光特性を平坦化させ、第7層17のSiO 膜は膜強度が硬く、耐溶剤性を向上させている。
【0035】
尚、上記すべての薄膜層の成膜は真空蒸着法によって基板を加熱することなく連続的に行い、これによって成膜後直ちに真空室から取り出すことができるようにしている。すなわち、本実施形態では加熱や冷却のための待機時間が不要であるために製造サイクルが短くて製造工程も極めて簡単である。
【0036】
次に本発明に係るハーフミラー面の膜構成の具体的な製造方法について説明する。
【0037】
(実施例1)
真空蒸着装置にアクリル樹脂から成るプリズム状の基体を入れ、基体を加熱することなく1×10−3Pa以下の圧力に真空排気した後、1層にSiO膜を160nm、2層にZrO を主成分とした混合物からなるZrO 膜を80nm、3層にCr膜を2nm、4層にAg膜を32nm、5層にAl 膜を20nm、6層にZrO を主成分とした混合物からなるZrO 膜を70nm、7層にSiO膜を10nm、それぞれ成膜後、真空蒸着装置より取り出した。次にシースルー用のプリズム体2と接合して、反射率と透過率の比率を8:2とした観察系のハーフミラーを製作した。
【0038】
図3はハーフミラーの入射角度25度における内部反射の分光反射率Rと分光透過率Tを示すグラフである。この図から解かるように本実施形態では可視光域の波長400〜660nm間では平坦な分光特性で、波長500nmの反射率は77.7%、透過率は19.4%、吸収は2.9%であり、吸収の少ない優れた光学特性のハーフミラーを達成している。
【0039】
(実施例2)
真空蒸着装置にアクリル樹脂からなるプリズム状の基体を入れ、基体を加熱することなく1×10−3Pa以下の圧力に真空排気した後、1層にSiO膜を160nm、2層にZrO を主成分とした混合物からなるZrO 膜を80nm、3層にCr膜を2nm、4層にAg膜を26nm、5層にAl 膜を20nm、6層にZrO 膜を主成分とした混合物からなるZrO 膜を70nm、7層にSiO膜を10nmそれぞれ成膜後、真空蒸着装置より取り出した。次にシースループリズムと接合して、反射率と透過率の比率を7:3とした観察系のハーフミラーを製作した。
【0040】
ハーフミラーの入射角度25度における内部反射の分光特性は、可視光域の波長400〜660nm間では平坦な分光特性で、波長500nmの反射率は68.5%、透過率は18.5%、吸収は3.0%であり、吸収の少ない優れた光学特性のハーフミラーを達成している。
【0041】
(実施例3)
真空蒸着装置にポリカーボネート樹脂からなるプリズム状の基体を入れ、基体を加熱することなく1×10−3Pa以下の圧力に真空排気した後、1層にSiO膜を160nm、2層にCr膜を2nm、3層にAg膜を32nm、4層にCr膜を2nm、5層にAl 膜を150nm、6層にSiO膜を10nmそれぞれ成膜後、真空蒸着装置より取り出した。次にシースループリズムとエアーギャップを設けて組み立て、反射率と透過率の比率を8:2とした観察系のハーフミラーを製作した。
【0042】
ハーフミラーの入射角度25度における内部反射の分光特性は、可視光域の波長400〜660nm間では平坦な分光特性では、波長500nmの反射率は77.6%、透過率は19.7%、吸収は2.7%であり、吸収の少ない優れた光学特性のハーフミラーを達成している。
【0043】
次に本実施形態によらない膜構成のハーフミラーを参考の為、製作して本発明に係るハーフミラー面と比較してみた。
【0044】
まず、真空蒸着装置にアクリル樹脂からなるプリズム状の基体を入れ、基体を加熱することなく1×10−3Pa以下の圧力に真空排気した後、1層にSiO膜を160nm、2層にZrO を主成分とした混合物からなるZrO 膜を80nm、3層にAg膜を32nm、4層にZrO 膜を主成分とした混合物からなるZrO 膜を70nm、5層にSiO膜を10nmそれぞれ成膜後、真空蒸着装置より取り出した。次にシースループリズムと接合して、反射率と透過率の比率を8:2とした観察系のハーフミラーを製作した。
【0045】
ハーフミラーの入射角度25度における内部反射の分光特性は、可視光域の波長400〜650間では平坦な分光特性で、波長500nmの反射率は72.5%、透過率は20.4%、吸収は7.1%であり、Ag膜の特性から離れた吸収の多いハーフミラーであった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば以上のように各要素を設定することによって、広い可視光域で平坦な分光特性と、光の吸収の少ない優れた光学特性を有し、製造工程が簡単なハーフミラーを有した観察系及び該ハーフミラーの製造方法を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のハーフミラーを有した観察系の実施形態1の要部概略図
【図2】本発明に係るハーフミラーの膜構成の模式的断面図
【図3】本発明に係るハーフミラーの分光特性の説明図
【符号の説明】
P 観察光学系
1 光学素子
2 プリズム体
3 表示手段
4 外景の画像情報
5 観察者
10 基板
11〜17膜
1a 入射面
1b 前面
1c 出射面(ハーフミラー面)
2a 入射面
2b 出射面

Claims (9)

  1. 表示手段で表示された可視域の映像情報を基板上にハーフミラーを形成してなる観察光学系を用いて観察者の眼球に導光して該映像情報の像を観察する観察系であって、該ハーフミラーはクロム膜と該クロム膜に積層された銀膜とからなる金属膜と複数の誘電体膜から成っていることを特徴とするハーフミラーを有した観察系。
  2. 前記クロムの膜厚が、0.1〜10nmの範囲からなることを特徴とする請求項のハーフミラーを有した観察系。
  3. 前記誘電体膜の材料が、SiO,SiO2 ,MgF2 ,Al2 O3 ,ZrO2 ,TiO2 ,Ta2O5 ,ZnSおよびこれらの混合物の中から選定されていることを特徴とする請求項1又はのハーフミラーを有した観察系。
  4. 前記観察光学系はプリズム体より成る光学素子とシースルー用のプリズム体とを有し、該光学素子は前記表示手段からの光束を入射させる入射面、該入射面からの光束を一部に全反射面を利用した前面、そして、該前面からの光束を該前面側へ反射させる反射面とを有しており、該プリズム体は外景の画像情報からの光束を入射させる入射面と、該光学素子の反射面と略同形状の出射面とを有しており、該光学素子の反射面と該プリズム体の出射面とは対向しており、前記ハーフミラーは該光学素子の反射面又は該プリズム体の出射面に設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項のハーフミラーを有した観察系。
  5. 前記外景の画像情報からの光束を前記プリズム体の入射面より入射させ、該プリズム体の出射面より出射させた後、前記光学素子の反射面と前面を介して観察者側に導光していることを特徴とする請求項のハーフミラーを有した観察系。
  6. 前記光学素子と前記プリズム体は接合されていることを特徴とする請求項5のハーフミラーを有した観察系。
  7. 前記光学素子の前面は、球面又は非球面又はトーリック面より成っていることを特徴とする請求項4、5又は6のハーフミラを有した観察系。
  8. 前記光学素子の反射面は球面又は非球面又はトーリック面より成っていることを特徴とする請求項4、5、6又はのハーフミラーを有した観察系。
  9. 表示手段で表示された可視域の映像情報を観察者の眼球に導光して該映像情報を観察する為に用いられるハーフミラーを製造する際、基板面上にクロム膜と該クロム膜に積層された銀膜とからなる金属膜を成膜する工程と誘電体膜を成膜する工程とを有し、各工程中に該基板を無加熱として製造することを特徴とするハーフミラーの製造方法。
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