JP2012009561A - 有機薄膜太陽電池モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換層を用いて意匠性を高めるとともに、安定的に良好な太陽電池性能を示すことが可能な有機薄膜太陽電池モジュールを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上にパターン状に形成され、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換部を有する光電変換層と、上記光電変換層を覆うように形成された第2電極層と、上記第1電極層および上記第2電極層の間にパターン状に形成され、上記光電変換部の間に配置された絶縁層とを有し、上記光電変換部と上記第1電極層または上記第2電極層との間に、上記光電変換部の種類に応じてバッファー層が形成されていることを特徴とする有機薄膜太陽電池モジュールを提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、意匠性を有する有機薄膜太陽電池モジュールに関するものである。
従来、太陽電池はその受光面が1色で構成されているのが通常である。近年、太陽電池モジュールの開発が盛んになされており、デザイン性の向上や景観との調和などの目的により、文字、記号、図形、模様等を表示し、意匠性を持たせることが試みられている。
例えば、色素増感太陽電池モジュールにおいて、多孔質酸化物半導体層に異なる種類の色素を担持させて2種以上の色を持つ単位太陽電池素子を作製し、この2種以上の色を持つ単位太陽電池素子を特定の文字、記号、図形のパターンを形成するようにモザイク状に並べることで、意匠性を持たせる技術が開示されている(特許文献1参照)。
特開2006−179380号公報
有機薄膜太陽電池モジュールにおいては、同一基板上に、吸収波長領域が異なる複数種類の有機材料を用いて複数種類の光電変換層を形成し、これらの複数種類の光電変換層を文字、記号、図形、模様等の任意のパターンが表示されるように配置することにより、意匠性に優れたものとすることが可能である。
このような有機薄膜太陽電池モジュールにおいては、同一基板上の対向する電極間に複数種類の光電変換層が平面的に配列されて挟持された構成となり、複数種類の太陽電池セルが並列に接続された等価回路として取り扱うことができる。これらの太陽電池セルでは、各光電変換層に用いられる有機材料の酸化還元電位が異なることに起因して、太陽電池としての電流−電圧特性が異なるものとなる。
太陽電池は固有の電流−電圧特性を有しており、電流−電圧特性曲線上の座標であり、かつ、電圧/電流の値が外部負荷の抵抗値と一致する座標に相当する電流および電圧が、動作電流および動作電圧となる。有機薄膜太陽電池の場合、複数個の太陽電池セルが並列に接続された太陽電池モジュールでは、太陽電池モジュールの電流−電圧特性曲線上の座標であり、かつ、電圧/電流の値が外部負荷の抵抗値と一致する座標に相当する電圧が、太陽電池モジュールの動作電圧となる。そして、各太陽電池セルの電流−電圧特性曲線上の座標において、太陽電池モジュールの動作電圧のときの電流が、各太陽電池セルの動作電流となる。そのため、電流−電圧特性が異なる複数種類の太陽電池セルが並列に接続されている場合、異なる電流−電圧特性を有する太陽電池セルでは、同じ外部負荷の抵抗値に対する太陽電池モジュールの動作電圧のときの太陽電池セルの動作電流が一致しないことになる。
したがって、電流−電圧特性が異なる複数種類の太陽電池セルが並列に接続されている場合、ある外部抵抗のときの太陽電池モジュールの動作電圧において、太陽電池セルの動作電流が一致しないことによって、ある種類の太陽電池セルでは順方向に電流が流れ、他の種類の太陽電池セルでは逆方向に電流が流れるという問題が起こることがある。この場合、逆方向に電流が流れる太陽電池セルが存在することで、順方向に電流が流れる太陽電池セルの動作電流が減少し、太陽電池モジュール全体の出力特性が低下するという問題がある。また、逆方向に電流が流れることにより、発熱・発火のおそれや、短絡破壊に至る可能性もある。
また、電流−電圧特性が異なる複数種類の太陽電池セルが並列に接続されている場合、ある外部抵抗のときの太陽電池モジュールの動作電圧において、太陽電池セルの動作電流が一致しないことによって、ある種類の太陽電池セルでは出力が非常に小さくなることがある。その結果、全ての太陽電池セルの出力の合計が小さくなり、太陽電池モジュール全体の出力特性が低下するという問題が生じる。また、全ての太陽電池セルで出力が大きくなるように、太陽電池モジュールを動作するのは非常に困難であることが多い。
さらに、電流−電圧特性が異なる複数種類の太陽電池セルが並列に接続されている場合、電流−電圧特性が異なる太陽電池セルが相互に干渉することで、太陽電池性能が劣化していくという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換層を用いて意匠性を高めるとともに、安定的に良好な太陽電池性能を示すことが可能な有機薄膜太陽電池モジュールを提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上にパターン状に形成され、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換部を有する光電変換層と、上記光電変換層を覆うように形成された第2電極層と、上記第1電極層および上記第2電極層の間にパターン状に形成され、上記光電変換部の間に配置された絶縁層とを有し、上記光電変換部および上記第1電極層の間ならびに上記光電変換部および上記第2電極層の間の少なくともいずれか一方に、上記光電変換部の種類に応じてバッファー層が形成されていることを特徴とする有機薄膜太陽電池モジュールを提供する。
本発明によれば、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換部を有するので、これらの複数種類の光電変換部を文字、記号、図形、模様等の任意のパターンが表示されるように配置することにより意匠性に優れたものとすることが可能である。また本発明によれば、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとした場合に、光電変換部の種類に応じて所定のバッファー層が形成されていることにより、太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することが可能である。したがって、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において、全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れるのを防止したり、全ての太陽電池セルの出力の合計を大きくしたりすることが可能となる。さらには、電流−電圧特性が異なる太陽電池セルが相互に干渉することで太陽電池性能が劣化するのを防ぐことができ、安定的に太陽電池特性を発揮することが可能となる。
上記発明においては、上記光電変換部の種類毎に異なる材料を含有する上記バッファー層が形成されていてもよい。バッファー層の材料の違いによって各太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することができ、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において、全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れるのを防止したり、全ての太陽電池セルの出力の合計を大きくしたりすることが可能となるからである。
また上記発明においては、一の種類の上記光電変換部上には上記バッファー層が形成されておらず、他の種類の上記光電変換部上には上記バッファー層が形成されていてもよい。バッファー層の形成の有無によって太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することができ、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において、全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れるのを防止したり、全ての太陽電池セルの出力の合計を大きくしたりすることが可能となるからである。
さらに本発明においては、一つの上記光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとした場合、上記太陽電池セルの開放電圧が、上記第1電極層および上記第2電極層の間に上記光電変換部のみを挟持させた基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなるような材料を、上記バッファー層が含有することが好ましい。バッファー層の材料の選択が容易だからである。
本発明においては、意匠性に優れ、宣伝や広告等に利用することができる種々の表示機能が付加された多機能な有機薄膜太陽電池モジュールを実現することが可能であるという効果を奏する。また、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換部を有する光電変換層を備える有機薄膜太陽電池モジュールにおいて、安定的に太陽電池特性を発揮することが可能であるという効果を奏する。
本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの一例を示す概略平面図および断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールにおける第1電極層の一例を示す概略平面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールにおける絶縁層の一例を示す概略平面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールにおける光電変換層の一例を示す概略平面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールにおけるバッファー層の一例を示す概略平面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの他の例を示す概略平面図および断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールにおける第1電極層、絶縁層、光電変換層およびバッファー層の他の例を示す概略平面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの他の例を示す概略断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの電流−電圧特性の一例を示すグラフである。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの電流−電圧特性の他の例を示すグラフである。 本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの他の例を示す概略断面図である。
以下、本発明の有機薄膜太陽電池モジュールについて詳細に説明する。
本発明の有機薄膜太陽電池モジュールは、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上にパターン状に形成され、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換部を有する光電変換層と、上記光電変換層を覆うように形成された第2電極層と、上記第1電極層および上記第2電極層の間にパターン状に形成され、上記光電変換部の間に配置された絶縁層とを有し、上記光電変換部および上記第1電極層の間ならびに上記光電変換部および上記第2電極層の間の少なくともいずれか一方に、上記光電変換部の種類に応じてバッファー層が形成されていることを特徴とするものである。
本発明の有機薄膜太陽電池モジュールについて図面を参照しながら説明する。
図1(a)、(b)は本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの一例を示す概略平面図および断面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。
図1(a)、(b)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1は、基板2と、基板2上に形成された第1電極層3と、第1電極層3上に格子状に形成され、開口部を有する絶縁層4と、第1電極層3上にパターン状に形成され、絶縁層4の開口部に配置され、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換部(5a、5b、5c)を有する光電変換層5と、光電変換部(5a、5b、5c)上にそれぞれ形成され、光電変換部(5a、5b、5c)の種類毎に異なる材料を含有するバッファー層(6a、6b、6c)と、バッファー層(6a、6b、6c)および絶縁層4上に形成された第2電極層8とを有している。なお、図1(a)において、第2電極層の一部は省略され、バッファー層の一部は破線で示されている。
図2〜図5は、図1(a)、(b)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1を構成する各部材を示す概略平面図である。
第1電極層3は、図2に示すように、基板2上に一面に形成されている。同様に、第2電極層8も、図1(a)に示すように、光電変換層5およびバッファー層(6a、6b、6c)を覆うように一面に形成されている。また、絶縁層4は、図3に示すように第1電極層3上に格子状に形成され、図1(b)に示すように第1電極層3および第2電極層8を絶縁している。
光電変換層5は、図4に示すように、吸収波長領域が異なる3種類の第1光電変換部5a、第2光電変換部5bおよび第3光電変換部5cを有している。各光電変換部(5a、5b、5c)は規則的に配列されており、第1光電変換部5a、第2光電変換部5b、第3光電変換部5cは任意の絵柄が表示されるように配置されている。
図1(b)、図4および図5に示すように、光電変換部(5a、5b、5c)上にはそれぞれ、光電変換部(5a、5b、5c)の種類毎に異なる材料を含有するバッファー層(6a、6b、6c)が形成されている。第1光電変換部5a上には第1光電変換部用バッファー層6aが形成され、第2光電変換部5b上には第2光電変換部用バッファー層6bが形成され、第3光電変換部5c上には第3光電変換部用バッファー層6cが形成されている。これらのバッファー層(6a、6b、6c)の材料は、光電変換部(5a、5b、5c)の種類に応じて選択されている。
図1(a)、(b)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1において、基板2および第1電極層3が透明性を有する場合には基板2側が受光面となり、一方、第2電極層8が透明性を有する場合には第2電極層8側が受光面となり、受光面に図4に示すような複数種類の光電変換部(5a、5b、5c)で構成される任意の絵柄を表示することができ、色彩豊かな有機薄膜太陽電池モジュールとすることが可能である。さらに、基板2、第1電極層3および第2電極層8がいずれも透明性を有する場合には、色彩が鮮やかでシースルーの有機薄膜太陽電池モジュールとすることが可能である。
また、光電変換部(5a、5b、5c)上には光電変換部(5a、5b、5c)の種類毎に所定のバッファー層(6a、6b、6c)が積層されているので、一つの光電変換部(5a、5bまたは5c)が設けられている領域を一つの太陽電池セル10とした場合、バッファー層(6a、6b、6c)によって各太陽電池セル10の電流−電圧特性を調整することが可能である。したがって、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において、全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れるのを防止したり、全ての太陽電池セルの出力の合計を大きくしたりすることが可能となる。さらには、電流−電圧特性が異なる太陽電池セルが相互に干渉することで太陽電池性能が劣化するのを防ぐことが可能となる。
図6(a)、(b)は本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの他の例を示す概略平面図および断面図であり、図6(b)は図6(a)のB−B線断面図である。図6(a)、(b)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1は、基板2と、基板2上に形成された第1電極層3と、第1電極層3上にパターン状に形成され、開口部を有する絶縁層4と、第1電極層3上にパターン状に形成され、絶縁層4の開口部に配置され、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換部(5a、5b)を有する光電変換層5と、光電変換部(5a、5b)上にそれぞれ形成され、光電変換部(5a、5b)の種類毎に異なる材料を含有するバッファー層(6a、6b)と、バッファー層(6a、6b)および絶縁層4上に形成された第2電極層8とを有している。なお、図6(a)において、第2電極層の一部は省略され、バッファー層の一部は破線で示されている。
図7(a)〜(d)は、図6(a)、(b)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1を構成する各部材を示す概略平面図である。
第1電極層3は、図7(a)に示すように、基板2上に一面に形成されている。同様に、第2電極層8も、図6(a)に示すように、光電変換層5およびバッファー層(6a、6b)を覆うように一面に形成されている。また、絶縁層4は、図7(b)に示すように第1電極層3上にパターン状に形成され、図6(b)に示すように第1電極層3および第2電極層8を絶縁している。
光電変換層5は、図7(c)に示すように、吸収波長領域が異なる2種類の第1光電変換部5aおよび第2光電変換部5bを有し、第1光電変換部5aおよび第2光電変換部5bは文字「A」が表示されるように配置されている。
図6(b)および図7(c)、(d)に示すように、光電変換部(5a、5b)上にはそれぞれ、光電変換部(5a、5b)の種類毎に異なる材料を含有するバッファー層(6a、6b)が形成されている。第1光電変換部5a上には第1光電変換部用バッファー層6aが形成され、第2光電変換部5b上には第2光電変換部用バッファー層6bが形成されている。これらのバッファー層(6a、6b)の材料は、光電変換部(5a、5b)の種類に応じて選択されている。
図6(a)、(b)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1において、基板2および第1電極層3が透明性を有する場合には基板2側が受光面となり、一方、第2電極層8が透明性を有する場合には第2電極層8側が受光面となり、受光面に図7(c)に示すような文字「A」を多様な色彩で表示することができる。さらに、基板2、第1電極層3および第2電極層8がいずれも透明性を有する場合には、色彩が鮮やかでシースルーの有機薄膜太陽電池モジュールとすることが可能である。
また、光電変換部(5a、5b)上には光電変換部(5a、5b)の種類毎に所定のバッファー層(6a、6b)が積層されているので、一つの光電変換部(5aまたは5b)が設けられている領域を一つの太陽電池セル10とした場合、バッファー層(6a、6b)によって各太陽電池セル10の電流−電圧特性を調整することが可能である。したがって、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において、全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れるのを防止したり、全ての太陽電池セルの出力の合計を大きくしたりすることが可能となる。さらには、電流−電圧特性が異なる太陽電池セルが相互に干渉することで太陽電池性能が劣化するのを防ぐことが可能となる。
このように本発明においては、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換部を文字、記号、図形、模様等の任意のパターンが表示されるように配置することで、受光面にて文字、記号、図形、模様等の任意のパターンを多様な色彩で表示することができる。したがって、色彩が豊かであり、表示機能を有し、意匠性に優れる有機薄膜太陽電池モジュールとすることが可能である。
また、光電変換部の種類に応じて所定のバッファー層が積層されているので、バッファー層によって太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することができ、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において、全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れるのを防止したり、全ての太陽電池セルの出力の合計を大きくしたりすることが可能となり、有機薄膜太陽電池モジュールの出力特性を改善することが可能である。さらには、電流−電圧特性が異なる太陽電池セルが相互に干渉することで太陽電池性能が劣化するのを防ぐことができ、安定的に太陽電池特性を維持することが可能となる。また、有機薄膜太陽電池モジュールの安全性も確保することができる。
なお、「一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとする」とは、本発明の有機薄膜太陽電池モジュールにおいては、複数の光電変換部が平面的に並べられているため、複数の太陽電池セルが並列に接続されている等価回路として扱うことができるので、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとみなすものである。
例えば図1(a)、(b)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1では、25個の太陽電池セル10が並列に接続されている等価回路として扱うことができる。また、図6(a)、(b)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1では、3個の太陽電池セル10が並列に接続されている等価回路として扱うことができる。
以下、本発明の有機薄膜太陽電池モジュールにおける各構成について説明する。
1.バッファー層
本発明におけるバッファー層は、光電変換部と第1電極層との間および光電変換部と第2電極層との間の少なくともいずれか一方に、光電変換部の種類に応じて形成されるものである。
バッファー層の配置としては、バッファー層が光電変換部の種類に応じて形成されていればよく、例えば、全種類の光電変換部上にバッファー層が形成されていてもよく、また一の種類の光電変換部上にバッファー層が形成されておらず、他の種類の光電変換部上にバッファー層が形成されていてもよい。具体的には、図1(b)においては、全種類の光電変換部(5a、5b、5c)上にバッファー層(6a、6b、6c)が形成されている。また、図8においては、第2光電変換部5bおよび第3光電変換部5c上にはバッファー層(6G、6B)が形成され、第1光電変換部5a上にはバッファー層が形成されていない。
全種類の光電変換部上にバッファー層が形成されている場合には、光電変換部の種類毎に異なる材料を含有するバッファー層が形成されていることにより、バッファー層の材料の違いによって各太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することができる。また、全種類の光電変換部上にバッファー層が形成されている場合、光電変換部の種類毎に厚みの異なるバッファー層が形成されていることにより、バッファー層の厚みの違いによって各太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することができる。
一方、一の種類の光電変換部上にバッファー層が形成されておらず、他の種類の光電変換部上にバッファー層が形成されている場合には、バッファー層の形成の有無によって太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することができる。
また、バッファー層の形成位置としては、バッファー層が、光電変換部と第1電極層との間および光電変換部と第2電極層との間の少なくともいずれか一方に形成されていればよく、バッファー層が、光電変換部と第1電極層との間のみに形成されていてもよく、光電変換部と第2電極層との間のみに形成されていてもよく、光電変換部と第1電極層との間および光電変換部と第2電極層との間の両方に形成されていてもよい。例えば、図1(b)に示すように、バッファー層(6a、6b、6c)が光電変換部(5a、5b、5c)と第2電極層8との間に形成されていてもよく、図9に示すように、バッファー層(7a、7b、7c)が光電変換部(5a、5b、5c)と第1電極層3との間に形成されていてもよく、図10に示すように、バッファー層(6a、6b、6c)が光電変換部(5a、5b、5c)と第2電極層8との間に形成され、さらにバッファー層(7a、7b、7c)が光電変換部(5a、5b、5c)と第1電極層3との間に形成されていてもよい。
また、図1(b)、図9および図10においては、全種類の光電変換部上に同じ側にバッファー層が形成されているが、光電変換部の種類毎にバッファー層が形成される側は同じであってもよく異なっていてもよい。例えば、図示しないが、一の種類の光電変換部上には光電変換部と第2電極層との間のみにバッファー層が形成され、他の種類の光電変換部上には光電変換部と第1電極層との間のみにバッファー層が形成されていてもよい。
バッファー層は、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとした場合、各太陽電池セルにおいて所望の電流−電圧特性が得られるように、光電変換部の種類に応じて形成される。
2種以上の光電変換部上にそれぞれ光電変換部の種類に応じてバッファー層が形成されている場合には、光電変換部の種類毎に異なる材料を含有するバッファー層が形成されていてもよく、光電変換部の種類毎に厚みの異なるバッファー層が形成されていてもよい。光電変換部の種類毎に異なる材料を含有するバッファー層が形成されている場合、上述したように、バッファー層の材料の違いによって各太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することができる。また、光電変換部の種類毎に厚みの異なるバッファー層が形成されている場合、上述したように、バッファー層の厚みの違いによって各太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することができる。
また、一の種類の光電変換部上にバッファー層が形成されておらず、他の種類の光電変換部上にバッファー層が形成されている場合には、上述したように、バッファー層の形成の有無によって太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することができる。
太陽電池セルの電流−電圧特性の調整としては、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとした場合、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において、全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れないように、バッファー層によって太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することが挙げられる(以下、第1態様とする。)。
また、太陽電池セルの電流−電圧特性の調整としては、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとした場合、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において、全ての太陽電池セルの出力の合計が大きくなるように、バッファー層によって太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することも挙げられる(以下、第2態様とする。)。
以下、各態様に分けて説明する。
(第1態様の太陽電池セルの電流−電圧特性の調整)
本態様において、バッファー層は、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとした場合、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において、全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れないように、光電変換部の種類に応じて形成される。
本態様について、図11(a)に示すような、光電変換層5が2種類の光電変換部(5a、5b)を有し、第2光電変換部5b上のみにバッファー層6bが形成されている有機薄膜太陽電池モジュール1を例に挙げて説明する。図11(a)において、一つの第1光電変換部5aが設けられている領域を一つの第1太陽電池セル10aとし、一つの第2光電変換部5bが設けられている領域を一つの第2太陽電池セル10bとする。また、図11(b)に示すように、第1電極層3および第2電極層8の間に第1光電変換部5aのみが挟持されたものを第1基準太陽電池セル20aとし、図11(c)に示すように、第1電極層3および第2電極層8の間に第2光電変換部5bのみが挟持されたものを第2基準太陽電池セル20bとする。
図12(a)は、図11(b)〜(c)に示す第1基準太陽電池セル20aおよび第2基準太陽電池セル20bのそれぞれの電流−電圧特性、および、これらの第1基準太陽電池セル20aおよび第2基準太陽電池セル20bを並列に接続した基準有機薄膜太陽電池モジュールの電流−電圧特性の一例を示すグラフである。図12(a)に示すように、ある外部抵抗Rmのときの基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧Vmにおいて、第2基準太陽電池セルでは動作電流I2が順方向に流れるのに対して、第1基準太陽電池セルでは動作電流I1が逆方向に流れてしまう。
図12(b)は、図11(a)に示す第1太陽電池セル10aおよび第2太陽電池セル10bのそれぞれの電流−電圧特性、および、図11(a)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1の電流−電圧特性の一例を示すグラフである。図12(b)に示すように、ある外部抵抗Rmのときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧Vmにおいて、第1太陽電池セルでも動作電流I1が順方向に流れ、第2太陽電池セルでも動作電流I2が順方向に流れる。
図11(a)、(c)に示す第2太陽電池セル10bおよび第2基準太陽電池セル20bを比較すると、第2太陽電池セル10bでは第2光電変換部5b上にバッファー層6bが形成されている。そのため、図12(a)〜(b)に示すように、第2基準太陽電池セルの電流−電圧特性から第2太陽電池セルの電流−電圧特性に変化させることができ、その結果、基準有機薄膜太陽電池モジュールの電流−電圧特性から有機薄膜太陽電池モジュールの電流−電圧特性に変化させることができる。それにより、全ての太陽電池セルで動作電流が逆方向に流れないようにすることが可能となる。
このように本態様においては、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとし、また第1電極層および第2電極層の間に光電変換部のみが挟持されたものを基準太陽電池セルとし、光電変換部の種類毎の基準太陽電池セルを並列に接続したものを基準有機薄膜太陽電池モジュールとしたとき、ある外部抵抗のときの基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において逆方向に動作電流が流れる基準太陽電池セルが存在する場合に、バッファー層が光電変換部の種類に応じて形成されていることにより、太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することができ、その外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れるのを防ぐことが可能である。
有機薄膜太陽電池モジュールにおいては、その用途等によって外部抵抗が予め定められている場合があることから、バッファー層によって太陽電池セルの電流−電圧特性を調整し、その外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れるのを防ぐことは非常に有用である。
また、バッファー層の選定により各太陽電池セルの電流−電圧特性を完全に一致させることができれば、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れるのを防ぐことができるが、電流−電圧特性を完全に一致させることは難しいと考えられる。そこで、本態様においては、バッファー層の選定により、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れないように、太陽電池セルの電流−電圧特性を調整するのである。
ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れるのを防ぐには、図12(b)に示すように、ある外部抵抗Rmのときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧Vmが、各太陽電池セルの開放電圧V1oc、V2ocの最小値(ここではV1oc)よりも低くなるように、太陽電池セルの電流−電圧特性を調整する。有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧が、各太陽電池セルの開放電圧の最小値よりもわずかでも低い限り、全ての太陽電池セルで順方向に動作電流が流れる。一方、図12(a)においては、ある外部抵抗Rmのときの基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧Vmが第1基準太陽電池セルの開放電圧V1ocよりも高いので、基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧Vmよりも低い開放電圧V1ocを示す第1基準太陽電池セルでは動作電流I1が逆方向に流れてしまう。
中でも、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧が、各太陽電池セルの開放電圧の最小値よりも十分低くなるように、太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することが好ましい。これにより、各太陽電池セルの動作電流を大きくすることができるからである。
この際、最小の開放電圧を示す太陽電池セルの曲線因子を、太陽電池の曲線因子として最小値である0.25と仮定した場合に、最小の開放電圧を示す太陽電池セルの動作電流が、その太陽電池セルの短絡電流の二割に達することができることを目安として、有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧が、各太陽電池セルの開放電圧の最小値よりも、各太陽電池セルの開放電圧の最小値の二割に相当する分だけ低いことが特に好ましい。これにより、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧を、各太陽電池セルの開放電圧の最小値よりも十分低くし、各太陽電池セルの動作電流を大きくすることができるからである。
ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧を、各太陽電池セルの開放電圧の最小値よりも低くなるようにするには、その外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧を低くする、あるいは、最小の開放電圧を示す太陽電池セルの開放電圧を高くすることが挙げられる。
その外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧を低くするには、例えば、最小の開放電圧を示す太陽電池セル以外の太陽電池セルの開放電圧を低くすればよい。
なお、太陽電池セルの電流−電圧特性(動作電圧、動作電流、開放電圧、曲線因子など)は、光電変換部の種類毎に測定用太陽電池セルをそれぞれ作製し、各測定用太陽電池セルの電流−電圧特性を測定することにより求められる。例えば、図1(a)、(b)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1については、基板上に第1電極層、第1光電変換部、第1光電変換部用バッファー層および第2電極層が順に積層された第1測定用太陽電池セルと、基板上に第1電極層、第2光電変換部、第2光電変換部用バッファー層および第2電極層が順に積層された第2測定用太陽電池セルと、基板上に第1電極層、第3光電変換部、第3光電変換部用バッファー層および第2電極層が順に積層された第3測定用太陽電池セルとをそれぞれ作製し、各測定用太陽電池セルの電流−電圧特性を測定する。
また、基準太陽電池セルの電流−電圧特性(動作電圧、動作電流、開放電圧、曲線因子など)は、光電変換部の種類毎に第1電極層および第2電極層の間に各光電変換部のみを挟持させた基準太陽電池セルをそれぞれ作製し、各基準太陽電池セルの開放電圧を測定することにより求められる。例えば、図1(a)、(b)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1については、基板上に第1電極層、第1光電変換部および第2電極層が順に積層された第1基準太陽電池セルと、基板上に第1電極層、第2光電変換部および第2電極層が順に積層された第2基準太陽電池セルと、基板上に第1電極層、第3光電変換部および第2電極層が順に積層された第3基準太陽電池セルとをそれぞれ作製し、各基準太陽電池セルの電流−電圧特性を測定する。
(第2態様の太陽電池セルの電流−電圧特性の調整)
本態様において、バッファー層は、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとした場合、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において、全ての太陽電池セルの出力の合計が大きくなるように、光電変換部の種類に応じて形成される。
本態様について、図11(a)に示すような、光電変換層5が2種類の光電変換部(5a、5b)を有し、第2光電変換部5b上のみにバッファー層6bが形成されている有機薄膜太陽電池モジュール1を例に挙げて説明する。図11(a)において、一つの第1光電変換部5aが設けられている領域を一つの第1太陽電池セル10aとし、一つの第2光電変換部5bが設けられている領域を一つの第2太陽電池セル10bとする。また、図11(b)に示すように、第1電極層3および第2電極層8の間に第1光電変換部5aのみが挟持されたものを第1基準太陽電池セル20aとし、図11(c)に示すように、第1電極層3および第2電極層8の間に第2光電変換部5bのみが挟持されたものを第2基準太陽電池セル20bとする。
図13(a)は、図11(b)〜(c)に示す第1基準太陽電池セル20aおよび第2基準太陽電池セル20bのそれぞれの電流−電圧特性、および、これらの第1基準太陽電池セル20aおよび第2基準太陽電池セル20bを並列に接続した基準有機薄膜太陽電池モジュールの電流−電圧特性の一例を示すグラフである。図13(a)に示すように、ある外部抵抗Rmのときの基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧Vmにおいて、第1基準太陽電池セルでは動作電流Iが大きく、出力が大きい(図中には出力点P1を示す。)のに対して、第2基準太陽電池セルでは動作電流I2が小さく、出力が小さい(図中には出力点P2を示す。)。そのため、第1基準太陽電池セルおよび第2基準太陽電池セルの出力の合計は小さくなり、基準有機薄膜太陽電池モジュール全体の出力が小さくなる。
図13(b)は、図11(a)に示す第1太陽電池セル10aおよび第2太陽電池セル10bのそれぞれの電流−電圧特性、および、図11(a)に示す有機薄膜太陽電池モジュール1の電流−電圧特性の一例を示すグラフである。図13(b)に示すように、ある外部抵抗Rmのときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧Vmにおいて、第1太陽電池セルおよび第2太陽電池セルのいずれも動作電流I、I2が小さくなく、出力は小さくない(図中には出力点P1、P2を示す。)。そのため、第1太陽電池セルおよび第2太陽電池セルの出力の合計は、第1基準太陽電池セルおよび第2基準太陽電池セルの出力の合計よりも大きくなり、有機薄膜太陽電池モジュール全体の出力を大きくすることができる。
図11(a)、(c)に示す第2太陽電池セル10bおよび第2基準太陽電池セル20bを比較すると、第2太陽電池セル10bでは第2光電変換部5b上にバッファー層6bが形成されている。そのため、図13(a)〜(b)に示すように、第2基準太陽電池セルの電流−電圧特性から第2太陽電池セルの電流−電圧特性に変化させることができ、その結果、基準有機薄膜太陽電池モジュールの電流−電圧特性から有機薄膜太陽電池モジュールの電流−電圧特性に変化させることができる。それにより、第1太陽電池セルおよび第2太陽電池セルの出力の合計を大きくし、第1基準太陽電池セルおよび第2基準太陽電池セルの出力の合計よりも大きくすることが可能となる。
このように本態様においては、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとし、また第1電極層および第2電極層の間に光電変換部のみが挟持されたものを基準太陽電池セルとし、光電変換部の種類毎の基準太陽電池セルを並列に接続したものを基準有機薄膜太陽電池モジュールとしたとき、バッファー層が光電変換部の種類に応じて形成されていることにより、太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することができ、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧における全ての太陽電池セルの出力の合計を、その外部抵抗のときの基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧における全ての基準太陽電池セルの出力の合計よりも大きくすることが可能である。
有機薄膜太陽電池モジュールにおいては、その用途等によって外部抵抗が予め定められている場合があることから、バッファー層によって太陽電池セルの電流−電圧特性を調整し、その外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧における全ての太陽電池セルの出力の合計を大きくすることは非常に有用である。
また、バッファー層の選定により各太陽電池セルの電流−電圧特性を完全に一致させることができれば、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧における全ての太陽電池セルの出力の合計を大きくすることができるが、電流−電圧特性を完全に一致させることは難しいと考えられる。そこで、本態様においては、バッファー層の選定により、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧において全ての太陽電池セルの出力の合計が大きくなるように、太陽電池セルの電流−電圧特性を調整するのである。
ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧における全ての太陽電池セルの出力の合計を、その外部抵抗のときの基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧における全ての基準太陽電池セルの出力の合計よりも大きくするには、例えば、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧と、太陽電池セルの最大出力動作電圧との差が、その外部抵抗のときの基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧と、基準太陽電池セルの最大出力動作電圧との差よりも小さくなるように、太陽電池セルの電流−電圧特性を調整すればよい。図13(a)〜(b)においては、ある外部抵抗Rmのときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧Vmと、第2太陽電池セルの最大出力動作電圧V2pmとの差が、その外部抵抗Rmのときの基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧Vmと、第2基準太陽電池セルの最大出力動作電圧V2pmとの差よりも小さくなるように、バッファー層によって第2太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することで、第1太陽電池セルおよび第2太陽電池セルの出力の合計を、第1基準太陽電池セルおよび第2基準太陽電池セルの出力の合計よりも大きくしている。
なお、図13(a)〜(b)において、ある外部抵抗Rmのときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧Vmと、第1太陽電池セルの最大出力動作電圧V1pmとの差は、その外部抵抗Rmのときの基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧Vmと、第1基準太陽電池セルの最大出力動作電圧V1pmとの差よりも大きくなっている。しかしながら、第1太陽電池セルおよび第2太陽電池セルの出力の合計が、第1基準太陽電池セルおよび第2基準太陽電池セルの出力の合計よりも大きくなるのであれば、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧と、太陽電池セルの最大出力動作電圧との差が、その外部抵抗のときの基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧と、基準太陽電池セルの最大出力動作電圧との差よりも小さくなる太陽電池セルの他に、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧と、太陽電池セルの最大出力動作電圧との差が、その外部抵抗のときの基準有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧と、基準太陽電池セルの最大出力動作電圧との差よりも大きくなる太陽電池セルがあってもかまわない。
中でも、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧と、各太陽電池セルの最大出力動作電圧とが揃うように、各太陽電池セルの電流−電圧特性を調整することが好ましい。これにより、全ての太陽電池セルの出力の合計を大きくすることができるからである。
具体的には、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧における出力と、各太陽電池セルの最大出力とのうち、最大値に対する最大値と最小値との差が30%以下であることが好ましく、中でも20%以下、特に10%以下であることがより好ましい。上記の差が上記範囲であれば、全ての太陽電池セルの出力の合計を大きくすることができるからである。
なお、太陽電池セルおよび基準太陽電池セルの電流−電圧特性(動作電圧、動作電流、開放電圧、曲線因子など)の測定については、上記第1態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
バッファー層に用いられる材料は、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとした場合、各太陽電池セルにおいて所望の電流−電圧特性が得られるように、光電変換部の種類に応じて選択される。
例えば、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとし、第1電極層および第2電極層の間に光電変換部のみが挟持されたものを基準太陽電池セルとした場合、バッファー層には、太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも高くなるような材料を用いてもよく、太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなるような材料を用いてもよい。また、バッファー層には、太陽電池セルの短絡電流が基準太陽電池セルの短絡電流よりも大きくなるような材料を用いてもよく、太陽電池セルの短絡電流が基準太陽電池セルの短絡電流よりも小さくなるような材料を用いてもよい。さらに、バッファー層には、太陽電池セルの最大出力が基準太陽電池セルの最大出力よりも大きくなるような材料を用いてもよく、太陽電池セルの最大出力が基準太陽電池セルの最大出力よりも小さくなるような材料を用いてもよい。これらの材料は、目的とする太陽電池セルの電流−電圧特性に応じて適宜選択される。
なお、太陽電池セルの電流−電圧特性の調整については、上述した通りである。
また、2種以上の光電変換部上にそれぞれ光電変換部の種類に応じてバッファー層が形成されている場合、全種類の光電変換部についてバッファー層に太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも高くなるような材料を用いてもよく、全種類の光電変換部についてバッファー層に太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなるような材料を用いてもよく、また一の種類の光電変換部についてはバッファー層に太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも高くなるような材料を用い、他の種類の光電変換部についてはバッファー層に太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなるような材料を用いてもよい。
バッファー層に、太陽電池セルの短絡電流が基準太陽電池セルの短絡電流よりも大きくまたは小さくなるような材料、あるいは、太陽電池セルの最大出力が基準太陽電池セルの最大出力よりも大きくまたは小さくなるような材料を用いる場合についても、上記の太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも高くまたは低くなるような材料を用いる場合と同様とすることができる。
中でも、上記第1態様の太陽電池セルの電流−電圧特性の調整の場合、バッファー層は、太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなるような材料を含有することが好ましい。太陽電池セルの開放電圧を基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くすることは、太陽電池セルの開放電圧を基準太陽電池セルの開放電圧よりも高くすることよりも容易であり、バッファー層に用いる材料の選択が容易となるからである。
2種以上の光電変換部上にそれぞれ光電変換部の種類に応じてバッファー層が形成されている場合には、全種類の光電変換部についてバッファー層に太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなるような材料を用いることが好ましい。上述したように、太陽電池セルの開放電圧を基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くすることは、太陽電池セルの開放電圧を基準太陽電池セルの開放電圧よりも高くすることよりも容易であり、バッファー層に用いる材料の選択が容易となるからである。
太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなるような材料、または、太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも高くなるような材料とするには、例えば、材料の導電性、仕事関数等を調整すればよい。
具体的には、バッファー層の材料の導電性を低くすることで、太陽電池セルの開放電圧を低下させることができる。なお、バッファー層の材料の導電性を高くしても、太陽電池セルの開放電圧を増加させることはできない。
また、バッファー層の材料の仕事関数と光電変換層の材料の仕事関数との差を、バッファー層に接する電極層の材料の仕事関数と光電変換層の材料の仕事関数との差よりも大きくすることで、太陽電池セルの開放電圧を基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くすることができると考えられる。一方、バッファー層の材料の仕事関数と光電変換層の材料の仕事関数との差を、バッファー層に接する電極層の材料の仕事関数と光電変換層の材料の仕事関数との差よりも小さくすることで、太陽電池セルの開放電圧を基準太陽電池セルの開放電圧よりも高くすることができると考えられる。
太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも高くなるような材料であること、または、太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなるような材料であることは、例えば、太陽電池セルの開放電圧および基準太陽電池セルの開放電圧をそれぞれ測定することで、確認することができる。
なお、太陽電池セルおよび基準太陽電池セルの電流−電圧特性(動作電圧、動作電流、開放電圧、曲線因子など)の測定については、上述したので、ここでの説明は省略する。
バッファー層は、透明性を有していてもよく有さなくてもよく、有機薄膜太陽電池モジュールの受光面およびバッファー層の形成位置に応じて適宜選択される。第1電極層側が受光面であり、バッファー層が光電変換部と第1電極層との間に形成されている場合には、バッファー層は透明性を有する必要がある。同様に、第2電極層側が受光面であり、バッファー層が光電変換部と第2電極層との間に形成されている場合には、バッファー層は透明性を有する必要がある。一方、第1電極層側が受光面であり、バッファー層が光電変換部と第2電極層との間に形成されている場合には、バッファー層は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。同様に、第2電極層側が受光面であり、バッファー層が光電変換部と第1電極層との間に形成されている場合には、バッファー層は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。また、シースルー型の有機薄膜太陽電池モジュールとする場合には、バッファー層は透明性を有する必要がある。
バッファー層は、光電変換部と正孔取出し電極との間に設けられる正孔取出し層であってもよく、光電変換部と電子取出し電極との間に設けられる電子取出し層であってもよい。以下、正孔取出し層および電子取出し層について説明する。
(正孔取出し層)
本発明における正孔取出し層は、光電変換層から正孔取出し電極への正孔の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、光電変換層から正孔取出し電極への正孔取出し効率が高められるため、光電変換効率を向上させることが可能となる。
正孔取出し層に用いられる材料としては、光電変換層から正孔取出し電極への正孔の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されるものではなく、上述したように光電変換部の種類に応じて適宜選択される。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、Au、In、Ag、Pd等の金属も使用することができる。さらに、金属は、単独で用いてもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いてもよい。
また、太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなるような材料とするために、上述の材料に、絶縁材を混合してもよい。絶縁材としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
正孔取出し層の膜厚としては、上記有機材料を用いた場合は、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、金属薄膜である場合は、0.1nm〜5nmの範囲内であることが好ましい。
正孔取出し層の形成方法としては、正孔取出し層をパターン状に形成することができ、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、湿式法および乾式法のいずれも用いることができ、材料に応じて適宜選択される。
(電子取出し層)
本発明における電子取出し層は、光電変換層から電子取出し電極への電子の取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、光電変換層から電子取出し電極への電子取出し効率が高められるため、光電変換効率を向上させることが可能となる。
電子取出し層に用いられる材料としては、光電変換層から電子取出し電極への電子の取出しを安定化させる材料であれば特に限定されるものではなく、上述したように光電変換部の種類に応じて適宜選択される。具体的には、Ca等のアルカリ土類金属、LiF、CaF2等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物等の無機材料や、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属との金属ドープ層が挙げられる。好適なものとしては、バソキュプロイン(BCP)またはバソフェナントロン(Bphen)と、Li、Cs、Ba、Srなどの金属ドープ層が挙げられる。
また、太陽電池セルの開放電圧が基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなるような材料とするために、上述の材料に、絶縁材を混合してもよい。絶縁材としては、上記正孔取出し層に用いられる絶縁材と同様のものを用いることができる。
電子取出し層の形成方法としては、電子取出し層をパターン状に形成することができ、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、湿式法および乾式法のいずれも用いることができ、材料に応じて適宜選択される。
2.光電変換層
本発明における光電変換層は、第1電極層および第2電極層の間に形成され、第1電極層上にパターン状に形成され、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換部を有するものである。なお、「光電変換層」および「光電変換部」とは、有機薄膜太陽電池の電荷分離に寄与し、生じた電子および正孔を各々反対方向の電極に向かって輸送する機能を有する部材をいう。
光電変換部の種類の数としては、2種類以上であればよく、例えば2種類、3種類とすることができる。
各種類の光電変換部の吸収波長領域は異なっていればよく、光電変換部によって表示する任意のパターンに応じて適宜選択される。
光電変換部の配置としては、光電変換部によって表示する任意のパターンに応じて適宜選択される。例えば、図4に示すように光電変換部(5a、5b、5c)が規則的に配置されていてもよく、図7(c)に示すように光電変換部(5a、5b)が不規則に配置されていてもよい。また、図4に示すように点(ドット)によって任意のパターンが表示されるように光電変換部(5a、5b、5c)が配置されていてもよく、図7(c)に示すように面によって任意のパターンが表示されるように光電変換部(5a、5b)が配置されていてもよい。
光電変換部が規則的に配列されている場合、光電変換部の配列としては、一般的な画素の配列と同様とすることができ、例えば、ストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列等をすることができる。
光電変換部の大きさとしては、光電変換部によって表示する任意のパターン等に応じて適宜選択される。光電変換部が規則的に配列されている場合、光電変換部の大きさは、例えば0.1mm角〜30mm角程度とすることができる。光電変換部が規則的に配列されている場合、光電変換部が小さいと光電変換部の形成が困難となる場合があり、光電変換部が大きいと点(ドット)によって任意のパターンを表示することが困難となる場合がある。
光電変換部が規則的に配列されている場合、光電変換部の大きさは、光電変換部毎に同じであってもよく異なっていてもよい。光電変換部毎に光電変換部の大きさが異なる場合には、光電変換部の大きさの違いによって濃淡を表現することも可能である。
光電変換部の形状としては、光電変換部によって表示する任意のパターン等に応じて適宜選択される。光電変換部が規則的に配列されている場合、光電変換部の形状は、例えば、矩形、多角形、円形等とすることができる。
光電変換部は、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であってもよく(第1態様)、また電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものであってもよい(第2態様)。以下、各態様について説明する。
(1)第1態様の光電変換部
本発明における光電変換部の第1態様は、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であり、電子供与性材料および電子受容性材料を含有するものである。この光電変換部では、光電変換部内で形成されるpn接合を利用して電荷分離が生じるため、単独で光電変換機能を有する。
電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。
導電性高分子はいわゆるπ共役高分子であり、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系から成り立っており、半導体的性質を示すものである。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利である。また、導電性高分子の電子伝達機構は、主にπスタッキングによる分子間のホッピング伝導であるため、高分子の主鎖方向のみならず、光電変換部の膜厚方向への電荷輸送も有利である。さらに、導電性高分子材料は、導電性高分子材料を溶媒に溶解もしくは分散させた塗工液を用いることで湿式法により容易に成膜可能であることから、大面積の有機薄膜太陽電池モジュールを高価な設備を必要とせず低コストで製造できるという利点がある。
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリシラン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポルフィリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、フタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等を挙げることができる。
上記の中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フェニレンエチニレン−チオフェン共重合体、フェニレンエチニレン−フルオレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好ましく用いられる。これらは、多くの電子受容性材料に対して、エネルギー準位差が適当であるからである。
なお、例えばフェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体(Poly[1,4-phenyleneethynylene-1,4-(2,5-dioctadodecyloxyphenylene)-1,4-phenyleneethene-1,2-diyl-1,4-(2,5-dioctadodecyloxyphenylene)ethene-1,2-diyl])の合成方法については、Macromolecules, 35, 3825 (2002) や、Mcromol. Chem. Phys., 202, 2712 (2001) に詳しい。
また、電子受容性材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも電子受容性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。
電子受容性の導電性高分子材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、カーボンナノチューブ、フラーレン誘導体、CN基またはCF基含有ポリマーおよびそれらの−CF置換ポリマー等を挙げることができる。ポリフェニレンビニレン誘導体の具体例としては、CN−PPV(Poly[2-Methoxy-5-(2´-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylene)phenylene])、MEH−CN−PPV(Poly[2-Methoxy-5-(2´-ethylhexyloxy)-1,4-(1-cyanovinylene)phenylene])等が挙げられる。
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性材料等を用いることもできる。中でも、電子供与性化合物もしくは電子受容性化合物がドープされた導電性高分子材料が好ましく用いられる。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利であり、また、電子供与性化合物や電子受容性化合物をドープすることによりπ共役主鎖中に電荷が発生し、電気伝導度を大きく増大させることが可能であるからである。
電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述した電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。
また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl(III)、AlCl、AlBr、AsFやハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
光電変換部の膜厚としては、一般的にバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.2nm〜3000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜600nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、光電変換部における体積抵抗が高くなる場合があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
電子供与性材料および電子受容性材料の混合比は、使用する材料の種類により最適な混合比に適宜調整される。
光電変換部を形成する方法としては、光電変換部をパターン状に形成することができ、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、湿式法および乾式法のいずれも用いることができる。湿式法では、大気中で光電変換部を形成することができ、コストの削減が図れるとともに、大面積化が容易である。
湿式法の場合、光電変換部用塗工液の塗布方法としては、光電変換部をパターン状に形成することができ、光電変換部用塗工液を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。
光電変換部用塗工液の塗布後は、形成された塗膜を乾燥する乾燥処理を施してもよい。光電変換部用塗工液に含まれる溶媒等を早期に除去することにより、生産性を向上させることができるからである。
乾燥処理の方法として、例えば、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥、赤外線加熱乾燥等、一般的な方法を用いることができる。
(2)第2態様の光電変換部
本発明における光電変換部の第2態様は、電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものである。以下、電子受容性層および電子供与性層について説明する。
(電子受容性層)
本態様に用いられる電子受容性層は、電子受容性の機能を有するものであり、電子受容性材料を含有するものである。
電子受容性材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも電子受容性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記第1態様の光電変換部に用いられる電子受容性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
電子受容性層の膜厚としては、一般的にバイレイヤー型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子受容性層における体積抵抗が高くなる可能性があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
電子受容性層の形成方法としては、上記第1態様の光電変換部の形成方法と同様とすることができる。
(電子供与性層)
本態様に用いられる電子供与性層は、電子供与性の機能を有するものであり、電子供与性材料を含有するものである。
電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記第1態様の光電変換部に用いられる電子供与性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
電子供与性層の膜厚としては、一般的にバイレイヤー型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子供与性層における体積抵抗が高くなる可能性があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
電子供与性層の形成方法としては、上記第1態様の光電変換部の形成方法と同様とすることができる。
3.絶縁層
本発明における絶縁層は、第1電極層および第2電極層の間にパターン状に形成され、光電変換部の間に配置されるものであり、第1電極層および第2電極層を絶縁するために設けられる層である。
絶縁層に用いられる材料としては、絶縁性を有し、絶縁層をパターン状に形成することができる材料であれば特に限定されるものではなく、一般的な絶縁材料を使用することができる。絶縁材料としては、例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、カルド樹脂等の有機絶縁材料、および、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の無機絶縁材料が挙げられる。
絶縁層は、透明性を有していてもよく有さなくてもよい。また、絶縁層は、着色されていてもよい。絶縁層が透明性を有していたり着色されていたりする場合には、意匠性をさらに高めることができる。
絶縁層の形成方法としては、絶縁層をパターン状に形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、湿式法および乾式法のいずれも用いることができ、例えば、グラビアコート、インクジェット、オフセット印刷、フレキソ印刷等の印刷法、蒸着法、フォトリソグラフィー法等を挙げることができる。
絶縁層の膜厚としては、絶縁層によって第1電極層および第2電極層を絶縁できる厚みであれば特に限定されるものではない。
4.第1電極層
本発明における第1電極層は、基板上に一面に形成されるものである。第1電極層は、光電変換層で発生した正孔を取り出すための電極(正孔取出し電極)であってもよく、光電変換層で発生した電子を取り出すための電極(電子取出し電極)であってもよい。通常、第1電極層は、正孔取出し電極とされる。
第1電極層は、透明性を有していてもよく有さなくてもよく、有機薄膜太陽電池モジュールの受光面に応じて適宜選択される。第1電極層側が受光面となる場合には、第1電極層は透明性を有する必要がある。一方、第2電極層側が受光面となる場合には、第1電極層は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。また、シースルー型の有機薄膜太陽電池モジュールとする場合には、第1電極層は透明性を有する必要がある。
第2電極層側が受光面である場合、第1電極層は反射性を有していてもよい。光電変換部によって表示される任意のパターンの視認性を向上させることができるからである。
第1電極層の構成材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、第2電極層の構成材料の仕事関数等を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば第2電極層の構成材料を仕事関数が低い材料とした場合には、第1電極層の構成材料は仕事関数が高い材料であることが好ましい。仕事関数が高い材料としては、例えば、Au、Ag、Co、Ni、Pt、C、ITO、SnO、フッ素をドープしたSnO、ZnO等を挙げることができる。
また、第1電極層が透明電極である場合、第1電極層の構成材料としては、導電性および透明性を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般的に透明電極として使用されているものを用いることができ、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O等を挙げることができる。
第1電極層が透明電極である場合、第1電極層の全光線透過率は85%以上であることが好ましく、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。第1電極層の全光線透過率が上記範囲であることにより、第1電極層にて光を十分に透過することができ、光電変換層にて光を効率的に吸収することができるからである。
なお、上記全光線透過率は、可視光領域において、スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピュータ(型番:SM−C)を用いて測定した値である。
第1電極層は、単層であってもよく、また異なる仕事関数の材料を用いて積層されたものであってもよい。
この第1電極層の膜厚としては、単層である場合はその膜厚が、複数層からなる場合は総膜厚が、0.1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄いと、第1電極層のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より厚いと、全光線透過率が低下し、光電変換効率を低下させる可能性があるからである。
第1電極層の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができる。
5.第2電極層
本発明における第2電極層は、上記第1電極層と対向する電極であり、上記光電変換層を覆うように一面に形成されるものである。第2電極層は、光電変換層で発生した正孔を取り出すための電極(正孔取出し電極)であってもよく、光電変換層で発生した電子を取り出すための電極(電子取出し電極)であってもよい。通常、第2電極層は、電子取出し電極とされる。
第2電極層は、透明性を有していてもよく有さなくてもよく、有機薄膜太陽電池モジュールの受光面に応じて適宜選択される。第2電極層側が受光面となる場合には、第2電極層は透明性を有する必要がある。一方、第1電極層側が受光面となる場合には、第2電極層は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。また、シースルー型の有機薄膜太陽電池モジュールとする場合には、第2電極層は透明性を有する必要がある。
第1電極層側が受光面である場合、第2電極層は反射性を有していてもよい。光電変換部によって表示される任意のパターンの視認性を向上させることができるからである。
第2電極層の構成材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、上記第1電極層の構成材料の仕事関数等を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば第1電極層の構成材料を仕事関数の高い材料とした場合には、第2電極層の構成材料は仕事関数の低い材料であることが好ましい。具体的に仕事関数が低い材料としては、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr、LiF等を挙げることができる。また、反射性を有する材料としては、Al、Ag、Cu、Au等を挙げることができる。
また、第2電極層が透明電極である場合、第2電極層の構成材料としては、導電性および透明性を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般的に透明電極として使用されているものを用いることができる。
第2電極層が透明電極である場合、第2電極層の全光線透過率は85%以上であることが好ましく、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。第2電極層の全光線透過率が上記範囲であることにより、第2電極層にて光を十分に透過することができ、光電変換層にて光を効率的に吸収することができるからである。
なお、全光線透過率の測定方法については、上記第1電極層の項に記載した方法と同様である。
第2電極層は、単層であってもよく、また、異なる仕事関数の材料を用いて積層されたものであってもよい。
第2電極層の膜厚は、単層である場合にはその膜厚が、複数層からなる場合には各層を合わせた総膜厚が、0.1nm〜500nmの範囲内、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄い場合は、第2電極層のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性がある。
第2電極層の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができる。
6.基板
本発明に用いられる基板は、上記の第1電極層、光電変換層、第2電極層および絶縁層等を支持するものである。
基板は、透明性を有していてもよく有さなくてもよく、有機薄膜太陽電池モジュールの受光面に応じて適宜選択される。基板側が受光面となる場合には、基板は透明性を有する必要がある。一方、第2電極層側が受光面となる場合には、基板は透明性を有していてもよく有さなくてもよい。また、シースルー型の有機薄膜太陽電池モジュールとする場合には、基板は透明性を有する必要がある。
基板が透明基板である場合、透明基板としては、特に限定されるものではなく、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を挙げることができる。
中でも、透明基板は透明樹脂フィルム等のフレキシブル材であることが好ましい。透明樹脂フィルムは、加工性に優れており、製造コスト低減や軽量化、割れにくい有機薄膜太陽電池モジュールの実現において有用であり、曲面への適用等、種々のアプリケーションへの適用可能性が広がるからである。
7.着色層
本発明においては、基板および第1電極層の間に、上記光電変換部の種類に応じて着色層が形成されていてもよい。色純度を高め鮮明な表示が可能となるからである。
着色層の配置としては、着色層が光電変換部の種類に応じて形成されていればよく、全種類の光電変換部上に着色層が配置されていてもよく、また一の種類の光電変換部上に着色層が配置されておらず、他の種類の光電変換部上に着色層が配置されていてもよい。着色層が全種類の光電変換部上に配置されている場合、色純度をさらに向上させることができる。例えば図14において、基板2および第1電極層3の間に複数色の着色層(9a、9b、9c)が形成されており、第1光電変換部5a上に第1着色層9aが配置され、第2光電変換部5b上に第2着色層9bが配置され、第3光電変換部5c上に第3着色層9cが配置され、光電変換部(5a、5b、5c)の種類毎に色の異なる着色層(9a、9b、9c)が形成されている。
光電変換部上に形成される着色層の色は、光電変換部の吸収波長領域に応じて適宜選択される。
また、光電変換部上に形成される着色層の大きさ、形状、配置等としては、光電変換部の大きさ、形状、配置等と同様とされる。
なお、着色層については、一般的なカラーフィルタと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
8.共通バッファー層
本発明においては、バッファー層が光電変換部上に同じ側のみに形成されている場合、光電変換部のバッファー層が形成されている面とは反対側の面にそれぞれ、同一の共通バッファー層が形成されていてもよい。
共通バッファー層は、各光電変換部上に形成された共通バッファー層が全て同一の材料からなるものであればよく、正孔取出し層であってもよく電子取出し層であってもよい。
なお、正孔取出し層および電子取出し層については、上記バッファー層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
9.その他の構成
本発明の有機薄膜太陽電池モジュールは、上述した構成部材の他にも、必要に応じて後述する構成部材を有していてもよい。例えば、本発明の有機薄膜太陽電池モジュールは、保護シート、充填材層、バリア層、保護ハードコート層、強度支持層、防汚層、高光反射層、光封じ込め層、封止材層等の機能層を有していてもよい。また、層構成に応じて、各機能層間に接着層が形成されていてもよい。
なお、これらの機能層については、特開2007−73717号公報等に記載のものと同様とすることができる。
10.有機薄膜太陽電池モジュールの製造方法
本発明の有機薄膜太陽電池モジュールの製造方法は、基板と、上記基板上に形成された第1電極層と、上記第1電極層上にパターン状に形成され、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換部を有する光電変換層と、上記光電変換層を覆うように形成された第2電極層と、上記第1電極層および上記第2電極層の間にパターン状に形成され、上記光電変換部の間に配置された絶縁層とを有し、上記光電変換部および上記第1電極層の間ならびに上記光電変換部および上記第2電極層の間の少なくともいずれか一方に、上記光電変換部の種類に応じてバッファー層が形成されている有機薄膜太陽電池モジュールの製造方法であって、一つの光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとした場合に、各太陽電池セルにて所望の電流−電圧特性が得られるように、光電変換部の種類に応じてバッファー層の材料を選択し、光電変換部の種類に応じてバッファー層を形成するバッファー層形成工程を有することが好ましい。
バッファー層形成工程においては、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧にて全ての太陽電池セルで逆方向に電流が流れないように、光電変換部の種類に応じてバッファー層の材料を選択することが好ましい。
また、バッファー層形成工程においては、ある外部抵抗のときの有機薄膜太陽電池モジュールの動作電圧にて全ての太陽電池セルの出力の合計が大きくなるように、光電変換部の種類に応じてバッファー層の材料を選択することが好ましい。
なお、バッファー層の材料およびバッファー層のその他の点については、上記バッファー層の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例]
(有機薄膜太陽電池モジュールの作製)
厚み125μmのPETフィルム基板上にスパッタ法によりITO層(正孔取出し電極)を成膜した。次に、上記PETフィルム基板上に、エポキシ樹脂をグラビアコート法によりパターン塗工し、加熱処理により硬化させて、開口部を有する格子状の絶縁層を形成した。
次に、ポリチオフェン(P3HT:poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl))とC60PCBM([6,6]-phenyl-C61-butyric acid mettric ester:Nano-C社製)をブロモベンゼンに溶解させ、固形分濃度1.4wt%の第1光電変換部用塗工液を準備した。次いで、第1光電変換部用塗工液を上記PETフィルム基板上にグラビアコート法によりパターン塗工した後に100℃で10分間乾燥させて第1光電変換部を形成した。この第1光電変換部の吸収波長領域は緑色光領域であり、第1光電変換部では赤色の光が透過し、赤色に見えた。また、第1光電変換部のパターンは、図4に示すような第1光電変換部5aのパターンとし、第1光電変換部の大きさは12mm×12mmとした。
次に、MDMO-PPV(Poly[2-methoxy-5-(3',7'-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylenevinylene])とC60PCBMをクロロベンゼンに溶解させ、固形分濃度1.4wt%の第2光電変換部用塗工液を準備した。次いで、第2光電変換部用塗工液を上記PETフィルム基板上にグラビアコート法によりパターン塗工した後に、100℃で10分間乾燥させて第2光電変換部を形成した。この第2光電変換部の吸収波長領域は青色光領域であり、第2光電変換部では橙色の光が透過し、橙色に見えた。また、第2光電変換部のパターンは、図4に示すような第2光電変換部5bのパターンとし、第2光電変換部の大きさは上記第1光電変換部の大きさと同じとした。
次に、フルオレン−チオフェン共重合体(Poly[(9,9-dihexylfluorenyl-2,7-diyl)-co-(bithiophene)])とC60PCBMをクロロベンゼンに溶解させ、固形分濃度0.5wt%の第3光電変換部用塗工液を準備した。次いで、第3光電変換部用塗工液を上記PETフィルム基板上にグラビアコート法によりパターン塗工した後に100℃で10分間乾燥させて第3光電変換部を形成した。この第3光電変換部の吸収波長領域は紫色光領域であり、第3光電変換部では黄色の光が透過し、黄色に見えた。また、第3光電変換部のパターンは、図4に示すような第3光電変換部5cのパターンとし、第3光電変換部の大きさは上記第1光電変換部の大きさと同じとした。
次に、真空蒸着法でのマスクパターニングにより、第1光電変換部上にカルシウム層からなる第1バッファー層を形成した。次いで、真空蒸着法でのマスクパターニングにより、第2光電変換部上にフッ化リチウム層からなる第2バッファー層を形成した。続いて、真空蒸着法でのマスクパターニングにより、第3光電変換部上にフッ化カルシウム層からなる第3バッファー層を形成した。
次に、真空蒸着法により、アルミニウム層(電子取出し電極)を全てのバッファー層上に連続膜として形成した。
(バッファー層の材料の評価)
基板上に上記のITO層、第1光電変換部、カルシウム層およびアルミニウム層を順に積層して第1測定用太陽電池セルを作製した。また、基板上に上記のITO層、第2光電変換部、フッ化リチウム層およびアルミニウム層を順に積層して第2測定用太陽電池セルを作製した。同様に、基板上に上記のITO層、第3光電変換部、フッ化カルシウム層およびアルミニウム層を順に積層して第3測定用太陽電池セルを作製した。各測定用太陽電池セルの開放電圧を測定したところ、第1測定用太陽電池セルは0.68V、第2測定用太陽電池セルは0.62V、第3測定用太陽電池セルは0.67Vであった。
また、基板上に上記のITO層、第1光電変換部およびアルミニウム層を順に積層して第1基準太陽電池セルを作製した。また、基板上に上記のITO層、第2光電変換部およびアルミニウム層を順に積層して第2基準太陽電池セルを作製した。同様に、基板上に上記のITO層、第3光電変換部およびアルミニウム層を順に積層して第3基準太陽電池セルを作製した。各基準太陽電池セルの開放電圧を測定したところ、第1基準太陽電池セルは0.70V、第2基準太陽電池セルは0.66V、第3基準太陽電池セルは0.95Vであった。
いずれも、上記測定用太陽電池セルの開放電圧が、対応する上記基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなった。
[比較例1]
第1光電変換部、第2光電変換部および第3光電変換部上にバッファー層を形成しなかったこと以外は、実施例と同様にして有機薄膜太陽電池モジュールを作製した。
[比較例2]
第1光電変換部、第2光電変換部および第3光電変換部上に形成されるバッファー層を全てカルシウム層としたこと以外は、実施例と同様にして有機薄膜太陽電池モジュールを作製した。
[評価]
実施例および比較例1,2の有機薄膜太陽電池モジュールの連続動作試験を行ったところ、実施例の有機薄膜太陽電池モジュールは安定的に動作したのに対し、比較例1,2の有機薄膜太陽電池モジュールは動作開始後まもなく太陽電池としての機能を失った。
1 … 有機薄膜太陽電池
2 … 基板
3 … 第1電極層
4 … 絶縁層
5 … 光電変換層
5a … 第1光電変換部
5b … 第2光電変換部
5c … 第3光電変換部
6a、7a … 第1光電変換部用バッファー層
6b、7b … 第2光電変換部用バッファー層
6c、7c … 第3光電変換部用バッファー層
8 … 第2電極層
10 … 太陽電池セル

Claims (4)

  1. 基板と、
    前記基板上に形成された第1電極層と、
    前記第1電極層上にパターン状に形成され、吸収波長領域が異なる複数種類の光電変換部を有する光電変換層と、
    前記光電変換層を覆うように形成された第2電極層と、
    前記第1電極層および前記第2電極層の間にパターン状に形成され、前記光電変換部の間に配置された絶縁層とを有し、
    前記光電変換部および前記第1電極層の間ならびに前記光電変換部および前記第2電極層の間の少なくともいずれか一方に、前記光電変換部の種類に応じてバッファー層が形成されていることを特徴とする有機薄膜太陽電池モジュール。
  2. 前記光電変換部の種類毎に異なる材料を含有する前記バッファー層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池モジュール。
  3. 一の種類の前記光電変換部上には前記バッファー層が形成されておらず、他の種類の前記光電変換部上には前記バッファー層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池モジュール。
  4. 一つの前記光電変換部が設けられている領域を一つの太陽電池セルとした場合、前記太陽電池セルの開放電圧が、前記第1電極層および前記第2電極層の間に前記光電変換部のみを挟持させた基準太陽電池セルの開放電圧よりも低くなるような材料を、前記バッファー層が含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の有機薄膜太陽電池モジュール。
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