JP2013089807A - 有機薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池モジュール、および有機薄膜太陽電池の製造方法 - Google Patents

有機薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池モジュール、および有機薄膜太陽電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】地球温暖化防止の対策としてのCO排出削減に一役買う新規な「逆型」構造の有機薄膜太陽電池を提供すること。
【解決手段】基板上に、透明電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、および対向電極がこの順で積層されてなり、前記電子輸送層の仕事関数が前記対向電極の仕事関数よりも大きい、有機薄膜太陽電池において、前記電子輸送層を、金属酸化物の粒子を堆積してなるものとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池モジュール、および有機薄膜太陽電池の製造方法に関する。
有機薄膜太陽電池は、2つの異種電極間に電子供与性および電子受容性の機能を有する有機薄膜を配置してなる太陽電池であり、シリコンなどに代表される無機太陽電池に比べて製造工程が容易であり、かつ低コストで大面積化が可能であるという利点を持つ。
この有機薄膜太陽電池の実用化へ向けた技術課題の1つに耐久性の向上が挙げられているが、近年、いわゆる「逆型」構造とすることにより耐久性を向上する技術が提案されている。「逆型」構造とは、通常の場合、基板上に、透明電極/正孔輸送層/光電変換層/電子輸送層/対向電極の順で積層するのに対し、「逆型」構造は、基板上に透明電極/電子輸送層/光電変換層/正孔輸送層/対向電極の順で積層した点に特徴がある。「逆型」構造とすることにより、電子と正孔の流れが逆となり、このことが耐久性向上の一因であると考えられている。(たとえば、特許文献1)
なお、現在、地球温暖化防止の対策として、世界規模でCO排出削減の取り組みが行われており、石油依存からの脱却の一策として太陽電池への期待が高まっている。したがって、有機薄膜太陽電池の耐久性向上は各種産業界の期待であり、いわゆる「逆型」構造の有機太陽電池の実用化が望まれている。
特開2009−146981号公報
しかしながら、いわゆる「逆型」構造の有機薄膜太陽電池はいまだ開発途中であり、これを構成する各層にあっては、単純に通常の構造のそれを適用すればよいわけではない。特にいわゆる「逆型」構造における電子輸送層は、透明電極上に形成されるため、その材質や形成プロセスについて再検討が必要である。
本発明はこのような観点からなされたものであり、地球温暖化防止の対策としてのCO排出削減に一役買う新規な「逆型」構造の有機薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池モジュール、さらには有機薄膜太陽電池の製造方法を提供することを主たる課題とする。
上記課題を解決するための第1の発明は、基板上に、透明電極、電子輸送層、光電変換層、および対向電極がこの順で積層されてなる有機薄膜太陽電池であって、前記電子輸送層は、金属酸化物の粒子が堆積してなることを特徴とする。
また、上記の発明にあっては、前記電子輸送層の表面の算術平均粗さRaが、10〜70nmであってもよい。
また、上記の発明にあっては、前記電子輸送層における金属酸化物粒子の平均粒子径が3〜50nmであってもよい。
上記課題を解決するための第2の発明は、基板上に、透明電極、電子輸送層、光電変換層、および対向電極がこの順で積層されてなり、前記電子輸送層は金属酸化物の粒子が堆積してなる有機太陽電池が、複数個直列または並列に接続されていることを特徴とする。
上記課題を解決するための第3の発明は、基板上に、透明電極、電子輸送層、光電変換層、および対向電極のそれぞれを順次形成していく有機薄膜太陽電池の製造方法であって、前記透明電極上に電子輸送層を形成する工程が、金属酸化物粒子が分散せしめられた電子輸送層形成用溶液を準備し、これを透明電極上に塗布し、その後乾燥することにより、電子輸送層を形成する工程であることを特徴とする。
また、上記の発明にあっては、電子輸送層形成用溶液を透明電極上に塗布する方法が、スピンコート法もしくはグラビア印刷法のいずれかであってもよい。
本発明の有機薄膜太陽電池によれば、いわゆる「逆型」構造の有機薄膜太陽電池において、その電子輸送層が堆積された金属酸化物粒子から構成されているので、当該電子輸送層と光電変換層との界面において電子の移動に関与する面積を大きくすることができ、その結果、耐久性に優れた「逆型」構造の有機薄膜太陽電池の変換効率を向上することができる。
また、本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法によれば、透明電極上に電子輸送層を形成するにあたり、予め金属酸化物粒子が分散された電子輸送層形成用溶液を用い、これを塗布・乾燥することで電子輸送層とするので、従来用いられていたゾル−ゲル法のように、透明電極が高温にさらされることを防止することができる。さらに、本発明の方法は、金属酸化物粒子を電子輸送層の形成とは別個独立の工程で調整するので、当該金属酸化物の種類や金属酸化度を自由に設計することができる。
有機薄膜太陽電池の概略断面図である。
以下、本発明の有機薄膜太陽電池について図面を用いて説明する。
図1は、有機薄膜太陽電池の概略断面図である。
図1に示すように、有機薄膜太陽電池1は、基板2上に、透明電極3a、電子輸送層4、光電変換層5、および対向電極7がこの順で積層されることにより構成されており、前記光電変換層5と対向電極7との間に正孔輸送層6が形成されていてもよい。ここで、この有機薄膜太陽電池1は、これを構成する電子輸送層4の仕事関数が正孔輸送層6のそれよりも大きく設計されている、いわゆる「逆型」の有機薄膜太陽電池である。なお、正孔輸送層6が形成されていない場合においては、電子輸送層4の仕事関数が対向電極7のそれよりも大きく設計されることとなる。そして、このような有機薄膜太陽電池1は、その電子輸送層4が、金属酸化物の粒子4aを堆積することにより形成されていることを特徴としている。このように、電子輸送層4を堆積された金属酸化物粒子4aによって構成することにより当該電子輸送層4と光電変換層5との界面において電子の移動に関与する面積を大きくすることができ、その結果、もともと耐久性に優れている「逆型」構造の有機薄膜太陽電池において、その変換効率を向上することができる。
以下に、有機薄膜太陽電池1を構成する各層について説明する。
(基板)
基板2は、有機薄膜太陽電池1全体を支持する役割を果たせばよく、透明であることの他は特に限定されることはない。たとえば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を挙げることができる。
上記の中でも、基板2は、透明樹脂フィルム等のフレキシブル材であることが好ましい。透明樹脂フィルムは、加工性に優れており、製造コスト低減や軽量化、割れにくい有機薄膜太陽電池の実現において有用であり、曲面への適用等、種々のアプリケーションへの適用可能性が広がるからである。
(透明電極)
透明電極3aの構成材料としては、導電性および透明性を有するものであれば特に限定されなく、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O等を挙げることができる。中でも、後述する対向電極7の構成材料の仕事関数等を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば対向電極7の構成材料を仕事関数の低い材料とした場合には、透明電極3aの構成材料は仕事関数の高い材料であることが好ましい。導電性および透明性を有し、かつ仕事関数の高い材料としては、ITOが好ましく用いられる。
透明電極3aの全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。透明電極3aの全光線透過率が上記範囲であることにより、透明電極3aにて光を十分に透過することができ、光電変換層5にて光を効率的に吸収することができるからである。なお、上記全光線透過率は、可視光領域において、スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピュータ(型番:SM−C)を用いて測定した値である。
透明電極3aのシート抵抗は、20Ω/sq以下であることが好ましく、中でも10Ω/sq以下、特に5Ω/sq以下であることが好ましい。シート抵抗が上記範囲より大きいと、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があるからである。なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の抵抗率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
透明電極3aは、単層であってもよく、また異なる仕事関数の材料を用いて積層されたものであってもよい。
この透明電極3aの膜厚としては、単層である場合はその膜厚が、複数層からなる場合は総膜厚が、0.1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄いと、透明電極3aのシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があり、一方、膜厚が上記範囲より厚いと、全光線透過率が低下し、光電変換効率を低下させる可能性があるからである。
透明電極3aは、基板2上に全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
透明電極3aの形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができる。
(メッシュ電極)
ここで、有機薄膜太陽電池1においては、図1に示すように、前述の透明電極3aと併せてメッシュ電極3bを用いてもよい。なお、メッシュ電極3bを形成する位置は、図1に示すように透明電極3aの表面側(電子輸送層4が形成される側)であってもよく、裏面側(基板2と接する側)であってもよい。
メッシュ電極3bは、網目状の電極であり、その厚みは、メッシュ電極3bよび透明電極3aと対向電極7との間で短絡が生じない厚みとすることが好ましく、具体的には、有機薄膜太陽電池を構成する他の層、つまり電子輸送層4、光電変換層5、さらには正孔輸送層6などの厚みに応じて適宜設計すればよい。具体的には、電子輸送層4、光電変換層5、正孔輸送層6など、メッシュ電極3bおよび透明電極3aと対向電極7との間に形成される層の総膜厚を1とすると、メッシュ電極3bの厚みは、5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1.5以下である。メッシュ電極3bの厚みが上記範囲より厚いと、電極間で短絡が生じるおそれがあるからである。より具体的には、メッシュ電極3bの厚みは、100nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、中でも200nm〜800nmの範囲内であることが好ましい。メッシュ電極3bの厚みが上記範囲より薄いと、メッシュ電極3bのシート抵抗が大きくなりすぎる場合があるからである。また、メッシュ電極3bの厚みが上記範囲より厚いと、電極間で短絡が生じるおそれがあるからである。
メッシュ電極3bの形成材料としては、通常、金属が用いられる。メッシュ電極3bに用いられる金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、チタン(Ti)、アルミニウム合金、チタン合金およびニッケルクロム合金(Ni−Cr)等の導電性金属を挙げることができる。上述の導電性金属の中でも、電気抵抗値が比較的低いものが好ましい。このような導電性金属としては、Al、Au、Ag、Cu等が挙げられる。
また、メッシュ電極3bは、上述のような導電性金属からなる単層であっても良く、また基板2や透明電極3aなどとの密着性向上のために、導電性金属層とコンタクト層とを適宜積層したものであっても良い。コンタクト層の形成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケルクロム(Ni−Cr)等が挙げられる。コンタクト層は所望のメッシュ電極3bと基板2や透明電極3aとの密着性を得るために導電性金属層に積層されるものであり、導電性金属層の片側にのみ積層しても良く、導電性金属層の両側に積層しても良い。
メッシュ電極3bの形状としては、網目状であれば特に限定されるものではなく、所望の導電性、透過性、強度等により適宜選択される。例えば、多角形や円形の格子状等が挙げられる。なお、多角形や円形の「格子状」とは、多角形や円形が周期的に配列されている形状をいう。
中でも、メッシュ電極3bの形状は、六角形の格子状または平行四辺形の格子状であることが好ましい。メッシュ電極3bを流れる電流が局所的に集中するのを防止することができるからである。六角形の格子状の場合、六角形の開口部がハニカム状に配列されていることが好ましい。メッシュ電極3bを流れる電流が局所的に集中するのを効果的に防止することができるからである。一方、平行四辺形の格子状の場合、平行四辺形の鋭角が40°〜80°の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50°〜70°の範囲内、さらに好ましくは55°〜65°の範囲内である。また、平行四辺形の4辺の長さは、太陽電池の外形形状に合わせて適宜設定される。すなわち、平行四辺形が鋭角60°・鈍角120°で4辺の長さが等しい菱形である場合、電流分布が比較的均一になる均電流エリアの形状は平行四辺形の鋭角の頂点を結ぶ対角線方向に電流が流れやすい楕円形状となる。そのため、太陽電池の中心部から外周部電極となり得るメッシュ電極の外周部までの距離を勘案して、平行四辺形の4辺の長さは適宜設定される。
メッシュ電極3b自体は基本的に光を透過しないので、メッシュ電極3bの開口部から光電変換層5に光が入射する。そのため、メッシュ電極3bの開口部は比較的大きいことが好ましい。具体的には、メッシュ電極3bの開口部の比率は、50%〜98%程度であることが好ましく、より好ましくは70%〜98%の範囲内、さらに好ましくは80%〜98%の範囲内である。メッシュ電極3bの開口部のピッチおよびメッシュ電極3bの線幅は、メッシュ電極全体の面積等に応じて適宜選択される。
メッシュ電極3bのシート抵抗は5Ω/sq以下であることが好ましく、中でも3Ω/sq以下、特に1Ω/sq以下であることが好ましい。メッシュ電極3bのシート抵抗が上記範囲より大きいと、所望の発電効率が得られない場合があるからである。なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の抵抗率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
メッシュ電極3bの形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属薄膜を全面に成膜した後に網目状にパターニングする方法、網目状の導電体を直接形成する方法等が挙げられる。これらの方法は、メッシュ電極の形成材料や構成等に応じて適宜選択される。
金属薄膜の成膜方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜法であることが好ましい。すなわち、メッシュ電極3bは真空成膜法にて形成された金属薄膜であることが好ましい。真空成膜法により成膜した金属種はめっき膜に比べ介在物が少なく比抵抗を小さく出来る。また、真空成膜法にて形成された金属薄膜は、Agペースト等を用いて成膜したものと比較しても比抵抗を小さくできる。また、厚み1μm以下の金属薄膜を、膜厚を精密に制御し、均一な厚みに成膜する方法としても、真空成膜法が好適である。金属薄膜のパターニング方法としては、所望のパターンに精度良く形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えばフォトエッチング法等を挙げることができる。
(電子輸送層)
有機薄膜太陽電池1において、電子輸送層4は、金属酸化物の粒子4aを堆積することにより形成されていることを特徴としている。
ここで、電子輸送層4を形成する金属酸化物粒子4aの種類としては、後述する対向電極よりも仕事関数を大きくすることができ、造粒が可能で堆積させることにより電子輸送層を形成することができればよく、具体的にはN型金属酸化物を挙げることができ、中でも酸化チタン、酸化亜鉛、さらには、酸化亜鉛にジルコニウムをドープしたGZO、酸化スズにアンチモンをドープしたATOなど、各種酸化物に異種金属をドープしたものなどが好ましい。
前述の金属酸化物粒子4aを堆積してなる電子輸送層4の表面の算術平均粗さRaは、10〜70nmとすることが好ましく、10〜30nmとすることが特に好ましい。
また、電子輸送層4の表面を上記の平均粗さとするにあたり、金属酸化物粒子4aの平均粒径を3〜50nmとすることが好ましく、3〜20nmとすることが特に好ましい。金属酸化物粒子4aの粒子径が50nmよりも大きい場合、電子輸送層の表面の粗さが大きくなり、そうするとこの上に形成される光電変換層5によってその表面全体を完全に被覆することができなくなり、光電変換層5の上に形成される正孔輸送層6や対向電極7と電子輸送層4とが直接接触してしまうことにより不具合が生じてしまう可能性があり好ましくない。
電子輸送層4の層厚については特に限定することはないが、10〜100nmであることが好ましく10〜30nmが特に好ましい。層厚が10nmより薄いと、電子輸送層としての機能を十分に発揮することができず、また、100nmを超えると、電気抵抗が高くなり変換効率が低下してしまうからである。
このような電子輸送層4の形成方法については特に限定することはなく、前述した種々の特徴を有する電子輸送層4を形成できる方法を適宜選択可能である。好ましい形成方法については後述する。
(光電変換層)
光電変換層5は、透明電極3aと対向電極7との間に形成されるものであり、有機薄膜太陽電池の電荷分離に寄与し、生じた電子および正孔を各々反対方向の電極に向かって輸送する機能を有する部材をいう。
光電変換層5は、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であってもよく(第1態様)、また電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものであってもよい(第2態様)。以下、各態様について説明する。
(1)第1態様
光電変換層5の第1態様は、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であり、電子供与性材料および電子受容性材料を含有するものである。この光電変換層では、光電変換層内で形成されるpn接合を利用して電荷分離が生じるため、単独で光電変換層として機能する。
電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。
導電性高分子はいわゆるπ共役高分子であり、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系から成り立っており、半導体的性質を示すものである。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利である。また、導電性高分子の電子伝達機構は、主にπスタッキングによる分子間のホッピング伝導であるため、高分子の主鎖方向のみならず、光電変換層の膜厚方向への電荷輸送も有利である。さらに、導電性高分子材料は、導電性高分子材料を溶媒に溶解もしくは分散させた塗工液を用いることで湿式塗工法により容易に成膜可能であることから、大面積の有機薄膜太陽電池を高価な設備を必要とせず低コストで製造できるという利点がある。
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリシラン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポルフィリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、フタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等を挙げることができる。
上記の中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フェニレンエチニレン−チオフェン共重合体、フェニレンエチニレン−フルオレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好ましく用いられる。これらは、多くの電子受容性材料に対して、エネルギー準位差が適当であるからである。なお、例えばフェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体(Poly[1,4−phenyleneethynylene−1,4−(2,5−dioctadodecyloxyphenylene)−1,4−phenyleneethene−1,2−diyl−1,4−(2,5−dioctadodecyloxyphenylene)ethene−1,2−diyl])の合成方法については、Macromolecules,35,3825(2002)や、Mcromol.Chem.Phys.,202,2712(2001)に詳しい。
また、電子受容性材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。
電子受容性の導電性高分子材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、ならびにこれらの共重合体、あるいは、カーボンナノチューブ、フラーレン誘導体、CN基またはCF基含有ポリマーおよびそれらの−CF置換ポリマー等を挙げることができる。ポリフェニレンビニレン誘導体の具体例としては、CN−PPV(Poly[2−Methoxy−5−(2´−ethylhexyloxy)−1,4−(1−cyanovinylene)phenylene])、MEH−CN−PPV(Poly[2−Methoxy−5−(2´−ethylhexyloxy)−1,4−(1−cyanovinylene)phenylene])等が挙げられる。
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性材料等を用いることもできる。中でも、電子供与性化合物もしくは電子受容性化合物がドープされた導電性高分子材料が好ましく用いられる。導電性高分子材料は、高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利であり、また、電子供与性化合物や電子受容性化合物をドープすることによりπ共役主鎖中に電荷が発生し、電気伝導度を大きく増大させることが可能であるからである。
電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述した電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl(III)、AlCl、AlBr、AsFやハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
光電変換層の膜厚としては、一般的にバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.2nm〜3000nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜600nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、光電変換層における体積抵抗が高くなる場合があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
電子供与性材料および電子受容性材料の混合比は、使用する材料の種類により最適な混合比に適宜調整される。
光電変換層を形成する方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法が好ましく用いられる。湿式塗工法であれば、大気中で光電変換層を形成することができ、コストの削減が図れるとともに、大面積化が容易だからである。
光電変換層用塗工液の塗布方法としては、光電変換層用塗工液を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。中でも、光電変換層用塗工液の塗布方法は、主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法であることが好ましい。主に塗布量に応じて厚みを調整することが可能な方法としては、例えば、ダイコート法、ビードコート法、バーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの印刷法を挙げることができる。印刷法は有機薄膜太陽電池の大面積化に好適である。
光電変換層用塗工液の塗布後は、形成された塗膜を乾燥する乾燥処理を施してもよい。光電変換層用塗工液に含まれる溶媒等を早期に除去することにより、生産性を向上させることができるからである。乾燥処理の方法として、例えば、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥、赤外線加熱乾燥等、一般的な方法を用いることができる。
(2)第2態様
光電変換層5の第2態様は、電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものである。以下、電子受容性層および電子供与性層について説明する。
<電子受容性層>
本態様に用いられる電子受容性層は、電子受容性の機能を有するものであり、電子受容性材料を含有するものである。
電子受容性材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子受容性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記第1態様の光電変換層に用いられる電子受容性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
電子受容性層の膜厚としては、一般的にバイレイヤー型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子受容性層における体積抵抗が高くなる可能性があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
電子受容性層の形成方法としては、上記第1態様の光電変換層の形成方法と同様とすることができる。
<電子供与性層>
本発明に用いられる電子供与性層は、電子供与性の機能を有するものであり、電子供与性材料を含有するものである。
電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、湿式塗工法により成膜可能なものであることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子材料であることが好ましい。導電性高分子材料は、上述したような利点を有するからである。具体的には、上記第1態様の光電変換層に用いられる電子供与性の導電性高分子材料と同様のものを挙げることができる。
電子供与性層の膜厚としては、一般的にバイレイヤー型有機薄膜太陽電池において採用されている膜厚を採用することができる。具体的には、0.1nm〜1500nmの範囲内で設定することができ、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。膜厚が上記範囲より厚いと、電子供与性層における体積抵抗が高くなる可能性があるからである。一方、膜厚が上記範囲より薄いと、光を十分に吸収できない場合があるからである。
電子供与性層の形成方法としては、上記第1態様の光電変換層の形成方法と同様とすることができる。
(正孔輸送層)
正孔輸送層6は、前述の光電変換層5から対向電極7への正孔の輸送つまり取出しが容易に行われるように設けられる層である。これにより、光電変換層5から対向電極7への正孔輸送効率が高められるため、光電変換効率を向上させることが可能となる。当該正孔輸送層6は、本願の必須の構成ではない。
正孔輸送層6に用いられる材料としては、光電変換層5から対向電極7への正孔の輸送を安定化させる材料であれば特に限定されるものではない。具体的には、ドープされたポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、トリフェニルジアミン(TPD)等の導電性有機化合物、またはテトラチオフルバレン、テトラメチルフェニレンジアミン等の電子供与性化合物と、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン等の電子受容性化合物とからなる電荷移動錯体を形成する有機材料等を挙げることができる。これらの中でも、特にポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、トリフェニルジアミン(TPD)が好ましく用いられる。また、正孔輸送層6を金属酸化物によって形成することも可能であり、例えば、酸化モリブデンや酸化バナジウムを蒸着することによって形成することもできる。
(対向電極)
対向電極7は、透明電極3aやメッシュ電極3bと対向する電極である。いわゆる「逆型」の有機薄膜太陽電池における対向電極7は、光電変換層5で発生した正孔を取り出すための電極とされる。本発明においては、透明電極3a側が受光面となるので、対向電極7は透明性を有さなくともよい。
対向電極7の形成材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、金属材料を用いることが好ましく、例えば、Ag、Al、Cuなどをあげることができる。
対向電極7は、単層であってもよく、また、異なる仕事関数の材料を用いて積層されたものであってもよい。対向電極7の膜厚は、単層である場合にはその膜厚が、複数層からなる場合には各層を合わせた総膜厚が、0.1nm〜500nmの範囲内、中でも1nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。膜厚が上記範囲より薄い場合は、対向電極7のシート抵抗が大きくなりすぎ、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性がある。
対向電極7は、正孔輸送層6上に全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
対向電極7の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができ、例えば真空蒸着法、メタルマスクによるパターン蒸着法を使用することができる。
(有機薄膜太陽電池モジュール)
有機薄膜太陽電池モジュールは、上記で説明した有機薄膜太陽電池1を複数個直列または並列に接続されていることを特徴とするものである。複数個の有機薄膜太陽電池の接続としては、所望の起電力を得ることができればよく、直列のみであってもよく、並列のみであってもよく、直列および並列を組み合わせてもよい。
(有機薄膜太陽電池の製造方法)
次に、有機薄膜太陽電池の製造方法について説明する。
本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法は、基板上に、透明電極、電子輸送層、光電変換層、および対向電極のそれぞれを順次形成していく有機薄膜太陽電池の製造方法であって、前記透明電極上に電子輸送層を形成する工程が、金属酸化物粒子が分散せしめられた電子輸送層形成用溶液を準備し、これを透明電極上に塗布し、その後乾燥することにより、電子輸送層を形成する工程であることに特徴を有している。このような製造方法によれば、電子輸送層を形成するにあたり、予め金属酸化物粒子が分散された電子輸送層形成用溶液を用い、これを塗布・乾燥することで電子輸送層とするので、従来、電子輸送層を形成する際に用いられていたゾル−ゲル法のように、電子輸送層の下地となる透明電極が高温に曝されることを防止することができる。したがって、基材としてPETフィルムを採用することも可能であり、これによりいわゆるロールtoロールで有機薄膜太陽電池を製造することも可能となる。また、この製造方法は、金属酸化物粒子を電子輸送層の形成とは別個独立の工程で調整するので、当該金属酸化物の種類や金属酸化度を自由に設計することができる。つまり、従来の方法にあってはスパッタ法やゾル−ゲル法など、電子輸送層を形成する方法毎に金属酸化物の種類が限定されてしまっていたところ、この製造方法は、電子輸送層の形成にあっては塗布と乾燥をするのみなので、所望の金属酸化物を自由に選択してこれを電子輸送層とすることができる。したがって、金属酸化物を1種類のみならず複数種類用いたり、さらには金属酸化物の酸化度を所望の値に調整したりすることも可能となる。そしてその結果、電子輸送層の両側に位置する透明電極と光電変換層の仕事関数、さらには対抗電極や正孔輸送層の仕事関数などのバランスを考慮し、当該電子輸送層の仕事関数を所望の値に自由に設計することも可能となる。
このような製造方法において、電子輸送層形成用溶液の調整については特に限定することはなく、有機薄膜太陽電池の電子輸送層としたい金属酸化物の粒子を準備し、これを任意の溶媒に分散せしめることにより調整すればよい。
この際に用いられる溶媒についても特に限定されることはない。しかしながら透明電極上に塗布後に行われる乾燥を可能な限り低温で行うことが好ましく、この観点からは低沸点の溶媒を用いることが好ましい。具体的には、IPA、エタノール、ブタノール、MMEなどが好適である。
また、溶媒中に分散せしめる金属酸化物粒子については、上記で説明した通りでありここでの説明は省略するが、当該金属酸化物粒子を造粒するにあっては、金属酸化物を焼成により形成した後、複数回にわたって粉砕することにより所望の粒径の粒子としてもよく、また一方で、金属酸化物の基となる金属錯体を準備し、これを気相ないし液相において反応せしめることにより所望の金属酸化物粒子を得てもよい。
また、電子輸送層形成用溶液を透明電極上に塗布する方法についても特に限定することはないが、例えばスピンコート法もしくはグラビア印刷法のいずれかであることが好ましい。スピンコート法によれば、当該溶液を均一に塗布することができ、その結果、電子輸送層の層厚を均一とすることができる。一方で、グラビア印刷法によれば、有機薄膜太陽電池を構成する他の層の形成するラインに簡単に組み込むことができ、その結果、将来的にはロールtoロールにて有機薄膜太陽電池を製造することも期待できる。
なお、本願の有機薄膜太陽電池を製造方法にあっては、電子輸送層を形成する工程以外の工程については特に限定することはなく、従来公知の方法を任意に選択して採用することができる。
(実施例1)
25mm角のガラス基板上に有効電極エリアが2mm角になるように透明電極としてITOをスパッタ成膜により150nm形成した。その際のITOからなる透明電極のシート抵抗は15Ω/sqであった。
GZOナノ粒子が分散された電子輸送層形成用溶液としてパゼットGK(HAKUSUI Tech.社)を用い、スピンコート法により前記透明電極上に塗布し、GZOが堆積してなる電子輸送層を形成した。なお、パゼットGK中のGZOの平均1次粒子径は20〜40nmであり、当該電子輸送層形成用溶液中のGZO固形分比は2wt%であった。スピンコート後に120℃/15minの乾燥を行い、乾燥後の膜厚が60nmのGZOからなる電子輸送層を得た。
そして、光電変換層として、P3HT/PCBMを溶媒としてオルトジクロロベンゼン中に所望の濃度になるように調整したインクをスピンコートにより乾燥膜厚が150nmになるように塗布した。塗布後120℃/5minで焼成して光電変換層を得た。
次いで、光電変換層上に、真空蒸着法により正孔輸送層として酸化バナジウム(V2O5)および対抗電極としてアルミニウム(Al)の順番で、膜厚が10nmおよび200nmになるように積層した。
以上のようなプロセスにより、ガラス基板上に2mm角の電池エリアを有する実施例1のいわゆる「逆型」の有機薄膜太陽電池を形成した。
この実施例1の有機薄膜太陽電池の変換効率をA.M.1.5の擬似太陽光下で測定したところ、変換効率:2.7%(短絡電流値:7mA/cm2、開放電圧:0.6V、曲線因子:0.65)を得た。
(比較例1)
前記実施例1と同じ要領でいわゆる「逆型」の有機薄膜太陽電池を製造するにあたり、電子輸送層の形成にあっては、TiOゾル−ゲル液(ビストレーターH、日本曹達社)を用い、スピンコートによって透明電極上に塗布し、500℃/30minの大気中の焼成することにより、いわゆるゾル−ゲル法にて、膜厚20nmのTiOからなる電子輸送層を得た。この際、500℃/30minの大気下で焼成したことにより、ITO透明電極の抵抗値が15Ω/sqから60Ω/sqまで上昇することを確認した。なお、電子輸送層以外の各層は実施例1と同様の要領で形成した。
以上のように形成された有機薄膜太陽電池の変換効率をA.M.1.5の擬似太陽光下で測定したところ、変換効率:2.0%(短絡電流値:7mA/cm、開放電圧:0.58V、曲線因子:0.50)を得た。
(実施例2)
A4サイズのPET基板上に有効エリアが2mm角になるように透明電極としてITOをスパッタ成膜により150nm形成したであり、その際のITOからなる透明電極のシート抵抗値は20Ω/sqであった。
平均1次粒子径(10〜20nm)のZnO粒子がn−ブタノール中に分散された電子輸送層形成用溶液を用い、グラビア印刷法により前記透明電極上に塗布し、120℃/15minの条件で、大気下で乾燥し、乾燥膜厚が30nmの、ZnO粒子が堆積してなる電子輸送層を得た。
この電子輸送層形成後にその表面状態を卓上小型プローブ顕微鏡(Nanopics、エスアイアイ・ナノテクテクノロジー社)により観察したところ、中心線平均粗さRaは50nmであり、表面積率(実測表面積/測定エリア)は1.05であった。また、形成された電子輸送層の酸化度を計測したところ、酸化度は1であった。
次いで、光電変換層を当該電子輸送層上に形成した。光電変換層としては、P3HT/PCBMを用い、P3HTとPCBMの重量比を5:2とし、固形分比が5wt%になるように、ODCB溶媒中にこれらを溶解したインクを用いた。そして、このインクをスピンコートにより塗布し、乾燥の後、N下で150℃/15minの焼成を行うことで、光電変換層を得た。なお、光電変換層の厚さは150nmであった。
光電変換層焼成後に、大気中にて正孔輸送層をスクリーン印刷により形成し、真空オーブン中で乾燥を行った。正孔輸送層としては、Agfa社のEL−P5010を用い、乾燥後の層厚は500nmであった。正孔輸送層を形成後にAgペーストをスクリーン印刷によりPEDOT−PSS層上に形成し、対向電極とした。Agペーストとしては、Dupont社の5029を用いた。Agペーストを印刷、乾燥した後に、N下で120℃/15minの焼成を行い、実施例2の「逆型」の有機薄膜太陽電池素子を得た。
以上のように形成された実施例2の「逆型」の有機薄膜太陽電池の変換効率をA.M.1.5の擬似太陽光下で測定したところ、変換効率:3%(短絡電流値:8mA/cm2、開放電圧:0.6V、曲線因子:0.62)を得た。
(比較例2)
前記実施例2と同じ要領でいわゆる「逆型」の有機薄膜太陽電池を製造するにあたり、電子輸送層の形成にあっては、透明電極上にZnO層をスパッタ成膜により30nm形成することにより電子輸送層を得た。この際、ZnOからなる電子輸送層の表面状態を卓上小型プローブ顕微鏡(Nanopics、エスアイアイ・ナノテクテクノロジー社)により観察したところ、中心線平均粗さRaは7nmであり、表面積率(実測表面積/測定エリア)は1.002であった。また、形成された電子輸送層を構成するZnOの酸化度を計測したところ、酸化度は0.92であった。なお、電子輸送層以外の各層は実施例2と同様の要領で形成した。
以上のように形成された有機薄膜太陽電池の変換効率をA.M.1.5の擬似太陽光下で測定したところ、変換効率:2.6%(短絡電流値:7.5mA/cm、開放電圧:0.6V、曲線因子:0.58)を得た。
1 有機薄膜太陽電池
2 基板
3a 透明電極
3b メッシュ電極
4 電子輸送層
4a 金属酸化物粒子
5 光電変換層
6 正孔輸送層
7 対向電極

Claims (6)

  1. 基板上に、透明電極、電子輸送層、光電変換層、および対向電極がこの順で積層されてなる有機薄膜太陽電池であって、
    前記電子輸送層は、金属酸化物の粒子が堆積してなることを特徴とする有機薄膜太陽電池。
  2. 前記電子輸送層の表面の算術平均粗さRaが、10〜70nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
  3. 前記電子輸送層における金属酸化物粒子の平均粒子径が3〜50nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の有機薄膜太陽電池。
  4. 基板上に、透明電極、電子輸送層、光電変換層、および対向電極がこの順で積層されてなり、前記電子輸送層は金属酸化物の粒子が堆積してなる有機太陽電池が、複数個直列または並列に接続されていることを特徴とする有機薄膜太陽電池モジュール。
  5. 基板上に、透明電極、電子輸送層、光電変換層、および対向電極のそれぞれを順次形成していく有機薄膜太陽電池の製造方法であって、
    前記透明電極上に電子輸送層を形成する工程が、金属酸化物粒子が分散せしめられた電子輸送層形成用溶液を準備し、これを透明電極上に塗布し、その後乾燥することにより、電子輸送層を形成する工程であることを特徴とする有機薄膜太陽電池の製造方法。
  6. 電子輸送層形成用溶液を透明電極上に塗布する方法が、スピンコート法もしくはグラビア印刷法のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。
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